『ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース』の終盤、DIOの館で承太郎たちを待ち受けていた最凶の執事、テレンス・T・ダービー。彼の操るスタンド「アトゥム神」は、一見地味ながらも「負けたら魂を奪われる」という、ジョジョ史上屈指の絶望感を与える能力でした。
今回は、兄のダニエル・J・ダービー(ダービー兄)とは一味違う、弟テレンスの異常な執着心と、チート級の読心術、そして語り草となっているゲーム対決の裏側を徹底的に深掘りしていきます。
DIOの館の門番、テレンス・T・ダービーという男
エジプトでの長い旅の果て、ついに辿り着いたDIOの館。そこで一行を最初に出迎えたのが、執事のテレンス・T・ダービーでした。彼は以前、承太郎たちをハッタリとイカサマで追い詰めたギャンブラー、ダービー兄の弟です。
しかし、彼らの兄弟仲は最悪。テレンスは兄のことを「あんなクズ」と吐き捨て、自分こそが真の「魂の蒐集家」であると自負しています。兄が魂をコインに変えてギャンブルのチップにしていたのに対し、弟のテレンスは奪った魂を「特製の人形」に封じ込め、着せ替えを楽しんだり会話をしたりするという、より狂気じみた趣味を持っていました。
この「人形に閉じ込める」という行為が、読者に「死ぬよりも恐ろしい結末」を予感させ、物語の緊張感を一気に引き上げたのです。
アトゥム神の能力が「チート」と言われる理由
テレンスのスタンド「アトゥム神」の最大の特徴は、相手の「魂」に直接問いかけ、その答えを視覚化する能力です。
1. 究極の読心術(YES/NOの判別)
アトゥム神は、相手の魂が発する「YES」か「NO」かの信号を読み取ることができます。これは表面上の言葉や表情を読み取るのではなく、魂そのものにアクセスするため、どんなにポーカーフェイスを貫いても、嘘をつくことは不可能です。
例えば、ゲーム中に「右に避けるか?」と問いかけ、魂が「YES」と答えれば、それは100%の確率で的中します。この「確実性」こそが、アトゥム神がチート級と言われる所以です。
2. 魂の奪取
アトゥム神は、相手が心の中で「敗北」を認めた瞬間に、その魂を強制的に引き抜くことができます。一度掴まれた魂は、本人が戦意を喪失しているため、抵抗することすら叶いません。
3. ゲーム技術との相乗効果
テレンス自身が「ビデオゲーム」の達人であることも、この能力を凶悪にしています。格闘ゲームやカーレース、野球ゲームなど、瞬時の判断が必要な場面で「相手が次に何をするか」をYES/NOで確認しながらプレイされたら、対戦相手に勝ち目はありません。
花京院を圧倒した「F-MEGA」での心理戦
テレンスとの最初の犠牲者となったのが、冷静沈着な策士・花京院典明でした。彼らが対決に選んだのは、超高速レーシングゲーム『F-MEGA』。
花京院はハイエロファントグリーンの精密な動きを活かし、コントローラーを神業的なスピードで操作します。一時はテレンスを追い詰めたかのように見えましたが、アトゥム神の読心術の前に、花京院の意表を突く作戦はすべて事前に察知されてしまいました。
「右か?」「YES」
「左か?」「NO」
このシンプルな二択の繰り返しが、花京院の精神を削り取っていきます。最終的に、テレンスの圧倒的なゲームテクニックとスタンド能力の組み合わせにより、花京院は「敗北」を認め、魂を人形に変えられてしまいました。
承太郎とジョセフが挑んだ「Oh! That’s a Baseball」
花京院に続き、承太郎が挑んだのは野球ゲーム『Oh! That’s a Baseball』でした。格闘ゲームを得意とする承太郎ですが、スポーツゲームの経験は浅く、序盤はテレンスに翻弄されます。
しかし、ここで承太郎は「予告ホームラン」ならぬ「予告投球」を始めます。「次に投げるコースを口に出して宣言する」という暴挙に出たのです。
テレンスは当然、アトゥム神で魂の真偽を確かめます。
「承太郎はインコースに投げると言っている。それは本当か?」
