ジョジョの奇妙な冒険 第3部、スターダストクルセイダース。その物語がクライマックスへと向かう「エジプト編」で、承太郎たちの前に立ちはだかるのが「エジプト9栄神」と呼ばれる刺客たちです。
タロットカードの暗示を持つスタンド使いを退け、ようやく辿り着いた約束の地エジプト。しかし、そこで待ち受けていたのは、これまでの常識が通用しないほど異質で、そして圧倒的に強力な能力者たちでした。
今回は、DIOの館を守る最後の砦、エジプト9栄神の全貌を徹底的に紐解いていきます。各スタンドの能力から、神話に隠された元ネタ、そして手に汗握る決着の瞬間まで、その魅力を余すことなくお届けします。
砂漠の恐怖!盲目の刺客ンドゥールと「ゲブ神」
エジプトに上陸した一行が最初に遭遇したのが、盲目の男ンドゥールです。彼が操るスタンド「ゲブ神」は、変幻自在の「水」の能力。砂漠という遮蔽物のない場所で、音を頼りに数キロ先から正確に狙い撃つそのスタイルは、まさに死神の如き恐怖でした。
このスタンドの恐ろしさは、物理的な破壊力だけではありません。「水」であるため、物理攻撃がほとんど通用せず、鋭利な刃物のように人体を切り裂き、あるいは体内へ侵入してきます。承太郎ですら一歩間違えれば命を落としていたほどの強敵でした。
元ネタとなったエジプト神話のゲブ神は「大地の神」ですが、作中では「大地に這う水」として解釈されているのが面白いポイントですね。最後は承太郎がイギーを投げるという奇策で接近し、肉弾戦で決着をつけましたが、ンドゥールのDIOに対する潔い忠誠心は、敵ながらあっぱれと言わざるを得ません。
予測不能な兄弟の絆?オインゴ・ボインゴの珍道中
シリアスな戦いが続く中で、強烈なインパクトを残したのがオインゴとボインゴの兄弟です。
兄・オインゴのスタンド「クヌム神」は、自分の顔や体格、さらには匂いまでも完璧に変える変装能力。一方、弟・ボインゴの「トト神」は、近い未来を100%の的中率で予言する漫画の本です。
「100%当たる予言」という、本来なら無敵に近い能力を持ちながら、彼らがことごとく失敗するのは、予言の解釈を間違えたり、運命のいたずらに翻弄されたりするからです。承太郎に変装したオインゴが、自分の仕掛けた爆弾オレンジで自爆するシーンは、ジョジョ屈指のギャグ回として語り継がれています。
ちなみに、クヌム神は神話では「人間を粘土で創る神」であり、トト神は「知恵と書記の神」です。創造と記録という性質を、変装と予言漫画に落とし込む荒木飛呂彦先生の発想力には脱帽ですね。
妖刀に宿る怨念!本体を持たないスタンド「アヌビス神」
ジョジョの歴史の中でも珍しい「本体が刀そのもの」というスタンドが、アヌビス神です。500年以上前に鍛えられた刀にスタンドが宿っており、抜いた者を操って戦います。
このスタンドの真の脅威は「学習能力」にあります。一度戦った相手のスピードや技術を完全に記憶し、二度目の攻撃は絶対に通用しません。シルバーチャリオッツの剣技を即座に上回り、承太郎のスタープラチナをも窮地に追い込みました。
最後は、折れた刀身がナイル川の底へと沈んでいくという皮肉な結末を迎えましたが、「物自体がスタンドである」という設定は、後のシリーズにも大きな影響を与えました。エジプト神話の冥界の神アヌビスらしい、死へと誘う不気味な強さが印象的でした。
触れたら最後!マライアの「バステト神」と磁力の罠
エジプト編の「美しき刺客」といえば、マライアでしょう。彼女のスタンド「バステト神」は、コンセントの形をしており、それに触れた者に強力な磁力を付与します。
最初は小さな釘がくっつく程度ですが、時間が経つにつれ磁力は増大し、包丁、看板、果ては走る車までが体に吸い寄せられてきます。ジョセフとアヴドゥルの二人が磁力でくっついてしまい、街中で奇妙な体勢を強いられるコミカルな描写もありましたが、実際には命に関わる絶体絶命の状況でした。
最後は、ジョセフとアヴドゥルが磁力を逆手に取り、マライアを前後から挟み撃ちにして、大量の金属製品ごと押し潰すという豪快な決着となりました。猫の頭を持つ女神バステトのイメージとは裏腹に、非常に計算高い戦術家でした。
影に触れれば子供返り!アレッシーの「セト神」の卑劣
エジプト9栄神の中で最も「卑怯」という言葉が似合うのが、アレッシーです。彼のスタンド「セト神」は自身の影と一体化しており、その影を踏んだ者を若返らせる能力を持ちます。
