「漫画家になりたいけれど、1話に何ページ描けばいいのかわからない」「週刊連載を読んでいて、なんだか今週は短く感じる気がする……」そんな疑問を抱いたことはありませんか?
私たちが何気なく手に取っている漫画雑誌や単行本。実は、1話あたりのページ数には「読みやすさ」と「制作の限界」、そして「ビジネスの都合」が絶妙に絡み合った、驚くべきルールが存在しているんです。
今回は、漫画の1話が何ページで構成されているのか、その平均的な数字から制作現場の壮絶な裏側まで、徹底的に深掘りしていきます。この記事を読み終える頃には、いつもの漫画が少し違った視点で見えてくるはずですよ。
漫画1話の平均ページ数は「媒体」で大きく変わる
漫画の1話が何ページあるのか、その答えは「どの雑誌やアプリで読んでいるか」によって驚くほど異なります。まずは、最も一般的な紙の雑誌の基準から見ていきましょう。
週刊誌(少年ジャンプ、マガジン、サンデーなど)
週刊誌の場合、通常回の平均ページ数は「19ページ」前後です。これは日本の漫画界において、長年守られてきた「黄金の数字」とも言えます。
新連載の第1話に限っては、読者に世界観を印象づけるために50ページから60ページほどの大ボリュームで掲載されるのが通例です。続く第2話も、勢いを落とさないために24ページ前後と少し多めに設定されます。その後、物語が軌道に乗ると19ページ(あるいは17〜21ページ程度)で安定していきます。
月刊誌(ジャンプSQ、アフタヌーン、月刊マガジンなど)
月刊誌は発行が月に1回しかないため、1話あたりの満足度を確保するためにページ数が多くなります。平均的には「30ページから50ページ」ほど。40ページ前後で構成されている作品が目立ちます。
第1話ともなれば、100ページ近いボリュームになることも珍しくありません。週刊誌に比べて一気に物語が進むため、じっくりと腰を据えて読みたい読者に好まれる傾向があります。
Web漫画・アプリ(少年ジャンプ+、LINEマンガなど)
近年主流となっているWeb媒体では、ページ数の定義が少し柔軟になっています。
従来の「横読み」形式であれば8ページから16ページ程度と、週刊誌よりもやや少なめに設定されることが増えています。これは、スマートフォンの画面でスクロールして読む際に、読者が疲れを感じにくいボリュームに調整されているためです。
また、「Webtoon」と呼ばれる縦スクロール形式の漫画は、ページではなく「コマ数」で管理されます。1話あたり60コマから100コマ前後が一般的ですが、これを紙のページに換算するとおよそ16ページから18ページ分に相当する労力が必要だと言われています。
なぜ「19ページ」や「40ページ」という端数なのか?
なぜ1話20ページではなく「19ページ」なのか、あるいはなぜ「31ページ」や「45ページ」という中途半端な数字が新人賞の規定になっているのか。そこには、漫画ならではの「めくり」の技術が関係しています。
単行本1冊に収めるための計算
漫画がビジネスとして成立するためには、最終的に「単行本」として発売される必要があります。一般的な単行本は、1冊あたり180ページから200ページ程度で設計されています。
週刊連載が1話19ページであれば、9話から10話分。月刊連載が1話40ページであれば、4話から5話分。これに単行本用の描き下ろしやおまけページ、目次、奥付などを加えると、ちょうど1冊の厚みに収まるのです。1ページでも多すぎたり少なすぎたりすると、印刷の都合上、不自然な空白ができてしまうため、ページ管理は非常に厳格に行われています。
「めくり」と「見開き」の演出
漫画には、右ページから左ページへ視線を移し、さらにページを「めくる」という独特のアクションがあります。読者がページをめくった瞬間に大きな衝撃を与える「見開き」の演出をどこに持ってくるか。
これを計算すると、1話の総ページ数は必ず「奇数」か「偶数」のどちらか最適な方で終わる必要があります。雑誌の右側から始まるのか、左側から始まるのか。それによって、作者はネーム(設計図)の段階で緻密にページを配分しているのです。
漫画家が1話分を描き上げるまでの壮絶な裏側
「たった19ページ」と思うかもしれませんが、その裏側には、漫画家の血のにじむような努力が隠されています。
0から1を生み出す「ネーム」の苦しみ
作画に入る前、コマ割りやセリフを決める「ネーム」という工程があります。週刊連載の場合、このネームにかけられる時間は、わずか1日から3日。ここでストーリーの面白さが決まってしまうため、多くの漫画家が最も苦しみ、時間を忘れて没頭するフェーズです。
