「もしかして、警察にマークされているのではないか……」
そんな不安を抱えて毎日を過ごすのは、精神的に非常に過酷なものです。家の近くに不審な車が止まっている気がする、誰かに後をつけられているような視線を感じる。そんな日々が続けば、夜も眠れなくなるでしょう。
しかし、ある日を境にその気配がパタリと消えることがあります。「これは内偵捜査が打ち切りになったのか?」「それとも、嵐の前の静けさなのか?」と、さらに疑心暗鬼に陥ってしまう方も少なくありません。
実は、警察が水面下で進める内偵捜査には、途中で終了したり、事実上の断念に追い込まれたりするケースが多々あります。
この記事では、どのような場合に内偵捜査が打ち切りになるのか、その理由や期間の目安、そして打ち切られたと判断できる前兆について、詳しく紐解いていきます。
内偵捜査とはそもそも何か?在宅捜査との決定的な違い
まず、不安を解消するために「内偵捜査」の正体を正しく理解しておきましょう。
内偵捜査とは、警察が容疑者や周囲に気づかれないように、秘密裏に証拠を集める活動のことです。いきなり家宅捜索(ガサ入れ)を行ったり、警察署への任意同行を求めたりする前に、外堀を埋める作業と言い換えてもいいでしょう。
具体的には、対象者の行動確認(尾行・張り込み)、ゴミの回収、SNSの監視、さらには周辺人物への聞き込みなどが行われます。この段階ではまだ「事件」として表面化していないことも多く、本人が自覚していないケースも珍しくありません。
これに対して「在宅捜査」は、既に警察から呼び出しを受けていたり、家宅捜索を受けたりした後、逮捕されずに日常生活を送りながら取り調べを受ける状態を指します。
もしあなたがまだ一度も警察から接触を受けていないのであれば、それは「内偵」の段階です。そして、この内偵の段階で「証拠が掴めない」と判断されれば、誰にも知られることなく捜査は終了します。
内偵捜査が打ち切りになる5つの主な理由
警察も組織であり、動くためには予算と人員が必要です。無限に一人の人物を追い続けることはできません。打ち切りになるには、それなりの「警察側の事情」が存在します。
1. 証拠不十分による嫌疑の消滅
最も多いのが、必死に調べたけれど「逮捕するまでの証拠が出なかった」というケースです。警察は逮捕状を請求する際、裁判官に対して「この人物が犯人である可能性が高い」という客観的な証拠を提示しなければなりません。
尾行や張り込みを数ヶ月続けても、違法薬物の取引現場が押さえられない、あるいは詐欺の指示を出している証拠が見つからない場合、捜査は「空振り」として終了します。
2. 被害者との示談が成立した
被害者がいる事件の場合、弁護士を通じて示談が成立し、被害届や告訴が取り下げられると、捜査の必要性が急激に低下します。特に親告罪(告訴がなければ起訴できない罪)であれば、その時点で捜査は法的にストップします。非親告罪であっても、示談が済んでいる場合は「わざわざ逮捕してまで罰する必要はない」と判断され、打ち切りになることがよくあります。
3. 捜査の優先順位が下がった
警察内部には常に膨大な数の事件があります。殺人や強盗、あるいは社会的に大きな影響を与える大規模な特殊詐欺など、重大な事件が発生すると、警察のリソース(捜査員)はそちらへ割かれます。
比較的軽微な犯罪の内偵を行っていたチームが、別の重大事件の応援に回され、そのまま元の内偵が放置・終了してしまうことは、実務上決して珍しいことではありません。
4. 公訴時効が完成した
法律で定められた「起訴できる期間」を過ぎれば、どんなに証拠があっても裁判にかけることはできません。時効が迫っているのに有力な手がかりが得られない場合、警察は「これ以上追いかけても無駄だ」と判断し、捜査を打ち切ります。
5. 事件性が認められなかった
内偵の結果、実は「民事不介入」の案件だったと判明する場合です。例えば、お金の貸し借りのトラブルが詐欺として通報されたけれど、詳しく調べたらただの債務不履行(返せないだけ)だったというケース。警察は民事上のトラブルには介入できないため、事件性なしとして捜査を終了させます。
内偵捜査の期間はいつまで?打ち切りの目安
「いつまでこの不安が続くのか」という問いに対し、明確な法的期限はありません。しかし、実務上の「目安」となる期間は存在します。
- 数週間から1ヶ月程度万引きの余罪調査や、単純な暴行、盗撮などの比較的シンプルな事件。これくらいの期間で動きがなければ、捜査が一段落した可能性があります。
- 3ヶ月から半年程度薬物事件や、個人の売春、小規模な横領など。対象者の生活サイクルを一通り把握するのに必要な期間です。
- 1年以上組織的な特殊詐欺、大規模な贈収賄、反社会的勢力が関わる事件。これらは非常に長く、慎重に内偵が進められます。
一般的には、事件が発生したり、自分が「マークされている」と感じる出来事があったりしてから、半年から1年ほど何の接触もなければ、内偵が打ち切られたか、少なくとも「後回し」にされている可能性が高いと言えます。
