漫画「クレムリン」の面白さを紹介!歴史と陰謀が交錯するストーリー

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「猫漫画」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?

大きな瞳でこちらを見つめる愛くるしい子猫、日向ぼっこをしながらあくびをする平和な光景……。もしあなたがそんな「癒やし」だけを求めてこの扉を叩いたのなら、少しだけ覚悟が必要かもしれません。

今回ご紹介するのは、カレー沢薫先生のデビュー作にして伝説の怪作クレムリンです。

タイトルから漂うのは、冷戦、スパイ、国家の最高機密といった重厚な空気感。しかし、その実態は「歴史と陰謀」という言葉を極限までシュールな笑いに昇華した、唯一無二の猫ギャグ漫画なのです。

なぜこの作品が、連載終了から時間が経った今でも多くのファンに「バイブル」として語り継がれているのか。その深すぎる沼の魅力を、徹底的に解剖していきます。


そもそも漫画「クレムリン」とは何なのか?

「クレムリン」という言葉は、本来ロシア連邦の大統領府を指す名称です。しかし、この物語の舞台はモスクワではなく、日本のどこかにある、生活感に溢れすぎたアパートや道端。

物語は、貧乏で無気力な青年・却津山(かつやま)が、道端に捨てられていた1匹のロシアンブルーを拾うところから始まります。ロシアンブルーといえば、その名の通りロシア原産の気品あふれる猫。しかし、拾われた猫「関羽」の容姿は、およそ血統書付きとは思えないほど不細工で、どこかふてぶてしい。

ここから、却津山と関羽、そして彼らを取り巻く「あまりにも人間臭すぎる猫たち」の日常が幕を開けます。

この作品の最大の特徴は、猫たちが可愛い鳴き声で甘えるのではなく、極めて理屈っぽく、時には冷徹なまでのリアリズムで社会を風刺し、人間の業を浮き彫りにしていく点にあります。


「歴史」という名のパロディと「陰謀」の正体

タイトル案にある「歴史と陰謀」というキーワード。本作において、これらは独特の解釈で物語に組み込まれています。

偉人の名を持つ猫たちの「歴史」

本作に登場する猫たちの多くは、歴史上の偉人や武将の名を冠しています。主人公格の「関羽」をはじめ、その兄弟たちも全員「関羽」。見分けがつかないというメタ的なギャグから始まり、歴史上の厳格なイメージを、猫のわがままで怠惰な振る舞いで徹底的にパロディ化しています。

これは単なる名前の借用ではありません。高潔な名前を持っているにもかかわらず、やっていることは「いかにして働かずに飯を食うか」「いかにして飼い主を支配するか」という卑近な欲望の肯定。このギャップこそが、読者の笑いのツボを執拗に突き刺してくるのです。

「猫類補完計画」という壮大な陰謀

作中では、猫たちが人間を支配し、世界を意のままに操ろうとする「陰謀」が語られることがあります。それが「猫類補完計画」です。

どこかで聞いたことがあるような名前ですが、その内容は極めて矮小。人間を「猫に餌を貢ぐ装置」に変え、自分たちは一切の労働を拒否し、こたつの中でぬくぬくと過ごす。この、ある種の「猫の真実」を、さも国家存亡を賭けた軍事機密のように語る構成が秀逸です。

陰謀論が渦巻くクレムリン(大統領府)のごとく、猫たちの間では熾烈な派閥争いや、マタタビを巡る闇の取引、時には命(猫缶)を賭けた情報戦が繰り広げられます。これこそが、本作における「歴史と陰謀が交錯するストーリー」の真実なのです。


登場キャラクターが放つ強烈な「毒」と「個性」

クレムリンを語る上で欠かせないのが、一度見たら夢に出そうなほどインパクトのあるキャラクターたちです。

  • 関羽(ロシアンブルー)本作の主役。血統書付きのはずが、目つきが悪く、性格はさらに悪い。飼い主の却津山を徹底的に見下しており、自分が世界の中心であると信じて疑わない。彼の放つ「正論という名の毒」は、読者の心に深く刺さります。
  • 却津山(かつやま)関羽の飼い主。定職に就かず、貧乏生活を送る青年。現代社会の「弱者」を象徴するようなキャラクターですが、関羽とのやり取りの中で見せる、妙に達観した諦念が共感を呼びます。
  • ニャン子自分を絶世の美女猫だと思い込んでいる、自己肯定感の塊のような猫。そのあまりにも厚かましい振る舞いは、ある種の清々しささえ感じさせます。