「今週はページ数が少ないな」と感じる回があるかもしれませんが、それは作者の手抜きではなく、むしろ「この話はこのページ数で語るのが最も美しい」という、ネーム段階での引き算の結果であることも多いのです。
圧倒的な作業量とタイムリミット
ネームが担当編集者のGOサインをもらったら、そこからは作画の戦いです。
下書き、ペン入れ、ベタ塗り、トーン貼り、背景描き込み。1ページを完成させるのに、プロでも数時間はかかります。19ページを1週間で仕上げるには、睡眠時間を削り、食事をかき込みながらペンを走らせる必要があります。
最近ではデジタル作画が普及し、ipad proや液晶ペンタブレットを使って効率化を図る作家さんも増えていますが、それでも作業の総量が変わるわけではありません。むしろデジタル化によって「描き込みの密度」が上がり、かえって時間がかかるようになったという声も聞かれます。
新人が目指すべきページ数と「読切」のルール
これから漫画家を目指して投稿しようと考えている方は、まず「31ページ」か「45ページ」を目標にすることをおすすめします。多くの少年誌・少女誌の新人賞が、この数字を基準にしているからです。
規定ページ数を守ることは「信頼」の証
「物語が盛り上がってしまったから、規定より5ページ多く描いてしまった」というのは、新人賞においては致命的なミスになりかねません。
プロの世界では、雑誌の限られた枠(スロット)を奪い合っています。決められたページ数の中で物語を完結させる力は、「構成力」として非常に高く評価されます。逆に言えば、どんなに絵が上手くても、ページコントロールができない作家は、連載の現場では扱いづらいと判断されてしまうのです。
ショート漫画やSNS漫画の台頭
一方で、最近はSNSで4ページ程度の短い漫画から人気に火がつくケースも増えています。スマートフォンでサクッと読める「4コマ形式」や、1ページ完結のシュールなギャグ漫画など、短いからこそ伝わる面白さも注目されています。
しかし、こうした作品も単行本化される際には、ページ数を調整するために大量の描き下ろしが必要になります。結局のところ、漫画の世界において「ページ数と向き合うこと」からは逃れられないのです。
漫画制作を支えるデジタルツールと現代の環境
かつては原稿用紙にインクで描いていた漫画も、今やデジタル環境が主流です。1話分を効率よく、かつ高品質に仕上げるために、現代の漫画家たちはさまざまなツールを駆使しています。
作画ソフトとしてはクリップスタジオが圧倒的なシェアを誇りますが、ハードウェアの選択も重要です。持ち運びができるmicrosoft surfaceを使ってカフェでネームを切る作家さんもいれば、自宅のデスクで巨大なモニターを並べて作画に没頭する作家さんもいます。
こうした環境の進化によって、1話あたりの密度は年々上がっています。昔の漫画と現代の漫画を読み比べてみると、背景の細かさやエフェクトの複雑さが全く違うことに驚くはずです。1話のページ数は変わらなくても、その1ページに込められた情報量は、かつてないほど増大しているのです。
漫画は1話で何ページあるのか?まとめと今後の展望
さて、ここまで「漫画は1話で何ページあるのか?」という疑問を軸に、業界の標準や制作の苦労についてお話ししてきました。
最後に、改めて全体を振り返ってみましょう。
- 週刊誌:通常回は19ページ前後。第1話は50〜60ページと大増量。
- 月刊誌:通常回は30〜50ページ。読み応え重視のボリューム。
- Web・アプリ:8〜16ページ程度と短めの傾向。縦スクロール型はコマ数で管理。
- 制作の裏側:単行本の収録ルールや、見開き演出のための計算が反映されている。
- 新人向け:31ページや45ページといった規定を守ることが、プロへの第一歩。
漫画の1話1話は、作者が限られた時間とページ数の中で、最大限の情熱を注ぎ込んで作った「作品」です。次に漫画を読むときは、「ここで見開きが来ているのは、ページ計算がされているからなんだな」「この19ページを描くのに、どれほどの夜を徹したのだろう」と想像してみてください。きっと、物語がより深く、愛おしく感じられるはずです。
もしあなたがこれから漫画を描いてみようと思っているなら、まずは自分の好きな作品のページ数を数えるところから始めてみてください。それが、あなただけの物語を形にするための、確かな一歩になるはずですよ。
漫画は1話で何ページあるのかを知ることは、単なる数字を知ることではありません。それは、漫画という表現形式が持つ「制約の美学」を知ることに他ならないのです。

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