昭和ライダーシリーズの中でも、ひときわ異彩を放つ野性味溢れるヒーロー、仮面ライダーアマゾン。鮮やかなマダラ模様のボディに、鋭い爪と牙。変身ベルトではなく腕輪の力で戦い、敵を「切断」するその戦闘スタイルは、当時の子供たちに強烈なインパクトを与えました。
しかし、ファンの間で長年語り継がれているのが「なぜアマゾンだけ、あんなに早く終わってしまったのか?」という疑問です。全24話という放送期間は、歴代の仮面ライダーシリーズの中でも異例の短さ。「人気がなかったから打ち切りになったのでは?」「グロすぎて放送禁止になったのでは?」そんな噂も絶えません。
今回は、仮面ライダーアマゾンが短期間で幕を閉じた真の理由と、当時のテレビ業界を揺るがした「腸捻転(ちょうねんてん)」の歴史的背景について、徹底的に深掘りしていきます。
異色作『仮面ライダーアマゾン』が目指した原点回帰
まず最初にハッキリさせておきたいのは、仮面ライダーアマゾンが決して「不人気番組」ではなかったということです。
アマゾンが始まった1974年当時、仮面ライダーシリーズはすでに4年目に突入していました。前作の『仮面ライダーX』でメカニカルな要素を取り入れた反動から、制作陣は「もう一度、第1作のような不気味で野生的なライダーに戻そう」と考えました。
そうして生まれたのが、南米アマゾンのジャングルで育った野生児、アマゾン(山本アマゾン)です。彼は言葉が話せず、文明社会に戸惑いながらも、身を守るために獣のように戦います。この「言葉の壁」や「異端児ゆえの孤独」というテーマは非常に深く、当時の少年たちの心を掴みました。
視聴率も決して悪くはなく、常に15%〜20%という高い数字を維持していました。では、なぜそんな人気作が、わずか半年、全24話で終了してしまったのでしょうか。
打ち切りの真相は「内容」ではなく「放送局のねじれ」にあった
結論から言うと、アマゾンが24話で終了したのは、作品のクオリティや人気のせいではなく、日本の放送業界における大規模な再編が原因でした。これが、有名な「腸捻転(ちょうねんてん)の解消」と呼ばれる出来事です。
当時、テレビ業界には複雑な「ねじれ」が存在していました。
本来であれば、東京のキー局と大阪の準キー局は、資本関係や系列に沿ってグループを組むのが自然です。しかし、当時は以下のような組み合わせになっていました。
- 東京のTBS = 大阪の朝日放送(ABC)
- 東京のNET(現:テレビ朝日) = 大阪の毎日放送(MBS)
この状態が、まるでお腹の腸がねじれているようだったことから「腸捻転」と呼ばれていたのです。仮面ライダーシリーズは、大阪の毎日放送(MBS)が制作し、東京のNET(現在のテレビ朝日)系列で全国放送されていました。
しかし、1975年3月31日をもって、このねじれを解消することになりました。その結果、毎日放送(MBS)はTBS系列に、朝日放送(ABC)はテレビ朝日系列に、それぞれ所属を入れ替えることになったのです。
「ネットチェンジ」がアマゾンの運命を決定づけた
この「ネットチェンジ」により、仮面ライダーという看板番組をどこで放送するかが問題となりました。
毎日放送(MBS)は、TBS系列への移行に合わせて、新しく始まるシリーズ(後の『仮面ライダーストロンガー』)を、TBSの「土曜夜7時」というゴールデンタイムの目玉としてスタートさせることを決定しました。
その新番組を1975年4月の改編期にピッタリ合わせるためには、現在放送中だった『仮面ライダーアマゾン』を3月末で終わらせる必要があったのです。
もし、このネットチェンジが半年ずれていれば、アマゾンも他のライダー同様、1年間のフルシーズン放送が続いていたはずです。つまり、アマゾンは「不人気で打ち切られた」のではなく、「新体制の門出を祝うための調整弁として、物語を畳まざるを得なかった」というのが歴史的な真実です。
「残酷描写による放送禁止説」は本当か?
