「ジョジョの奇妙な冒険」という作品を語る上で、アニメ版の第1部(ファントムブラッド)が残したインパクトは計り知れません。重厚な人間讃歌、石仮面を巡るディオとの因縁、そして何より視聴者の度肝を抜いたのが「エンディング(ED)」の演出でした。
なぜ、あのアコースティックギターの音色が流れるだけで、私たちはあんなにも鳥肌が立ってしまうのでしょうか。今回は、ジョジョ1部のエンディングテーマであるYesの『Roundabout』に焦点を当て、その選曲の妙や、世界中でミーム化した特殊演出の秘密を深掘りしていきます。
伝説の始まり!Yes『Roundabout』が選ばれた理由
アニメ「ジョジョの奇妙な冒険」第1部のエンディングテーマに採用されたのは、イギリスのプログレッシブ・ロック・バンド、Yes(イエス)の代表曲『Roundabout』です。1971年に発表されたアルバム『こわれもの(Fragile)』に収録されているこの曲は、ロック史に輝く名曲として知られています。
そもそも、なぜ2012年に始まったアニメのエンディングに、40年以上も前の洋楽が選ばれたのでしょうか。その最大の理由は、原作者である荒木飛呂彦先生の音楽的ルーツにあります。
荒木先生は執筆中に洋楽を聴くことで知られており、キャラクター名やスタンド名の多くが実在のアーティストや楽曲から取られています。第1部の連載当時の空気感、そして物語が持つクラシックな重厚さを表現するために、「当時のアーティストによる本物のロック」が必要だったのです。
制作サイドが荒木先生に相談した際、先生自らが提案したのがこの楽曲でした。プログレ特有の複雑な展開と、どこか幻想的なメロディは、19世紀の英国を舞台にしたジョナサンとディオの物語に、これ以上ないほどマッチしていました。
「To Be Continued」とシームレスに繋がる神演出
ジョジョ1部のEDを語る上で、絶対に外せないのが「導入のタイミング」です。通常のアニメであれば、本編が終わって暗転し、そこからED曲が流れ始めるのが一般的ですよね。しかし、ジョジョは違いました。
物語のクライマックス、絶妙な引きのシーンで、まずあのアコースティックギターの繊細なアルペジオが静かに流れ始めます。画面の隅には、あのお馴染みの矢印と共に「To Be Continued」の文字。
視聴者が「えっ、ここで終わり!?」「来週どうなるの!?」と興奮がピークに達した瞬間に、クリス・スクワイアによる重厚なベースラインが炸裂し、一気にED映像へと切り替わる。このシームレスな移行は、単なるエンディングの枠を超え、物語の一部として機能していました。
この演出を担当した音響チームのこだわりは凄まじく、実は話数によってイントロの流れるタイミングや、使用される楽曲の箇所が微妙に調整されています。全9話という短い第1部の中で、約8分半もある原曲のさまざまなパートを使い分け、常に新鮮な驚きを与えてくれました。
歌詞に込められた「巡りゆく運命」の暗示
曲名の『Roundabout』とは、イギリスなどに多い「環状交差点」を意味します。一見すると、単なる風景描写のようにも思えますが、ジョジョの文脈で読み解くと非常に深い意味を持って聞こえてきます。
ジョジョの物語は、ジョナサンからジョセフ、そして承太郎へと受け継がれる「血の運命」の物語です。一度始まった因縁は、円を描くように巡り、時代を超えて再び交差する。この「繰り返される運命」や「血統の循環」というテーマが、Roundabout(環状路)という言葉と見事に共鳴しているのです。
また、歌詞の中には「山々から現れ、谷を抜ける」といった旅路を連想させるフレーズが多く含まれています。これは、ジョナサンがツェペリ男爵と共にディオを打倒するための旅に出る姿や、その険しい道のりと重なります。
石仮面と家系図。静謐なるED映像の美学
EDの映像自体も、非常に芸術的で象徴的な作りになっていました。派手なキャラクターのダンスやアクションではなく、描かれたのは「石」の質感と「血」の流れです。
