「デデデデ、デデデデ……」というあの印象的なアコースティックギターの音色。
アニメ『ジョジョの奇妙な冒険』を一度でも観たことがある人なら、第1部や第2部のラストで鳥肌が立った経験があるはずです。その曲の名は、イギリスの伝説的プログレッシブ・ロックバンド「イエス(Yes)」の『Roundabout(ラウンドアバウト)』。
なぜ、1970年代の洋楽が2010年代のアニメに採用されたのか。そして、なぜこれほどまでに世界中で愛され、ネット上のミーム(ネタ)として定着したのか。今回は、ジョジョファンなら知っておきたい『Roundabout』の魅力を、裏話や歌詞の深み、そして「To Be Continued」の秘密まで徹底的に解き明かしていきます。
荒木飛呂彦先生の音楽体験が形にした奇跡のタイアップ
アニメ『ジョジョの奇妙な冒険』のエンディング(ED)に洋楽が流れる。今では当たり前となったこの形式ですが、そのすべては『Roundabout』から始まりました。
そもそも、なぜこの曲だったのか。その最大の理由は、原作者である荒木飛呂彦先生の「執筆背景」にあります。
荒木先生は大の音楽好きとして知られていますが、特に第1部「ファントムブラッド」や第2部「戦闘潮流」を執筆していた当時、実際に聴き込んでいたのがこのイエスの楽曲でした。アニメ化にあたり、スタッフが先生のイメージに最も近い楽曲を尋ねたところ、真っ先に挙がったのがこの曲だったのです。
当初はオープニング曲の候補にも挙がっていたそうですが、プログレッシブ・ロック特有の「長さ」や「複雑な構成」を活かすため、最終的にはエンディングへと配置されました。しかし、これが結果としてアニメ史に残る神演出を生むことになります。
本編のラスト、絶体絶命のピンチや衝撃の事実が発覚するシーンの裏側で、静かにギターのイントロが流れ始める。そして「To Be Continued」の文字が出ると同時に、重厚なベースラインが炸裂する。この「物語と音楽が溶け合う感覚」は、荒木先生の脳内にあったイメージを完璧に映像化したものだったと言えるでしょう。
ジョジョの奇妙な冒険 第1部・第2部 Blu-ray BOXプログレの金字塔『Roundabout』とバンド「イエス」の凄み
ここで少し、楽曲そのものについても深掘りしてみましょう。
『Roundabout』は、1971年に発表されたアルバムこわれもの (Fragile)の1曲目を飾る楽曲です。ジャンルは「プログレッシブ・ロック」。略してプログレと呼ばれますが、これは「進歩的、前衛的なロック」という意味で、複雑なリズムや高度な演奏技術が特徴です。
この曲を語る上で欠かせないのが、超一流のプレイヤーたちによるアンサンブルです。
- スティーヴ・ハウによる、繊細さと激しさを併せ持つギター。
- クリス・スクワイアによる、まるでリード楽器のようにうねるバキバキのベース。
- ビル・ブルーフォードによる、ジャズの素養を感じさせる変幻自在のドラミング。
- ジョン・アンダーソンによる、天高くまで届くようなハイトーンボイス。
ジョジョファンなら「ブラフォード」というキャラクター名にピンときたはずです。第1部に登場する伝説の騎士ブラフォードの名前の由来は、まさにこのドラマー、ビル・ブルーフォードから取られています。荒木先生の作品愛は、キャラクターの名前にまで深く刻まれているのです。
歌詞に込められた「環状交差点」と「血の運命」
曲のタイトルである『Roundabout』とは、イギリスなどに多い「環状交差点」を意味します。信号がなく、円形の交差点をぐるぐると回りながら進む方向を決める場所です。
作詞をしたジョン・アンダーソンによると、この歌詞はツアー中にスコットランドのグラスゴーへ向かう道中、何度も現れるラウンドアバウトと、そこから見える美しい山々や湖の景色から着想を得たといいます。
「山々が湖から立ち上がる」「24時間以内に君のもとへ帰る」といった幻想的な歌詞は、一見するとジョジョの物語とは無関係に思えるかもしれません。しかし、どこか「巡り合わせ」や「回帰」を感じさせるそのテーマは、ジョジョという作品が持つ「受け継がれる血統」や「巡る運命」というキーワードと不思議なほど共鳴しています。
ジョナサンからジョセフへ、そしてその先へと繋がっていくジョースター家の旅路。それはまさに、広大な世界を回りながら進んでいく終わりのない「ラウンドアバウト」のようなものなのかもしれません。
世界を席巻した「To Be Continued」ミームの正体
さて、この曲を語る上で避けて通れないのが、インターネット上での爆発的な流行です。
SNSや動画サイトで、誰かが転んだり、何かが爆発したりする「決定的な瞬間」の直前で映像がセピア色になり、「To Be Continued」という矢印とともに『Roundabout』のイントロが流れる動画を観たことはありませんか?
このミームは、アニメ第1部・第2部の演出をそのまま現実のハプニング映像に当てはめたものです。
- これからとんでもないことが起こるという予感。
- 静かなイントロがもたらす緊張感。
- そして「続きは次回!」という絶妙な寸止め感。
このパッケージがあまりにも完成されていたため、アニメを観ていない海外のユーザーの間でも「悲劇の予兆を告げるBGM」として定着しました。1971年の楽曲が、40年以上の時を経て、まったく新しい形で現代の若者たちの共通言語になったというのは、まさに文化の交差点(ラウンドアバウト)と言える面白い現象です。
第6部で回収された「原点回帰」の感動
アニメ『ジョジョの奇妙な冒険』は部を追うごとにED曲を変えてきましたが、シリーズの大きな区切りとなる第6部「ストーンオーシャン」の最終話で、ある出来事が起こります。
物語が完結を迎えようとするその時、流れてきたのはやはり『Roundabout』でした。
第1部から始まった壮大な「石造りの海」からの脱出、そして運命の決着。その最後に再びこの曲を流すという演出は、長年追い続けてきたファンへの最高のギフトでした。
「すべての道はここへ繋がっていた」
そう確信させるだけの説得力が、この曲には備わっていました。荒木先生が執筆当時に聴いていた曲が、アニメ化によって映像と結びつき、さらにミームとなって世界を一周し、再び物語の終焉を飾る。これほどまでに美しい円環構造を描いたタイアップは、後にも先にも他にないでしょう。
ジョジョのED曲『Roundabout』とは?選曲理由や歌詞の意味、ミーム化の背景を徹底解説!
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
『Roundabout』は、単なるアニメの主題歌ではありません。それは原作者・荒木飛呂彦先生の魂の一部であり、伝説のバンド「イエス」の最高傑作であり、そして世界中のファンを繋ぐ魔法のフレーズでもあります。
もし、まだフルバージョンを聴いたことがないのであれば、ぜひ一度Fragile (Expand & Remastered)を手にとってみてください。アニメで使われたあのパートが、約8分半という壮大な物語の一部であることを知った時、あなたの「ジョジョ体験」はより一層深いものになるはずです。
あの印象的なベースラインが耳に飛び込んできた時、私たちの目の前にはいつでも、黄金の精神を持つ者たちの冒険が広がっているのです。

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