『ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース』には、DIOから送り込まれた刺客が数多く登場します。その中でも、ひときわ異彩を放ち、読者から「敵ながら嫌いになれない」と絶大な支持を得ている男がいます。
そう、カウボーイハットを被り、タバコを燻らせるニヒルなガンマン、ホル・ホースです。
彼は圧倒的な強者ではありません。むしろ、ピンチになれば潔く逃げ出し、強い者に巻かれることを信条とする、ある種「人間臭い」キャラクターです。しかし、なぜ彼はこれほどまでにファンに愛され、スピンオフ作品の主役を張るまでになったのでしょうか。
今回は、ホル・ホースの独自の哲学から、チート級と噂されるスタンド能力、そして彼が愛される理由までを徹底的に掘り下げていきます。
ホル・ホースという男の「No.2の美学」と処世術
ジョジョの世界に登場する悪役の多くは、圧倒的な支配欲や、あるいは狂気的なまでのプライドを持っています。しかし、ホル・ホースは違います。彼の人生哲学(ポリシィ)は、実に現実的で、現代社会にも通じるような「賢さ」に満ちています。
「一番より二番」が最高という独特の価値観
ホル・ホースを語る上で絶対に外せないのが、「No.1だれよりもNo.2! これがホル・ホースの人生哲学だ」という名言です。
彼は自分が組織のトップに立ち、すべての責任を背負う器ではないことを自覚しています。それよりも、圧倒的な力を持つ「No.1」の影に隠れ、その恩恵を受けながら器用に立ち回る。この「二番手」としてのポジションを維持することに、彼はプロフェッショナルとしての矜持を持っています。
これは決して臆病なだけではありません。自分の限界を正確に把握し、その中で最大の結果を出すという、極めて高度なセルフプロデュース能力なのです。
敵を欺く前に「強い者に巻かれる」柔軟さ
彼はDIOという圧倒的な恐怖の象徴に対しても、一度は銃口を向けながらも、その底知れぬ実力差を察知するやいなや、即座に膝を屈して忠誠を誓い直しました。この潔すぎるまでの「手のひら返し」は、プライドに固執して命を落とす他の刺客たちとは一線を画す、彼の生存本能の強さを物語っています。
皇帝(エンペラー)の能力は実は最強クラス?
ホル・ホースのスタンド「皇帝(エンペラー)」は、一見するとただの拳銃型のスタンドです。しかし、その特性を深く読み解くと、ジョジョの全スタンドの中でも屈指の使い勝手の良さを誇ることがわかります。
弾丸の軌道を自由自在に操る「必中」の性能
「皇帝」の最大の特徴は、発射された弾丸がスタンドの一部であるため、ホル・ホースの意思で空中で軌道を曲げられる点です。
劇中では、ポルナレフの剣の隙間を縫うように弾丸を這わせたり、障害物を回避して標的を仕留めようとしたりと、物理法則を無視した精密操作を見せました。また、銃そのものがスタンドであるため、取り出す動作が不要で、金属探知機にもかかりません。
さらに、弾丸もスタンドなので「弾切れ」という概念がなく、エネルギーが続く限り無限に撃ち続けられます。もしホル・ホースに承太郎のような「真っ向勝負」の精神があれば、これほど恐ろしい暗殺者はいないでしょう。
なぜホル・ホースは単独で戦わないのか
これほど強力な能力を持ちながら、彼は常に「コンビ」で戦うことを好みます。J・ガイルやボインゴといったパートナーと組むことで、自分の弱点である「正面突破の難しさ」を補い、必勝の布陣を敷こうとするのです。
作者である荒木飛呂彦先生も、一時期はホル・ホースをジョースター一行の仲間に加える構想を持っていたと言われています。しかし、「能力が便利すぎて物語の緊張感がなくなる」という理由で見送られたというエピソードがあるほど、彼のスタンドはポテンシャルの塊なのです。
女性への甘さと、にじみ出るプロフェッショナリズム
ホル・ホースが女性ファンからも、そして男性ファンからも「憎めない」と言われる理由の一つに、彼の女性に対するスタンスがあります。
嘘をつくのも「女を幸せにするため」
彼は自称「世界中の女を愛している男」です。行く先々で女性を口説き、甘い言葉を並べ立てます。しかし、それが単なる女たらしで終わらないのが彼の魅力。
「女をだますのが俺の信条だが、それは女を幸せにするための嘘だ」という彼の言葉には、妙な説得力があります。実際に、彼は利用した女性に対しても、最低限の敬意や優しさを見せることがあります。そのチャラさの裏にある、彼なりの「騎士道精神」のようなものが、読者を惹きつけてやまないのです。
失敗しても「プロ」として立ち上がる執念
彼は何度もジョースター一行に敗北し、そのたびにボロボロになりながら逃げ延びます。しかし、そこで心が折れることはありません。次の機会には、また別のパートナーを見つけ、周到な準備(あるいは予言への依存)をして現れます。
この「しぶとさ」こそが、ホル・ホースが第3部において、DIOの刺客の中で最も長く生存し、何度も登場した理由でしょう。
運命に翻弄された男のコミカルな末路
ホル・ホースの活躍(?)の中で、最も印象深いのがボインゴと組んだ際のエピソードです。
予言を信じすぎたがゆえの自爆
ボインゴのスタンド「トト神」の予言は100%当たります。ホル・ホースはその予言を信じ切り、承太郎の鼻に指を突っ込むという、およそシリアスな暗殺者とは思えない行動に出ます。
しかし、最後には「予言の時間」を数え間違えたことで、自分の放った弾丸が自分に跳ね返ってくるという、あまりにも皮肉でコミカルな結末を迎えました。この「詰めが甘い」ところも、彼が多くのファンに愛される「愛されキャラ」たる所以です。
スピンオフで描かれた「その後のホル・ホース」
第3部でリタイアしたホル・ホースですが、近年のスピンオフ作品『クレイジー・Dの悪霊的失恋』では、なんと主役として再登場を果たしました。
杜王町で東方仗助と共闘する熱い展開
舞台は第3部から10年後の日本。かつての刺客としての鋭さを残しつつも、どこか哀愁を漂わせる大人のホル・ホースが描かれています。
ここで彼は、かつての仲間(あるいは宿敵)であったジョースター一行の意志を継ぐ者たちと関わることになります。第3部では見られなかった、彼の内面的な成長や、過去への向き合い方が丁寧に描写されており、ファン必読の内容となっています。
ジョジョの世界観をより深く知りたい方は、漫画作品をジョジョの奇妙な冒険でチェックしてみるのも良いでしょう。
【ジョジョ】ホル・ホースの魅力と強さを徹底解説!なぜ憎めない人気者なのか?
ホル・ホースというキャラクターを振り返ってみると、彼は決して「完成された英雄」ではありません。臆病で、調子が良くて、女性に甘い。しかし、自分の弱さを認め、その上でしぶとく生き抜こうとする彼の姿は、あまりにも人間味に溢れています。
圧倒的なカリスマを持つDIOや、黄金の精神を持つ承太郎たちの陰で、泥臭く「No.2」として立ち回り続けたホル・ホース。彼の生き様は、完璧ではない私たち読者に、どこか勇気を与えてくれるのかもしれません。
もしあなたが、まだ彼の活躍を詳しく追っていないのであれば、改めて第3部を読み返してみてください。きっと、最初に読んだときよりもずっと、この「世界で一番かっこいい二番手」のことが好きになっているはずです。

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