『ジョジョの奇妙な冒険 第5部 黄金の風』。イタリアを舞台に、運命に抗う者たちの熱い戦いを描いたこの物語の中で、主人公一行と同じか、あるいはそれ以上にファンの心を掴んで離さない存在がいます。
それが、暗殺チームのリーダー、リゾット・ネエロです。
漆黒の衣装に身を包み、白目のない不気味な瞳で標的を見据えるその姿は、一見すると血も涙もない冷酷な殺人鬼そのもの。しかし、物語を深く読み解いていくと、ファンの間ではある一つの疑問、あるいは確信が囁かれるようになります。
「リゾットって、実はものすごく優しいんじゃないか?」
今回は、敵役でありながら多くの読者に愛され、その最期に涙を誘ったリゾット・ネエロの「優しさ」の正体について、彼の過去やチームメンバーとの絆、そして圧倒的なカリスマ性の根源から徹底的に考察していきます。
復讐から始まった暗殺者の道:リゾットの根源にある「愛」
リゾット・ネエロがなぜ「優しい」と評されるのか。その大きな理由の一つは、彼が暗殺者になったきっかけにあります。
公式の設定によると、リゾットは18歳の時、従兄弟の息子を飲酒運転によって失っています。加害者は法的な罰を逃れ、のうのうと生きていました。これに対し、リゾットは自らの手で加害者を殺害。この事件を機に、彼は裏社会へと足を踏み入れることになります。
このエピソードから分かるのは、リゾットの行動原理の根底にあるのは「理不尽に奪われた大切な者への情愛」だということです。
彼は決して、殺しそのものを楽しむサイコパスではありません。むしろ、法が裁けない悪を許せないという、ある種、非常に純粋で真っ直ぐな倫理観(それは裏社会の論理ではありますが)を持っていたのです。この「身内への深い愛情」こそが、後の暗殺チームにおける彼のリーダー像の基礎となっています。
孤独なプロフェッショナルが見せる「暗殺チーム」への献身
リゾット率いる「暗殺チーム(ヒットマンチーム)」は、組織パッショーネの中でも特に冷遇されていた部署でした。命を懸けて汚れ仕事をこなしても、報酬は少なく、正当な評価も与えられない。そんな過酷な環境下で、個性豊かで癖の強いメンバーたちを一つにまとめていたのがリゾットです。
彼の優しさは、いわゆる「甘さ」ではありません。プロとしての厳しさの中に宿る、部下への全幅の信頼と責任感です。
例えば、メンバーの一人であるジョジョの奇妙な冒険 第5部 黄金の風のフィギュアなどを眺めながら彼らの戦いを振り返ると、リゾットがいかに部下たちの個性を尊重していたかが分かります。
- ホルマジオの執念を信じる
- プロシュートの覚悟を誇りに思う
- ペッシの成長を静かに見守る
彼は決して、部下を使い捨ての駒とは考えていませんでした。チームが組織に反旗を翻したのは、単なる金欲しさだけではありません。不当に扱われる部下たちの現状を打破し、彼らに相応しい地位と報酬を勝ち取るためでもあったのです。リゾットの反逆は、リーダーとしての「責任ある優しさ」の現れだったと言えるでしょう。
ソルベとジェラートの惨劇:沈黙の裏に秘めた慟哭
暗殺チームの悲劇を語る上で避けて通れないのが、メンバーであるソルベとジェラートの処刑シーンです。
組織のボスを調べようとした報いとして、二人はあまりにも凄惨な方法で殺害されました。特にソルベは、生きたまま輪切りにされるという地獄を味わわされています。この事件の後、リゾットたちはボスの圧倒的な恐怖の前に沈黙を余儀なくされました。
しかし、この時のリゾットの心中はどうだったでしょうか。
彼はただ怯えていたわけではありません。仲間の無念を、その「輪切りにされた遺体」を一つずつ回収し、埋葬したその手には、言葉にできないほどの怒りと悲しみが宿っていたはずです。彼がドッピオ(ボス)と対峙した際のあの異常なまでの執念は、この時に植え付けられた「仲間の仇を討つ」という誓いがあったからこそ。
リゾットの優しさは、多くを語らない「沈黙の献身」なのです。
敵でありながら共感を呼ぶ「不器用な情愛」
