「電気自動車(EV)を買うならノルウェーを見ろ」と言われるほど、北欧の小国ノルウェーは世界のEVシフトを牽引してきました。しかし今、SNSやニュースで「ノルウェーがEV優遇を打ち切った」「EV政策は失敗だったのか?」という声が飛び交っています。
結論からお伝えすると、これは「失敗による打ち切り」ではなく、目標をほぼ完璧に達成したからこそ次のステージへ進むための「制度の正常化」です。とはいえ、2026年から始まる大増税の内容は、これまで「EV天国」を謳歌してきたユーザーにとっては衝撃的な内容を含んでいます。
今回は、ノルウェーのEV政策がなぜ転換期を迎えたのか、そして2026年以降に何が起きるのか、その真相を徹底的に深掘りしていきます。
新車販売の95%がEV!ノルウェーが「打ち切り」を選んだ驚きの理由
ノルウェー政府が長年掲げてきた「2025年までに新車販売の100%をゼロエミッション車にする」という目標。2025年の統計を見ると、なんと新車販売に占めるEV比率は95%を超え、12月単月ではほぼ100%に近い数字を叩き出しました。
これほどまでに普及した最大の理由は、ガソリン車に対して課される莫大な税金をEVでは「ゼロ」にしていたからです。しかし、街を走る車のほとんどがEVになった今、政府はある大きな問題に直面しました。それが「税収の激減」です。
自動車に関連する税金は、道路の整備や公共交通機関の維持に使われます。みんながEVに乗り換えて税金を払わなくなると、国を維持するための予算が足りなくなってしまうのです。つまり、政策の打ち切りや縮小は、EVが普及しすぎたがゆえの「嬉しい悲鳴」から生まれた苦肉の策といえます。
2026年から始まる「大増税」の具体的な中身とは?
では、具体的に2026年からどのような変更が行われるのでしょうか。これまで「免税」が当たり前だったノルウェーのEV市場に、冷たい風が吹き込みます。
もっとも大きな変更は、付加価値税(VAT)の免税枠の縮小です。これまでは車両価格が50万クローネ(約700万円)までのEVは非課税でしたが、2026年からはこの免税ラインが30万クローネ(約420万円)まで一気に引き下げられます。
これにより、人気のテスラ モデルYやフォルクスワーゲン ID.4といった中価格帯の主要モデルも、その多くが課税対象となります。さらに、2027年にはこの免税措置自体が完全に廃止され、全てのEVに25%の標準税率が適用される見通しです。
さらに見逃せないのが「重量税」の導入です。EVはバッテリーを積んでいるため、どうしてもガソリン車より重くなります。ノルウェー政府は「車が重ければ重いほど道路を傷める」という理屈から、500kgを超える部分に対して1kg単位で課税する仕組みを取り入れました。これによって、大型のEV SUVなどは維持費が大きく跳ね上がることになります。
補助金がなくなっても「EV優位」が揺るがない仕組み
「補助金や免税がなくなれば、みんなガソリン車に戻るのでは?」という疑問が湧くのも当然です。しかし、ノルウェー政府はそこもしっかりと計算しています。
EVへの課税を増やす一方で、ガソリン車やディーゼル車に対しては、それを上回る「超・増税」を継続しています。登録税や燃料税をさらに引き上げることで、相対的なコストパフォーマンスでは依然としてEVが圧倒的に有利な状況を作り出しているのです。
また、すでに国内の充電インフラが完備されていることも大きな強みです。ガソリンスタンドを探すよりも充電スポットを見つける方が簡単な今のノルウェーでは、わざわざ高い燃料費と税金を払って不便なエンジン車に戻るインセンティブがほとんどありません。
中国製EVの台頭と市場の勢力図の変化
政策の変更によって、市場の主役も変わりつつあります。これまでは高価な北欧ブランドやアメリカのテスラが人気でしたが、免税枠が縮小される2026年以降は、より「安価なEV」への需要が集中すると予想されています。
ここで存在感を増しているのが、BYDなどの中国メーカーです。コストパフォーマンスに優れた中国製EVは、税負担が増える中で「手頃な選択肢」として急速にシェアを伸ばしています。
一方で、高級路線を歩んできた欧州メーカーは苦境に立たされるかもしれません。車両価格が高いほど、25%の付加価値税が重くのしかかるからです。2026年は、ブランド力よりも「実利」で車が選ばれる、ノルウェー市場にとっての大きな転換点になるでしょう。
日本のEVシフトへの教訓:普及の先にある「走行税」の議論
ノルウェーの事例は、近い将来の日本にとっても他人事ではありません。現在、日本ではEV購入時に補助金が出たり、エコカー減税が適用されたりしていますが、これらはあくまで「普及させるため」の時限的な措置です。
ノルウェーが証明したのは、「普及が完了すれば、EVは特権階級の乗り物ではなく、一般の課税対象になる」という現実です。日本でも将来的にEV比率が高まれば、走行距離に応じた課税や、重量に応じた課税の議論が必ず本格化します。
「今は得だからEVに乗る」という段階から、「社会のインフラとしてEVをどう維持していくか」というフェーズへ。ノルウェーが踏み出した一歩は、EV社会の「最終形」に向けた壮大な実験とも言えるのです。
ノルウェーのEV政策が打ち切り?2026年からの大増税と補助金廃止の真相を解説:まとめ
最後に改めて整理すると、ノルウェーの政策変更は「EVの失敗」を意味するものではありません。むしろ、EVが社会に完全に溶け込み、ガソリン車を過去のものにしたからこそ、特例措置を終わらせる決断が下されたのです。
2026年からの増税は確かにユーザーにとっては痛手ですが、それでもなお、ガソリン車を所有し続けるコストの方が高いという構造は維持されます。世界に先駆けて「補助金なしでのEV自立」を目指すノルウェーの動向は、今後の世界の自動車産業に大きな示唆を与え続けるでしょう。
これからEVの購入を検討している方は、目先の補助金だけでなく、将来的な税制の変化や維持コストの推移にも目を向けてみる必要がありそうです。ノルウェーの背中を追う世界の国々が、どのような着地点を見つけるのか。2026年の市場データが出る頃、私たちは本当の意味での「EV時代の正解」を知ることになるかもしれません。

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