「悪には悪の救世主が必要なんだ」
ジョジョの奇妙な冒険 第3部「スターダストクルセイダース」。その物語がクライマックスへと加速するのが、承太郎たちがついに上陸を果たしたエジプト編です。そこで一行を待ち受けていたのが、DIOへの絶対的な忠誠を誓う刺客たち。
これまでのタロットカードの暗示を超え、古代の神々の名を冠したスタンドを操る「エジプト9栄神(ナイン・エジプト・ゴッズ)」とは一体何者だったのか。
今回は、彼らのスタンド能力、元ネタとなったエジプト神話との関連性、そしてファンの間で語り継がれる強さの秘密を、余すことなく徹底解説していきます。
タロットからエジプト神話へ!9栄神が登場した背景
ジョジョ3部の前半戦、香港からシンガポール、インド、パキスタンと続く旅路での敵は、すべて「タロットカード」の暗示を持つスタンド使いでした。しかし、一行がエジプトの地を踏んだ瞬間、ルールが変わります。
物語の構成として、ここから敵のスタンド能力はよりトリッキーで、かつ強力なものへとシフトしていきます。直接的な破壊力だけでなく、心理戦や特殊な制約を用いた戦いが増え、読者に「どうやって倒すんだこれ?」と思わせる絶望感が強まったのがこの時期です。
「エジプト9栄神」は、DIOが自らの館を守るために配置した精鋭部隊。実際のエジプト神話における「ヘリオポリス九柱神」とは顔ぶれが異なりますが、荒木飛呂彦先生独自の解釈によって、神話のイメージとスタンド能力が見事に融合されています。
盲目の天才狙撃手!ンドゥールと「ゲブ神」
エジプト9栄神の先陣を切って登場したのが、ンドゥールです。彼は盲目でありながら、地面を伝わる微かな「音」だけで、数キロ先の敵の正確な位置を把握する超人的な感覚の持ち主でした。
ゲブ神:変幻自在の水の刃
ンドゥールが操る「ゲブ神」は、小さな土器の中に潜む「水」のスタンドです。
- 特徴: 形状を自在に変え、弾丸のように飛んできたり、鋭利なカミソリのように相手を切り刻んだりします。
- 強み: 砂漠という遮蔽物のない環境において、地中に潜んで攻撃できるため、視認することが極めて困難です。
彼は承太郎に敗れた後、DIOの秘密を守るために自ら命を絶ちました。「悪には悪の救世主が必要なんだ」という彼の言葉は、DIOという存在がいかにカリスマ性に満ちているかを読者に強烈に印象づけました。
砂漠での死闘を描いたシーンは非常に評価が高く、ジョジョの奇妙な冒険 第3部を読み返す際、外せない名場面の一つと言えるでしょう。
予言的中率100%?オインゴ・ボインゴ兄弟
ンドゥールのシリアスな戦いから一転、読者の度肝を抜いたのが、この兄弟です。彼らは「直接戦わない」という特殊なスタイルで承太郎たちを追い詰め(ようとし)ました。
クヌム神(オインゴ):変装の達人
兄・オインゴのスタンド「クヌム神」は、自分の顔の造作や体格、さらには匂いまで完璧に変える能力です。
- 活用法: 承太郎に変装して一行に潜り込もうとしましたが、あまりの運のなさと、仲間たちの鋭すぎる(あるいは天然な)直感に阻まれ、一度も攻撃を仕掛けることができませんでした。
トト神(ボインゴ):絶対的な予言
弟・ボインゴが持つのは、漫画の本の形をしたスタンド「トト神」です。
- 能力: 近い未来に起こることが、独特のタッチの漫画で描かれます。この予言は100%的中しますが、その過程は非常にシュールです。
彼らのエピソードは、ジョジョにおける「ギャグ回」の最高峰として知られています。戦いとは、拳を交えるだけではない。そんなジョジョの懐の深さを象徴するキャラクターたちです。
意志を持つ魔剣!アヌビス神
次に現れた刺客は、人間ではなく「刀」そのものでした。500年以上前に打たれた名刀にスタンドが宿っており、抜いた人間を操るという恐ろしい能力です。
アヌビス神:学習する戦闘能力
このスタンドの真の脅威は、戦えば戦うほど相手の技を学習し、パワーとスピードが向上し続ける点にあります。
- 絶対的な防御: 一度見た攻撃は二度と通用しません。スタープラチナの素早いパンチですら、数合交わしただけで完全に見切ってしまいます。
- 透過攻撃: 壁を透かして相手を斬るなど、物理法則を無視した攻撃も可能です。
ポルナレフを操り、承太郎を極限まで追い詰めたアヌビス神ですが、最後は投げ飛ばされた拍子にナイル川の底へと沈みました。現在も川の底で、錆びゆく体とともに思考を止めているのかもしれません。
触れたら磁石!美女マライアと「バステト女神」
エジプト編において、ジョセフ・ジョースターを最も苦しめたのがマライアです。彼女は直接殴りかかってくることはありませんが、その能力は極めて陰湿かつ強力でした。
バステト女神:磁力の罠
彼女のスタンド「バステト女神」は、壁に設置された「コンセント」の姿をしています。
- 能力: このコンセントに触れてしまった者は、体が強力な磁石になってしまいます。
- 絶望感: 最初は小さな釘がくっつく程度ですが、次第にスプーン、看板、果ては走っている列車までが引き寄せられてきます。
ジョセフとアヴドゥルが磁力でくっついて離れられなくなるシーンはコミカルですが、生死に関わる危うさがありました。知略を尽くした末、物理法則を利用したジョセフの逆転劇は見事というほかありません。
忍び寄る影の恐怖!アレッシーと「セト神」
