「ジョジョの奇妙な冒険」と聞くと、多くの人は手に汗握る知略バトルや、運命に抗う人間讃歌の物語を思い浮かべるはずです。しかし、ファンの間で語り継がれるジョジョの真の魅力は、実はその裏側に潜む「シュールすぎるギャグ」にあるといっても過言ではありません。
作者の荒木飛呂彦先生が描く世界では、キャラクターたちが常に全力投球です。だからこそ、ふとした瞬間に見せる奇行や、独特すぎる言語センスが、読者の腹筋を崩壊させる破壊力を持っています。
今回は、シリーズ全編を通して、思わず「おまえは何を言っているんだ」と突っ込みたくなる、ジョジョの面白いシーンを厳選してご紹介します。
ジョジョ特有の「シリアスな笑い」とは何か?
ジョジョのギャグを語る上で外せないのが、登場人物たちが「大真面目であればあるほど面白い」という黄金の方程式です。彼らにふざけているつもりは毛頭ありません。命がけの状況で、自分たちの信念に基づいた行動をとった結果、客観的に見ると異常にシュールな光景が生まれてしまうのです。
例えば、第1部でディオに唇を奪われたエリナが、泥水で口を洗うシーン。普通なら悲劇的な場面ですが、その徹底した拒絶反応の描き方があまりに苛烈で、読者はその気高さに圧倒されると同時に、どこか可笑しみを感じてしまいます。
また、独特の擬音も欠かせません。「メメタァ」や「パパウパウパウ」といった、日常生活ではまず耳にすることのない音が、緊迫したシーンで平然と使われます。この「恐怖と笑いは紙一重」という感覚こそが、ジョジョを唯一無二の作品にしているスパイスなのです。
第1部・第2部:伝説の始まりと予測不能なテンション
初期のジョジョには、後のシリーズの土台となる濃密なネタが凝縮されています。
まず挙げたいのが、第1部のジョナサン・ジョースターによる伝説の誤植「何をするだァーッ!」です。本来は「何をするんだ」となるはずが、あまりの怒りの勢いに言葉がもつれたかのようなこの台詞は、今やファンの間では公認のネタ。ジョナサンの育ちの良さと野生味が混ざり合った、奇跡のフレーズと言えるでしょう。
第2部に入ると、主人公ジョセフ・ジョースターのキャラクター性も相まって、ギャグのキレがさらに増します。特に有名なのが「テキーラ娘」への女装シーンです。屈強な肉体を無理やりドレスに詰め込み、門番を誘惑しようとするジョセフ。当然、即座に見破られますが、その際の「テキーラを持ってきたわよ」という図太い態度は、何度見ても笑いを誘います。
また、柱の男の一人・エシディシが、腕を切り落とされたショックで突然「あァァァんまりだァァアァ」と号泣するシーンも衝撃的です。敵の幹部が子供のように泣きじゃくり、挙句の果てに「スッキリした」とケロリとする姿は、読者の予想を遥かに超えるシュールさでした。
第3部:旅の途中で巻き起こるシュールな悲喜劇
エジプトへの長い旅を描いた第3部では、仲間同士の掛け合いの中に多くの笑いが仕込まれています。
特に人気が高いのが、花京院典明の「レロレロ」です。さくらんぼを舌の上で高速回転させるあの動きは、一度見たら忘れられません。最初は偽物(ラバーソール)がやっている奇行かと思いきや、後に本物の花京院も「レロレロレロレロ……」とやり出す展開には、誰もが「お前もやるんかい!」と突っ込んだはずです。
ポルナレフという存在自体も、第3部のコメディリリーフとして欠かせません。彼はなぜかトイレに関する災難に見舞われる宿命にあります。豚に尻を舐められそうになったり、正義(エンヤ婆)のスタンドによって便器を舐めさせられそうになったりと、その不憫さはもはや芸術的です。
承太郎とスティーリー・ダン(鋼入りのダン)の戦いも、結末が非常にコミカルでした。散々こき使われた承太郎が、最後にノートにびっしりと書き溜めた「ツケの領収書」を突きつけるシーン。あの無敵の承太郎が、律儀にメモを取っていたという事実が、最高のカタルシスと笑いを生んでいます。
もしジョジョの単行本を揃えてじっくり読み返したいなら、ジョジョの奇妙な冒険 第3部をチェックしてみてください。
第4部:日常に潜む奇妙すぎる隣人たち
杜王町を舞台にした第4部は、日常の中の異常を描いているため、シュールなギャグの宝庫です。
イタリア料理人、トニオ・トラサルディーの回は必見です。彼の料理を食べた億泰が、「ンマイなあああッ!!」と絶叫しながら、目玉が飛び出したり、肩から大量の垢が出たりするシーンは、グルメ漫画のパロディの極致。体の不調が治る過程が、ホラー映画のように描かれるギャップがたまりません。
また、天才漫画家・岸辺露伴の奇行も外せません。ジャンケンをするためだけに大人げなく跳躍したり、自分の家が火事になっている最中なのに、相手のイカサマを暴くことに執着して勝負を続けたり。彼の「だが断る」という名言も、極限の心理戦の中で放たれるからこそ、その潔すぎる強情さが笑いに変わります。
