「だんだん心魅かれてく……」
このフレーズを聞くだけで、青い道着をまとった小さな悟空が、パンやトランクスと一緒に宇宙へと飛び出していく光景が目に浮かぶ方も多いのではないでしょうか。1996年から放送されたアニメ『ドラゴンボールGT』。原作完結後のオリジナルストーリーとして当時は賛否両論ありましたが、放送から時を経た今、この作品が「神作」として再評価されている大きな理由の一つが、あまりにも豪華すぎる主題歌たちの存在です。
今回は、世代を超えて愛され続ける『ドラゴンボールGT』の主題歌にスポットを当て、その魅力や制作の裏側に迫ります。
圧倒的なクオリティを誇る「ビーイング系」アーティストの集結
『ドラゴンボールGT』の音楽を語る上で欠かせないキーワードが「ビーイング(Being)」です。90年代の日本の音楽シーンを席巻したこの音楽制作会社には、ZARDやDEEN、WANDS、FIELD OF VIEWといった超人気アーティストが多数所属していました。
当時のアニメソングといえば、作品の世界観を直接的に説明する歌詞(技の名前を叫ぶなど)が主流でしたが、『ドラゴンボールGT』はあえて「J-POPの王道」を突き進むアーティストを起用しました。その結果、アニメの枠を飛び越えて、一般の音楽チャートでも上位を独占する名曲が次々と誕生したのです。
この「アニソンらしからぬ洗練されたサウンド」と、悟空たちが繰り広げる壮大な冒険が見事に融合し、視聴者の記憶に深く刻まれることとなりました。
オープニング:DAN DAN 心魅かれてく(FIELD OF VIEW)
『ドラゴンボールGT』全64話を通して唯一のオープニングテーマとして君臨したのが、FIELD OF VIEWの「DAN DAN 心魅かれてく」です。この曲こそが、GTという作品のパブリックイメージを決定づけたと言っても過言ではありません。
坂井泉水(ZARD)が紡いだ魔法の歌詞
この曲の作詞を手がけたのは、ZARDの坂井泉水さんです。一見するとピュアなラブソングのようにも聞こえますが、実は『ドラゴンボール』の物語に通ずる深淵なメッセージが込められています。
「この宇宙(ほし)の希望の欠片(かけら)」「勇気を出して僕と飛び込もう」といったフレーズは、究極のドラゴンボールを求めて全宇宙を旅する悟空たちの姿そのものです。また、「もっと夢中になればいい」という一節は、強敵との戦いを通じてなお成長し続けるサイヤ人の本質を突いているようにも感じられます。
織田哲郎による「色褪せないメロディ」
作曲は、数々のヒット曲を生み出したメロディメーカー・織田哲郎さん。爽快感あふれるギターカッティングから始まり、サビで一気に視界が開けるようなキャッチーな旋律は、まさに「冒険の始まり」にふさわしいエネルギーに満ちています。
ボーカル・浅岡雄也さんの真っ直ぐで透明感のある歌声が、子供に戻ってしまった悟空の純粋さとリンクし、聴く人の心を掴んで離しません。現在でもカラオケのアニソンランキングでは常に上位にランクインしており、世代を超えて歌い継がれるスタンダードナンバーとなっています。
第1期ED:ひとりじゃない(DEEN)
物語の序盤、悟空、パン、トランクスの3人が宇宙船に乗って旅をしていた時期に流れていたのが、DEENの「ひとりじゃない」です。
この曲の魅力は、何といっても「仲間との絆」を優しく、かつ力強く歌い上げている点にあります。宇宙という孤独な空間で、ぶつかり合いながらも信頼を深めていく3人の関係性を、ボーカル・池森秀一さんの温かい歌声が見事に表現していました。
「ひとりじゃない。いつもそばにいるよ」というメッセージは、悟空という絶対的な存在を失いかけていた地球の人々や、画面の前で冒険を見守る子供たちへのエールのように響きました。
第2期ED:Don’t you see!(ZARD)
多くのファンが「GTの歴代エンディングで最高傑作」と名前を挙げるのが、ZARDの「Don’t you see!」です。この曲が使用されたのは、強敵ベビーとの死闘が繰り広げられた中盤戦でした。
都会的な哀愁とサイヤ人の孤独
ZARDの坂井泉水さんが歌うこの楽曲は、それまでの明るい冒険譚から一変し、どこか都会的で切ない雰囲気をまとっています。映像では、雨の中に佇むパンや、夕暮れ時の街並みが描かれ、非常に情緒的な演出がなされていました。
「Don’t you see! ちょっと願っただけなのに」というフレーズは、ドラゴンボールという「願いを叶える道具」の危うさや、それに翻弄される人間たちのドラマを暗示しているかのようです。強大すぎる敵を前にした時の、一抹の不安と決意が同居した名曲です。
