「お前のスタンドをタロットカードの暗示で占ってやろう……」
そんなモハメド・アヴドゥルの渋い声が聞こえてきそうな、あのワクワク感。覚えていますか?『ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース』において、物語の背骨とも言える役割を果たしたのが「タロットカード」です。
それまでの「波紋」から、精神エネルギーを具現化させた「スタンド(幽波紋)」へと設定が大きくシフトした第3部。その際、各キャラクターの能力や宿命を定義する指標として選ばれたのが、神秘的な大アルカナ22枚でした。
今回は、ジョジョの世界を彩ったタロットカード一覧をベースに、それぞれのカードが持つ意味と、それがどのようにスタンド能力に反映されているのかを徹底的に掘り下げていきます。これを読めば、承太郎たちの旅路がより深く、より運命的なものに見えてくるはずです。
- ジョジョとタロットカードの密接な関係
- 0:愚者(ザ・フール)
- I:魔術師(マジシャンズレッド)
- II:女教皇(ハイプリエステス)
- III:女帝(エンプレス)
- IV:皇帝(エンペラー)
- V:法王(ハイエロファントグリーン)
- VI:恋人(ラバーズ)
- VII:戦車(シルバーチャリオッツ)
- VIII:力(ストレングス)
- IX:隠者(ハーミットパープル)
- X:運命の輪(ホイール・オブ・フォーチュン)
- XI:正義(ジャスティス)
- XII:吊るされた男(ハングドマン)
- XIII:死神(デス・サーティーン)
- XIV:節制(イエローテンパランス)
- XV:悪魔(エボニーデビル)
- XVI:塔(タワー・オブ・グレー)
- XVII:星(スタープラチナ)
- XVIII:月(ダークブルー・ムーン)
- XIX:太陽(ザ・サン)
- XX:審判(ジャッジメント)
- XXI:世界(ザ・ワールド)
- タロットが示した「運命」のその後
ジョジョとタロットカードの密接な関係
そもそも、なぜ第3部ではタロットカードが採用されたのでしょうか。作者である荒木飛呂彦先生は、目に見えない「精神の力」に形を与える際、古くから人々の運命を占ってきたタロットの持つ神秘性を重ね合わせました。
単なる「超能力」ではなく、その人物の性格や歩むべき道筋が、カードの図柄や暗示の中に隠されている。この設定が、ジョジョという作品に「宿命」という重厚なテーマを与えたのです。
劇中では、アヴドゥルがタロットカードをめくり、主人公・空条承太郎のスタンドを「スタープラチナ(星の白金)」と名付けるシーンから伝説が始まりました。22枚のカードにはそれぞれ正位置と逆位置の意味がありますが、ジョジョにおいてはその「象徴」がスタンド能力のモチーフとして見事に昇華されています。
それでは、番号順にその全貌を見ていきましょう。
0:愚者(ザ・フール)
物語の中盤、助っ人として合流したニューヨークの野良犬・イギーのスタンドです。
- カードの意味: 自由、冒険、型にはまらない、無限の可能性
- スタンドの正体: 砂のスタンド
「愚者」はタロットにおいて何番にも属さない、あるいは「0」という始まりを意味する特別なカードです。砂という、決まった形を持たない物質を操る能力は、まさに何者にも縛られないイギーの自由奔放な性格そのもの。物理攻撃が効きにくく、飛行も可能という万能さは、このカードが持つ「無限の可能性」を体現しています。
I:魔術師(マジシャンズレッド)
一行の導き手であり、占い師でもあるモハメド・アヴドゥルのスタンドです。
- カードの意味: 創造、才能、始まり、主導権
- スタンドの正体: 炎のスタンド
「1」という数字は万物の始まりを意味します。文明の象徴である「火」を自在に操るマジシャンズレッドは、ジョースター一行の参謀役であるアヴドゥルにふさわしい。生命探知機(ライフ・ディテクター)のような、知性に基づいた応用技も「魔術師」の知恵を感じさせます。
II:女教皇(ハイプリエステス)
エジプトへ向かう潜水艦の中で一行を襲った、ミドラーのスタンドです。
- カードの意味: 知性、神秘、沈黙、潜在能力
- スタンドの正体: 鉱物のスタンド
あらゆる金属やガラス、硬い物質に化ける能力を持ちます。本体が姿を見せず、周囲の環境そのものに溶け込んで襲ってくる執念深さは、カードに描かれた「内面的な鋭さ」をダークに解釈した結果と言えるかもしれません。
III:女帝(エンプレス)
ジョセフ・ジョースターの腕に寄生した、ネーナのスタンドです。
- カードの意味: 母性、豊穣、成長、繁栄
- スタンドの正体: 肉腫のスタンド
本来はポジティブな「成長」の意味を持つカードですが、ジョジョの世界では「相手の肉体を栄養にして勝手に成長する醜悪な肉腫」として描かれました。美人に化けていたネーナの正体が、この醜いスタンドだったというギャップも印象的です。
