アニメ『ジョジョの奇妙な冒険』を語る上で、絶対に外せない要素があります。それは、物語の余韻を鮮烈に彩るエンディング(ED)テーマです。
ジョジョのEDは、一般的なアニメソングの枠組みを大きく飛び越えています。1970年代から2000年代にかけて世界を席巻した「洋楽の名曲」がそのまま採用されており、初めて視聴した人は「え、これアニメの曲なの?」と驚くことも珍しくありません。
なぜ、日本を代表するアニメ作品がこれほどまでに洋楽にこだわるのか。そこには原作者・荒木飛呂彦先生の並々ならぬ音楽愛と、制作陣の執念とも言える演出のこだわりが隠されています。
今回は、全シリーズを網羅したジョジョの歴代ED曲を振り返りながら、その選曲の背景や、ファンを熱狂させる演出の秘密を徹底的に深掘りしていきます。
なぜジョジョのEDは「洋楽」でなければならなかったのか
ジョジョのEDを語る上で、まず理解しておきたいのが「選曲の基準」です。これらは決して適当に選ばれたヒット曲ではありません。
最大の基準は「荒木飛呂彦先生がその部を執筆していた当時、実際に聴いていた音楽」であることです。荒木先生の漫画術において、音楽は切り離せない存在です。キャラクター名や特殊能力「スタンド」の名前の多くが洋楽のアーティストやアルバム名から引用されていることは、ファンの間ではもはや常識ですよね。
アニメ化にあたり、プロデューサー陣は「荒木先生の脳内に流れていた空気感をそのまま再現する」という極めて困難なミッションに挑みました。
例えば、第1部のED曲を決める際、制作側は当初オリジナル楽曲の制作も検討していたそうです。しかし、荒木先生にイメージを仰いだところ、伝説のプログレッシブ・ロックバンド、イエスの「Roundabout」という具体的な曲名が挙がりました。
この曲の複雑な構成と重厚な世界観をオリジナルで再現するのは不可能に近い。それならば、いっそ楽曲そのものの使用許諾を取りに行こう。この決断が、後の「ジョジョED=洋楽」という唯一無二のアイデンティティを確立することになったのです。
伝説の幕開け:第1部・第2部を象徴する「Roundabout」
ジョジョのアニメ史において、最も衝撃的だったEDといえば、やはり第1部・第2部で使用されたイエスの「Roundabout」でしょう。1971年に発表されたこの曲は、約8分にも及ぶ大作です。
この曲が選ばれた理由は、単に荒木先生のお気に入りだからというだけではありません。特筆すべきは、その「入り方」です。
ジョジョのEDは、本編が終わってから曲が始まるのではありません。物語がクライマックスを迎え、絶妙な引きで「To Be Continued」のロゴが出る数秒前から、アコースティックギターのアルペジオが静かに鳴り始めるのです。
この演出は、視聴者の高揚感を極限まで引き上げます。ある時は絶望的なシーンの裏で、ある時は勝利の予感とともに。曲のイントロが非常に長いため、どのシーンの終わりにも完璧にマッチする汎用性の高さがありました。
この演出を担当した音響チームのこだわりによって、視聴者は「音楽を聴く」というよりも「物語の一部として音楽を体験する」という感覚を味わうことになったのです。
旅の空気感を封じ込めた第3部の名曲たち
舞台が日本からエジプトへと移る第3部「スターダストクルセイダース」では、旅の進行に合わせて2つの全く異なる楽曲が採用されました。
前半戦で使われたのは、バングルスの「Walk Like an Egyptian」です。1980年代に大ヒットしたこの曲は、その名の通りエジプトをモチーフにしたキャッチーなメロディが特徴。承太郎たちが世界を股にかけて旅をする賑やかさや、どこか楽観的な冒険心を象徴していました。
しかし、物語がエジプトに上陸し、DIOとの決戦が近づく「エジプト編」に入ると、空気感は一変します。ここで採用されたのが、パット・メセニー・グループの「Last Train Home」です。
この曲は、これまでとは打って変わって歌詞のないインストゥルメンタル曲です。夕暮れ時を走る列車のようなリズムと、切なく響くシタールの音色。原作の扉絵に描かれた列車の描写を彷彿とさせるこの曲は、ファンに「旅の終わり」と「失われる仲間たち」を予感させ、涙を誘いました。
激しいバトルの後に流れるこの静かなメロディは、戦士たちの休息と鎮魂を同時に表現する、これ以上ない選曲だったと言えるでしょう。
90年代の空気感を再現した第4部と第5部の挑戦
第4部「ダイヤモンドは砕けない」では、1990年代の日本の地方都市という設定に合わせて、サヴェージ・ガーデンの「I Want You」が選ばれました。