ポルナレフは子供になり、さらには胎児にまで戻されそうになるという、ある意味で最も恐ろしい攻撃を受けました。しかし、相手を弱体化させてから叩くというアレッシーの性格が災いし、子供になっても闘志を失わなかったポルナレフ、そして同じく子供にされた承太郎の「純粋な暴力」の前に敗北します。
「エライねぇ~」と子供をあやすような態度から一転、ボコボコにされて吹き飛ばされるカタルシスは異常でした。影の神セトの力を、これほどまでに姑息な戦いに使うキャラクター造形は、ジョジョならではの魅力です。
魂を賭けた心理戦!ダービー兄と「オシリス神」
ジョジョのバトル観を根底から覆したのが、ダニエル・J・ダービーです。彼は暴力ではなく「ギャンブル」で勝負を挑んできます。
スタンド「オシリス神」は、賭けに負けて「心に敗北を認めた者」の魂を奪い、コインに変えてコレクションする能力。ポルナレフ、そしてジョセフまでもが彼のイカサマと心理術に屈し、魂を奪われてしまいます。
承太郎とのポーカー勝負は、まさに伝説です。承太郎はカードを一枚も見ずに「自分の母親の魂」「花京院の魂」を次々とレイズ(上乗せ)し、圧倒的なブラフでダービーを精神的に追い詰めました。拳を一切使わずに、敵の精神を崩壊させて勝利したこの一戦は、シリーズ屈指の名勝負と言えるでしょう。
極寒の殺戮者!最凶の鳥ペット・ショップと「ホルス神」
9栄神の中で、純粋な戦闘力と残虐性が際立っているのが、DIOの館の番人であるハヤブサ、ペット・ショップです。彼が操る「ホルス神」は、氷を自在に生成し、ミサイルのように放つ能力。
この戦いの主役は、犬のスタンド使いイギーでした。砂漠の中で繰り広げられる、空の王者と大地の王者の生存競争。ペット・ショップは執念深くイギーを追い詰め、水中でさえも氷の牙を剥きます。
イギーが片足を失うという壮絶な代償を払いながらも、土壇場の機転で勝利を掴み取る姿には、多くの読者が涙しました。天空の神ホルスの名を冠するにふさわしい、冷酷で高潔な強敵でした。
読心術とTVゲーム!ダービー弟の「アトゥム神」
DIOの館内部で待ち構えていたのが、ダービー兄の弟、テレンス・T・ダービーです。彼のスタンド「アトゥム神」は、兄と同様に魂を奪う能力に加え、相手の心を「YESかNOか」で読み取る読心術を持っていました。
勝負の舞台はビデオゲーム。花京院をF-ZERO風のレースゲームで下し、承太郎を野球ゲームで追い詰めます。しかし、この戦いのMVPはジョセフ・ジョースターでした。ジョセフがスタンドを使ってコントローラーを操作するという「イカサマ」を行うことで、承太郎の思考と実際の動きを分離させ、テレンスの読心術を無力化したのです。
「もしかしてオラオラですかーッ!?」という問いに、心の中で「YES! YES! YES!」と答える名シーンは、ジョジョファンの間で今も語り草になっています。
最後の幻想!ケニィGの「ティティ神」
最後に少しだけ触れておくべきなのが、ケニィGです。彼のスタンド「ティティ神」は、幻覚によって館の内部を迷宮に変える能力。
しかし、彼の出番は一瞬でした。イギーの鼻によって居場所を突き止められ、アヴドゥルの一撃で戦闘不能に。9栄神の最後の一人としては少々寂しい退場でしたが、彼が作り出していた幻覚が解けた瞬間の「本当の館の不気味さ」を演出する重要な役割を果たしました。
エジプト9栄神との戦いを通じて、承太郎たちは多くの犠牲を払い、同時にかけがえのない絆を深めていきました。
ジョジョ3部「エジプト9栄神」を完全解説!スタンド能力の元ネタと倒し方のまとめ
エジプト編を彩った「エジプト9栄神」たちは、単なる敵役の枠を超えた個性的なキャラクターばかりでした。神話の神々の名前を冠しながら、その能力は現代的な解釈や荒木先生独自のセンスによって、唯一無二のエンターテインメントへと昇華されています。
彼らとの死闘があったからこそ、最終決戦であるDIOとの戦いがより一層引き立ったのは間違いありません。もし、久しぶりにジョジョを読み返したくなったなら、ぜひ各スタンド使いの元ネタであるエジプト神話も調べてみてください。作品の深みがさらに増すはずです。
物語を彩った強敵たちの記憶とともに、ジョジョの奇妙な冒険 第3部を手に取って、再びあの熱い旅路を追いかけてみてはいかがでしょうか。承太郎たちの奇妙な冒険は、いつまでも色褪せることなく、私たちの心に刻まれています。

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