「ジョジョの奇妙な冒険」を読み進めていくと、誰もが一度は巨大な壁にぶつかります。それが、第6部「ストーンオーシャン」の結末と、第7部「スティール・ボール・ラン(SBR)」から始まる新しい世界の関係性です。
「承太郎たちはどうなったの?」「徐倫がアイリンになったのはなぜ?」「7部以降は1部から6部までの話と繋がっているの?」
そんな疑問を抱えながら、なんとなく読み飛ばしてしまっている方も多いのではないでしょうか。ジョジョにおけるパラレルワールドの概念は、作者である荒木飛呂彦先生が描く「人間讃歌」の集大成とも言える非常に深いテーマです。
この記事では、複雑に絡み合った宇宙一巡の仕組みや、一巡後の世界とSBR以降の世界の決定的な違いについて、初心者の方にも分かりやすく徹底的に解説していきます。これを読めば、ジョジョという壮大なサーガの全体像がスッキリと理解できるはずです。
宇宙一巡の真実:プッチ神父が求めた「天国」の正体
まず整理しておきたいのが、第6部のクライマックスで起きた「宇宙の一巡」という現象です。物語の黒幕であるエンリコ・プッチ神父は、親友であったDIOの遺志を継ぎ、「天国へ行く方法」を実行しました。
彼のスタンド「メイド・イン・ヘブン」が持つ能力は、生物以外の時間を無限に加速させるというもの。時計の針は猛烈な勢いで回転し、昼夜が瞬時に入れ替わり、やがて宇宙は終焉を迎えて特異点へと到達します。そして、新しい宇宙が誕生しました。
プッチ神父が目指した「天国」とは、単なる死後の世界ではありません。一度宇宙を最後まで加速させ、再び同じ歴史を繰り返させることで、全人類が「これから自分の身に起こる運命」をあらかじめ体験し、覚悟を持って生きられる世界のことでした。
しかし、この一巡には残酷なルールが存在します。
- 加速中に生き残った人間は、そのまま新しい世界へ移動する。
- 加速中に死んだ人間(空条承太郎、空条徐倫、エルメェス、アナスイなど)の魂は、新しい世界へ行くことができない。
- その代わり、死んだ人間と「よく似た別人」がその役割を埋めるように配置される。
6部の終盤で登場した、承太郎や徐倫にそっくりだけどどこか違う「別人」たちは、魂が失われた抜け殻のような存在だったのです。
アイリンの世界:プッチの消滅が生んだ「希望のパラレルワールド」
ところが、物語はプッチ神父の思い通りには進みませんでした。唯一生き残った少年・エンポリオの手によってプッチ神父が倒されたことで、宇宙の法則が再び書き換えられます。
プッチ神父が「一巡が完了する前」に死んだことで、彼が存在したという歴史そのものが消滅した新しい世界が誕生しました。これが、ファンの間で「アイリンの世界」と呼ばれるパラレルワールドです。
この世界では、以下の変化が起きています。
- プッチ神父が存在しないため、ジョースター家とDIOの因縁に終止符が打たれている。
- 徐倫に似た女性「アイリン」や、アナスイに似た「アンナキス」が登場するが、彼らは監獄に入るような過酷な運命を背負っていない。
- アイリンの左肩にはジョースター家の証である「星型の痣」があり、彼女たちがジョースターの血を引く存在であることは変わらない。
つまり、1部から始まった石仮面やスタンドを巡る「呪われた運命」から解放され、キャラクターたちが幸せに生きている可能性を示唆したのが、6部ラストのパラレルワールドだったのです。
7部「スティール・ボール・ラン」は一巡後の世界なのか?
