「最近、胸の奥が熱くなるような経験、していますか?」
大人になると、日々の仕事や生活に追われて、あの頃持っていた「青臭い情熱」や「ヒリヒリするような葛藤」を忘れがちですよね。少年漫画の「友情・努力・勝利」もいいけれど、今の自分たちが求めているのは、もっとリアルで、泥臭くて、時に残酷なまでに美しい「大人のための青春」ではないでしょうか。
そんな感情を呼び起こしてくれるのが、青年誌(ヤング誌)で連載されてきた名作たちです。
今回は、ヤング誌連載の名作漫画ベスト10と題して、読んだ後に人生観が変わってしまうような、圧倒的な熱量を持った青春の傑作たちを厳選してご紹介します。
なぜ今、大人こそ「ヤング誌の青春」を読むべきなのか
少年漫画と青年漫画の大きな違いは、そこに流れる「痛み」のリアリティにあります。
ヤング誌に連載される作品は、単なる成功物語ではありません。才能の壁にぶち当たって絶望したり、報われない恋に身を焦がしたり、社会の中で自分の居場所を見つけられずに足掻いたり。私たちがかつて経験し、あるいは今まさに直面している「ままならない現実」が描かれています。
だからこそ、その中で見せるキャラクターの一瞬の輝きや、わずかな救いに、私たちは自分自身を重ね、深く感動してしまうのです。
これからご紹介する10作品は、そんな「大人の心に深く刺さる」要素を兼ね備えた、まさに一生ものの名作ばかり。それでは、一気に見ていきましょう。
1. 3月のライオン(羽海野チカ)
ヤングアニマルで連載され、老若男女問わず多くのファンを持つこの作品。主人公の桐山零は、幼い頃に家族を失い、深い孤独を抱えながらプロ棋士として生きる高校生です。
この漫画が描く「青春」は、勝負の世界の厳しさと、それとは対照的な「居場所」の温かさです。零が近所に住む川本家の三姉妹と交流することで、凍りついていた心が少しずつ溶けていく描写は、読むたびに涙がこぼれます。
将棋という孤独な戦いを通して、他者とつながり、自分を許していく過程。それは、社会の中で戦う私たち大人の姿そのものかもしれません。
3月のライオン2. ブルーピリオド(山口つばさ)
月刊アフタヌーン連載。成績優秀で世渡り上手、でもどこか空虚な日々を過ごしていた高校生の矢口八虎が、一枚の絵に心を奪われ、美大受験という「正解のない世界」に飛び込む物語です。
この作品の魅力は、何と言っても「努力を言語化している」点。情熱だけで突き進むのではなく、どうすれば技術が磨けるのか、才能とは何なのかを論理的に、かつ熱く描き出しています。
「好きなことをやるって、楽しいだけじゃない」という現実に直面しながらも、それでも筆を動かし続ける八虎の姿。挑戦することを諦めかけていた大人の背中を、強く押してくれる傑作です。
ブルーピリオド3. ハチミツとクローバー(羽海野チカ)
ヤングアニマル他で連載された、美大を舞台にした青春群像劇の金字塔。登場人物たちが織りなす「全員片想い」の切なさは、もはや伝説と言っても過言ではありません。
「何者かになりたい」と願いながらも、自分の才能に限界を感じたり、将来への不安に押しつぶされそうになったり。大学生というモラトリアムな時期特有の、あのフワフワした、でもどこか焦燥感のある空気感が見事に表現されています。
読み終えた後、自分の過去の恋や夢を思い出して、少しだけ優しい気持ちになれる作品です。
ハチミツとクローバー4. リアル(井上雄彦)
週刊ヤングジャンプ連載。バスケットボールを題材にしながらも、描かれているのは「挫折からの再生」という極めて重厚な人間ドラマです。
交通事故で人を歩けなくさせてしまった罪悪感に苛まれる野宮、骨肉腫で足を失った戸川、不遜な性格ながら半身不随となった高橋。過酷な運命を背負った彼らが、車椅子バスケを通じて再び「生きる意味」を見いだそうと足掻く姿。
そこには安っぽい励ましなど一切ありません。泥臭く、不格好に、それでも前を向こうとする「リアル」な青春が、読む者の魂を揺さぶります。
リアル5. 孤高の人(坂本眞一)
新田次郎の名作小説を原案に、週刊ヤングジャンプで圧倒的な画力とともに描かれた登山漫画。