マライアとコンビ(?)で現れたアレッシーは、性格の悪さでは作中随一です。「自分より弱い者をいたぶる」ことを至上の喜びとする彼は、ポルナレフを窮地に陥れました。
セト神:影に触れると若返る
アレッシーの影に触れると、その人間はどんどん若返っていきます。
- 退化: 数秒触れただけでポルナレフは子供になり、スタンド能力も弱体化してしまいました。
- 無慈悲: 胎児の状態まで戻して殺そうとする執念深さは、まさに外道の極みです。
しかし、承太郎までも子供にしてしまったのが彼の運の尽きでした。承太郎は子供の頃から「不良の素質」があり、スタンドが出せない状態でも素手でアレッシーを叩きのめすという伝説を残しました。
ギャンブルに魂を賭けろ!ダニエル・J・ダービー
「グッド!」の口癖で知られるダービー兄。彼はジョジョにおける「能力バトル」の概念を、格闘から「心理戦」へと完全に昇華させた重要人物です。
オシリス神:敗者の魂を奪う
ギャンブルにおいて、心の中で「負け」を認めた者の魂を奪い、コインに変えてコレクションする能力です。
- イカサマの天才: 彼は自身の指先の技術で平然とイカサマを行いますが、それがバレなければ「技術」であると断言します。
- 心理戦: ポルナレフの魂、そしてジョセフの魂を次々と奪い、承太郎をも極限の緊張状態へ引きずり込みました。
承太郎が一度もカードを見ずに「母の魂」や「アヴドゥルの魂」を賭けてレイズ(上乗せ)していくブラフは、シリーズ屈指の緊張感を生みました。最終的にダービーは、承太郎のハッタリに耐えきれず精神が崩壊。戦わずして勝利するという、ジョジョならではの決着を迎えました。
氷の処刑人!ペット・ショップと「ホルス神」
DIOの館の番犬ならぬ「番鳥」として君臨するのが、ハヤブサのペット・ショップです。彼は9栄神の中でも、最も冷酷で純粋な殺戮者として描かれています。
ホルス神:氷を操る圧倒的火力
- 能力: 一瞬で周囲を氷結させ、巨大な氷のつららをミサイルのように飛ばします。
- 執念: 自身の縄張りに侵入したイギーを執拗に追い詰め、下水道の奥深くまで追跡しました。
この戦いは、言葉を持たない動物同士の死闘として非常に高く評価されています。イギーが自らの足を犠牲にして放った一撃によって決着がつきましたが、ペット・ショップの恐怖感はラスボスに近いものがありました。
もし承太郎たちがこの鳥と正面から戦っていたら、無傷では済まなかったでしょう。それほどまでに「ホルス神」の攻撃力は突出していました。
ゲームの世界で魂を狩る!テレンス・T・ダービー
ダービー兄の弟、テレンス。彼は兄以上の執念深さと、相手の心を見抜く特殊な能力を持っていました。
アトゥム神:心を読み、魂を奪う
- 魂の徴収: 兄と同じく、ゲームで負けた相手の魂を奪い、こちらは「人形」に閉じ込めます。
- マインドリーディング: 相手の魂が放つ微かな振動から、問いかけに対する答えが「YES」か「NO」かを100%見抜くことができます。
花京院をテレビゲームの勝負で破り、人形に変えてしまったテレンスの能力。承太郎の「イカサマ」を見抜こうと必死になる彼の姿は、冷静な執事の仮面が剥がれていく過程も含めて非常に見応えがあります。
ジョジョの奇妙な冒険 第3部 Blu-rayで、彼の焦燥感を声優陣の演技とともに確認するのもおすすめです。
番外編:9栄神を超える絶望、ヴァニラ・アイス
厳密には9栄神のカウントに含まれるか諸説ありますが、9栄神がすべて倒された後に現れる「最後にして最強の側近」がヴァニラ・アイスです。
クリーム:すべてを消し去る暗黒空間
彼のスタンド「クリーム」は、自分自身とスタンドを暗黒空間に飲み込ませることで、この世から消失します。
- 不可視の攻撃: 消えている間、彼は何者にも傷つけられず、触れたものすべてを跡形もなく消滅させます。
- 絶望: アヴドゥルを一瞬で葬り、イギーを死に追いやったその力は、まさにDIOの右腕にふさわしい破壊神そのものでした。
ポルナレフが満身創痍で挑んだこの戦いは、第3部における「犠牲」の重さを読者に突きつける壮絶な内容となりました。
ジョジョ3部「エジプト9栄神」一覧!全スタンド能力と元ネタの神々、強さを徹底解説のまとめ
エジプト9栄神との戦いは、承太郎たちの旅路において「精神的な成長」と「仲間の絆」を試す過酷な試練でした。
- ンドゥールが示した敵ながらあっぱれな忠義。
- ダービー兄弟が仕掛けた息もつかせぬ心理戦。
- ペット・ショップが放った純粋な暴力の恐怖。
それぞれのキャラクターが、エジプトの神々の名に恥じない強烈な個性を放っていました。彼らがいたからこそ、最終決戦であるDIOとの戦いがより一層引き立ったのは間違いありません。
あらためて彼らの活躍を振り返ると、荒木飛呂彦先生の「能力バトル」に対する先見性と独創性に驚かされます。単純な強さだけでは測れない、ジョジョという作品の奥深さ。あなたは、どの神を暗示するスタンド使いが一番印象に残っていますか?
もし、この記事を読んで「もう一度エジプト編を読み返したい!」と思ったなら、ぜひ手に取ってみてください。そこには、何度読んでも色褪せない、黄金の精神と漆黒の野望が渦巻いています。
ジョジョ3部「エジプト9栄神」一覧!全スタンド能力と元ネタの神々、強さを徹底解説、最後までお読みいただきありがとうございました。

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