ジョジョの奇妙な冒険、第1部「ファントムブラッド」。その物語の中で、主人公ジョナサン・ジョースターの前に立ちはだかった強敵は数多くいますが、読者の心に最も深く、そして美しく刻まれたキャラクターといえば、やはり「黒騎士ブラフォード」ではないでしょうか。
ディオによってゾンビとして蘇らされながらも、最期には人間としての誇りを取り戻した彼の生き様は、まさに「黄金の精神」の先駆けとも言えるものでした。今回は、そんなブラフォードの圧倒的な魅力と、彼が遺した「幸運と勇気の剣」に込められたメッセージを徹底的に深掘りしていきます。
伝説の黒騎士ブラフォードと女王メアリーへの忠誠
ブラフォードを語る上で欠かせないのが、彼がゾンビになる以前、16世紀のスコットランドで生きていた頃の背景です。彼は単なる戦士ではなく、時の女王メアリー・スチュアートに仕えた伝説的な騎士でした。
二人の英雄、ブラフォードとタルカス
ブラフォードには、共に戦場を駆けた相棒がいました。それが、巨漢の戦士タルカスです。二人は「双首竜公(ライオン)」の試練を乗り越え、騎士の最高位にまで登り詰めた英雄でした。ブラフォードは、しなやかで美しい身のこなしと、自らの長い髪を自在に操る独特の技術を持っており、力任せのタルカスとは対照的な「静」の強さを象徴する存在でした。
裏切りの処刑と消えない怨念
しかし、彼らの忠誠心は残酷な結末を迎えます。政争に敗れた女王メアリーを救うため、ブラフォードとタルカスは自らの命を差し出す取引に応じました。ところが、冷酷なエリザベス1世の側近たちは約束を反故にし、女王の処刑を執行した上で、ブラフォードたちをも処刑台へと送ったのです。
この時、ブラフォードが抱いた絶望と世界への呪い。それが、数百年後にディオ・ブランドーの手によってゾンビとして呼び覚まされる「負のエネルギー」の源となってしまいました。
死髪舞剣(ダンス・マカブレイ)の脅威とジョナサンとの死闘
ディオの刺客としてジョナサンの前に現れたブラフォードは、生前の剣技に加え、ゾンビとしての特殊能力を駆使して一行を追い詰めました。
髪の毛を自在に操る戦慄の能力
ブラフォードの代名詞とも言えるのが、自らの長髪を触手のように操る「死髪舞剣(ダンス・マカブレイ)」です。
- 拘束と吸血: 髪の毛一本一本が鋼鉄のような強度を持ち、敵を絡め取ります。さらに、毛穴を通じて相手の血液を直接吸い取るという、吸血鬼の配下らしい恐ろしい性質を持っていました。
- 水中での圧倒的優位: 風の騎士の合宿所近くの湖での戦いでは、水中という呼吸が制限される環境下でジョナサンを圧倒。髪をスクリューのように回転させて泳ぎ、ジョナサンの酸素を奪い取る戦法は、読者に絶望感を与えました。
ジョナサンの機転と波紋の炸裂
この窮地を救ったのは、ジョナサンの機転でした。水底に沈んでいた空気を波紋で操り、ブラフォードに渾身の一撃を叩き込みます。しかし、この戦いの真の価値は、ダメージの応酬ではなく、戦いの中で芽生えた「魂の共鳴」にありました。
痛みは人間である証。誇り高き魂の浄化
ジョナサンの放った波紋がブラフォードの体を駆け巡ったとき、奇跡が起こります。ゾンビとして肉体を維持していた邪悪なエネルギーが浄化され、ブラフォードの心に「人間としての感覚」が戻ってきたのです。
「痛み」を受け入れる美学
波紋によって肉体が崩壊し始めたブラフォードに対し、ジョナサンは複雑な表情を見せます。しかし、ブラフォードは穏やかな微笑みを浮かべました。彼にとって、波紋による痛みは「自分が怪物ではなく、一人の人間として死ねる」という証明だったからです。
「この痛みこそ……人間であった証……」
このセリフは、ジョジョシリーズにおける名言の中でも特に人気が高いものです。復讐心に燃えていたかつての黒騎士が、ジョナサンの高潔な意志に触れることで、ようやく女王への忠誠と騎士の誇りを取り戻した瞬間でした。
幸運(LUCK)から勇気(PLUCK)へ!受け継がれる剣の意志
