「町田くんの世界」という漫画を読み終わったあと、あるいはこれから読もうと思っている方の中で、ふとこんな疑問を抱いたことはありませんか?
「え、全7巻?もしかして打ち切りだったの?」
あんなに温かくて、多くの賞を受賞している名作が、たった7巻で幕を閉じてしまうなんて信じられない……。そう感じるのも無理はありません。特に最近のヒット作は何十巻と続くのが当たり前ですから、10巻未満での完結は「何か大人の事情があったのでは?」と勘ぐってしまいますよね。
今回は、そんな『町田くんの世界』にまつわる「打ち切り説」の真相から、なぜこの物語が7巻で終わる必要があったのか、そして読者が涙した最終回の真実まで、どこよりも深く掘り下げていきます。
そもそも『町田くんの世界』ってどんな物語?
本題に入る前に、軽くこの作品の凄さを振り返っておきましょう。
主人公の町田一(まちだ はじめ)くんは、メガネをかけた地味な高校生。勉強も運動も苦手、おまけに不器用。普通なら「モブキャラ」で終わってしまうような設定ですが、彼にはたったひとつ、誰にも負けない才能がありました。
それは、「すべての人を無条件に愛している」ということ。
困っている人がいれば迷わず手を差し伸べ、悪意を向けられても真っ直ぐな言葉で返してしまう。そんな彼の「善意」が、周囲のひねくれた大人や孤独な同級生たちの心を少しずつ溶かしていく――。
作者の安藤ゆき先生が描くこの物語は、「第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞」を受賞するなど、玄人からも読者からも絶大な支持を得ていました。
打ち切りと言われる理由は「3つのギャップ」にある
では、なぜこれほど評価の高い作品に「打ち切り」という不名誉な噂が流れてしまったのでしょうか。そこには、読者が感じた「3つのギャップ」が関係しています。
1. 巻数の少なさと「ロス」の大きさ
一番の理由は、やはり全7巻(全28話)という潔すぎるボリュームです。
読者は町田くんの日常をもっと見ていたかった。彼が大学生になり、社会人になり、お父さんになるまで見守りたかったというファンが続出しました。その「もっと続いてほしかった」という未練が、「早く終わってしまった=打ち切り」というイメージに変換されてしまったのです。
2. ラストスパートの密度
物語の終盤、町田くんがヒロインの猪原さんに対して抱く「感情の正体」に気づくプロセスは、それまでのエピソードに比べると非常にドラマチックで、展開が早く感じられます。日常系漫画から恋愛・成長物語としての着地へ一気に加速したため、そのスピード感に「急いで畳んだのでは?」という印象を持った人がいたのかもしれません。
3. 映画版のラストが衝撃的すぎた
2019年に公開された実写映画版『町田くんの世界』を覚えていますか?
監督の石井裕也氏による大胆な解釈が加えられた映画版は、ラストシーンで町田くんが文字通り「空を飛ぶ」という、原作にはないファンタジックな演出がなされました。この映画のインパクトがあまりに強すぎたため、「原作も何か普通じゃない終わり方をしたのでは?」「打ち切り並みのトンデモ展開だったのか?」という誤解がネット上で独り歩きしてしまった背景もあります。
事実:打ち切りではなく「完璧な幕引き」だった
ここでハッキリ断言しますが、『町田くんの世界』は打ち切りではありません。
むしろ、これ以上ないほど計算された「最高の完結」を迎えています。連載誌の『別冊マーガレット』においても、本作は常に特別なポジションにありました。人気がなくて終わらされたのではなく、作者が「描き切った」から終わったのです。
この作品のゴールは、「無差別に人類を愛していた町田くんが、一人の女性を特別に想う『恋』を知る」ことでした。
家族、兄弟、友達、そして見知らぬ通行人。すべての人に100%の愛を注いでいた町田くんが、自分の心の中に生まれた「猪原さんだけは違う」という感情に戸惑い、苦しみ、そして受け入れる。
そのプロセスが完結した時点で、物語としての使命は果たされたのです。もしこれ以上連載を続けていたら、それは「町田くんの世界」ではなく、普通の「恋愛漫画」になっていたでしょう。
最終回を読んだファンのリアルな声
実際に最終回を読み終えた読者たちの間では、打ち切りを疑う声よりも、むしろ「美しすぎて浄化された」という声が圧倒的でした。
- 「こんなに綺麗に終わる漫画を他に知らない」
- 「7巻という短さが、一冊の詩集を読んでいるような贅沢さを生んでいる」
- 「読み終わった後、外に出て誰かに優しくしたくなった」
このように、作品の質に対する満足度は極めて高く、今でも「人生のバイブル」として挙げる人が絶えないのがこの作品の特徴です。
町田くんが教えてくれた「本当の優しさ」
この漫画を語る上で外せないのが、町田くんが放つ「言葉」の力です。
彼は決して説教をしません。ただ、相手が一番欲しかった言葉を、なんの計算もなく口にします。例えば、自分が嫌われていると分かっていても、「君は僕のことが嫌いかもしれないけど、僕は君のことが好きだよ」と平然と言えてしまう。
現代社会では、何かをするときに「見返り」を求めてしまいがちですよね。あるいは、誰かに優しくすることを「偽善」だと言われるのを恐れて、一歩引いてしまうこともあります。
町田くんは、そんな私たちの心の壁をヒョイと飛び越えてきます。
彼が町田くんの世界の中で見せてくれる世界は、決して甘いお花畑ではありません。意地悪な人もいれば、理不尽な現実もあります。それでも、自分の持ち場でできる限りの優しさを振りまくことが、どれほど世界を明るく照らすか。それをたった7巻で教えてくれたのです。
漫画をさらに楽しむためのポイント
もしあなたがこれからこの作品を読むなら、あるいは読み返そうと思っているなら、以下のポイントに注目してみてください。
- 町田くんの「表情」の変化最初は仏像のように穏やかだった町田くんが、物語が進むにつれて「困った顔」や「照れた顔」を見せるようになります。その変化が、彼が人間として深まっていく証です。
- 脇役たちの成長町田くんの影響を受けて、毒気が抜けていく周囲のキャラクターたち。特に、氷のように冷たかった猪原さんが、町田くんの隣でどんどん可愛らしく、素直になっていく姿は必見です。
- 安藤ゆき先生の繊細な筆致派手な演出はありませんが、光の差し込み方や、ふとした瞬間の仕草の描き方が本当に丁寧です。電子書籍も良いですが、あえて紙のコミックスで、その空気感を味わうのもおすすめですよ。
結論:町田くんの世界は打ち切り?漫画完結の理由と真相
改めて結論を言います。
『町田くんの世界』は打ち切りではありません。全7巻という長さは、町田くんという少年が「特別」を見つけるまでの軌跡を、最も純度高く描き切るための、作者による英断でした。
世の中には、長く続くことで価値が出る作品もあれば、パッと咲いて美しく散ることで、読者の心に永遠に残り続ける作品もあります。本作は間違いなく後者です。
「打ち切り」というキーワードで検索してこの記事にたどり着いたあなたは、きっとこの作品に並々ならぬ関心を持っているはず。そんなあなたにこそ、先入観を捨ててこの7巻を手に取ってほしいと思います。
読み終わったとき、あなたはきっと自分の周りの景色が、少しだけ優しく変わっていることに気づくはずです。
もし、今すぐにでも町田くんの優しさに触れたいなら、町田くんの世界をチェックしてみてください。全巻揃えても棚の場所をとりませんし、何より一生の宝物になる一冊です。
町田くんが愛した世界を、ぜひあなたも覗いてみてくださいね。

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