アステカの祭壇を思わせる石造りの背景に、ジョースター家の家系図が刻まれており、そこを赤い血が伝い落ちていく。この演出は、第1部が単独の物語ではなく、これから長く続く「ジョジョの奇妙な冒険」という大河ドラマの序章であることを示唆していました。
キャラクターをあえて出さないことで、視聴者は楽曲と映像から「歴史の重み」を感じ取ることができました。最後に浮かび上がる石仮面の不気味な存在感は、すべての悲劇の元凶がそこにあることを無言で語りかけていました。
第9話「最後の波紋!」で見せた、涙の特殊エンディング
第1部の最終回である第9話では、ファン語り草となっている特別なエンディングが用意されました。
ジョナサン・ジョースターの壮絶な最期を見届けた後、流れてきたのはいつものイントロ。しかし、映像はそれまでの名シーンを振り返るメモリアルな内容に変わっていました。彼の勇気ある行動と、ディオへの複雑な情愛。それらがYesの音楽と共に流れる時間は、まさに一つの時代が終わる寂しさと、彼が遺したものの大きさを感じさせるものでした。
そして、曲が最も盛り上がるパートで、舞台は一気に数十年後のニューヨークへ。第2部の主人公・ジョセフの登場に合わせて楽曲がポジティブなエネルギーを放ち、絶望から希望へとバトンが渡される瞬間を完璧に演出したのです。
世界を席巻した「To Be Continued」ミームと海外の反応
ジョジョ1部のED演出は、海を越えて海外でも爆発的な人気を博しました。特にインターネット上では、この演出をパロディ化した「To Be Continuedミーム」が社会現象となりました。
日常の何気ない動画や、失敗する寸前のハプニング映像に対して、例のギターの音が流れ始め、決定的な瞬間に「To Be Continued」の矢印が出て画面が止まる。このフォーマットは、ジョジョを知らない層にまで浸透し、世界中の人々が『Roundabout』のイントロを「何かが起こる合図」として認識するようになったのです。
海外のファンからは、「日本のアニメが70年代のプログレをこれほど完璧に使いこなすなんて信じられない」「この曲を聴くたびに、ジョナサンの高潔な精神を思い出す」といった熱いコメントが寄せられています。
ジョジョの魅力を再確認するためのアイテム
ジョジョの世界をより深く楽しむなら、原作漫画はもちろん、アニメの音楽にも触れてみるのがおすすめです。特に第1部のクラシックな雰囲気は、紙媒体で読むとまた違った発見があります。
ジョジョの奇妙な冒険 第1部 モノクロ版 1また、Yesの楽曲をフルで聴いてみると、アニメでは使われなかった中盤のオルガンソロや、後半のドラマチックな展開に驚くはずです。
こわれもの (Fragile) Yesこうした名盤に触れることで、荒木先生が作品に込めた魂の一部に触れられるような気がします。
ジョジョ1部エンディングの魅力とは?曲名の意味や特殊演出、海外の反応を徹底解説!のまとめ
いかがでしたでしょうか。ジョジョ第1部のエンディングは、単なる「番組の終わりを告げる曲」ではなく、作品の世界観を拡張し、視聴者の記憶に深く刻み込むための芸術的な演出でした。
Yesの『Roundabout』という選曲、イントロを本編に被せる「引き」の技術、そして血の系譜を描いた映像。これらすべてが噛み合ったからこそ、放送から時間が経った今でも、私たちはあの矢印を見ただけで胸が高鳴るのです。
もし、まだフルバージョンの楽曲を聴いたことがないという方がいれば、ぜひ一度通して聴いてみてください。そこには、ジョナサンとディオの戦いのように、長く、険しく、そして美しい音楽の旅が広がっています。
次にアニメを見返すときは、ぜひ「イントロがいつ流れ始めるか」に注目してみてください。きっと、スタッフの並々ならぬ「ジョジョ愛」を感じ取ることができるはずです。

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