漫画を読み進めているとき、ふと「この影の質感、どうやって出しているんだろう?」と不思議に思ったことはありませんか?白と黒のモノクロの世界に奥行きと彩りを与えてくれる魔法のアイテム、それが「トーン」です。
本格的に漫画を描き始めようとすると、必ずぶつかるのが「種類が多すぎて何を選べばいいかわからない」「綺麗に貼るのが難しい」という壁ですよね。でも大丈夫です。コツさえ掴めば、トーンはあなたの作品をプロ級の仕上がりに引き上げてくれる最強の味方になります。
今回は、初心者の方が迷いがちな「漫画のトーンとは」という基本から、デジタル・アナログ両方で使える実践的なテクニックまで、余すことなくお伝えしていきます。
漫画のトーンとは?モノクロの世界を彩る魔法
漫画におけるトーン(スクリーントーン)とは、簡単に言うと「ドットや模様が印刷されたシール状の画材、またはそのデジタル機能」のことです。モノクロの漫画は、実は「真っ黒」と「真っ白」の2色だけで構成されています。しかし、トーンを使うことで、私たちの目にはグレーの濃淡があるように見えるのです。
なぜトーンが必要なのか。それは、キャラクターの肌の質感、服の色、夕暮れの空のグラデーション、そしてキャラクターの切ない心情などを表現するためです。ペン入れだけではどうしても「線」の情報だけになってしまいますが、トーンを加えることで一気に「空間」としてのリアリティが生まれます。
最近ではCLIP STUDIO PAINTのようなデジタルソフトで描くのが主流ですが、基本的な考え方はアナログ時代から変わりません。小さな点の集合体で「色」を疑似的に作り出す。この仕組みを理解することが、上達への第一歩です。
種類別!トーンの効果的な使い分けガイド
トーンには驚くほどたくさんの種類があります。画材店やソフトの素材パレットを覗いて「どれを使えばいいの?」と立ち尽くしてしまった経験はありませんか?ここでは、主要な4つの種類と、それぞれの役割を整理してみましょう。
1. 定番中の定番「網点(アミ)トーン」
最もよく使われるのが、小さなドットが規則正しく並んだ網点トーンです。
- 影の表現: キャラクターの首元や、建物の影など。
- 肌の色: ほんのり薄いトーンを貼ることで、血色の良さや肌の質感を表現します。
- 服の色: 濃度を変えることで、色とりどりの衣装を表現できます。
網点トーンを選ぶときに重要なのが「線数(L)」と「濃度(%)」です。線数が多いほどドットが細かくなり、滑らかに見えます。初心者は、まず「60線(60L)」を基準にするのがおすすめです。
2. 都会的でシャープな「万線(まんせん)トーン」
ドットではなく、平行な線が並んでいるのが万線トーンです。
- 金属の質感: ロボットや刀、車のボディなどに使うと、硬質な光沢が出ます。
- スピード感: 背景に流れるように配置することで、疾走感を演出できます。
- スーツや制服: 網点とは違った「布の折り目」のようなニュアンスを出すのに最適です。
3. ドラマチックに演出する「グラデーショントーン」
色の濃さが段階的に変化していくトーンです。
- 空の表現: 上が濃く、下が薄いグラデーションを使えば、奥行きのある空が完成します。
- 回想シーン: 画面の端にぼんやりと配置することで、「過去の記憶」のような雰囲気を演出できます。
- 立体感: 球体や円柱状の物体に貼ると、一気に3Dのような立体感が生まれます。
4. 感情を揺さぶる「砂目・効果トーン」
不規則な点や、花、星、スピード線などが描かれた特殊なトーンです。
- 心理描写: ショックを受けた時のドロドロした背景や、嬉しい時のキラキラした背景など。
- 自然物: 岩肌や地面の質感を出すには、規則的な網点よりも「砂目」がリアルです。
- 時短テクニック: 複雑な背景を描かなくても、効果トーン一枚でシーンの説得力が増します。
失敗しない!トーンの数値(線数と濃度)の選び方
トーン選びで一番の悩みどころは「数字」ですよね。「60L 10%」と言われても、最初はピンとこないものです。ここでは、プロもよく使う鉄板の組み合わせを紹介します。
標準的な影には「60線 10〜20%」
迷ったらこれ、と言えるほど万能な数値です。60線は印刷した時にドットが目立ちすぎず、かつ潰れにくい絶妙な細かさです。濃度は10%なら爽やかな影、20%ならしっかりとした存在感のある影になります。
キャラクターの肌には「60線 5%」
肌に濃いトーンを貼ってしまうと、印刷した時に「顔色が悪い」印象になってしまうことがあります。健康的な肌を表現したいなら、かなり薄めの5%前後を選び、光が当たる部分はあえて貼らない(白抜きにする)のがコツです。
重厚感を出すなら「線数を下げる」
あえてドットを目立たせたい場合や、ワイルドな質感を演出したい時は、線数を40線くらいまで下げてみましょう。ドットの一つひとつが大きくなり、ザラついた手触り感が画面に加わります。