魂の答えは「YES」。
しかし、実際に投げられた球はアウトコース。テレンスは混乱します。「魂は嘘をつけないはずなのに、なぜ逆のコースに来るのか?」
ジョセフ・ジョースターの介入という盲点
実は、このイカサマの正体はジョセフの「隠者の紫(ハーミットパープル)」でした。ジョセフが承太郎の代わりにコントローラーを操作していたのです。
アトゥム神が読み取れるのは、あくまで「質問した相手(承太郎)の魂」だけです。承太郎自身は投げるコースを宣言しているだけで、実際に操作しているのはジョセフであるため、承太郎の魂は「嘘をついていない」と判定されます。テレンスは「自分の能力は絶対だ」と過信していたため、第三者が介入しているという可能性を完全に失念していたのです。
「もしかしてオラオラですかーッ!?」に込められた絶望
正体を見破られ、パニックに陥ったテレンス。彼は承太郎に命乞いをしながらも、心の中では「まだチャンスはある、読心術でカウンターを狙えばいい」と考えていました。
しかし、承太郎は一切の容赦をしません。テレンスは震えながら、自分のアトゥム神に問いかけます。
「承太郎は右の拳で殴るのか?」
魂の答え:「YES」
「左の拳でも殴るのか?」
魂の答え:「YES」
「両方ですかあああーッ!?」
魂の答え:「YES!YES!YES! “OH MY GOD”」
そして、あの伝説の名セリフが飛び出します。
「もしかしてオラオラですかーッ!?」
自分の能力によって、これから自分が受ける凄惨な暴行のすべてを事前に「予知」してしまう。これほど皮肉で残酷な結末はありませんでした。テレンスは館の外まで吹き飛ばされ、再起不能(リタイア)となりました。
ダービー兄弟の対比:プロの矜持か、収集の執着か
ダービー兄と弟は、どちらも「魂を賭けた勝負」を挑んできましたが、その本質は大きく異なります。
兄のダニエルは、たとえ自分がイカサマをしていても、相手のハッタリに屈した瞬間に自ら敗北を認める「勝負師としてのプライド」を持っていました。対して弟のテレンスは、能力で相手をハメることを楽しみ、負けそうになれば醜く取り乱す「甘やかされた天才」の側面が強いキャラクターです。
しかし、ビデオゲームという現代的な題材をスタンドバトルに持ち込み、読者に「どうやって勝つんだこれ?」と思わせた絶望感の強さは、間違いなく3部の中でもトップクラスでした。
もし彼らが今この現代にいたら、Nintendo SwitchやPlayStation 5を使って、どんな恐ろしいゲーム対決を仕掛けてきたのでしょうか。オンライン対戦でアトゥム神を使われたら、世界中のゲーマーが人形にされてしまうかもしれません。
ジョジョ3部アトゥム神の能力はチート?ダービー弟の読心術と名勝負を徹底解説!:まとめ
テレンス・T・ダービーとアトゥム神の戦いは、肉体的な強さではなく「情報の優位性」をどう崩すかという、極めて知的なバトルでした。
アトゥム神の能力は、単体で見れば確かにチート級です。しかし、どれほど優れた能力を持っていても、それを使う人間の「心の隙」や「過信」が敗北を招くという、ジョジョのテーマである「人間讃歌」の裏返しのような結末でした。
承太郎とジョセフのコンビプレー、そして花京院が命がけで繋いだバトン。それらすべてが噛み合って初めて、この「無敵の読心術」を打ち破ることができたのです。
改めて読み返してみると、ダービー弟戦は「ゲーム」というルールの枠組みの中で繰り広げられる、最高にスリリングな心理エンターテインメントであることが分かります。もし、あなたがまだこのエピソードを詳しく読んでいないなら、ぜひコミックスやアニメでその緊張感を味わってみてください。
最後に、もしあなたが格闘ゲームで負けそうになったとき、相手が「もしかしてオラオラですかーッ!?」と聞いてきたら、素直にコントローラーを置くのが正解かもしれませんね。

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