昭和から平成へと時代が移り変わる激動のさなか、お茶の間の子供たちを熱狂させたヒーローがいました。その名は『仮面ライダーBLACK RX』。前作『仮面ライダーBLACK』の直接的な続編として、今なお根強い人気を誇る作品です。
しかし、ファンの間では長年ある不穏な噂が囁かれ続けてきました。「RXは実は打ち切りだったのではないか?」という説です。全47話という、1年放送としては少し短いようにも感じる絶妙な話数や、放送終了後にテレビシリーズとしての仮面ライダーが長きにわたって途絶えたことが、その疑念に拍車をかけています。
果たして、南光太郎の戦いは本当に志半ばで断たれたのでしょうか。今回は、当時の視聴率や玩具売上、さらには制作の裏側までを徹底的に掘り下げ、RX終了の真実に迫ります。
仮面ライダーBLACK RXにまつわる「打ち切り説」はなぜ生まれたのか
ネットの掲示板やSNSで「RXは打ち切りだった」という書き込みを目にすることがあります。まずは、なぜそのようなイメージが定着してしまったのか、その主な要因を整理してみましょう。
もっとも大きな理由は、放送回数にあります。本作は全47話で幕を閉じました。当時の特撮ヒーロー番組は、1年間(約50〜52回)放送されるのが一般的だったため、47話での終了は「数回分短縮されたのではないか」という印象を与えてしまったのです。
また、作品のトーンが大きく変化したことも要因の一つでしょう。前作『BLACK』は、親友との悲劇的な別れや孤独な戦いといった重厚なストーリーが特徴でした。対して『RX』は、光太郎が明るい性格になり、コミカルな描写や派手なアクション、超常的な能力が目立つ作風へとシフトしました。この「路線変更」が、一部の熱狂的なBLACKファンには受け入れられず、不人気による終了だと誤解される火種となったのです。
さらに、RX終了後にテレビシリーズの新作が10年以上作られなかった(いわゆる「冬の時代」への突入)ことが、後付けの理由として「RXが失敗したからシリーズが止まった」というネガティブな文脈で語られるようになってしまいました。
視聴率と玩具売上から見る「人気」の真実
「打ち切り」という言葉から連想されるのは、やはり数字の低迷です。しかし、当時の客観的なデータを紐解くと、意外な事実が見えてきます。
まず視聴率についてですが、RXの平均視聴率は約9.3%、最高視聴率は12.1%を記録しています。前作『BLACK』の平均が約9.2%であったことを考えると、数字の上ではほぼ互角、むしろ安定した人気を保っていたことが分かります。当時の特撮番組として見れば、十分に合格点と言える数字です。
次に重要なのが、ビジネス面での成功、つまり玩具売上です。RXは玩具展開においても非常に革新的な試みを行っていました。その代表が、シリーズ初となる「フォームチェンジ」の導入です。
力強さを象徴する「ロボライダー」、液状化能力を持つ「バイオライダー」。光太郎が状況に応じて姿を変える設定は、子供たちの心を掴みました。バンダイから発売された武器玩具やフィギュアは好調な売れ行きを見せ、特に仮面ライダーBLACK RXの関連アイテムは、当時のメイン層に広く浸透していました。
また、ライダーが「車」に乗るという禁じ手を破った専用車「ライドロン」の玩具も大きな話題を呼び、商戦的には大きな成功を収めています。これらのデータを見る限り、経営的な判断で番組を急遽打ち切る理由はどこにも存在しません。
昭和から平成へ、時代の転換点という不運
RXが放送された1988年から1989年にかけては、日本社会そのものが大きな転換期を迎えていました。
1989年1月、昭和天皇の崩御により元号が「平成」へと変わりました。この時期、自粛ムードや特番による放送休止が相次ぎました。RXもその影響を受け、数週間の放送休止を余儀なくされています。全47話という中途半端に見える話数は、こうした「暦のズレ」や「放送枠の調整」による結果であり、物語が短縮されたわけではないのです。