主人公・森文太郎は、他人との関わりを拒絶し、単独行での登山に全てを捧げます。この作品における「青春」とは、自分という存在を究極まで突き詰める、研ぎ澄まされた孤独そのものです。
山頂に向かう過程で描かれる、死と隣り合わせの心理描写と、神々しいまでの雪山の景色。社会の中で折り合いをつけられずに苦しむ心に、この静かな熱狂が深く染み渡ります。
孤高の人6. ピンポン(松本大洋)
週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館のヤング誌枠)で連載された、卓球に全てを賭ける少年たちの物語。
圧倒的な才能を持ちながら努力を忘れたペコと、才能を隠して生きるスマイル。そして彼らを取り巻くライバルたち。松本大洋独特の躍動感あふれるタッチで描かれる試合シーンは圧巻ですが、真の魅力は「敗者の青春」の描き方にあります。
頂点に立てる者は一人しかいない。けれど、負けた者たちの人生もまた続いていく。その潔い幕引きと再出発の描写は、スポーツ漫画の枠を超えた文学的な美しさを湛えています。
ピンポン7. べしゃり暮らし(森田まさのり)
週刊ヤングジャンプ等で連載された、お笑いに情熱を燃やす若者たちの物語。
『ろくでなしBLUES』で知られる作者が描く、笑いへの執念は凄まじいものがあります。人を笑わせることの難しさ、コンビ間の確執、そして相方を失う悲しみ。
ステージの上で一瞬の爆笑を掴むために、プライドも私生活も全てを投げ打つ。そんな「お笑い芸人」という生き様を通じた青春は、読む者の胸を熱く焦がします。
べしゃり暮らし8. 寄生獣(岩明均)
月刊アフタヌーンで連載された、SF漫画の最高傑作。一見、グロテスクなパニックものに見えますが、その核心にあるのは主人公・泉新一の凄まじい「精神的成長」です。
右手に宿った寄生生物・ミギーとの奇妙な共生。大切な人を守れなかった絶望と、そこから冷徹なまでに強くなっていく新一の姿。
「人間とは何か」という根源的な問いを突きつけられながら、少年が過酷な運命を受け入れ、大人へと脱皮していく過程。これもまた、一つの究極の青春の形と言えるでしょう。
寄生獣9. 惡の華(押見修造)
別冊少年マガジン連載。思春期の鬱屈とした感情、自意識の暴走、そして「変態的」とも言える自己解放を描いた衝撃作です。
閉塞感漂う地方都市で、クラスの美少女の体操着を盗んでしまったことから始まる逃げ場のない物語。美化された青春など微塵もなく、そこにあるのは黒歴史を抉り出すような痛みと、圧倒的な共感です。
誰にも言えなかったあの頃の衝動。そんな「心の暗部」に光を当てる、唯一無二の作品です。
惡の華10. 岳(石塚真一)
ビッグコミックオリジナル連載。「山に捨てちゃいけないのは、ゴミと命だ」と語る山岳救助ボランティア・島崎三歩の物語です。
登山という極限の状況下で繰り広げられる、生と死。三歩の底抜けに明るい「よく頑張った!」という言葉には、どんな過酷な現実をも包み込む優しさがあります。
自然の厳しさを知りながら、それでも山を愛し、人を愛する三歩の生き様。それは、多くの経験を積んだ大人にこそ響く、強く優しい青春の完成形かもしれません。
岳感情が震える!ヤング誌連載の名作漫画ベスト10を読み返そう
ここまで、ヤング誌連載の名作漫画ベスト10!青春を描いた傑作を紹介してきました。
気になる作品はあったでしょうか?
これらの漫画に共通しているのは、読んだ後に「自分ももう少し、悪あがきしてみようかな」と思わせてくれるエネルギーです。
仕事で行き詰まったとき、何のために頑張っているのか分からなくなったとき。そんなときは、かつて自分たちが抱いていた、あのヒリヒリするような情熱を思い出させてくれる漫画を手に取ってみてください。
ヤング誌の名作たちは、いつだって私たちの乾いた心に、熱い火を灯してくれます。
さあ、今夜はスマートフォンの電源をオフにして、ゆっくりと紙のページ(あるいはタブレット)をめくってみませんか。そこには、あなたがずっと忘れていた「あの頃の自分」が待っているはずです。
kindle_paperwhite

コメント