「知的障害は生まれつきのもので、状態が変わることはないはず。なのに、どうして障害年金が打ち切りになることがあるの?」
今、このページを開いてくださったあなたは、そんな大きな不安や疑問を抱えているのではないでしょうか。ご本人やご家族にとって、障害年金は生活を支える大切な命綱です。それが突然「支給停止(打ち切り)」になるかもしれないという噂を聞いたり、更新の通知が届いたりすると、夜も眠れないほど心配になるのは当然のことです。
実は、知的障害の場合でも、更新時に「支給停止」となってしまうケースは現実に存在します。しかし、なぜそのようなことが起こるのか、どうすれば防げるのかという「正解」を知っていれば、過度に恐れる必要はありません。
今回は、知的障害の障害年金が打ち切りになる理由と、更新で落ちないための具体的な対策を、どこよりも分かりやすく丁寧に解説していきます。
なぜ「治らない」はずの知的障害で打ち切りが起こるのか
知的障害は医学的に「完治する」という概念がありません。それなのに、なぜ数年ごとの「更新(障害状態確認届の提出)」があり、場合によっては支給が止まってしまうのでしょうか。
その最大の理由は、障害年金の審査基準が「IQ(知能指数)の数値だけ」で決まるわけではないからです。
障害年金の審査で最も重視されるのは、「その障害によって、どれだけ日常生活や労働に支障が出ているか」という点です。たとえIQが変わっていなくても、書類上で「以前より生活能力が上がった」と判断されてしまうと、等級が下がったり、支給停止(打ち切り)になったりすることがあります。
例えば、身の回りのことができるようになった、一人で外出できる範囲が広がった、といった小さな成長が、審査の場では「障害が軽くなった」と解釈されてしまう矛盾が起こり得るのです。
更新で「支給停止」になりやすい人の共通点
更新で落ちてしまうケースには、いくつか決まったパターンがあります。これらを知っておくだけでも、事前に対策を練ることができます。
まず多いのが、診断書の内容が実態よりも「軽く」書かれてしまうパターンです。
知的障害の方は、診察の場で「最近はどうですか?」と聞かれると、ついつい「元気です」「大丈夫です」と答えてしまいがちです。医師もその言葉通りに受け取って、診断書のチェック項目を「できる」にしてしまうことがあります。しかし、実際には家族の強いサポートがあって初めて成り立っている生活であれば、それは「できる」とは言えません。
次に、就労状況の変化です。
「働けるようになった=障害がなくなった」と自動的に判断されるわけではありませんが、一般企業でフルタイム勤務をしていたり、十分な収入を得ていたりすると、審査に大きな影響を与えます。特に「どのような配慮を受けているか」が書類から読み取れない場合、労働能力があると見なされ、打ち切りのリスクが高まります。
また、主治医が変わった際も注意が必要です。
あなたの幼少期からの苦労を知っている先生から、最近の数分間の診察しか知らない先生に代わった場合、日常生活の細かな不自由さが診断書に反映されにくくなります。
診断書を依頼する前に必ず準備すべきこと
更新の通知が届いたら、すぐに病院へ行くのではなく、まずは「生活の棚卸し」をすることをおすすめします。
医師は診察室での短い時間しか見ていません。家でどれだけパニックになっているか、金銭管理ができずに困っているか、身だしなみを整えるのにどれだけ時間がかかるかといった「日常の裏側」をすべて把握しているわけではないのです。
そこで、以下の項目についてメモを作成してみましょう。
- 食事:献立を考え、調理し、後片付けまで一人で完結できるか?
- 清潔保持:入浴や着替えを自発的に行えるか? 声掛けが必要か?
- 金銭管理:計画的に使い、公共料金の支払いを忘れないか?
- 対人関係:トラブルなく他者と意思疎通ができるか?
- 安全管理:事故や犯罪に巻き込まれないよう注意できるか?
これらを「一人でできる」「手助けがあればできる」「できない」の3段階で整理し、具体的なエピソードを添えて医師に渡してください。これがあるだけで、診断書の正確性は格段に上がります。
仕事をしている場合に絶対伝えるべき「配慮」の内容
「働いているから打ち切られるのが怖い」という相談は非常に多いです。確かに就労は審査に影響しますが、大切なのは「どう働いているか」です。
もしあなたが障害者雇用やA型事業所、あるいは一般雇用でも周囲の特別なサポートを受けて働いているなら、その実態を診断書に書いてもらう必要があります。
- 仕事の内容を極端に限定してもらっている
- 休憩をこまめに取らせてもらっている
- ジョブコーチや支援員が定期的に介入している
- ミスをしても誰かが必ずフォローしてくれる体制がある
こうした「特別な配慮」があるからこそ継続できている仕事であれば、それは「労働能力が完全に回復した」とは見なされません。逆に、これらの記載がないまま「月給〇〇万円」という数字だけが一人歩きすると、支給停止の引き金になりかねません。
支給停止の通知が届いてしまった時の対処法
もし、万が一「支給停止」の通知が届いてしまったとしても、まだ諦める必要はありません。国の下した決定に対して納得がいかない場合、戦う手段は残されています。
一つは「審査請求(不服申し立て)」です。
通知を受け取ってから3ヶ月以内であれば、「この決定はおかしい」と申し立てることができます。ただし、単に「困る」と言うだけでは不十分で、なぜ前の等級が維持されるべきなのかを論理的に説明する必要があります。
もう一つは「支給停止事由消滅届(または額改定請求)」です。
これは、一度止まってしまった、あるいは等級が下がってしまった後に、改めて「やはり状態が重いので、もう一度審査してほしい」と届け出る手続きです。
これらの手続きは非常に複雑で専門的な知識が必要になるため、一人で抱え込まずに社会保険労務士などの専門家に相談することを検討してください。
家族が知っておきたい、本人の自立と年金の関係
親御さんとしては、「子供が自立してほしい」という願いと「年金がなくなると困る」という不安の間で揺れることもあるでしょう。
ここで重要なのは、障害年金は「自立を妨げるもの」ではないということです。むしろ、経済的な基盤があるからこそ、失敗を恐れずに新しいチャレンジができる、という側面もあります。
「少しできるようになったから、年金の更新では少なめに申告しよう」と遠慮する必要はありません。ありのままの、最も困難な時の状況を伝えることが、長期的な意味での自立を支えることにつながります。
また、日常生活をサポートする便利なツールを活用することも大切です。例えば、スケジュール管理やリマインドをサポートするスマートデバイスなどを活用することで、本人の負担を減らせるかもしれません。
apple watchこうしたツールを使いこなしている場合でも、「ツールがあるからできている」のであって、本人の障害自体が軽快したわけではないことを忘れないでください。
知的障害の障害年金が打ち切りにならないための日頃の備え
最後に、次回の更新で慌てないためのポイントをまとめます。
一番の対策は、定期的な通院を欠かさないことです。知的障害の場合、「薬を飲んでいないから」「状態が変わらないから」と通院をやめてしまう方がいますが、これは非常に危険です。通院記録がないと、更新時に医師が「現在の状態」を証明できなくなってしまいます。
最低でも半年に一度、できれば数ヶ月に一度は主治医と面談し、困っていることを伝えておくことが、強力な防衛策になります。
知的障害の障害年金が打ち切り?更新落ちの理由と支給停止を防ぐ対策を徹底解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
正しく恐れ、正しく準備すれば、障害年金は継続して受け取ることができる制度です。もし不安なことがあれば、お住まいの市区町村の窓口や年金事務所、そして障害年金を専門とする社労士に早めに相談してみてくださいね。あなたの生活の安定を心から応援しています。

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