ブラフォードが消滅の間際、ジョナサンに託したもの。それが、かつて女王から授かった愛剣です。この剣を巡るエピソードは、ジョジョ第1部のテーマを象徴する重要なポイントとなっています。
血で刻まれた「P」の文字
ブラフォードの剣の柄には、もともと「LUCK(幸運)」という文字が刻まれていました。しかし、彼は死の直前、自らの指から流れる血でその頭に「P」の文字を書き加えました。
これにより、剣の名前は「PLUCK(勇気、引き抜く力)」へと変わったのです。
なぜ「幸運」だけでは足りないのか
ブラフォードは、自分の人生を振り返り、女王を守れなかった自らの無力を悟っていたのかもしれません。運に頼るのではなく、自らの意志で未来を切り拓く「勇気」こそが、これからディオという巨悪に立ち向かうジョナサンに必要なものだと確信したのでしょう。
この剣は、後にディオの居城での決戦において、ジョナサンの大きな力となります。もしこの剣がなければ、ディオの気化冷凍法による「触れた瞬間に凍らされる」という防御を突破することは困難だったはずです。ブラフォードの意志は、物理的な武器としてだけでなく、ジョナサンの心を支える盾としても機能したのです。
ブラフォードが後世のジョジョシリーズに与えた影響
実は、ブラフォードというキャラクターが提示した「敵ながら天晴れな騎士道精神」は、その後のジョジョシリーズの伝統となって受け継がれています。
ワムウへと繋がる「誇り高い敵」の系譜
第2部のワムウ、第3部のンドゥール、第5部のリゾットやプロシュート。ジョジョには、目的や立場は違えど、自分の信念に命を懸ける魅力的な敵キャラクターが多数登場します。その原点は、間違いなくこの第1部のブラフォードにあります。
戦いを通じて互いを認め合い、敗者が勝者に何かを託して消えていく。この美しい構図が確立されたからこそ、ジョジョは単なる勧善懲悪の物語に留まらない、深みのある人間ドラマとなったのです。
ジョジョのフィギュアやグッズを集めているファンの方なら、ブラフォードの雄姿を再現したジョジョの奇妙な冒険 フィギュアなどを手元に置いて、彼の騎士道に思いを馳せてみるのも良いかもしれません。
ジョジョ1部ブラフォードの魅力とは?騎士道の精神と「幸運と勇気の剣」の感動を解説:まとめ
ブラフォードは、ディオの影に隠れがちな初期の敵キャラクターではありますが、その存在感は物語の根幹を支えるほどに強大です。
スコットランドの伝説から始まり、悲劇の処刑を経てゾンビとなり、最後はジョナサンという「真の紳士」に出会うことで救われた彼の魂。彼が残した「PLUCK」の文字は、私たち現実世界の読者にとっても、困難に立ち向かう際の合言葉のような響きを持っています。
- 忠誠心: 女王のために命を捨てた高潔な過去。
- 特殊能力: 髪を操る「死髪舞剣」という唯一無二のスタイル。
- 魂の浄化: 波紋によって痛みを取り戻し、人間として逝った最期。
- 剣の継承: 幸運を勇気に変え、ジョナサンに未来を託した意思。
これらの要素が組み合わさり、ブラフォードというキャラクターは今なお色褪せない輝きを放っています。もし、改めて第1部を読み返す機会があれば、ぜひ彼の指先が刻んだ「P」の文字に注目してみてください。そこには、運命に抗い、誇りを守り抜いた一人の男の熱い魂が宿っています。
ジョナサンとブラフォード、二人の騎士が交わした魂の対話は、まさにジョジョの奇妙な冒険の原点。この感動を胸に、再びファントムブラッドの世界に浸ってみてはいかがでしょうか。
ブラフォードの活躍をアニメでチェックしたい方は、ジョジョの奇妙な冒険 Blu-rayなどで、あの名シーンを映像と音楽(特にあの緊迫した劇伴!)と共に楽しむのもおすすめです。
次は、ブラフォードの相棒であったタルカスの狂気や、ツェペリ男爵の最期についても掘り下げてみたいですね。ジョジョの世界は、知れば知るほど新しい発見と感動に満ちています。

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