「週刊少年ジャンプ」の歴史の中で、圧倒的な画力と和風ファンタジーの魅力を放っていた名作といえば『ぬらりひょんの孫』ですよね。主人公・奴良リクオが「昼は人間、夜は妖怪」という二つの顔を持ち、妖怪の総大将を目指す姿に胸を熱くしたファンは多いはずです。
しかし、連載終盤の展開や、最終回を迎える際の流れについて「え、これって打ち切りなの?」と疑問を抱いている方も少なくありません。人気絶頂だったはずのアニメ化作品に、一体何が起きたのか。今回は、読者が長年抱いてきた「打ち切り説」の真相や、掲載順位のリアルな推移、そして増刊号への移籍という特殊な完結の形について、徹底的に深掘りしていきます。
掲載順位の推移から見るジャンプ本誌での苦戦
ジャンプという雑誌は、言わずと知れた「アンケート至上主義」の戦場です。どれほど単行本が売れていようとも、雑誌内での読者アンケートの結果が振るわなければ、掲載順位はどんどん下がっていきます。『ぬらりひょんの孫』も、その厳しい波に飲まれてしまった側面があるのは否定できません。
連載初期から、京都編(羽衣狐編)まではまさに飛ぶ鳥を落とす勢いでした。掲載順位も安定して上位に食い込み、看板作品の一つとして数えられていた時期もあります。しかし、物語が核心に迫るにつれ、徐々に順位に陰りが見え始めました。
特に「御門院一族」が登場する最終章付近では、掲載順位が誌面の末尾、いわゆる「ドベ付近」に固定されてしまう時期が続きました。ジャンプにおいて巻末付近が定位置になることは、連載終了のカウントダウンを意味することが多く、これが「打ち切り」と噂される最大の要因となりました。緻密な設定と美麗な作画が魅力だった一方で、週刊連載というスピード感が求められる環境下で、読者の関心を引き続ける難しさがあったのかもしれません。
読者が感じた「物語の複雑化」とテンポの変化
なぜ、あんなに勢いのあった作品の順位が下がってしまったのか。その理由の一つとして、ストーリーの「重厚さ」が裏目に出てしまった点が挙げられます。
『ぬらりひょんの孫』の最大の魅力は、日本古来の妖怪伝承をベースにした深い設定にあります。しかし、物語の後半、安倍晴明を巡る因縁が複雑化していくにつれ、ライトな読者層がストーリーを追いきれなくなったという指摘があります。妖怪たちの家系図や過去の因縁、そして独自の戦闘概念である「畏(おそれ)」の駆け引きなど、じっくり読み込めば面白い要素が、週刊連載の数ページという枠内では「説明過多」に感じられてしまったのです。
また、リクオが学校の友人たちと過ごす日常パートが減り、シリアスなバトル展開が長期化したことも、一部の読者が離れる原因になったという声もあります。「昼のリクオ」と「夜のリクオ」のギャップを楽しんでいた層にとって、全編を通してシリアスな妖怪戦争が続く展開は、少し敷居が高くなってしまったのかもしれません。
アニメ化の成否とメディアミックスの影響
作品の勢いを測る指標として欠かせないのがアニメ化です。本作は2度にわたってTVアニメ化されました。第1期はリクオの覚醒を中心に描かれ、多くの新規ファンを獲得することに成功。続いて制作された第2期『千年魔京』は、原作でも屈指の人気を誇る京都編を扱い、その映像クオリティの高さはファンからも絶賛されました。
しかし、アニメ業界のビジネス的な側面で見ると、2期は必ずしも大成功とは言い切れない面がありました。映像の質は非常に高かったものの、DVDやBlu-rayの売り上げ、そして関連グッズの展開が1期ほどの爆発力を見せなかったのです。
メディアミックス作品の場合、アニメの好調さが原作のアンケート順位を押し上げることも多いのですが、2期の放送終了と同時期に原作の順位が低迷し始めたことは、編集部の判断に少なからず影響を与えたと考えられます。アニメ化というブーストが切れた後、自力で上位を維持しなければならないジャンプの厳しさが浮き彫りになった形です。
「打ち切り」ではなく「移籍」という名の救済
ここで重要な事実をお伝えします。『ぬらりひょんの孫』は、ジャンプ本誌での連載は確かに終了しましたが、物語そのものが無理やり終わらされたわけではありません。
