「ジョジョがミュージカルになる……だと?」
最初にこのニュースを聞いた時、期待と不安が入り混じった複雑な感情を抱いたファンは少なくなかったはずです。あの唯一無二の濃密な絵タッチ、独特の擬音、そして「人間讃歌」という深いテーマを、どうやって生の舞台で表現するのか。
2024年、帝国劇場で幕を開けたミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』は、そんな下馬評を圧倒的な熱量で塗り替えました。今回は、実際に観劇したファンの声や、舞台版ならではのこだわり、そしてキャストたちの魂のぶつかり合いを徹底的に紐解いていきます。
原作愛が炸裂!1.5世紀前の英国を再現した重厚な世界観
ジョジョ第1部といえば、すべての物語の始まり。19世紀のイギリスを舞台にした、ジョナサン・ジョースターとディオ・ブランドーの数奇な運命を描いた物語です。
ミュージカル版でまず驚かされるのは、その美術と照明の美しさです。帝国劇場という歴史ある空間をフルに活用し、ジョースター邸の豪華絢爛な内装から、闇に包まれたロンドンの路地裏まで、まるでジョジョの奇妙な冒険 第1部 カラー版のページをめくっているかのような色彩感覚で再現されました。
特筆すべきは「血」と「運命」の表現です。ジョジョ特有のドロドロとした人間関係や、ディオが吸血鬼へと変貌を遂げる際の禍々しさが、プロジェクションマッピングとアナログな舞台装置の融合によって、生々しく描き出されています。
宿命のライバルを演じたキャスト陣の圧倒的な歌唱力
ミュージカルにおいて、キャラクターの心情は「歌」に託されます。本作のキャスティングは、まさに「ジョジョ」という巨大な山に挑むにふさわしい実力派が揃いました。
ジョナサン・ジョースター役:松下優也/有澤樟太郎
Wキャストで挑んだ主人公ジョナサン。松下優也さんは、持ち前の高い身体能力と安定した歌唱力で、英国紳士としての気品と、大切な人を守るための力強さを完璧に体現していました。一方、有澤樟太郎さんは、ジョナサンのピュアな正義感と、物語が進むにつれて成長していく青年の葛藤を泥臭く、情熱的に演じきり、観客の涙を誘いました。
ディオ・ブランドー役:宮野真守
そして、本作の影の主役とも言えるのが、宮野真守さん演じるディオです。声優としてもトップクラスの実績を持つ彼が、全身を使って表現する「悪のカリスマ」は圧巻の一言。「おれは人間をやめるぞ!」という象徴的な台詞は、劇場全体を震わせるほどの声量と狂気に満ちていました。彼の歌声には、ディオが抱える劣等感と、それを覆い隠すための傲慢さが同居しており、観る者を惹きつけて離さない魅力がありました。
波紋と吸血鬼をどう表現した?驚きの演出マジック
ジョジョを舞台化する上で最大の難問は、超常的な力である「波紋」や、吸血鬼の異能をどう見せるかという点でした。
演出の長谷川寧氏が選んだのは、映像に頼り切るのではなく、アンサンブルキャストの肉体と布、そして光を駆使した「フィジカルな表現」です。
- 波紋の呼吸: 呼吸がエネルギーとなり、波紋が伝わっていく様子を、ダンサーたちの流麗な動きで可視化。
- 擬音の再現: 「メメタァ」「ズキュウゥン」といった有名な擬音をそのまま文字で出すのではなく、楽器の音や役者のポージング、照明のフラッシュで、その「衝撃」を観客の脳に直接叩き込む手法が取られました。
これにより、2.5次元舞台の枠を超えた、純粋な「演劇」としてのクオリティが担保されていたのが印象的です。
実際に観たファンのリアルな評判と口コミ
SNSやレビューサイトでは、公演期間中、熱い感想が飛び交いました。ここでは、特に多く見られた意見を整理してみます。
良かった点
- 「宮野真守のディオが良すぎて、悪役なのに応援したくなるほどの説得力があった」
- 「ドーブ・アチア氏による楽曲が素晴らしく、観劇後もしばらくメロディが頭から離れない」
- 「ジョナサンとエリナの純愛が丁寧に描かれていて、原作以上に切なさを感じた」
気になった点
- 「原作のボリュームを3時間に収めているため、切り裂きジャック戦などのエピソードが削られているのが少し寂しい」
- 「後半の展開が非常にスピーディーなので、初見の人はあらかじめジョジョの奇妙な冒険 第1部 文庫版を読んでおいたほうが楽しめるかもしれない」
総じて「ジョジョを知らなくてもミュージカルとして楽しめるが、知っていればさらに細かな演出に感動できる」という、非常にバランスの良い評価を得ていました。
音楽が紡ぐ「人間讃歌」のメロディ
本作の音楽を手掛けたのは、フランスの人気作曲家ドーブ・アチア氏です。彼は『1789 -バスティーユの恋人たち-』など、ロックとクラシックを融合させたドラマチックな楽曲で知られています。
ジョジョにおいても、その手腕は遺憾なく発揮されました。ジョナサンのテーマはどこまでも真っ直ぐで力強く、ディオのテーマは低音が響く重厚で妖艶な旋律。二人のメロディが重なり合うデュエットシーンは、まさに「光と影」が交差する運命の皮肉を音楽で表現していました。
また、スピードワゴンが狂言回しのように歌い上げるシーンは、舞台に心地よいリズムを生み出し、観客を物語の世界へと引き込むガイド役を果たしていました。
舞台版で描かれた「エリナ」という女性の強さ
原作でも重要な役割を果たすエリナ・ペンドルトンですが、ミュージカル版では清水美依紗さんの圧倒的な歌唱力により、さらに存在感が増していました。
単なる「守られるヒロイン」ではなく、ジョナサンの意志を継ぎ、過酷な運命を生き抜こうとする一人の女性としての強さが歌声から伝わってきます。泥水をすすってでも生き抜く覚悟を見せるディオに対し、気高く愛を貫くエリナ。この対比が、物語の「人間讃歌」というテーマをより強固なものにしていました。
ミュージカル『ジョジョ』の評判は?舞台ならではの魅力やキャスト・演出を徹底解説!のまとめ
ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』は、原作の精神を最大限に尊重しながらも、ミュージカルという形式でしか成し得ない新しい表現に到達していました。
豪華なキャスト陣による熱演、心に響く楽曲、そして肉体を駆使した驚きの演出。これらが三位一体となり、1.5世紀前の英国で繰り広げられた熱き戦いが見事に令和の舞台に蘇りました。
開幕直後の中止トラブルという困難を乗り越えて届けられたこの作品は、まさに劇中の登場人物たちが示した「困難に立ち向かう勇気」そのものだったと言えるでしょう。今回の第1部の成功を受けて、ファンの間では早くも「第2部、第3部の舞台化」を期待する声が止みません。
もしあなたが、まだこの熱狂を体験していないのであれば、ぜひ映像作品やサウンドトラックを通じて、その世界に触れてみてください。きっと、あなたの中にある「黄金の精神」が呼び覚まされるはずです。
「ジョジョ」の物語は、まだ始まったばかりなのです。
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