綺麗に仕上げるためのトーンの貼り方のコツ
さて、種類を選んだら次は実践です。アナログとデジタル、それぞれの「ここだけは押さえておきたいコツ」を解説します。
アナログ派:カッターとヘラを使いこなす
アナログでトーンを貼る際は、デザインナイフが必須アイテムです。
- 大きめに切り取る: 貼りたい範囲よりも一回り大きくカットして、原稿に乗せます。
- 優しくなぞる: 線の内側をナイフでなぞります。この時、下の原稿用紙まで切らないように「トーンの層だけ」を切る力加減が重要です。
- しっかり圧着: 余分な部分を剥がしたら、上からトーンヘラで強くこすります。これが甘いと、後から剥がれてきたり、スキャンした時に浮いて影が入ったりします。
デジタル派:レイヤー管理と選択範囲が命
デジタル(クリスタなど)の場合、貼ること自体は一瞬です。
- 選択範囲ツールを活用: 塗りつぶしツールや投げ縄ツールで、貼りたい場所をきっちり囲みます。
- レイヤーを分ける: 「肌の影」「服の色」など、部位ごとにレイヤーを分けておくと、後から濃度や線数を変更したくなった時にとても楽です。
- マスク機能を使い倒す: はみ出した部分は消しゴムで消すのではなく「レイヤーマスク」で隠すようにすると、やり直しが何度でも効きます。
画面のクオリティが爆上がり!「削り」のテクニック
トーンはただ貼るだけのものではありません。「削る」ことで、表現の幅は無限に広がります。
ぼかし削りで柔らかさを出す
雲の端っこや、キャラクターの頬の赤らみなど、境界線をあいまいにしたい時に使います。アナログならカッターの先で優しく引っ掻くように、デジタルなら「カケアミブラシ」や「柔らかい消しゴム」で端を削ってみてください。これだけで、一気に「漫画っぽさ」が増します。
光の反射を表現する
髪の毛のハイライトや、金属の光沢。トーンを貼った上から、カッターや白インクでシュッと線を引くように削ってみましょう。暗い部分の中に鋭い白が入ることで、質感が劇的に向上します。
複数のトーンを重ねる(注意点あり!)
濃い影を作りたい時、トーンを2枚重ねることがあります。アナログの場合は、下のトーンと上のトーンのドットがぴったり重ならないように、少しずらして「モアレ」が出ない位置を探すのが職人技。デジタルの場合は、ソフトの機能で簡単に重ねられますが、やはり「モアレ」には注意が必要です。
初心者が最も陥りやすい罠「モアレ」を防ぐ方法
トーンを扱う上で、避けて通れないのが「モアレ」という現象です。印刷した時に、トーンが変な縞模様になったり、模様がガタガタに乱れてしまうことを指します。
モアレを防ぐための鉄則は3つです。
- 線数を統一する: 60線のトーンの上に、50線のトーンを重ねてはいけません。必ず同じ線数同士を重ねるようにしましょう。
- 角度を変えない: 基本的にトーンのドットは45度の角度で並んでいます。これを変な角度に回転させて貼ると、印刷時に模様が干渉し合ってモアレが発生します。
- 解像度に気をつける: デジタルの場合、解像度が低い状態でトーンを貼ると、縮小・拡大の際にドットが潰れてしまいます。モノクロ原稿なら「600dpi」以上で作業するのが漫画業界のスタンダードです。
noteで映える!現代的なトーンの使い方のトレンド
最近のWeb漫画やnoteでの投稿では、少し使い方が変わってきています。特にスマホで読まれることを意識する場合、あまりに細かいトーン(85線など)は画面上でモアレを起こしやすく、目がチカチカしてしまう原因になります。
あえてドットがはっきり見える「線数の低いトーン」を使ったり、トーンの代わりに「グレースケール(グレーの塗り)」で表現したりする作家さんも増えています。自分の作品が、紙の雑誌で読まれるのか、スマホの画面で読まれるのか。それによって、トーンの選び方を変えてみるのも、現代の漫画家としての賢い戦略と言えるでしょう。
漫画のトーンとは?効果的な種類別の使い分け方と貼り方のコツ:まとめ
いかがでしたか?「漫画のトーンとは」という基本から、具体的な使い分けやテクニックまでを見てきました。
トーンは、慣れるまでは少し手間に感じるかもしれません。アナログならカッターの扱いに神経を使いますし、デジタルなら設定の多さに目が回ることもあるでしょう。ですが、トーン一枚でキャラクターに命が吹き込まれ、画面がドラマチックに変わる瞬間は、何物にも代えがたい喜びです。
まずは、アイシー スクリーンなどの初心者用セットを手にとってみたり、デジタルソフトの無料素材を試してみたりすることから始めてみてください。失敗しても大丈夫。削ったり、剥がしたり、設定を変えたりしながら、自分なりの「最高の1枚」を見つけていきましょう。
あなたの漫画が、トーンの力でより魅力的な作品になることを心から応援しています!

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