『ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース』を語る上で、避けては通れない「トラウマ級」の強敵がいます。それが、エジプト九栄神の一柱を担うスタンド、ホルス神を操るハヤブサのペット・ショップです。
主人公の承太郎たち一行ではなく、助っ人として加わったばかりのボストン・テリア、イギーの前に立ちはだかったこの鳥。読者の多くが「ジョジョ史上、最も絶望感のある戦いの一つ」として挙げる、その圧倒的な強さの秘密を深掘りしていきましょう。
DIOの館を守る「冷酷な番人」ペット・ショップ
エジプト・カイロの路地裏。DIOの館の場所を突き止めようとする一行の前に、突如として現れたのがペット・ショップです。彼は単なる動物ではありません。DIOに対して絶対的な忠誠を誓い、館に近づく者を一切の容赦なく排除する「暗殺者」としての知能を持っています。
まず驚かされるのが、その執念深さです。ハヤブサ特有の時速300kmを超える飛行能力を駆使し、一度ターゲットと定めた獲物は地の果てまで追い詰めます。イギーとの戦いでも、逃げるイギーを執拗に追跡し、水中や地中深くまで攻撃の手を緩めませんでした。
この「言葉を交わさない、純粋な殺意」こそが、ペット・ショップというキャラクターに底知れない恐怖を与えている要因と言えるでしょう。
ホルス神の能力:氷を操る圧倒的な汎用性
ペット・ショップが操るスタンド、ジョジョの奇妙な冒険の第3部に登場するホルス神は、氷を自在に生成し、操作する能力を持っています。その攻撃バリエーションは驚くほど多彩です。
- 超高速の氷のミサイル(ツララ)空中から巨大な氷の塊を生成し、弾丸のように撃ち出します。その破壊力はすさまじく、車を紙クズのように押し潰し、イギーの鉄壁の守りさえも粉砕しました。
- 瞬間的な凍結能力触れたものを一瞬で凍りつかせるだけでなく、周囲の気温を急激に下げることで相手の動きを鈍らせます。狭い路地や逃げ場のない場所では、この冷気そのものが致命傷となります。
- 環境操作と自己修復氷の壁を作って盾にしたり、受けたダメージを氷で補強したりと、防御面でも隙がありません。
スタンドパラメータ以上に恐ろしいのは、射程距離や精密動作性を「本体が鳥であること」で補っている点です。上空から一方的に狙撃し、相手が反撃しようとすれば空高く舞い上がる。地上戦を主とするスタンド使いにとって、これほど相性の悪い相手はいません。
元ネタと神話の背景にある「王の守護」
ホルス神の名称は、エジプト神話における天空の神「ホルス」に由来します。神話上のホルスはハヤブサの頭を持つ姿で描かれ、太陽と月をその両目とし、王権の守護神としての地位を確立していました。
まさにDIOという「王」の館を守る番鳥として、これ以上ないほど完璧なキャスティングです。原作でのホルス神のビジュアルは、複数の脚と鳥の頭骨が組み合わさったような、どこか無機質で不気味な骨格の姿をしています。この「生命感のなさ」が、氷という冷徹な能力と見事にマッチしています。
また、本体の名前の由来となったのはイギリスのポップ・デュオペット・ショップ・ボーイズ。荒木飛呂彦先生らしい音楽への造詣の深さが、キャラクターのスタイリッシュさと恐怖を同居させるスパイスになっています。
伝説の格闘ゲームで見せた「史上最強の壊れ性能」
原作ファンだけでなく、ゲームファンにとってもホルス神(ペット・ショップ)は特別な存在です。1990年代にカプコンからリリースされた対戦格闘ゲーム『ジョジョの奇妙な冒険 未来への遺産』において、彼は「格ゲー史に残る壊れキャラ」として君臨しました。
- 常時浮遊による圧倒的な有利地面に足がつかないため、多くのキャラクターの下段攻撃や投げ技が無効化されます。
- ガード不能に近い連携空中からの氷ミサイルと地上への攻撃を組み合わせることで、ガードを崩すのが非常に容易でした。
- 無限コンボの恐怖ひとたび氷に当たれば、そのまま体力を削りきられるまで攻撃が続くことも珍しくありませんでした。
あまりの強さに、当時の格闘ゲーム大会では「使用禁止」という暗黙の了解やルールが設けられたほどです。原作の「手が付けられない強さ」を、ゲームシステムという形でここまで完璧に(あるいは過剰に)再現した例は他にないでしょう。
イギーが見せた執念:ホルス神を攻略した唯一の方法
絶体絶命の窮地に立たされたイギーでしたが、最後にはペット・ショップを撃破することに成功します。この決着シーンは、ジョジョ屈指の「頭脳戦」であり、動物同士の「生存本能のぶつかり合い」でもありました。
イギーが選んだのは、あえて至近距離での捨て身の特攻でした。氷のミサイルを口の中で生成しようとした瞬間に、自身のスタンド「ザ・フール」の圧力でペット・ショップのクチバシを力ずくで閉じさせたのです。
内部で発生した強大な冷気の圧力が逃げ場を失い、ペット・ショップの頭部を内側から爆発させるという、壮絶な結末。どれほど強力な能力でも、その「発生源」を封じられれば自滅するという、物理法則を突いた見事な攻略法でした。
氷使いの系譜:ギアッチョとの比較
ジョジョシリーズには後に、第5部で「ホワイト・アルバム」を操るギアッチョという強力な氷使いが登場します。ギアッチョは全身を氷のスーツで覆い、絶対零度に近い冷気で全てを凍らせる近距離パワー型ですが、ペット・ショップのホルス神とは戦い方の思想が異なります。
ギアッチョが「防御と制圧」に特化しているのに対し、ペット・ショップは「狩猟と狙撃」に特化しています。どちらが強いかという議論は尽きませんが、鳥としての機動力を持つホルス神の方が、戦う場所を選ばないという点ではより厄介な相手と言えるかもしれません。
ジョジョのホルス神はなぜ最強?ペット・ショップの能力と元ネタ・攻略法を徹底解説!のまとめ
改めて振り返ってみると、ホルス神の強さは単なる「能力の強さ」だけではなく、本体であるペット・ショップの「迷いのない殺意」と「鳥としての身体能力」が組み合わさった結果であることが分かります。
会話による交渉も、情けをかける余地も一切ない。ただただ効率的に相手を仕留めるために空から氷の槍を降らせてくる。このシンプルゆえに突破口が見えない絶望感こそが、彼を「第3部最強の刺客」と知らしめている理由なのです。
ジョジョの奇妙な冒険 第3部を読み返すと、この一戦がいかに物語に緊張感を与え、イギーというキャラクターを深く掘り下げたかが痛いほど伝わってきます。もしあなたが、まだこの熱い戦いを見ていない、あるいは忘れてしまったというなら、ぜひ今一度その目で「天空の番人」の恐怖を確かめてみてください。

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