IV:皇帝(エンペラー)
「一番より二番」がモットーの、ホル・ホースが操る銃型のスタンドです。
- カードの意味: 支配、権威、行動力、野心
- スタンドの正体: 拳銃のスタンド
「皇帝」は絶対的な支配を象徴しますが、ホル・ホースの場合は「弾丸の軌道を支配する」という形で具現化されました。本体のどこか憎めない、しかし実力派のキャラクター性は、この強いカードをあえて「弾丸」という一点に集中させた面白さがあります。
V:法王(ハイエロファントグリーン)
承太郎の終生の友、花京院典明のスタンドです。
- カードの意味: 慈悲、連帯、秩序、精神性
- スタンドの正体: 紐状の遠距離操作型スタンド
「法王」は神と人の仲介者。メロンのような網目模様のボディを紐状に解きほぐし、結界を張る戦法は、人との繋がりを大切にしながらも、内面的な孤独を抱えていた花京院の精神性をよく表しています。必殺の「エメラルドスプラッシュ」は、彼の高潔な魂の輝きのようです。
VI:恋人(ラバーズ)
「鋼入りの(スティーリー)ダン」が操る、ミクロサイズのスタンドです。
- カードの意味: 選択、結合、情熱、試練
- スタンドの正体: 極小の寄生型スタンド
本来は愛情や選択を意味するカードですが、ここでは「相手と感覚を共有(結合)する」という恐怖の能力として描かれました。相手の脳内に侵入し、自分が受けたわずかな痛みを何倍にもして相手に返す。卑劣な戦術は「恋人」という名のイメージを覆すものでした。
VII:戦車(シルバーチャリオッツ)
気高き騎士、ジャン・ピエール・ポルナレフのスタンドです。
- カードの意味: 勝利、前進、征服、自制心
- スタンドの正体: 剣士のスタンド
鎧を纏い、レイピアで戦う騎士の姿はまさに「戦車」のカードに描かれた戦士そのもの。ひたすら真っ直ぐに突き進むポルナレフの性格と、スピードで圧倒する戦法は、このカードが持つ「直進的なエネルギー」を見事に表現しています。
VIII:力(ストレングス)
知能を持ったオランウータン、フォーエバーのスタンドです。
- カードの意味: 意志の強さ、勇気、忍耐、本能
- スタンドの正体: 巨大な貨物船のスタンド
小さなボートを巨大な貨物船へと変貌させ、そのすべてを支配する能力。野生の動物であるオランウータンが「文明の象徴である船」を意志の力で完全にコントロールしている構図は、カードに描かれた「ライオンを操る乙女」の逆説的な解釈のようにも見えます。
IX:隠者(ハーミットパープル)
第2部の主人公にして、第3部の司令塔であるジョセフ・ジョースターの能力です。
- カードの意味: 探求、思慮、内省、孤独
- スタンドの正体: 茨(いばら)のスタンド
カメラを叩き壊して遠くの情報を得る「念写」や、地理を探る能力。真実を追求する「隠者」の暗示通り、情報の収集に特化したスタンドです。熟練したジョセフの知恵と合わさることで、戦闘以外でも大きな力を発揮しました。
X:運命の輪(ホイール・オブ・フォーチュン)
峠道で一行を追い詰めた、ZZ(ズィー・ズィー)のスタンドです。
- カードの意味: 転換点、チャンス、幸運、周期
- スタンドの正体: 自動車のスタンド
ありふれた車を武装した怪物マシンへと変える能力。カードに描かれた「車輪」をそのまま移動手段としての自動車に落とし込んだ、非常に分かりやすいデザインです。「逃げ場のない山道」というシチュエーションが、抗えない運命の輪を連想させます。
XI:正義(ジャスティス)
DIOへの忠誠心が最も強い、エンヤ婆のスタンドです。
- カードの意味: 公平、因果応報、決断、均衡
- スタンドの正体: 霧のスタンド
霧によって死体を操り、一つの町を幻覚で支配する能力。傷口から霧を侵入させて人間を操り人形で動かす様は、ある種の「裁き」を彷彿とさせます。死者に裁きを下すような、おぞましい正義の形です。
XII:吊るされた男(ハングドマン)
ポルナレフの仇敵、J・ガイルのスタンドです。
- カードの意味: 忍耐、奉仕、逆転、自己犠牲
- スタンドの正体: 鏡の中(反射光)を移動するスタンド
カードの図柄では、男が逆さまに吊るされています。この「逆さま」という要素が、左右が反転した「鏡の世界」というコンセプトに繋がっています。実体のない光の移動として描かれたこの能力は、第3部屈指の絶望感を演出しました。
XIII:死神(デス・サーティーン)
一見無害な赤ん坊、マニッシュ・ボーイが操ります。
- カードの意味: 終焉、別れ、新たな始まり、劇的変化
- スタンドの正体: 夢の世界のスタンド
鎌を持つ死神そのものの姿。眠りについた者の精神を「死神の世界」へ引き込み、スタンドを出せない無防備な状態で狩る。眠り(小休止)という状態が「死」に近いことを示唆するような、恐ろしい暗示の解釈です。
XIV:節制(イエローテンパランス)
「弱点はない」と豪語したラバー・ソウルのスタンドです。
