「漫画を描いてみたいけれど、どのペンを使えばいいのかわからない」
「プロみたいな強弱のある綺麗な線が引けないのは、道具のせい?」
そんな悩みを抱えていませんか?漫画の世界に足を踏み入れると、まず直面するのが「ペンの壁」です。文房具屋さんに並ぶたくさんのペン先や、デジタルソフトに無限にあるブラシ設定を前に、立ち尽くしてしまいますよね。
実は、漫画制作におけるペンの選び方には、明確な「正解の組み合わせ」が存在します。自分の描きたい作風や、手のクセに合ったペンを選ぶだけで、驚くほど線画のクオリティは上がるものです。
今回は、初心者から上級者まで役立つ、漫画制作におけるペンの種類と、プロが実践している具体的な使い分けのテクニックを徹底的に解説します。この記事を読み終える頃には、あなたが今手にするべき一本がはっきりと見えているはずですよ。
なぜ漫画制作においてペンの選び方が重要なのか
漫画は「線」で物語を伝えるメディアです。たった一本の線の太さ、鋭さ、柔らかさが、キャラクターの感情やその場の空気感を決定づけます。
例えば、力強いヒーローを描く時に弱々しい細い線ばかりでは、キャラクターの魅力が半減してしまいます。逆に、繊細な少女漫画のヒロインを太いサインペンで描いては、可憐さが損なわれてしまうでしょう。
プロの漫画家は、描きたい対象に合わせてペンを「道具」として使い分けています。これはデジタルでもアナログでも同じです。適切なペンを選ぶことは、自分のイメージを正確に紙(あるいは画面)に定着させるための第一歩なのです。
アナログ漫画制作の主役「つけペン」の種類と特徴
まずは、漫画制作の伝統的なスタイルである「つけペン」について見ていきましょう。ペン軸にペン先を差し込み、インクをつけて描くこの道具は、筆圧による豊かな表現力が最大の魅力です。
表現力の王様「Gペン」
漫画のペンと言えば、まず思い浮かぶのがゼブラ Gペンではないでしょうか。
Gペンは、ペン先の中でも弾力性が高く、筆圧をかけるとグッと開き、抜くとスッと細くなります。この「メリハリ」が一番の武器です。
- 主な用途:キャラクターの輪郭、服のシワ、力強い効果線。
- 特徴:最も個性が強く、使いこなすには練習が必要ですが、一度慣れるとこれ一本でキャラクターの大部分を描き分けることができます。
繊細な描写の要「丸ペン」
ゼブラ 丸ペンは、ペン先自体が筒状になっており、非常に細い線を描くのに適しています。
Gペンでは太すぎて潰れてしまうような、瞳の描き込みや髪の毛の先端、遠くの景色を描く時に重宝します。
- 主な用途:瞳、まつ毛、髪の毛の細部、少女漫画の主線、緻密な背景。
- 特徴:ペン先が鋭いため、筆圧が強すぎると紙を削ってしまうことがあります。優しく扱うのがコツです。
安定感抜群の「さじペン・カブラペン」
タチカワ さじペンは、スプーンのような形をしたペン先です。Gペンに比べて弾力が硬く、筆圧をかけても線の太さが一定に保たれやすいのが特徴です。
- 主な用途:背景の直線、枠線、均一な太さが必要な描き文字。
- 特徴:初心者でも扱いやすく、筆圧が強すぎて線が安定しないという方におすすめの主線用ペンでもあります。
手軽さと精密さを両立する「ミリペン」の活用術
最近では、プロの現場でもピグマ ミリペンなどのミリペンが多用されています。インクをつける手間がなく、キャップを開ければすぐに描ける手軽さは大きなメリットです。
ミリペンの選び方のポイント
ミリペンは「0.05mm」から「0.8mm」など、ペン先の太さがミリ単位で指定されています。
- 0.1mm以下:背景の細かいディテールや、カケアミなどのトーン的な描写。
- 0.3mm〜0.5mm:枠線や、やや太めの主線。
- コピックとの相性:カラー原稿を描く場合は、コピック マルチライナーのように、上からマーカーを塗っても滲まない「耐水性」のものを選ぶのが鉄則です。
ミリペンは強弱が出にくい反面、無機質な建造物や機械を描くのには最適です。アナログ派の人も、キャラはつけペン、背景はミリペンと使い分けているケースが非常に多いです。
デジタル漫画制作でのペン選びと設定のコツ
現在はCLIP STUDIO PAINTなどのソフトを使ったデジタル制作が主流です。デジタルでも「ペンの選び方」の本質は変わりませんが、設定次第で描き心地が激変します。
アナログの質感を再現するブラシ選び
デジタルソフトには、あらかじめ「Gペン」や「丸ペン」という名称のブラシが用意されています。まずはこれらをベースにしますが、重要なのは「筆圧検知」の調整です。
