「ジョジョの奇妙な冒険 第3部」を語るうえで、絶対に外せない「胸糞悪さ」と「最高のカタルシス」を提供してくれる敵といえば誰でしょうか?
そう、DIOの刺客として登場したスティーリー・ダン、そして彼のスタンド「ラバーズ(恋人)」です。
自らを「この世で一番小さく、最弱のスタンド」と称しながら、承太郎たちをこれでもかと追い詰めたあの卑劣な戦術。そして、ジョジョ史上最長とも言われる伝説の「オラオララッシュ」。
今回は、ラバーズの驚異的な能力の仕組みから、本体ダンの救いようのない小者ぶり、さらにはファンなら知っておきたい名前の元ネタまで、その魅力を徹底的に掘り下げていきます。
自称「最弱」のスタンド、ラバーズの真の恐ろしさ
鋼入りのダンが操るスタンド「ラバーズ(恋人)」は、顕微鏡でなければ姿を捉えられないほど小さな、蚤(のみ)のようなサイズをしています。
通常のスタンドバトルでは「破壊力」が重視されますが、ラバーズの破壊力評価は最低ランクのE。しかし、その小ささこそが、承太郎たちを絶望の淵に叩き込んだ最大の武器でした。
感覚の共有と増幅という「詰み」の能力
ラバーズの最も恐ろしい点は、相手の脳内に侵入し、本体であるダンが受けたダメージを「数倍から数十倍」に増幅してターゲットに伝えることにあります。
劇中では、ジョセフ・ジョースターの脳内に侵入。ダンが自分の指を少し傷つけるだけで、ジョセフには耐え難い激痛が走り、ダンが鼻をへし折られれば、ジョセフの鼻は爆発せんばかりのダメージを受けるという、とんでもない反射ダメージ能力を見せつけました。
「俺を攻撃すれば、人質が死ぬ」
このシンプルかつ絶対的な優位性を盾に、ダンは最強の男・承太郎を完全に無力化しました。
脳細胞を蝕むエグい攻撃
ただ痛みを伝えるだけではありません。ラバーズは脳内の細胞を直接破壊したり、DIOの「肉の芽」を植え付けたりすることも可能です。
さらに、脳内の細胞をこねて自分自身のダミー(分身)を大量に作り出すという、精密かつ嫌らしい攪乱工作まで披露しました。花京院のハイエロファントグリーンやポルナレフのシルバーチャリオッツが脳内へ突入した際も、この分身能力によって苦戦を強いられることになります。
鋼入りのダン(スティーリー・ダン)という徹底した小者キャラ
ジョジョには魅力的な悪役が多いですが、ダンはその中でも「吐き気を催す邪悪」の小者バージョンとして際立っています。
承太郎への執拗な嫌がらせ
ジョセフを人質に取ったダンは、承太郎に対して徹底的な屈辱を与えます。
- 承太郎を地面に這わせ、自分の「橋」にする。
- 靴の汚れを拭かせる。
- 売店でジョジョの奇妙な冒険のコミックスを万引きさせるかのような、卑劣な命令を下す。
これらはすべて、承太郎のプライドをズタズタにするための行為です。ダンは単に任務を遂行するだけでなく、強い者が自分に膝を屈する様子を見て楽しむ、極めて歪んだ性格の持ち主でした。
余裕がなくなった途端の豹変
あれほど強気だったダンですが、ジョセフの脳内からラバーズが追い出され、形勢が逆転した瞬間の変わり身の早さは見事なものでした。
泣いて許しを請い、隙を見ては近くにいた少女を人質に取ろうとする。ジョジョにおける「黄金の精神」とは真逆に位置する、徹底した「漆黒の卑劣さ」が彼のキャラクターを完成させています。
音楽ファンもニヤリ?元ネタと名前の由来
荒木飛呂彦先生の作品といえば、洋楽のアーティスト名や曲名がキャラクターの由来になっているのは有名な話ですよね。
本体:スティーリー・ダン
ダンの名前の由来は、アメリカのロックバンド「Steely Dan(スティーリー・ダン)」です。
実際のバンドは、ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーによるユニットで、完璧主義的なサウンド構築で知られています。作中のダンも、ある意味では「自分のペースに相手を完璧にハメ込む」という点において、その名前を体現していたのかもしれません。
