ジョジョの奇妙な冒険、その長い歴史の中でも「伝説」として語り継がれる一曲があります。それがSOUL’d OUTによる「VOODOO KINGDOM」です。
ファンの間では「これこそがディオ・ブランドーという男を最も解像度高く描き出した聖典」とまで称されるこの楽曲。なぜ、リリースから長い年月が経った今でも、私たちの心を掴んで離さないのでしょうか。
今回は、映画『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』のメインテーマでありながら、今や単なるタイアップの枠を超えて愛されるこの曲の深淵に迫ります。歌詞に隠された元ネタや、ディオ視点から紐解く物語の真実を一緒に見ていきましょう。
劇場版ファントムブラッドと「VOODOO KINGDOM」の奇妙な関係
まず、この曲を語る上で避けて通れないのが、タイアップ先である劇場版アニメ『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』(2007年公開)の存在です。
実はこの映画、公開以降にDVDやブルーレイといったパッケージ化が一度も行われておらず、動画配信サービスでも一切観ることができません。ファンの間では「幻の映画」と呼ばれています。映画本編を観ることが極めて困難である一方で、その主題歌である「VOODOO KINGDOM」だけはSOUL'd OUT Single CollectionなどのCDや各種サブスクリプションで誰でも聴くことができるという、まさにジョジョらしい奇妙な状況が生まれています。
映画自体を観たことがなくても、この曲を聴けば「第一部の空気感」が肌で伝わってくる。それほどまでに、この楽曲の持つエネルギーと作品への理解度は圧倒的なのです。
歌詞が描くのは「ディオ・ブランドー」の魂そのもの
「VOODOO KINGDOM」の最大の魅力は、その歌詞が完全に「ディオ(DIO)」の視点で書かれている点にあります。作詞を担当したDiggy-MO’氏とBro.Hi氏は、熱狂的なジョジョファンとしても知られており、原作へのリスペクトが尋常ではありません。
歌詞の冒頭から響く不穏で重厚なリズムは、まさに19世紀末のロンドンの暗闇から現れた吸血鬼の足音のようです。
- 「VOODOO」という言葉の象徴タイトルにもある「VOODOO(ヴードゥー)」は、本来は呪術的な宗教を指しますが、ここでは石仮面の力によって人間を超越したディオの「魔性」や「支配力」を象徴しています。彼は力によって他者を跪かせ、自分だけの王国(KINGDOM)を築こうとしました。その傲慢なまでの野心が、タイトルの時点で示されています。
- 「Virgin blood」と吸血鬼の業歌詞に登場する「Virgin blood」というフレーズ。これは吸血鬼として生きるために他者の命を啜るディオの生理的な欲望と、若々しさを保ち続ける不老不死の肉体を表現しています。人間であることを捨てた彼の冷酷な決意が、この短い言葉に凝縮されているのです。
ジョナサンとの因縁を象徴するフレーズの数々
この曲は単にディオが暴れているだけの歌ではありません。そこには、宿敵ジョナサン・ジョースターとの「血の因縁」が色濃く反映されています。
- 「It’s in my blood」という二重の意味「それは俺の血の中にある」という言葉は、ディオ自身の野心だけでなく、彼が最終的に奪おうとしたジョナサンの「肉体」や「ジョースターの血」を暗示しています。第一部のラストを知るファンにとって、このフレーズはあまりにも重く響きます。
- 「悠久の霧の都」が示す舞台設定「悠久の霧の都を紅く焦がす刺客」という一節は、まさに第一部の舞台である霧のロンドンを地獄に変えたディオとその屍生人(ゾンビ)軍団を想起させます。歴史の闇に紛れ、時代そのものを飲み込もうとする彼のスケールの大きさが伝わってきます。
ディオはジョナサンを憎んでいながら、同時に誰よりも認めていました。歌詞の中にある「時代をも抱いてお前を殺めんばかりの MY MIND」というラインからは、単なる敵対心を超えた、執着に近い強烈な感情が読み取れます。
SOUL’d OUTの音楽性とジョジョの親和性
なぜSOUL’d OUTだったのか。その答えは、彼らの音楽スタイルそのものにあります。
