『ジョジョの奇妙な冒険』という巨大な物語のなかでも、ひときわ異彩を放ち、そして多くのファンの涙を誘ってきた一冊の小説があります。それが、稀代のストーリーテラー・乙一先生の手によって書き上げられたThe Book jojo's bizarre adventure 4th another dayです。
「ジョジョのノベライズなんて、どうせファンアイテムでしょ?」なんて思っている方にこそ、この記事を読んでほしい。これは単なるキャラクター小説の枠を完全に踏み越えた、ひとつの「復讐と救済」を描いた文芸作品なんです。
今回は、なぜこの物語がこれほどまでに愛されているのか、その理由を深く掘り下げていきます。
荒木飛呂彦と乙一の魂が共鳴した「杜王町の闇」
『The Book』が語るのは、原作第4部「ダイヤモンドは砕けない」の本編が終了した直後の物語です。舞台は、あの吉良吉影との死闘を終え、平穏を取り戻したはずの杜王町。しかし、その平和な町には、原作では語られなかった「もうひとつの凄惨な事件」が眠っていました。
執筆した乙一先生は、自他ともに認める熱狂的なジョジョファン。彼はこの一冊を書き上げるために、数年の歳月を費やしたといいます。荒木先生が描く独特の「運命」や「人間賛歌」というテーマを、乙一先生自身の得意とする「繊細で切ないミステリー」のフィルターを通して再構築した結果、誰も見たことがないほど濃厚な外伝が誕生しました。
物語の視点は、主に二人の若者に置かれます。一人はおなじみの東方仗助。そしてもう一人は、本作の鍵を握るオリジナルキャラクター、蓮見琢馬。この二人の道が交差するとき、杜王町が隠し続けてきた衝撃の過去が明らかになっていきます。
「本」を武器にする敵・蓮見琢馬という悲しき存在
本作の最大の魅力は、なんといっても敵役である蓮見琢馬のキャラクター造形にあります。彼のスタンド能力「ザ・ブック」は、自分が体験したすべての出来事、痛み、感情をページに記録し、それを他者に読み聞かせることで追体験させるというものです。
直接的な破壊力はありません。しかし、この能力がどれほど恐ろしいか、そして悲しいか。彼は自分が受けた「絶望」を文字通り記憶し続け、それを糧にして生きている少年なんです。
乙一先生が描く悪役には、いつもどこか「孤独な正義」が漂います。蓮見琢馬もまた、純粋すぎる復讐心を抱いており、読者は読み進めるうちに「仗助に勝ってほしい」と願う一方で、「琢馬の痛みも救われてほしい」というジレンマに陥ることになります。この「悪を憎みきれない切なさ」こそが、本作が「泣ける」と言われる最大の理由でしょう。
原作キャラの新たな一面を引き出す乙一マジック
もちろん、原作キャラクターたちの活躍も忘れてはいけません。本作では東方仗助や広瀬康一、岸辺露伴といったおなじみの面々が登場しますが、その描写が実に丁寧なんです。
特に驚かされるのが、虹村億泰の描き方。原作では「直情型で考えるのが苦手」とされている億泰ですが、乙一先生は彼のスタンド「ザ・ハンド」を非常に論理的に、かつダイナミックに運用させます。「もし億泰が頭を使って戦ったら、これほどまでに恐ろしいのか」と、古参のファンほど唸るシーンが用意されています。
また、岸辺露伴も重要な役割を担います。漫画家としての好奇心から事件に首を突っ込んでいく彼の姿は、相変わらずの「露伴らしさ」全開。露伴の一人称で語られるパートは、まるでミステリー小説の探偵役を見ているような心地よい緊張感があります。
「雪の日の恩人」へのひとつの回答
ジョジョ第4部のファンの間で、長年議論されてきた「謎」があります。それは、幼い仗助を救った「リーゼントの少年」の正体です。原作ではあくまで「仗助がヒーローを目指すきっかけとなった名もなき少年」として描かれていますが、乙一先生はこのエピソードに対して、物語を通してひとつの「解釈」を提示しました。
これが単なる後付け設定ではなく、物語全体のテーマと密接に絡み合っているのが素晴らしいところ。運命が巡り巡って、過去と現在が一本の線でつながる瞬間。その圧倒的なカタルシスは、活字という媒体だからこそ表現できた演出と言えるでしょう。
装丁そのものが「スタンド」であるというこだわり
もしこれからジョジョ The Bookを手に取るなら、できれば電子書籍ではなく、実物の「本」を手に取ってみてください。この作品は、その外見からして普通ではありません。
ハードカバー版の装丁は、劇中に登場するスタンド「ザ・ブック」そのものを模したデザインになっています。真っ赤な装丁に、まるで生きているかのような質感。本を開くという行為そのものが、物語の一部として機能するように設計されているんです。
読み終えたとき、あなたは自分の手にあるその本の重みが、単なる紙の重さではなく、ひとりの少年の人生の重みであることに気づくはずです。
まとめ:ジョジョ『The Book』は泣ける傑作!乙一が描く4部外伝の魅力を徹底解説
さて、ここまで本作の魅力について語ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
The Book jojo's bizarre adventure 4th another dayは、ジョジョという作品が持つ「受け継がれる意志」というテーマを、乙一という天才的な作家が極限まで煮詰めた結果生まれた、まさに奇跡のような一冊です。
物語の終盤、全てのパズルが組み合わさったときに訪れるあの静かな感動は、他のどのスピンオフでも味わえません。少し分厚い本ではありますが、ページを捲る手は止まらなくなるはず。
黄金の精神を持つ者たちと、漆黒の過去を抱えた少年。その激突の果てに何が残るのか。未読の方は、ぜひその目で確かめてみてください。杜王町の冬は、切なくも温かい涙で締めくくられます。

コメント