ここで多くの読者が混乱するのが、第7部ジョジョの奇妙な冒険 第7部 スティール・ボール・ランの立ち位置です。
結論から言うと、7部以降の世界は、6部ラストの「アイリンの世界」の延長線上ではありません。全く別の、新しい時間軸(パラレルワールド)として描かれています。
6部までは「ジョナサン・ジョースター」から始まる物語でしたが、7部では再び1890年代のアメリカを舞台に「ジョニィ・ジョースター」という人物が主人公として登場します。名前や設定に共通点はありますが、1部のジョナサンとは別人です。
荒木飛呂彦先生はインタビューなどで、7部について「地続きではないけれど、同じ木から枝分かれした別の枝のようなもの」といったニュアンスで語っています。
かつてのキャラクターを彷彿とさせる人物が形を変えて登場するのは、スターシステムに近い手法と言えるでしょう。1部から6部までの物語を一度完結させ、設定をリセットすることで、より自由で新しい「人間讃歌」を描こうとしたのがSBR以降の世界なのです。
D4Cが定義した「隣り合わせの並行世界」
第7部においてパラレルワールドの概念をより明確に、そして恐ろしく描いたのが、ヴァレンタイン大統領のスタンド「D4C(ダーティー・ディーズ・ダン・ダート・チープ)」です。
この能力は、大統領自身が「物と物の間に挟まる」ことで、無数に存在するパラレルワールドを行き来できるというもの。これにより、ジョジョにおける世界のあり方が具体的に定義されました。
- 基本世界(ルート世界): 「聖人の遺体」が唯一存在する、物語の本流となる世界。
- 隣り合わせの世界: 基本世界と似ているが、細部が異なる無数の世界。
この能力の恐ろしい点は、同じ人間が同一の世界に二人存在すると、互いに引き寄せられ、接触した瞬間に「対消滅」して崩壊してしまうという物理法則です。ただし、大統領本人だけはこの法則から守られており、致命傷を負っても別の世界の自分に記憶とスタンドを継承させることで、実質的な不死身を実現していました。
この「遺体」を巡る争奪戦を通じて、私たちは7部の世界が「数ある可能性の中の特別な一つ」であることを再認識させられます。
8部・9部へと続く新しいジョースター家の系譜
7部で再構築された世界は、その後の第8部「ジョジョリオン」や、現在連載中の第9部The JOJOLandsへと引き継がれています。
この新しい世界線におけるジョースター家の家系図は、私たちが知っている1〜6部のものとは大きく異なります。
- ジョニィ・ジョースターが東方家の娘と結婚し、日本との縁が生まれる。
- 吉良吉影という名の人物が登場するが、4部の殺人鬼とは異なる役割を担っている。
- 「岩人間」や「災厄の理」など、新しい世界の法則に基づいた敵が登場する。
かつてのキャラクターの名前や、似た性質を持つスタンド(「キラークイーン」や「ザ・ワールド」など)が登場するたびに、ファンはニヤリとさせられます。これは「世界が変わっても、魂の形や運命の引力は似たものを引き寄せる」という、ジョジョ特有のロマンティシズムだと言えるでしょう。
なぜジョジョはパラレルワールドを描く必要があったのか
そもそも、なぜこれほどまでに複雑なパラレルワールド構造を採用したのでしょうか。
一つは、長期連載に伴うパワーインフレと設定の固定化を打破するためです。6部のラストで一度宇宙を終わらせるという大胆な手法をとることで、作者は再び「足が不自由な少年が馬で大陸を横断する」という地に足の着いた物語から再出発することができました。
もう一つは、「運命」というテーマをより深く掘り下げるためです。
たとえ世界が変わっても、名前が変わっても、ジョースターの血を引く者は正義のために戦い、誇り高く生きる。パラレルワールドという舞台装置を使うことで、「環境や時代が変わっても変わらない人間の輝き」を証明しようとしたのではないでしょうか。
ジョジョを読む楽しみは、単なるバトルの勝敗だけではありません。この複雑な世界の重なりの中に、かつての物語の面影を見つけ出し、新しい解釈を楽しむことにこそ醍醐味があります。
ジョジョのパラレルワールドを徹底解説!6部と7部の繋がりや一巡後の世界の違いとは?
ここまで解説してきた通り、ジョジョにおけるパラレルワールドは、単なる「もしもの世界」ではありません。それは、プッチ神父の野望によって一度終焉を迎えた宇宙の「その後」であり、同時に新しく生まれ変わった「可能性の地平」でもあります。
改めてまとめると、以下のようになります。
- 6部ラスト(一巡中): プッチ神父が意図した、全員が運命を知る「天国」。
- 6部ラスト(アイリン期): プッチの消滅により、因縁から解放された平和な世界。
- 7部以降(SBR世界): 1〜6部とは直接繋がらない、完全に独立した新しいパラレルワールド。
- D4Cの概念: 無数に存在する並行世界の中で、我々が読んでいるのは「唯一の遺体」がある基本世界。
一見すると難解に思える設定ですが、その根底にあるのは常に「人間は運命を切り拓けるのか」という問いかけです。6部で悲劇的な結末を迎えたかのように見えた承太郎たちの魂も、巡り巡って別の世界のどこかで、強く、美しく生きている。そう考えると、読み進める手が止まらなくなるはずです。
もし、まだ7部以降を手に取っていないという方がいれば、ぜひこの機会にパラレルワールドの扉を開いてみてください。そこには、1部から培われてきたジョジョの精神が、より洗練された形で息づいています。
ジョジョの奇妙な冒険 第1〜9部 全巻セット次回の読書では、ぜひキャラクターの「魂の繋がり」を意識しながらページをめくってみてください。きっと、これまでとは違う新しい発見があるはずですよ。
今回の解説が、あなたのジョジョライフをより深く、楽しいものにする一助となれば幸いです。また別の世界の考察でお会いしましょう!

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