さらに、この時期に発生した「宮崎勤事件」が特撮・アニメ界に影を落としました。メディアによるオタクバッシングや子供向け番組への厳しい目が注がれる中で、制作側は非常に慎重な舵取りを求められました。こうした社会情勢の変化が、番組の継続やシリーズの展開に少なからず影響を与えたのは事実でしょう。
しかし、それはRXという作品単体の問題ではなく、エンターテインメント業界全体が直面していた荒波だったのです。
メタルヒーローシリーズへのシフトと石ノ森章太郎氏の想い
RXが終了し、その後番組として始まったのは『特警ウインスペクター』でした。これは「メタルヒーローシリーズ」の流れを汲む作品です。
当時の東映やスポンサーであるバンダイは、仮面ライダーという既存の枠組みを超えた、新しいヒーロー像を模索していました。RXで「フォームチェンジ」や「車」といった新要素を出し尽くした感もあり、制作陣の中には「一度ライダーというブランドを休ませて、新しい風を吹かせよう」という前向きな意図がありました。
原作者である石ノ森章太郎氏も、RXの完成度には満足しており、「BLACKとRXで、仮面ライダーとしてやりたいことはやり切った」という趣旨の発言を残しています。つまり、力尽きて終わったのではなく、最高潮の状態でバトンを渡したというのが、スタッフたちの共通認識だったのです。
RXの終盤、過去の10人ライダーが駆けつけ、クライシス帝国を打倒する展開は、まさに昭和ライダーシリーズの「大団円」にふさわしい豪華なフィナーレでした。これは打ち切り番組では決して実現できない、計画的な集大成の演出です。
チート級の強さと語り継がれるレジェンド
放送終了から数十年が経過した今、RXは「打ち切り」どころか、最強のライダーの一人として再評価されています。
特にバイオライダーの圧倒的な能力は、ファンの間で「チート(反則的な強さ)」と親しみを込めて呼ばれています。物理攻撃を無効化するゲル状の身体、瞬間移動に近いスピード。こうした設定は、後の平成ライダーにおける多彩な能力バトルの先駆けとなりました。
南光太郎を演じた倉田てつをさんの熱演も相まって、RXは世代を超えたアイコンとなりました。もし本当に不人気で打ち切られていたのであれば、近年の劇場版やゲームでこれほどまでに特別視されることはなかったはずです。
仮面ライダー 変身ベルトを手に取った当時の子供たちが大人になり、今度は自分の子供と一緒にRXを視聴する。そんなサイクルが生まれていることこそが、この作品が成功した何よりの証拠ではないでしょうか。
仮面ライダーBLACK RXは打ち切り?終了の真相と視聴率・売上から理由を徹底解説のまとめ
結論を申し上げれば、『仮面ライダーBLACK RX』は打ち切りではありません。
全47話という話数は、改元という歴史的なタイミングや放送スケジュールの都合によるものであり、視聴率も売上も安定したヒット作でした。物語は描かれるべき結末をしっかりと描き、昭和ライダーの歴史に華々しい幕を下ろしたのです。
むしろ、RXがそれまでのライダーの常識を打ち破る新しい試みを詰め込んだからこそ、後の『仮面ライダークウガ』から始まる平成ライダーシリーズへと繋がる「進化の種」が蒔かれたと言えるでしょう。
「打ち切り」という噂は、あまりにも強烈な個性を放ったRXが、時代の変わり目に残した小さなノイズに過ぎません。その輝きは、今もなお色褪せることなく、私たちの心の中に「太陽の子」として君臨し続けています。
あなたも久しぶりに、クライシス帝国に立ち向かう光太郎の勇姿を見返してみませんか?その圧倒的な強さと熱いメッセージは、今の時代にこそ必要なパワーを与えてくれるはずです。
次は、RXの劇中で活躍したバイクや車のスペックを詳しく紹介したり、歴代昭和ライダーとの共演エピソードを深掘りしたりすることも可能です。何か気になることがあれば、いつでもお声がけくださいね。

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