「あいつ、誰だっけ?」「ズラズラ言ってた変な奴いたよね」
ジョジョの奇妙な冒険 第2部『戦闘潮流』を読み返していると、強烈なインパクトを残して一瞬で散っていく男がいます。そう、それが鋼線(ワイアード)のベックです。
主人公のジョセフやシーザーが苦戦する中、颯爽と現れたリサリサによって「秒殺」された彼。実は、その短い登場シーンにはジョジョという作品の魅力がぎゅっと凝縮されているんです。
今回は、ジョジョファンなら知っておきたいベックの正体、元ネタ、そしてなぜ彼がここまで愛すべき「かませ犬」なのかを徹底的に掘り下げていきます。
鋼線のベックという男:脱獄囚から吸血鬼へ
ジョジョ第2部の舞台は1938年。人類の脅威である「柱の男」たちが目覚める中、彼らの配下として動いていたのが吸血鬼たちです。ベックもその一人でした。
救いようのない凶悪な過去
ベックはもともと、人間界でも鼻つまみの「脱獄囚」でした。彼が投獄された理由は、自分の恋人を絞め殺したという残忍なもの。情状酌量の余地など一切ない、根っからの悪党として描かれています。
そんな彼が逃亡中にカーズと出会い、石仮面の力によって吸血鬼化しました。人間を超越したパワーを手に入れたことで、彼の残虐性はさらに加速していくことになります。
独特すぎる口癖「〜ズラ」
ベックを語る上で外せないのが、その特徴的な喋り方です。「〜ズラ」という、どこか田舎者っぽさを感じさせる語尾。凶悪な脱獄囚という肩書きと、この気の抜けるような口癖のギャップが、読者に強烈な違和感とインパクトを与えました。
「ドアじゃねーズラ、俺だズラ」というセリフと共に暗闇から現れるシーンは、ホラー演出でありながら、どこかシュールな笑いを誘います。
特殊能力「鋼線(ワイアード)」の仕組み
ベックが持つ能力は、スタンド能力ではありません。第2部における吸血鬼特有の「肉体改造」によるものです。
全身から生える「針の毛」
彼の二つ名である「鋼線(ワイアード)」は、その名の通り、全身の体毛を硬いワイヤーや針のように変形させる能力を指します。
吸血鬼としての高い身体能力に加え、自分の毛を自由自在に操ることで、近寄る敵を串刺しにします。劇中では、リサリサを抱きしめるようにして、全身のトゲで彼女を貫こうとしました。
吸血鬼としての慢心
ベックはこの能力に絶対の自信を持っていました。「抱きしめてやるズラ!」と叫びながら攻撃を仕掛ける姿は、肉体的な強さに溺れた吸血鬼そのもの。しかし、この「自分から相手に触れにいく」という攻撃スタイルこそが、彼の致命的な弱点となってしまいます。
名前の元ネタは伝説のギタリスト!
ジョジョといえば、登場キャラクターの名前に洋楽のアーティストや楽曲が使われることで有名ですよね。ベックも例に漏れず、音楽ファンならニヤリとする元ネタが隠されています。
ジェフ・ベックへのオマージュ
ベックの名前の由来は、世界3大ギタリストの一人に数えられる**ジェフ・ベック(Jeff Beck)**です。ジョジョの作者である荒木飛呂彦先生は熱心な洋楽ファンとして知られていますが、ベックというキャラクターにもそのリスペクト(?)が込められています。
アルバム『Wired』とのリンク
さらに、彼の能力名「鋼線(ワイアード)」は、ジェフ・ベックが1976年に発表した名盤アルバム『Wired』からそのまま取られています。
Wired Jeff Beckこのアルバムはフュージョンとロックが融合した非常にテクニカルな1枚ですが、作中のベックはテクニカルどころか力押しの肉弾戦。この絶妙なミスマッチ感もまた、ジョジョという作品の「味」と言えるでしょう。
リサリサに瞬殺された「再起不能」の真相
ベックの最大の見せ場は、リサリサとの戦闘シーンです。しかし、それは「戦闘」と呼ぶにはあまりにも一方的な展開でした。
究極の「かませ犬」としての役割
スイスのサンモリッツにある廃屋。ジョセフたちが乗り込もうとした際、門番として立ちはだかったのがベックでした。彼は闇の中からリサリサに襲いかかります。
しかし、リサリサは微動だにしません。彼女が巻いていたマフラーこそが、サティポロジア・ビートルの糸で編まれた「波紋を100%伝える導体」だったのです。
自らの能力が命取りに
ベックがリサリサを抱きしめ、体毛の針を突き立てようとした瞬間、リサリサはマフラーを通じて強力な波紋を流し込みました。
波紋エネルギーは、ベックが自慢していた「鋼線(体毛)」を伝って、ダイレクトに彼の体内へ。吸血鬼にとって波紋は太陽と同じエネルギー。内側から細胞を破壊されたベックは、戦う間もなくドロドロに溶けて消滅しました。
リサリサの放った「あんな下等な吸血鬼に、私のマフラーを汚されてしまったわ」という冷徹な一言。これこそが、ベックというキャラクターが作中で果たした最大の役割、すなわち「リサリサの底知れぬ強さを際立たせること」を象徴しています。
なぜベックはファンの記憶に残るのか?
登場回数こそ極めて少ないベックですが、なぜか多くのジョジョファンの記憶に刻まれています。そこにはいくつかの理由があります。
- 第2部唯一の「吸血鬼」らしい刺客: 第2部の敵は大半が「柱の男」であり、吸血鬼はあくまで下僕。その中でも名前と能力がしっかり描写されたベックは貴重な存在でした。
- 圧倒的な敗北美: 仰々しい特殊能力と凶悪な過去を持ちながら、リサリサの「練習台」にすらならなかった。その潔い負けっぷりが逆に清々しいのです。
- アニメ版の声優の熱演: アニメ版では、ベックのねっとりとした喋り方が見事に再現されており、視覚と聴覚の両方で「気持ち悪かっこいい」キャラクターとして完成されました。
まとめ:ジョジョの「鋼線のベック」とは?能力・元ネタ・名言から再起不能の理由まで徹底解説!
鋼線のベックは、決して物語の根幹に関わる重要なキャラクターではありません。しかし、彼のような個性的すぎる脇役がいてこそ、ジョジョの世界観は深みを増しています。
凶悪な脱獄囚、伝説のギタリストを元ネタに持つ名前、全身から生える鋼線の毛、そして「〜ズラ」という口癖。これらすべての要素が、わずか数ページの登場シーンに詰め込まれている贅沢さ。
次に第2部を読み返すときは、ぜひリサリサに一瞬で溶かされるベックの姿に注目してみてください。彼の「再起不能」までの短すぎる旅路の中に、荒木飛呂彦先生のキャラクター造形の凄みを感じることができるはずです。
ジョジョの奇妙な冒険 第2部 戦闘潮流ベックというキャラクターを知ることで、ジョジョの奇妙な冒険という壮大な物語の「細部へのこだわり」が、より鮮明に見えてくるのではないでしょうか。

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