ジョジョの漫画といえば、独特の「擬音」が有名ですよね。「メメタァ」「ズキュウウウン」「ゴゴゴゴゴ」……。これらの独創的な音の響きは、Diggy-MO’氏が得意とするテクニカルな高速ラップやスキャット、独特のフロウと完璧にシンクロしています。
- 高速ラップによる知性の表現ディオは単なるパワー型の悪役ではなく、非常に狡猾で知略に長けた男です。SOUL’d OUTの複雑に編み込まれたライミング(韻踏み)は、ディオの頭の回転の速さや、迷いのない意志の強さを聴覚的に再現しています。
- ダークでゴシックなトラックシンノスケ氏による作曲は、ヒップホップでありながらどこかクラシックやオペラのような荘厳さを纏っています。これが、ジョジョ第一部が持つ「ゴシック・ホラー」の側面を見事に引き立てているのです。
もし、この記事を読みながら曲を聴き返したいと思ったなら、ヘッドホンで細部まで音を拾ってみてください。背景で鳴り響く音の一つ一つが、ディオの邸宅の軋みや、石仮面が作動する不気味な音のように聴こえてくるはずです。
ネット上で「神曲」として語り継がれる理由
「VOODOO KINGDOM」は、今やYouTubeやSNS、ニコニコ動画などのコミュニティにおいて、ジョジョ関連のMAD動画の定番曲となっています。
公式の映画本編が観られないという渇望感が、ファンに「この曲こそが映像の代わりだ」と思わせ、創作意欲を刺激した側面もあるでしょう。しかし、それ以上に「歌詞の解像度」が、後発のアニメシリーズ(2012年〜)を観たファンにとっても納得のいくクオリティだったことが最大の要因です。
「この曲は、原作を読み込んでいないと絶対に出てこないワードの宝庫だ」
「ディオの視点に立ってこれほど完璧な歌を作れるのはSOUL’d OUTしかいない」
こうした称賛の声は、リリースから15年以上経った今でも絶えません。彼らがジョジョという作品に込めた愛が、時を超えて新しいファンに伝わり続けているのです。
ジョジョの世界観を補完する「裏のバイブル」
この楽曲を聴くことは、ジョジョ第一部を「ディオ側から再体験する」ことと同義です。
ジョナサン・ジョースターという光の主人公に対し、ディオという影がいかにして誕生し、どのような絶望と野望を抱いて「人間をやめた」のか。その精神的なプロセスが、4分あまりの演奏時間の中に凝縮されています。
特に、曲の終盤に向けて加速していく熱量は、ディオがジョースター家の屋敷を炎に包み、自らも炎の中から這い上がってくる執念そのものです。音楽という媒体だからこそ表現できた、ディオの「剥き出しの魂」がそこにはあります。
もしあなたが、もっと深くジョジョの世界に浸りたいのであれば、ジョジョの奇妙な冒険 第1部 モノクロ版を読み返しながらこの曲を流してみてください。ページをめくる速度と曲のリズムが重なったとき、あなたはきっと、19世紀ロンドンの闇の中で、石仮面を掲げるディオの姿を目の当たりにするでしょう。
ジョジョ映画主題歌「VOODOO KINGDOM」の歌詞・元ネタを徹底解説!ディオの視点とは?のまとめ
「VOODOO KINGDOM」は、単なるアニメのタイアップ曲ではありません。それは、SOUL’d OUTという類まれなる才能を持ったアーティストが、ジョジョの奇妙な冒険という偉大な物語、そしてディオ・ブランドーという不世出の悪役に対して捧げた「最高のアンサー」です。
- 映画が観られないからこそ輝きを増す「幻の主題歌」
- ディオの冷酷さと情熱、そしてジョナサンへの執着を完璧に描いた歌詞
- ジョジョの独特な世界観(擬音やリズム)と共鳴する音楽性
これらの要素が奇跡的なバランスで融合した結果、この曲は時代を超えて愛される「神曲」となりました。
歌詞の一言一言に込められた意味を噛み締めながら改めて聴いてみると、今まで気づかなかった新しい発見があるかもしれません。ディオが求めた「安心」や「支配」の形を、あなたもこのリズムの中から感じ取ってみてください。
さて、次にあなたがジョジョの世界を旅するとき、その耳元にはどんな音楽が流れているでしょうか。
もし、この楽曲のルーツやSOUL’d OUTの他の楽曲についても詳しく知りたくなったなら、ぜひ彼らのベストアルバムなどをチェックしてみてください。そこには、さらに深い「音楽の王国」が広がっています。
あなたは、このディオの視点から描かれた「VOODOO KINGDOM」の歌詞について、どのフレーズが最も心に刺さりましたか?

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