これらのキャラクターが、狭いアパートや公園といったミニマムな世界で、あたかも国際政治のような駆け引きを行う。このスケール感のバグこそが、中毒性の源泉です。


カレー沢薫先生の「ワードセンス」という核弾頭

この漫画を唯一無二にしている最大の要因は、著者のカレー沢薫先生が繰り出す、圧倒的なまでの「言葉の威力」にあります。

エッセイストとしても類まれなる才能を発揮している先生ですが、その原点は間違いなくこのクレムリンにあります。

  • 「マタ中」というパワーワードマタタビに溺れ、理性を失った猫を「マタ中」と呼ぶ。薬物依存の恐ろしさを猫の世界に持ち込むことで、ブラックユーモアの極致を見せてくれます。
  • 底辺のリアリズム「金がない」「働きたくない」「自分はゴミだ」といった、普段なら目を背けたくなるようなネガティブな感情を、これ以上ないほど洗練された語彙で表現します。自虐と冷笑が入り混じった台詞回しは、もはや哲学の域に達していると言っても過言ではありません。

読者は、猫たちの不細工な顔を見ながら、その口から飛び出すあまりにも鋭利な言葉に、「確かにその通りだ……」と打ち震えることになるのです。


なぜ今、私たちは「クレムリン」を読むべきなのか?

連載から年月が経過しても、この作品の輝きが失われないのはなぜでしょうか。それは、本作が描いているテーマが「人間の変わらない本質」だからです。

現代社会は、常に「前向きであること」「生産的であること」「可愛くあること」を求めてきます。SNSを開けば、キラキラした日常や、非の打ち所のない可愛い動物たちの動画が溢れています。

そんな世界に疲れたとき、クレムリンは最高の処方箋になります。

「不細工だっていい」「性格が悪くても生きていける」「働きたくないのは当たり前だ」。そんな、心の奥底に隠している本音を、関羽たちが代わりに、かつ最高に面白い形で叫んでくれるからです。

本作を読むことは、自分の中にある「醜さ」や「怠惰」を認め、それを笑い飛ばす儀式のようなもの。歴史や陰謀という大きな物語の裏側で、必死に(あるいはダラダラと)生きる彼らの姿は、今の私たちにこそ必要な「救い」なのかもしれません。


猫漫画の常識を破壊する「美学」

一般的な猫漫画が「共感」や「癒やし」を売りにするのに対し、クレムリンが提示するのは「拒絶」と「困惑」からの「爆笑」です。

絵柄についても、決して万人受けする「綺麗」なものではありません。線は荒々しく、猫の表情は時にクリーチャーのよう。しかし、その「可愛くない」絵だからこそ、キャラクターの言葉に真実味が宿ります。

綺麗な絵で「世の中は金だ」と言われても嫌味に聞こえますが、あの関羽の顔で言われると、ぐうの音も出ない説得力が生まれる。これこそがカレー沢流の計算された美学なのです。


まとめ:漫画「クレムリン」の面白さを紹介!歴史と陰謀が交錯するストーリー

さて、ここまで漫画クレムリンの深淵を覗いてきましたが、いかがでしたでしょうか。

「歴史と陰謀」という仰々しいフレーズの裏に隠されていたのは、人間のエゴを全肯定する猫たちの、あまりにも愉快で切ない日常でした。

歴史上の偉人の名を背負いながら、一粒のカリカリに命をかけ、こたつの領土を争う猫たち。彼らの姿は、社会という荒波の中で、何とか自分の居場所を確保しようと画策する私たちの姿そのものです。

もしあなたが、

  • 普通の猫漫画では刺激が足りない
  • シュールで知的なギャグを欲している
  • 社会の不条理を笑い飛ばしたい

そう思っているのなら、今すぐクレムリンを手に取ってみてください。

そこには、あなたの常識を根底から覆す、最低で最高の「陰謀」が待ち受けています。一度その魅力に取り憑かれたら最後、あなたも「関羽」たちの忠実な下僕(読者)として、その歴史の目撃者となることでしょう。

漫画「クレムリン」の面白さを紹介!歴史と陰謀が交錯するストーリー。その真価は、ページをめくった瞬間にあなた自身の脳内で完結するはずです。さあ、シュールでブラックな、けれどどこか愛おしいロシア(風)の世界へ、足を踏み入れてみませんか?

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