リゾットの戦闘スタイルは、自らのスタンド「メタリカ」を駆使した、極めて緻密で残酷なものです。磁力を用いて相手の体内の鉄分を剃刀や針に変え、内側から破壊する。その戦いぶりはまさに「死神」です。
しかし、アニメ版などでジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 Blu-rayを視聴すると、彼の戦いには常に「悲哀」がつきまとっていることに気づかされます。
彼は自分の足を切断されても、ステープラーで繋ぎ合わせ、血を磁力で操って戦い続けます。その凄まじい自己犠牲の精神は、どこか悲劇のヒーローのような趣すらあります。
自分一人が生き残るためではなく、死んでいった仲間たちの「点」を、自分がボスを倒すという「線」に繋げるために戦う。その自己犠牲的な姿勢に、視聴者は「なんて優しく、そして孤独な男なんだ」と心を打たれるのです。
リゾット・ネエロのカリスマ性は「父性」にある
なぜ暗殺チームのメンバーは、あれほどまでにリゾットを慕っていたのでしょうか。ギアッチョのような血気盛んな男や、メローネのような変態的なこだわりを持つ男たちが、リゾットの指示には絶対に従います。
それは、リゾットがチームにとっての「父親」のような存在だったからではないでしょうか。
彼は部下の失敗を責めるのではなく、その死を無駄にしないことを誓い、常に最前線でリスクを背負おうとしました。彼が発する「覚悟」という言葉には、自分自身が誰よりも重い荷物を背負っているという裏付けがあったのです。
リゾットの優しさは、包み込むような柔らかいものではなく、風雨から身を守るための「盾」のような強固な優しさでした。その盾が壊れる時まで、彼は仲間を守ろうとし続けた。その不器用なまでの父性が、彼のカリスマ性の正体です。
敗北と救い:リゾットが最期に残したもの
物語の終盤、リゾットはボスの別人格であるドッピオを追い詰め、あと一歩で勝利するというところまでたどり着きます。しかし、ナランチャのスタンド「エアロスミス」の銃撃という、予期せぬ介入によって命を落とすことになります。
この結末は、あまりにも残酷です。仲間を想い、復讐のために全てを懸けた男が、運命のいたずらによってその望みを断たれる。
しかし、リゾットはただでは死にませんでした。死の直前、彼は自らを撃ったエアロスミスの弾丸をメタリカで操り、ボスを道連れにしようと試みます。最後まで「仲間たちのために、こいつだけは殺す」という意志を捨てなかったのです。
彼の死後、暗殺チームは全滅しました。しかし、彼らがボスの正体に迫った軌跡があったからこそ、ジョルノたちは最終的に勝利を掴むことができました。リゾットの「優しさ」と「執念」は、巡り巡って世界の運命を変える一助となったのです。
まとめ:ジョジョのリゾットは優しい?冷徹な暗殺者が愛される理由
ここまで、リゾット・ネエロの知られざる内面について考察してきました。
結局のところ、ジョジョのリゾットは優しいのか。その答えは、間違いなく「イエス」です。ただし、それは万人に向けられた平易な優しさではありません。
- 家族を想い、復讐に身を投じた原点の情愛
- 報われない部下たちのために組織に挑んだリーダーシップ
- 仲間の死を背負い、自らを削って戦う自己犠牲の精神
これら全てが、彼の「優しさ」の形です。彼は暗殺者という悪の道を選びましたが、その魂は誰よりも高潔で、仲間想いでした。
リゾットの生き様に触れると、ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 文庫版を読み返したくなる人も多いでしょう。彼の戦いの一つひとつに込められた、言葉にならない「優しさ」を感じながら物語を追うと、また違った感動が込み上げてくるはずです。
漆黒の瞳の奥に秘められた、情熱と慈愛。リゾット・ネエロという男は、これからも多くのファンの心の中で、誇り高きリーダーとして輝き続けることでしょう。

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