90年代の週刊少年サンデーを代表する名作『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』。今なお多くのファンに愛され、競馬漫画の金字塔として語り継がれていますが、ネット上では時折「打ち切りだったの?」という声が聞かれることがあります。
結論からお伝えしましょう。本作は**打ち切りではなく、物語としてこれ以上ないほど完璧な形での「円満完結」**です。
なぜ、これほどの名作に打ち切り説が浮上したのか。そして、読者を熱狂させた完結の裏側にはどのような理由があったのか。今回は、主人公・久世駿平と渡会牧場の人々が駆け抜けた6年間の軌跡と、伝説的な最終回の魅力を徹底的に掘り下げていきます。
なぜ「打ち切り」という誤解が生まれたのか
全26巻というボリュームで幕を閉じた本作。当時の少年誌において、6年にわたる連載は立派な長期連載です。それにもかかわらず、一部で打ち切りが囁かれたのにはいくつかの理由が考えられます。
まず一つ目は、連載終了時のサンデー編集部の状況です。当時は看板作品の入れ替え時期でもあり、人気作が次々と終わりを迎える中で「もっと長く続いてほしかった」というファンの惜しむ声が、いつしか「志半ばで終わったのでは?」という憶測に変わっていった側面があります。
二つ目は、物語終盤の展開が非常にスピーディーだったことです。特に最終回直前、物語の時間は一気に15年後へと飛びます。このダイナミックな時間跳躍(タイムスリップ)に驚いた読者が、「急いで物語を畳んだのではないか」と感じてしまったのかもしれません。
しかし、実際に読み返してみれば、それは大きな誤解であることがわかります。ゆうきまさみ先生は、一頭の競走馬が誕生し、成長し、そしてその血が次の世代へと繋がっていくという「血統のドラマ」を描き切るために、あえてあのスピード感を選んだのです。
物語が「26巻」で完結した本当の理由
本作が完結した最大の理由は、「一頭の馬のサイクルと、一人の少年の自立」を完璧に描き切ったからに他なりません。
『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』が他の多くの競馬漫画と一線を画していたのは、ギャンブルとしての競馬ではなく、「生産(馬産)」にスポットを当てた点にあります。
主人公の駿平が北海道の渡会牧場に転がり込み、馬を育て、その結晶であるストライクイーグルがダービーという大舞台に挑む。馬産に携わる者にとっての究極のゴールはダービーであり、そこに至るまでの苦悩や喜び、そして牧場の経営難を乗り越えるプロセスが描かれた時点で、物語の主題は達成されていたのです。
また、ゆうきまさみ先生は、連載開始当初から「物語のピーク」を明確に見据えていたと言われています。人気があるからといって、ダラダラと引き延ばすのではなく、最も美しい形で幕を下ろす。これこそが、本作が今なお「名作」として語り継がれる最大の理由です。
最終回に隠された「NEVER END」の意味と感動
最終巻である26巻を読んだファンの多くが、今でも語り草にするのがそのエピローグです。
物語のラスト、舞台は一気に15年後の未来へと移ります。そこには、すっかり大人になり、渡会牧場を支える立場となった駿平とひびきの姿がありました。そして、彼らの間には新しい命、息子が誕生しています。
この最終回の構成が秀逸なのは、かつて都会からふらりと現れた駿平が渡会牧場の門を叩いたあの日のように、今度は新しい世代が馬との運命的な出会いを果たす姿を描いた点です。
単行本の最後のページ、欄外に記された「NEVER END」という言葉。これは単なるお決まりのフレーズではありません。血統が親から子へと受け継がれていくように、人と馬の物語もまた、決して終わることなく続いていくという作者の強いメッセージが込められています。この余韻こそが、打ち切り説を完全に払拭する「完璧なエンディング」の証なのです。
ゆうきまさみ流「リアリティ」が競馬ファンを唸らせた
本作が長期連載となり、円満完結を迎えられたのは、圧倒的なリアリティに裏打ちされた支持があったからです。
ゆうきまさみ先生は、本作の執筆にあたって架空の血統表を自ら詳細に作り込んでいました。劇中に登場する競走馬たちが、どのような先祖を持ち、どのような特性を引き継いでいるのか。その設定の細かさは、プロの競馬関係者が読んでも唸るほどでした。
また、牧場経営の厳しさ、不治の病との戦い、種付けの難しさなど、華やかなレースの裏側にある「泥臭い日常」を逃げずに描いたことも、読者の深い共感を呼びました。
ゆうきまさみ 漫画(※ゆうき先生の他作品と読み比べることで、その構成力の凄さがより理解できるはずです)
こうした緻密な積み重ねがあったからこそ、最終回で描かれた「世代交代」というテーマが、単なる演出を超えた深い感動を呼び起こしたのです。
今こそ読み返したい、血統と絆の物語
近年の『ウマ娘 プリティーダービー』などのブームにより、若い世代の間でも競馬への関心が高まっています。そうした新しいファンにこそ、ぜひ手に取ってほしいのがこの作品です。
派手な魔球や超人的な能力が登場するスポーツ漫画とは違い、本作にあるのは「命を育てることの尊さ」と「当たり前の日常が積み重なって生まれる奇跡」です。
駿平が未経験の状態から馬の世界に飛び込み、失敗を繰り返しながらも一人前のホースマンになっていく姿。そして、気が強くてじゃじゃ馬のようだったヒロイン・ひびきとの不器用な恋の行方。これらが複雑に絡み合い、26巻という長い時間をかけて熟成されていく過程は、一気読みするのに最適なエンターテインメントと言えるでしょう。
まとめ:じゃじゃ馬グルーミン★UP!は打ち切り?完結の理由と最終回の感動を徹底解説!
改めて結論をまとめると、『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』は決して打ち切りではありません。
- 馬産というテーマを追求し、血統の繋がりを描き切ったための円満終了。
- 最終回の15年後のエピローグは、物語を完結させるための必然の演出。
- 作者・ゆうきまさみ先生の計算し尽くされた構成による、理想的な幕引き。
打ち切りどころか、日本の漫画史における「最も美しい終わり方をした作品」の一つと言っても過言ではありません。もし、あなたがまだ物語の結末を知らないのであれば、ぜひその目で駿平たちの辿り着いた未来を確かめてみてください。
そこには、時代を超えて輝き続ける「命の物語」が待っています。
じゃじゃ馬グルーミン★UP! 文庫版物語が終わっても、彼らの牧場では今日も新しい仔馬が産声を上げ、新しい風が吹き抜けている。そんな想像をさせてくれるこの作品は、まさに「NEVER END」な名作なのです。

コメント