1996年にリリースされたこの曲は、非常に高速なボーカルとスタイリッシュなビートが特徴です。主人公の東方仗助が作中で音楽を聴いているような描写もあり、当時の若者文化のリアルな空気感を映し出しています。杜王町という閉鎖的な町で起こる奇妙な事件を、どこか都会的でクールな視点から眺めるような、絶妙な距離感を生み出していました。
続く第6部、イタリアを舞台にした第5部「黄金の風」では、さらにエッジの効いた選曲が行われました。
前半のEDはジョデシィの「Freek’n You」。90年代を代表するR&Bの名曲ですが、その官能的なメロディは、ジョルノたちのファッショナブルで妖艶な立ち振る舞いに見事に合致していました。
そして後半の「Modern Crusaders」では、エニグマが起用されました。カール・オルフの「カルミナ・ブラーナ」をサンプリングしたこの重厚な楽曲は、宿命に抗うギャングたちの壮絶な生き様を、宗教画のような神々しさで彩りました。歴代のスタンドたちが石柱に刻まれていく映像美と相まって、シリーズ屈指の完成度を誇っています。
自由への渇望を歌う第6部「ストーンオーシャン」
空条徐倫が主人公となる第6部「ストーンオーシャン」のEDを飾ったのは、ダッフィーの「Distant Dreamer」です。
2008年に発表されたこの曲は、60年代のポップスを彷彿とさせるノスタルジックな響きを持ちながら、歌詞には「遠くの夢を見る者」という強い意志が込められています。
監獄という自由を奪われた場所から、父を救い、自分自身の運命を切り開こうとする徐倫の心情。彼女が夜空を見上げ、見えない自由を渇望する姿に、ダッフィーのハスキーで力強い歌声が重なる瞬間、物語のメッセージ性はより一層強固なものとなりました。
特殊EDという「遊び心」とキャラクター愛
洋楽の起用だけでなく、ジョジョのEDには「特殊ED」というもう一つの楽しみがあります。
特定の回だけで流れるこの特殊な楽曲たちは、ファンの間で伝説的に語り継がれています。特に有名なのが、第3部に登場したオインゴ・ボインゴ兄弟の「アク役◇協奏曲」でしょう。
普段のシリアスな洋楽EDとは180度異なる、ゆるくてコミカルなキャラクターソング。それも専用の描き下ろしアニメーション付きという豪華な仕様です。この「真面目にふざける」姿勢こそが、ジョジョという作品が持つ多様な魅力の一つです。
また、第5部の終盤で、物語の視点が変わるタイミングに合わせてEDの映像や楽曲の入り方を微調整する演出など、制作陣のキャラクターに対する深い愛情が随所に散りばめられています。
音楽と物語がリンクする「黄金体験」を味わうために
ジョジョのED曲をより深く楽しむなら、歌詞の意味にも注目してみてください。
例えば、ジョジョの奇妙な冒険 アニメーションのサウンドトラックや原作コミックスを片手に、なぜこのシーンでこの歌詞が流れたのかを考察するのは、ファンにとって至福の時間です。
洋楽の名曲たちは、ジョジョという壮大な物語に「普遍性」と「気品」を与えました。数十年前に作られた音楽が、現代のアニメーションと出会うことで新しい命を吹き込まれる。その化学反応こそが、私たちがジョジョのEDに惹きつけられる最大の理由なのかもしれません。
もし、これまでEDを飛ばして見ていたという方がいたら、ぜひ一度最後までじっくりと耳を傾けてみてください。そこには、物語を補完するもう一つの「ジョジョの世界」が広がっています。
ジョジョの歴代ED曲まとめ!洋楽起用の理由や荒木飛呂彦先生のこだわりを徹底解説
ここまで、歴代のED曲とともに、その選曲の裏側にある並々ならぬこだわりを見てきました。
ジョジョのEDがこれほどまでに愛されるのは、それが単なるBGMではなく、原作者・荒木飛呂彦先生の魂のルーツを辿る旅そのものだからです。70年代のプログレから、80年代のポップス、90年代のR&B、そして2000年代のソウルまで。
時代を超えた名曲たちが、ジョースター家の血の宿命と共鳴し、アニメという媒体を通じて私たちに届けられる。この贅沢な体験こそ、ジョジョという作品が持つ「黄金の精神」の一つと言えるでしょう。
これからも、新しい部のアニメ化とともに、どんな名曲が私たちの耳を楽しませてくれるのか。その選曲の瞬間を楽しみに待ちたいと思います。
今回ご紹介した楽曲たちは、各音楽配信サービスでも聴くことができますし、ジョジョの奇妙な冒険 テーマソングなどでまとめてチェックするのもおすすめです。音楽から入るジョジョの世界も、また一興ですよ。

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