- 筆圧カーブの調整:自分が「弱い」と感じる筆圧で理想の細い線が出るように設定しましょう。
- 手ブレ補正:線がガタついてしまう初心者の強い味方です。ただし、数値を上げすぎると線の追従性が悪くなるため、自分のストロークの速さに合わせて微調整してください。
カスタムブラシで個性を出す
デジタルの強みは、有志が作成したカスタムブラシを導入できる点です。「ザラつきのあるペン」や「アナログのインク溜まりを再現したペン」など、自分の作風に合ったペンを探すのも、現代の漫画制作における重要なプロセスです。
プロが教えるパーツ別のペン使い分けテクニック
ここからは、実際に原稿を仕上げる際に、どのようにペンを使い分ければプロっぽい仕上がりになるのか、具体的なテクニックをお伝えします。
1. キャラクターの「入り」と「抜き」
漫画の線において最も大切なのは、線の始まり(入り)と終わり(抜き)です。
Gペンなどの弾力があるペンを使い、描き終わりにスッとペンを浮かせるようにして「抜き」を作ります。これにより、髪の毛のツヤや、生きた人間の柔らかさが表現できます。逆に、硬いミリペンだけで描くと、どうしても「塗り絵」のような平坦な印象になりがちです。
2. 奥行きを線で表現する
- 手前のもの:太いペン(Gペン)で、しっかりとした輪郭を描く。
- 奥のもの:細いペン(丸ペンやミリペン)で、薄く、細い線で描く。
これだけで、画面に立体感が生まれます。すべて同じペンで描いてしまうと、どこに注目すればいいのかわからない、視認性の低い画面になってしまいます。
3. ベタとツヤの表現
キャラクターの黒髪や影を塗りつぶす「ベタ」には、呉竹 筆ペンが便利です。
筆ペンはその名の通り筆のようなしなりがあるため、広い面積を塗りつつ、毛先の細い部分で「ツヤ」のハイライトを残すことができます。サインペンで塗りつぶすよりも、圧倒的にスピードと質感が上がります。
道具を長持ちさせるメンテナンスの知識
せっかく自分に合ったペンを選んでも、手入れが悪いとすぐにダメになってしまいます。
アナログペンの場合
- こまめに拭く:インクは乾くと固まります。描いている最中も、ティッシュでペン先のインクを定期的に拭き取ることで、線のキレが持続します。
- 交換時期を見極める:ペン先は消耗品です。「紙に引っかかるようになった」「線が太くなってきた」と感じたら、迷わず新しいペン先に交換しましょう。一枚の原稿を描く間に数回交換するプロも珍しくありません。
デジタルペンの場合
- ペン先の摩耗:液タブや板タブのペンの芯(替え芯)も摩耗します。平らになってくると筆圧の感知が鈍くなり、描き心地が悪化します。
- 保護フィルムとの相性:紙のような描き心地を再現する「ペーパーライクフィルム」を使用している場合、芯の減りが早くなるため、ストックを常備しておきましょう。
自分の「筆圧」を知ることが最適な一本への近道
ペンの選び方で迷ったら、まずは自分の筆圧が「強い」のか「弱い」のかを自覚することから始めましょう。
- 筆圧が強い人:硬めのペン(さじペンや、デジタルでの硬め設定)がおすすめ。柔らかいペンを使うと、線がすぐに太くなりすぎてコントロールが難しくなります。
- 筆圧が弱い人:柔らかいペン(Gペンや、デジタルでの柔らかめ設定)がおすすめ。少ない力で太い線が出せるため、手が疲れにくくなります。
道具に自分を合わせるのではなく、自分の特性に合わせて道具を選ぶ。これが、漫画制作を楽しく、長く続けるためのコツです。
まとめ:漫画制作でペンの選び方は?プロが教える適切な種類と使い分け方
漫画制作におけるペンの選び方は、単に有名な道具を揃えることではありません。自分の作風、描きたいパーツ、そして自分自身の筆圧に合わせて、最適な種類を選び、適切に使い分けることが重要です。
- 主線と表情には強弱のつくGペン。
- 細部と瞳には繊細な丸ペン。
- 背景と枠線には安定したミリペンやさじペン。
- ベタと質感には筆ペン。
これらの基本を押さえた上で、デジタルであればブラシ設定を自分好みに追い込んでみてください。
まずは、ゼブラ ペン先セットなどの少量のセットを手に入れて、実際に紙の上で線を引いてみることから始めてみましょう。最初から完璧に使いこなす必要はありません。何枚も描いていくうちに、あなたの手に馴染む運命の一本が必ず見つかるはずです。
適切なペン選びをマスターして、あなたの思い描く理想の漫画を形にしていきましょう!

コメント