スティーリー・ダン CDを聴きながら原作を読むと、また違った雰囲気を感じられるはずです。
スタンド:ラバーズ(恋人)
スタンド名の由来は、タロット大アルカナの6番目のカード「THE LOVERS(恋人)」。
一般的には「選択」「調和」「結合」といったポジティブな意味を持ちますが、ジョジョの世界では「離れたくても離れられない」「体の中に居座る」という恐怖の象徴として描かれました。タロットのカードデザインに描かれる天使の姿とは裏腹に、その中身は醜悪な虫のような姿であるというギャップも、荒木流の皮肉が効いています。
伝説の「オラオララッシュ」と領収書
ラバーズ戦の結末は、ジョジョ全史の中でも屈指の爽快感を誇ります。
怒りの蓄積を清算する「領収書」
ダンが承太郎に強いた数々の屈辱。承太郎はそれらを忘れることなく、メモ帳に「貸し」として記録していました。
「おまえの払う代償は……金では払えんぜ」
このセリフとともに突きつけられたメモは、まさにダンにとっての死刑宣告。承太郎の静かな怒りが頂点に達した瞬間でした。
史上最長、3ページにわたる制裁
アニメ版でも語り草になっているのが、この時の「オラオララッシュ」の長さです。
原作マンガでは、なんと見開きを含む3ページ丸々を使って、ダンが殴られ続ける描写がなされました。アニメでは約20秒間、ひたすら「オラオラ」の叫びとともに拳が叩き込まれています。
これほどまでに長く殴られた敵は他にいません。それは、ダンが行った行為がいかに承太郎の逆鱗に触れたかを物語っています。最後は吹っ飛ばされて看板に激突し、再起不能(リタイア)。読者の誰もが「ざまあみろ!」と思ったことでしょう。
ラバーズは本当に「最弱」だったのか?
劇中、ダンは「俺のスタンドは世界一小さく、そして最弱だ」と言い切りました。しかし、ファンの間では「使い方によっては最強の一角ではないか?」と議論されることがよくあります。
暗殺者としての完成度
もしダンが、承太郎たちの前に姿を現さず、遠距離から隠密にラバーズを潜入させていたらどうなっていたでしょうか。
射程距離は数キロメートル。寝ている間に脳内に入り込まれ、血管を一本切られるだけで、どんな強者もなすすべなく命を落とします。
ラバーズの弱点は、本体であるダンの「慢心」と「自己顕示欲」にありました。自分の優位を見せつけたい、相手が苦しむ顔を近くで見たいという欲望が、最強になり得た能力を敗北へと導いたのです。
ジョジョのラバーズ(恋人)は最弱?鋼入りのダンの能力と最期、元ネタまとめ
「ジョジョの奇妙な冒険」第3部におけるラバーズ戦は、スタンドバトルの真髄である「知略と精神力の戦い」を象徴するエピソードでした。
- ラバーズは、サイズこそ最小だが、感覚共有によって相手を詰ませる強力な能力。
- 鋼入りのダンは、人質を利用して承太郎を屈服させる、シリーズ屈指の卑劣な小者。
- 元ネタは洗練された音楽ユニット「スティーリー・ダン」と、皮肉を込めたタロット「恋人」。
- 最期は、積もり積もった「借り」を返す伝説のロング・オラオララッシュで沈む。
改めて振り返ると、ラバーズというスタンドは、単純なパワーバランスだけでは測れないジョジョの面白さを教えてくれます。もしあなたがジョジョ 第3部 カラー版を読み返すなら、ぜひダンの小者な言動一つひとつに注目してみてください。最後に承太郎が放つ一撃の重みが、より一層増して感じられるはずです。
ジョジョのラバーズ(恋人)は、その最弱という触れ込みとは裏腹に、読者の心に「最強のインパクト」を残した、決して忘れられない存在なのです。

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