- カードの意味: 調和、節度、混合、自制
- スタンドの正体: 黄色の肉塊スタンド
あらゆる攻撃を吸収し、自らの一部として取り込む。カードの「混合」という意味が、他人の肉を食らって同化するというおぞましい能力に転換されています。物理的なダメージが通じない絶望感は、ある意味で「完全な調和」の裏返しです。
XV:悪魔(エボニーデビル)
シンガポールのホテルでポルナレフを襲った、呪いのデーボの能力です。
- カードの意味: 誘惑、束縛、執着、欲望
- スタンドの正体: 恨みをエネルギーにする人形スタンド
本体が傷つくほど、その「恨み」をパワーに変えて人形を操る。負の感情に囚われ(束縛され)、執拗に相手を追い詰める姿は、まさに内なる悪魔の具現化。ポルナレフがベッドの下に閉じ込められる描写は、逃げられない束縛を象徴していました。
XVI:塔(タワー・オブ・グレー)
飛行機内で一行を襲った、グレー・フライのスタンドです。
- カードの意味: 崩壊、災難、悲劇、急激な変化
- スタンドの正体: クワガタ虫型のスタンド
「塔」はタロットで最も不吉とされるカードの一つ。巨大な航空機という「高い塔」を墜落させようとするその能力は、カードの意味する「崩壊」をそのまま体現した災厄でした。
XVII:星(スタープラチナ)
そして、我らが空条承太郎のスタンド。ジョジョの代名詞とも言える存在です。
- カードの意味: 希望、憧れ、ひらめき、輝き
- スタンドの正体: 超精密・超強力な近距離パワー型スタンド
暗闇の中に光る「星」は、旅人の道標であり希望の象徴。圧倒的なパワーで理不尽を叩き伏せるその姿は、読者にとっても、絶体絶命の一行にとっても唯一無二の希望でした。後に目覚める「時を止める」能力も、一瞬の輝きを永遠に固定する究極のひらめきのようです。
XVIII:月(ダークブルー・ムーン)
偽の船長として潜入していた男が使うスタンドです。
- カードの意味: 不安、幻惑、隠れた敵、迷い
- スタンドの正体: 水中戦特化の半魚人型スタンド
波立つ水面に映る月は、常に形を変えて真実を隠します。海中という視界の悪い不安定な場所での戦いは、まさにこのカードが持つ「不安」と「正体不明の恐怖」を象徴していました。
XIX:太陽(ザ・サン)
砂漠の真ん中で一行を熱地獄に突き落とした、アラビア・ファッツのスタンドです。
- カードの意味: 成功、活力、明るい未来、生命
- スタンドの正体: 太陽そのもののスタンド
あまりに強力すぎる日光。本来は恵みである太陽が、過剰になれば死を招く災厄になる。カードの持つ強大なエネルギーを「熱線攻撃」という攻撃的な形に全振りした、ユニークなスタンドです。
XX:審判(ジャッジメント)
「3つの願いを叶えよう」と囁く、カメオのスタンドです。
- カードの意味: 復活、再生、覚醒、報い
- スタンドの正体: 土から偽物を具現化するスタンド
死んだアヴドゥルやポルナレフの妹を土人形で「復活」させる。しかしそれは魂のない偽物であり、願いへの「報い」として本人を襲う。カードの「死者の復活」という意匠を、残酷な罠として利用した能力でした。
XXI:世界(ザ・ワールド)
最後を飾るのは、運命の宿敵・DIOのスタンドです。
- カードの意味: 完成、完全、永遠、成功
- スタンドの正体: 時を止める最強のスタンド
タロットの最後「21番」は、一つのサイクルが完了した完全な状態を指します。自分以外のすべての時間を止め、自分だけが動ける世界。それはまさにDIOが求めた「完璧な支配」であり、物語のクライマックスにふさわしい、文字通りの「世界」を掌中に収める能力でした。
タロットが示した「運命」のその後
こうして一覧で見ると、ジョジョ第3部のキャラクターたちが、いかにカードの暗示に沿った生き方、戦い方をしていたかが分かります。承太郎の「星」がDIOの「世界」を打ち破ったのも、希望が独裁的な完成を上回ったという解釈ができるかもしれません。
第3部以降、スタンドの命名規則は洋楽のアーティスト名やアルバム名へと移り変わっていきます。しかし、このタロット編で確立された「精神のイメージを可視化する」という手法は、現在に至るまでシリーズの根底に流れ続けています。
ジョジョの物語は常に、変えられない運命の中でいかに「黄金の精神」を発揮して生きていくかを問いかけてきます。タロットカードという古い予言の道具は、その運命の過酷さと、それを乗り越える人間の可能性を表現するための、最高のデバイスだったのです。
あなたがもし、今自分の運命をタロットで占うとしたら、どのスタンドの暗示が出るでしょうか。たまにはそんな想像をしながら、再び第3部のページをめくってみるのも面白いかもしれません。
ジョジョのタロットカード一覧!全22種の意味とスタンド能力を徹底解説、いかがでしたでしょうか。この記事が、あなたのジョジョ愛をさらに深めるきっかけになれば幸いです。

コメント