未確認生物(?)の支倉未起隆がサイコロに変身し、露伴から金を巻き上げようとする仗助に協力するエピソードも、ジョジョ屈指のギャグ回です。宇宙人ゆえに常識が通用せず、サイコロのままリバースしてしまうシーンは、シリーズを通してもトップクラスのインパクトがあります。
第5部:黄金の精神と狂気の「拷問ダンス」
第5部はギャングたちの過酷な抗争を描いていますが、だからこそ時折挟まれる「狂気」が際立ちます。
その筆頭が、敵を拘束した際に見せた「拷問ダンス」でしょう。ナランチャ、ミスタ、フーゴの3人が、ズッケェロの生首を前にして、突然ラジカセのスイッチを入れて踊り出すシーンです。アニメ版では異常なまでの作画気合でダンスが再現され、世界中でミーム化しました。緊迫した船上での出来事とは思えない、あの独特の間合いこそジョジョの真骨頂です。
また、新入りのジョルノに対する洗礼として、アバッキオがティーポットに「自分の尿」を入れて出す、通称「アバ茶」のシーン。それを察知したジョルノが、自分の歯をクラゲに変えて飲み干すという「超高度な返し」を含め、ギャングの世界の厳しさとシュールさが同居した名シーンです。
敵キャラにも愛すべきギャグ担当がいます。暗殺チームのギアッチョです。「ベニス」という呼び方にキレ、「フランスのパリは、フランス語で『パリア』って呼ぶのかあああーッ!?」と絶叫する彼の理不尽なキレ芸は、もはや様式美です。
第6部:監獄の中で繰り広げられるシュールな会話
第6部「ストーンオーシャン」は、刑務所という閉鎖空間だからこその濃いやり取りが魅力です。
エルメェス・コステロが、刑務所内でパンティーを売買して金を稼ぐシーンや、その際の計算高さは、彼女のたくましさを笑いと共に伝えてくれます。
また、物語の終盤、世界が加速して混乱を極める中で、アナスイが「ミッキーがいねえ!ミッキーはどこだッ!」と激昂するシーンも伝説的です。世界崩壊の危機よりも、ディズニーランドにキャラクターがいないことに納得がいかないという、その優先順位の狂いっぷりが、ジョジョらしいキャラクターの厚みを感じさせます。
ジョジョの世界観をより深く知るなら、画集もおすすめです。荒木先生の独特の色彩感覚を楽しめるJOJO A-GO!GO!などは、ファンのバイブルとなっています。
ジョジョの面白いシーンから学ぶ、独特の美学
さて、ここまで数々のエピソードを振り返ってきましたが、なぜ私たちはこれほどまでに「ジョジョのギャグ」に惹かれるのでしょうか。
それは、これらすべてのシーンに、キャラクターの「生」へのエネルギーが満ち溢れているからです。彼らは決して読者を笑わせようとして変なポーズをとったり、奇妙な台詞を吐いたりしているわけではありません。自分たちの目的を達成するために、その瞬間、最も「正しい」と信じた行動をとっているだけなのです。
その熱量が、私たちの常識の枠を超えたとき、笑いが生まれます。
- 誇り高き精神による、容赦ない拒絶
- 窮地を脱するための、なりふり構わぬ奇策
- 日常のこだわりを捨てきれない、人間臭い執着
これらはすべて、人間讃歌というテーマの裏返しでもあります。格好いいだけではない、滑稽で、泥臭くて、それでいて愛おしい。そんなキャラクターたちの生き様が、面白いシーンとして私たちの心に刻まれているのです。
ネット上でよく見かけるネタ画像も、原作の文脈を知ることで、その面白さは何倍にも膨れ上がります。もし、まだアニメしか見ていない、あるいは一部の巻しか読んでいないという方がいれば、ぜひ全巻を通してその「奇妙な空気感」を体感してみてください。
まとめ:ジョジョの面白いシーン20選!シュールなギャグから伝説の迷言まで徹底解説ッ!
「ジョジョの奇妙な冒険」は、バトルの緊張感と、予測不能なギャグが絶妙なバランスで共存している希有な作品です。
今回紹介したシーンは、長い歴史のほんの一部に過ぎません。第7部『スティール・ボール・ラン』でのジャイロの「ピザ・モッツァレラ」の歌や、第8部『ジョジョリオン』での突飛な設定など、ネタの源泉は今もなお湧き続けています。
ジョジョのギャグは、単なる箸休めではなく、キャラクターをより深く理解するための重要なピースです。次に読み返すときは、彼らがなぜその行動をとったのか、その「真剣さ」に注目してみてください。きっと、今まで以上に作品の深み(と笑い)にハマってしまうはずです。
もし、これからジョジョを読み始めたい、あるいは友人へのプレゼントを探しているなら、ジョジョの奇妙な冒険 文庫版 コミックセットなどを検討してみるのも良いでしょう。
あなたの「推しギャグシーン」はどこですか?
この記事をきっかけに、再びジョジョの奇妙な世界へ足を踏み入れていただければ幸いです。
黄金の精神を持って、日常のシュールを楽しみましょうッ!

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