2012年30号をもって本誌連載は幕を閉じましたが、その直後に増刊号である『少年ジャンプNEXT!』への移籍が発表されました。これは、本当に人気のない作品であればまずあり得ない、極めて異例の「救済措置」です。
なぜこのような形になったのか。それは、アンケート順位は低迷していたものの、単行本の売り上げという「実利」の部分では依然として高い数字を維持していたからです。固定ファンがしっかりと付いており、単行本を購入して支える読者が多かったため、編集部も「中途半端に終わらせるべきではない」と判断したのでしょう。
増刊号では「葵螺旋城 完結編」として、3回にわたり大ボリュームで物語の結末が描かれました。これにより、本誌の駆け足な展開では描ききれなかった伏線の回収や、キャラクターたちの後日談が丁寧に描写され、ファンも納得の「大団円」を迎えることができたのです。
作者・椎橋寛先生の圧倒的な画力とこだわり
本作を語る上で絶対に外せないのが、作者である椎橋寛先生の圧倒的な画力です。和紙に筆で描いたような繊細なタッチ、禍々しくも美しい妖怪たちのデザインは、当時のジャンプ作品の中でも群を抜いていました。
しかし、この「こだわり抜いた作画」が、週刊連載という超過酷なスケジュールにおいて、物語の進行速度を調整する壁になっていた可能性も考えられます。背景の一コマ、妖怪の毛並み一本に至るまで描き込まれた画面は芸術的ですが、それゆえに物語をサクサク進めるための「省略」が難しかったのかもしれません。
増刊号への移籍後は、一回あたりのページ数が増え、締め切りまでのスパンも長くなったことで、先生の画力がさらに爆発しました。最終盤のバトルシーンや、歴代総大将が並び立つシーンの迫力は、まさに「この作品を完結させるために用意された最高の舞台」と言えるものでした。
ぬらりひょんの孫が残した功績と今なお愛される理由
連載終了から時間が経った今でも、SNSやネット掲示板で本作が語り継がれているのは、単なる「打ち切り作品」ではない強烈な個性が宿っているからです。
妖怪という古風なテーマをスタイリッシュに描き直し、「畏(おそれ)」という概念でバトルを定義した発明。そして、リクオを取り巻く「奴良組」の絆。これらの要素は、後に続く妖怪漫画やファンタジー作品にも大きな影響を与えました。
完結後の単行本全25巻(および関連本)を読み返してみると、序盤から張られていた伏線が、増刊号の完結編で見事に回収されていることがわかります。本誌でのラスト数話だけを見れば「急ぎ足」に見えるかもしれませんが、作品全体を通してみれば、これほど美しく畳まれた大作は珍しいと言えるでしょう。
妖怪漫画を探している方は、ぜひこの機会に全巻揃えて一気読みすることをおすすめします。特に、リクオが三代目として真に覚醒する瞬間のカタルシスは、一見の価値があります。
ぬらりひょんの孫ぬらりひょんの孫は打ち切り?完結の理由や掲載順位の推移、移籍の真相を徹底解説!の終わりに
いかがでしたでしょうか。『ぬらりひょんの孫』の幕引きは、純粋な打ち切りというよりも、ジャンプという過酷な競争社会の中で、作品の「質」と「物語の着地」を最優先した結果の、戦略的移籍だったということがお分かりいただけたかと思います。
アンケート順位という数字だけでは測れない価値が、この作品には詰まっていました。本誌で最終回を読んだきり、増刊号の完結編をチェックしていなかったという方は、ぜひ最終巻を手に取ってみてください。そこには、リクオたちが歩んできた道のりの、正真正銘の答えが描かれています。
今なお色褪せない妖怪たちの百鬼夜行を、もう一度あなたの目で見届けてみませんか?
ぬらりひょんの孫 文庫版また、椎橋寛先生はその後もジャンプ誌面や他媒体で魅力的な作品を発表し続けています。先生の唯一無二の筆致は、形を変えて今も私たちの想像力を刺激してくれます。名作の裏側にあるドラマを知ることで、作品への愛着がより一層深まれば幸いです。

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