この曲が収録されたCDはZARDの作品の中でも非常に人気が高く、アニメファンのみならず当時のJ-POPリスナーからも絶大な支持を得ました。
第3期ED:君がいないから(工藤静香)
第42話から第50話の「17号編」で使用されたのが、工藤静香さんの「君がいないから」です。GTの主題歌ラインナップの中で唯一、非ビーイング系のアーティストが担当した楽曲でもあります。
工藤静香さん自身が作詞を手がけたこの曲は、ドラマチックで重厚なバラード。これまでの爽やかな路線とは異なり、大人の色気と切なさが漂います。地獄から戻ってきた17号との再会や、平和だった日常が壊れていく緊迫感を見事に引き立てていました。女性の視点から描かれた「喪失感」と「再生」のテーマは、物語の佳境に向けて緊張感を高める役割を果たしました。
第4期ED:錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう(WANDS)
物語の最終章「邪悪龍編」から最終回までを飾ったのが、WANDSの「錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう」です。作詞・作曲は、後に自身も歌手として大成する小松未歩さんが担当しました。
終焉に向かう物語とハードなサウンド
ドラゴンボールという存在そのものがマイナスエネルギーによって崩壊していく、という衝撃の展開を見せた最終章。この曲のザラついたギターサウンドと、どこか退廃的な歌詞は、その重苦しい空気感に完璧にマッチしていました。
「錆びついたマシンガン」という比喩は、長年の戦いで傷ついた悟空たちの肉体や、使い古されたドラゴンボールのメタファーのようにも聞こえます。しかし、それでもなお「今を撃ち抜こう」と立ち上がる意志の強さが、ラストバトルの熱量を最大限に引き上げました。
最終回という伝説:音楽が物語を完結させた日
『ドラゴンボールGT』を語る上で、最終回のラストシーンに触れないわけにはいきません。これほどまでに主題歌が演出として完璧に機能した最終回は、他に類を見ないでしょう。
全ての戦いを終えた悟空が、神龍と共に去っていくシーン。ここで流れたのは、これまでのエンディング曲ではなく、初代オープニングの「DAN DAN 心魅かれてく」でした。
これまでの名場面がダイジェストで流れ、初期の冒険、ベジータとの宿命の対決、フリーザ戦での覚醒……。それら全てが、この1曲のメロディに乗せてフラッシュバックしました。多くの視聴者が「ああ、ドラゴンボールの物語が本当に終わるんだ」と、涙ながらに実感した瞬間です。
歌詞にある「あんなに眩しかった、あの日々を」という言葉が、視聴者が長年ドラゴンボールと共に歩んできた時間そのものを肯定してくれたのです。
なぜGTの主題歌は「神」と呼ばれるのか?
放送から四半世紀以上が過ぎても、なぜ『ドラゴンボールGT』の主題歌は色褪せないのでしょうか。その理由は、単なるタイアップの枠を超え、アーティストたちが作品の「魂」を汲み取っていたからです。
- 普遍的なテーマ: 友情、勇気、冒険といったアニソンの王道を、現代的なPOPSとして昇華させたこと。
- クオリティの妥協のなさ: 当時のトップクリエイターたちが本気で取り組んだサウンド。
- 作品へのリスペクト: 歌詞の端々に、悟空の生き様や作品の世界観が「隠し味」として含まれていること。
これらの要素が重なり合い、単なる「アニメの付属品」ではない、一つの独立した芸術作品としての地位を確立しました。もし今、もう一度『ドラゴンボールGT』を見返すなら、ぜひ一曲一曲の歌詞を噛み締めながら聴いてみてください。当時とは違う、新しい感動に出会えるはずです。
ドラゴンボールGTの主題歌全曲ガイド!名曲の歌詞や歌手、制作秘話まで徹底解説のまとめ
いかがでしたでしょうか。『ドラゴンボールGT』の主題歌たちは、まさに90年代音楽シーンの至宝とも言える名曲ばかりです。
FIELD OF VIEWの爽快な歌声、ZARDの心に染みる詞、DEENの温かさ、工藤静香の情熱、そしてWANDSの力強さ。これら全ての個性が集まったからこそ、GTという物語は私たちの心に深く刻まれました。
かつてアニメに夢中になっていたあの頃。カセットテープやCDプレイヤーで何度も繰り返し聴いた、あのお気に入りの主題歌たち。今、改めてサブスクリプションサービスやCDなどで聴き直してみると、忘れていた冒険心が少しだけ、DAN DANと湧き上がってくるかもしれません。
最後になりますが、もし「まだフルサイズで聴いたことがない」という曲があれば、ぜひチェックしてみてください。アニメサイズでは語り尽くせなかった、さらなる物語がそこには広がっています。

コメント