もう一つ、ネット上でよく囁かれるのが「描写が過激すぎてPTAから苦情が殺到し、打ち切られた」という説です。
確かに、アマゾンの戦闘シーンは凄まじいものでした。パンチやキックではなく、必殺技の「大切断」で敵の腕を跳ね飛ばし、鮮血が舞う。敵組織「ゲドン」の首領である十面鬼ゴルゴスのビジュアルも、人間の生首が台座に埋め込まれているという、今では考えられないほど不気味なものでした。
実際に親世代からの抗議があったのは事実ですが、それが番組を終わらせる直接の引き金になったという記録はありません。むしろ、この「残酷さ」は、野生の厳しさとアマゾンの純真さを対比させるための演出として意図されたものでした。
短期間で終わったという事実に、こうした「トラウマ級の映像体験」の記憶が結びつき、ファンの間で「あんなにグロかったから、怒られて終わったに違いない」という都市伝説が定着してしまったのでしょう。
短縮が生んだ「凝縮された傑作」としての価値
皮肉なことに、この「24話での終了」という制約が、アマゾンを歴代屈指の密度の濃い作品に仕上げることになりました。
- 無駄のないストーリー展開:通常のライダーシリーズであれば、中盤にいわゆる「中だるみ」が生じることがありますが、アマゾンにはその余裕がありませんでした。ギギの腕輪を狙うゲドン、そして後半から現れるガランダー帝国との戦いは、常にクライマックスのような熱量で進みます。
- アマゾンの劇的な成長:言葉を知らない野生児が、岡崎律子やマサヒコといった人間との交流を通じて、少しずつ言葉を覚え、友情を知っていく過程が、短い期間の中にギュッと詰め込まれています。
- 感動の最終回:最終回で、宿敵ガランダー帝国を壊滅させたアマゾンは、戦いを終えて故郷のジャングルへと帰っていきます。シリーズの中でも、これほど爽やかで切ないラストシーンは珍しく、多くのファンの涙を誘いました。
もし50話近く続いていたら、アマゾンがずっと日本で戦い続ける設定になり、この「故郷へ帰る」という美しいエンディングは生まれなかったかもしれません。
今なお愛されるアマゾンの魅力とリメイク
アマゾンの人気は、放送終了後も衰えるどころか、時間が経つほどに高まっていきました。2016年には、Amazonプライム・ビデオのオリジナル作品として『仮面ライダーアマゾンズ』が制作されました。
仮面ライダーアマゾンズこのリメイク版は、オリジナル版が持っていた「生きるための闘争」「異形ゆえの悲哀」といったテーマを現代的に再解釈し、大人向けのハードなドラマとして大ヒットを記録しました。これも、元祖アマゾンがいかに独創的で、強烈な個性を放っていたかの証明と言えるでしょう。
また、当時の玩具展開においても、アマゾンの変身ベルト「コンドラー」や、独特なバイク「ジャングラー」は、今でもコレクターの間で高値で取引されています。
仮面ライダーアマゾン 変身ベルト仮面ライダーアマゾンは打ち切り?全24話で終了した理由と「腸捻転」の真相を解説:まとめ
改めて振り返ってみると、『仮面ライダーアマゾン』を巡る打ち切り騒動の真相は、作品そのものの評価ではなく、**「放送業界の構造改革に巻き込まれた不運」**にありました。
しかし、その不運こそが、アマゾンというキャラクターを「伝説の異色作」へと昇華させた要因でもあります。24話という短い命を、全力で燃やし尽くした野生の勇者。その姿は、放送から半世紀近く経った今でも、色褪せることなく私たちの心に刻まれています。
もしあなたが、まだアマゾンの物語を最後まで観たことがないのであれば、ぜひその濃密な24話を体験してみてください。そこには、大人の事情に翻弄されながらも、最後まで自分を貫き通したヒーローの、魂の輝きがあるはずです。

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