『ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース』を読んだ後、無性にケバブが食べたくなった経験はありませんか?承太郎たちがエジプトを目指す長い旅路の中で、パキスタンの街角で繰り広げられたあの「ケバブの交渉シーン」は、ジョジョファンの間でも語り草となっている名場面です。
おいしそうな肉の描写、手に汗握る(?)値切り交渉、そしてその後に待ち受ける衝撃の展開。今回は、ジョジョ3部に登場するケバブにスポットを当てて、その魅力や名シーンの裏側、さらには自宅で再現するためのヒントまで徹底的に解説していきます。
ジョセフも唸った!パキスタンの街角で出会う魅惑のグルメ
ジョジョ第3部の魅力といえば、スタンドバトルはもちろんですが、一行が旅するアジアから中東にかけての「異国情緒あふれるグルメ描写」も欠かせません。パキスタンの首都イスラマバード近郊の街で、ジョセフ・ジョースターの足を止めたのが、軒先で豪快に焼かれていたドネルケバブでした。
垂直の串に幾重にも重ねられた肉の塊が、じっくりと回転しながら火に炙られ、表面から脂が滴り落ちる……。あの食欲をそそる描写は、読者の胃袋を直撃しましたよね。食通であるジョセフが「こいつはうまいんだぞ」と確信を持って太鼓判を押すあたり、このケバブがいかに特別な存在だったかが伝わってきます。
ちなみに、この時に肉を削いでいた店主の正体こそ、DIOからの刺客「鋼入りのダン(スティーリー・ダン)」でした。彼は自分の正体を隠し、愛想の良い商人として承太郎たちに接近したのです。
「5個で150円」は安すぎる?スティーリー・ダンとの絶妙な駆け引き
ジョジョのケバブシーンを語る上で外せないのが、ジョセフとダンの間で行われた「値切り交渉」です。このやり取りには、ジョジョ特有のユーモアと、その後の不穏な展開への伏線が凝縮されています。
最初は1個500円程度(当時の日本円換算)という、観光地価格とも取れる強気の値段を提示したダン。しかし、旅慣れたジョセフはひるみません。「他店ならもっと安い」「まとめ買いするから負けろ」と、ベテラン旅行者らしいテクニックで追い込んでいきます。
最終的に、ダンは「5個で150円」という信じられないような安値で手を打ちました。1個あたり30円。いくら当時の物価を考慮しても、これでは商売あがったりです。しかし、ダンの目的は金儲けではなく、スタンド「恋人(ラバーズ)」をジョセフの脳内に侵入させることでした。
そのためには、相手に隙を作らせ、至近距離まで近づく必要があります。安値で売りつけたのは、ジョセフたちを喜ばせて警戒を解くための、極めて狡猾な作戦だったわけです。
なぜジョジョのケバブはこれほど美味しそうに見えるのか
荒木飛呂彦先生の描く料理は、どれも独特の質感と「シズル感」に溢れています。第4部のイタリア料理が有名ですが、第3部のケバブも負けていません。
- 回転する肉の躍動感:ドネルケバブ特有の「回る肉」を漫画的表現で捉え、熱気まで伝わってくるような描き込み。
- 未知への憧れ:連載当時の1980年代後半、日本でケバブを日常的に見かけることは稀でした。読者にとってそれは「未知の国の、なんだか凄く旨そうな食べ物」として映ったのです。
- ジョセフのリアクション:キャラクターが美味しそうに食べる、あるいは食べようとする姿こそが、最高の調味料。ジョセフの期待に満ちた表情が、読者の期待値も引き上げました。
このシーンがあるからこそ、その後にダンが本性を現し、承太郎に対して卑劣な要求を繰り返す姿への「怒り」がより一層強調される構成になっています。
ケバブとシシカバブの違いを正しく理解しよう
ジョジョをきっかけに中東料理に興味を持った方のために、よく混同されがちな「ケバブの種類」についても少し触れておきましょう。
作中で登場したのは「ドネルケバブ」です。「ドネル」はトルコ語で「回転する」という意味。大きな肉の塊を回転させながら焼き、焼けた表面を薄く削ぎ落としてパンに挟むスタイルです。
一方で、串に刺して焼くスタイルは「シシカバブ」と呼ばれます。「シシ」は「串」という意味。日本でいう焼き鳥のような見た目ですね。ジョジョの舞台となったエリアでは、どちらも非常にポピュラーな料理ですが、ジョセフたちが惹かれたのは、あのダイナミックなドネルの塊だったのです。
また、宗教上の理由から、使われている肉は主にラム(羊)やチキン、または牛肉です。豚肉が使われることはまずありません。あの独特のスパイスの香りと肉の旨味のハーモニーは、一度食べると病みつきになる理由がよくわかります。