捜査が終わったのか?「打ち切りの前兆」をチェックする
内偵捜査が終わる際、警察から「捜査を終了しました」という連絡が来ることは、まずありません。そのため、周囲の状況から推測するしかありません。
- 周辺の不審な人物や車両がいなくなったいつも同じ場所に止まっていた車や、家の近くで見かけた見慣れない人物が、数週間にわたって全く現れなくなった場合、監視が解かれた可能性があります。
- 知人や職場への聞き込みが止まった警察が内偵を行う際、対象者の周辺人物に接触することがあります。一度聞き込みがあったのに、その後、誰のところにも警察が来なくなったという話は、捜査のトーンダウンを意味します。
- ガサ入れの気配がない内偵の最終段階では、証拠を固めるために家宅捜索(ガサ入れ)が行われるのが通例です。内偵開始からかなりの時間が経過したのに、一向に踏み込まれる気配がないのは、家の中を調べるまでの「嫌疑」を固めきれなかった証拠かもしれません。
ただし、注意が必要なのは「忘れた頃にやってくる」パターンです。捜査員が交代したり、別のルートから新証拠が見つかったりすると、一度消えた気配が再び現れることもあります。
内偵が打ち切られた後も残るリスク
仮に今の内偵が打ち切りになったとしても、すべてが「白紙」に戻るわけではありません。いくつか注意すべきリスクが残ります。
警察のデータベースには記録が残る
逮捕されなければ「前科」はつきませんが、警察内部の資料には「内偵対象者であった」という事実や、収集された情報は残ります。これを俗に「警察歴」や「前歴」に近い扱いと呼ぶことがあります。
将来、万が一別の件で職務質問を受けたり、トラブルを起こしたりした際、警察官が照会をかけると「過去に〇〇の件で内偵対象になっていた人物」と表示されます。そうなると、通常よりも厳しい追及を受ける可能性が高まります。
別のきっかけで再開される
「打ち切り」は「無罪放免」の確定ではありません。別の事件で逮捕された人物が、あなたの関与を供述したり、新しい証拠品が押収されたりすれば、捜査はいつでも再開されます。
特に、インターネット上のトラブルやSNS関連の事案では、ログの保存期間や解析のタイミングによって、数年越しに捜査が本格化することもあります。不安な場合は、セキュリティソフトなどで自分のデジタルデバイスの安全性を高めると同時に、弁護士に相談して「現時点で何ができるか」を把握しておくことが、最大のリスクヘッジになります。
もし不安が消えないなら、どうすべきか?
内偵捜査の不安から解放されるための最も確実な方法は、法律の専門家である弁護士に相談することです。
「何も起きていないのに弁護士に相談してもいいのか?」と思うかもしれませんが、実はこうした「逮捕前の相談」は非常に重要です。
- 警察への問い合わせ弁護士は、あなたの代理人として警察に「現在、どのような処理状況になっているか」を確認できる場合があります。もちろん、内偵中の情報は教えてもらえませんが、事件が検察に送られているのか、あるいは既に処理が済んでいるのかなどの感触を掴めることがあります。
- 自首の検討もし、実際に心当たりがある事件に関与してしまっているのなら、内偵が打ち切られるのを待つよりも、「自首」を選択することで、将来の逮捕リスクを下げ、刑を軽くできる可能性があります。
- 証拠保全のアドバイス自分に非がない場合、どのように無実を証明すべきか、どのような行動が「証拠隠滅」と誤解されるかをアドバイスしてくれます。
不安に押しつぶされそうなときは、一人で抱え込まずにプロの知恵を借りるのが一番の近道です。
まとめ:内偵捜査が打ち切りになる理由とは?期間の目安や前兆、その後のリスクを徹底解説!
ここまで見てきたように、内偵捜査が打ち切りになる理由は「証拠不十分」「示談成立」「優先順位の低下」など様々です。
警察といえど万能ではありません。確実な証拠が掴めなければ、どこかで区切りをつけざるを得ないのが現実です。半年から1年という期間、何もアクションがなければ、一度は肩の荷を下ろしても良いかもしれません。
しかし、打ち切りは必ずしも「完全な終了」を意味するものではありません。警察の記録には残り続け、新たなきっかけがあれば再始動する可能性もゼロではありません。
もしあなたが今、内偵の影に怯えているのであれば、まずは自分の状況を冷静に整理しましょう。心当たりがあるのなら、早急に弁護士に相談して示談交渉などの手を打つこと。心当たりがないのなら、毅然とした態度で日常生活を送ることです。
「内偵捜査が打ち切りになる理由とは?期間の目安や前兆、その後のリスクを徹底解説!」という本記事の情報が、あなたの不安を解消し、次の一歩を踏み出す助けになれば幸いです。

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