自宅で再現!「ジョジョ風ケバブ」を楽しむためのヒント
「あのケバブを自分でも食べてみたい!」というファンの方は多いはず。本格的な回転グリルがなくても、家庭にある道具とスパイスセットを使えば、ジョジョの世界観に近いケバブを再現することが可能です。
- 肉の準備:牛肉の細切れや鶏もも肉を使用します。クミン、コリアンダー、パプリカパウダー、ガーリックパウダーを混ぜた特製スパイスに肉を漬け込みます。
- 焼き上げ:フライパンでカリカリになるまで強火で焼き上げ、あえて少し焦げ目をつけるのが「外側を削いだ肉」に近づけるコツです。
- ソースの作成:ヨーグルトにマヨネーズ、レモン汁、おろしにんにくを混ぜた白いソース(ジャジキ風)を用意すれば、一気に本格的な味になります。
- 仕上げ:市販のピタパン(ポケット状のパン)に、たっぷりのキャベツと一緒に肉を詰め込みます。
この時、もし家族や友人と一緒に食べるなら、「5個で150円にしろ!」というジョセフのセリフを添えて提供すれば、盛り上がること間違いなしです。
スティーリー・ダンが象徴する「商人と刺客」の二面性
ケバブを売っていたスティーリー・ダンは、ジョジョ史上でも屈指の「嫌な敵」として知られています。しかし、彼がケバブ屋に化けていた時の、あの異常に腰の低い接客態度は、ある種プロフェッショナルなものすら感じさせます。
商売人として相手を懐に引き入れ、その裏で致命的な一手を打つ。ケバブという日常的な食べ物が、暗殺の道具(あるいは舞台装置)として使われるギャップこそが、荒木ワールドの真骨頂と言えるでしょう。
ダンのスタンド「ラバーズ」は、本体は弱小ですが、相手の脳内に入り込めば最強の力を発揮します。ケバブを介したあの「150円のやり取り」がなければ、承太郎たちはもっと早く彼の正体に気づいていたかもしれません。食欲という人間の根源的な欲求を利用した、非常に巧妙な作戦だったのです。
ジョジョのケバブを巡るファンの考察と楽しみ方
ネット上のコミュニティでは、このケバブシーンについて今なお熱い考察が交わされています。
「ダンが実際に作ったケバブは、毒などは入っていなかったのか?」「ジョセフたちは結局、代金を支払ったのか?(ダンの正体が判明してうやむやになったのではないか?)」など、些細な描写一つをとっても議論が尽きません。
また、最近ではキッチンカーのケバブ屋さんも増えていますが、店主が愛想よく接してくると「もしかしてスティーリー・ダンでは……?」と一瞬疑ってしまうのも、ジョジョファンあるあるですよね。
旅の終わりと、受け継がれる「食」の記憶
ジョジョ3部は、日本からエジプトまでを移動する「ロードムービー」的な側面を持っています。移動の合間に挟まれる食事のシーンは、過酷な戦いの中での数少ない休息の時間でもありました。
ケバブを頬張ろうとしたあの瞬間、承太郎たちは確かにパキスタンの空気を感じていました。私たち読者もまた、ページをめくることで彼らと共に旅をし、同じケバブの香りを想像していたのです。
物語は、ダンの敗北と承太郎の「おしおき(再起不能)」によって、ケバブの味さえ忘れるほどのカタルシスを迎えますが、ふとした時に思い出すのは、やはりあの脂の乗った肉の塊だったりします。
まとめ:ジョジョ3部のケバブが教えてくれること
『ジョジョの奇妙な冒険』における食事シーンは、単なる背景描写ではありません。キャラクターの性格を浮き彫りにし、敵の策略を描き出し、そして読者にその場所の空気感を伝える重要な役割を担っています。
スティーリー・ダンが売っていたあのケバブは、狡猾な罠であると同時に、ジョセフたちを魅了した本物のパキスタングルメでもありました。次にあなたが街中でケバブサンドを見かけた時は、ぜひ第3部のあのシーンを思い出してみてください。
「5個で150円」という無理な値切りはおすすめしませんが(笑)、承太郎たちが旅した異国の地に思いを馳せながら食べるケバブは、きっと格別の味がするはずです。
ジョジョという作品が持つ、日常と非日常が交錯する独特の魅力。それは、一本のケバブという身近な食べ物の中にも、しっかりと息づいているのです。さあ、あなたも今日はジョジョの奇妙な冒険 第3部を読み返しながら、美味しいケバブを楽しんでみてはいかがでしょうか。
ジョジョ ケバブというキーワードから広がる世界は、私たちが想像する以上に深く、そして美味しい物語に満ちています。

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