「道をゆずる」という、日常で当たり前に行われるマナー。しかし、もしその相手が「執念深いスタンド使い」だったら?
『ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース』において、もっともホラー映画的な恐怖を描いたエピソードといえば、タロットカード10番目の暗示を持つスタンド「ホイール・オブ・フォーチュン(運命の車輪)」との死闘です。
パキスタンからインドへ向かう険しい山道。突如として現れた正体不明のバギーカーが、承太郎一行を絶望の淵へと追い詰めます。今回は、この「ホイール・オブ・フォーチュン」の能力や本体ズィー・ズィーの正体、さらにはファンならニヤリとする元ネタの映画設定まで、その魅力を徹底的に深掘りしていきましょう!
スタンド「ホイール・オブ・フォーチュン」の正体と異質な能力
ジョジョのスタンドには大きく分けて「精神エネルギーが像を結ぶタイプ」と「実在する物質に憑依・同化するタイプ」の2種類がありますが、ホイール・オブ・フォーチュンは後者の代表格です。
物質変貌型・一体化型スタンドの脅威
このスタンドの最大の特徴は、ベースとなる「車」が存在することです。一見するとただの中古車ですが、本体であるズィー・ズィーのスタンドパワーによって、その形状を自由自在に変貌させます。
最初はどこにでもあるようなボロいセダンとして登場し、承太郎たちのジープを煽り倒します。しかし、本性を現してからは、巨大なタイヤとスパイクを備えた、まるで世紀末の荒野を駆けるような凶悪なオフロードマシンへと変形しました。
実体のある物質と一体化しているため、スタンド使いではない一般人にもその姿が見えるのが特徴です。そのため、ジョジョの世界における「物理的な破壊力」と「スタンド特有の超常現象」を併せ持った、非常に厄介な敵として立ちはだかりました。
驚異のスペックと攻撃手段
スタンドパラメータを見ると、持続力が「A」となっており、一度狙った獲物をどこまでも追い詰める執念深さが現れています。
- 高圧ガソリン弾: ガソリンを針のように細く、超高圧で噴射する技です。その威力は、岩石を貫き、あのスタープラチナの防御すら突破して承太郎の体に食い込むほど。
- 点火攻撃: 自身のスパークプラグから火花を飛ばし、ガソリンを浴びせた相手を一瞬で火だるまにします。
- 断崖絶壁の走行: タイヤからスパイクを突き出し、垂直に近い崖すらも平然と登り切ります。「道がない」という逃げ道を完全に塞ぐ絶望感は、まさに運命の車輪の名にふさわしいものでした。
本体「ズィー・ズィー(ZZ)」のギャップと謎の腕
ホイール・オブ・フォーチュンを操る本体、ズィー・ズィー(ZZ)。彼はジョジョ3部の刺客の中でも、もっとも「見た目のインパクトと正体のギャップ」が激しいキャラクターとして知られています。
なぜ腕だけが異常に太いのか?
車内から承太郎たちを挑発する際、窓から出された彼の腕は、ボディビルダーをも凌駕するほど筋肉隆々で、血管が浮き出た異常な太さでした。これを見た承太郎たちは「かなりの大男が乗っている」と確信します。
しかし、いざ車から引きずり出してみると、その正体は小柄で貧弱な男。腕だけが異常に発達していたのか、あるいは「腕もスタンドの一部として変形させていた」のか、その真相は明言されていません。しかし、ハンドルを握り、車と一体化して戦う彼にとって、腕こそがもっとも重要な「武器」だったことは間違いありません。
伝説のメタ発言「勝った!第3部完!」
ズィー・ズィーを語る上で外せないのが、承太郎をガソリンで火だるまにした際に見せた、あの慢心全開のセリフです。
「勝った!第3部完!」
読者や視聴者に向かって、物語そのものが終わったと宣言するこのメタフィクション的な演出は、ジョジョファンの間で語り草になっています。この直後に大逆転されるという「フラグ回収」の美しさも含め、彼はある意味で非常に愛されている敵キャラと言えるでしょう。
元ネタはスピルバーグの傑作映画『激突!』
荒木飛呂彦先生が映画好きであることは有名ですが、このホイール・オブ・フォーチュンのエピソードは、スティーヴン・スピルバーグ監督の初期の名作映画『激突!(Duel)』への深いリスペクト(オマージュ)で構成されています。
追い詰められる恐怖の共通点
映画『激突!』は、平凡なビジネスマンが運転する乗用車が、大型のタンクローリーを追い越したことをきっかけに、ひたすら命を狙われ続けるという物語です。
- 相手の顔が一切見えない不気味さ。
- 抜かさせようとして対向車と衝突させようとする罠。
- どこまでも、執拗にバックミラーに映り続ける恐怖。
ジョジョにおけるズィー・ズィーの戦法は、この映画のプロットをスタンドバトルに見事に昇華させたものです。特に、国境付近の荒野という舞台設定が、逃げ場のない孤独な恐怖をより一層引き立てていました。
車種のデザインと影響
ベース車は70年代のシボレー・ノヴァなどのアメ車セダンを彷彿とさせますが、後半のトゲトゲしい改造具合は、映画マッドマックスシリーズの影響も色濃く感じられます。
当時のジャンプ読者にとって、こうした「海外映画のテイスト」を少年漫画に持ち込む荒木先生の手法は非常に新鮮で、大人の色気を感じさせるエピソードとなりました。
承太郎はいかにしてこの難敵を倒したのか?
圧倒的なパワーと地形を無視した機動力、そしてガソリンによる火攻め。承太郎はかつてない窮地に立たされます。
絶体絶命からの「穴」
服に染み込んだガソリンに引火し、全身が炎に包まれた承太郎。勝利を確信したズィー・ズィーでしたが、承太郎は一瞬の隙を突いて「スタープラチナ」で地面に深く穴を掘り、地下に潜り込んで延焼を防いでいました。
この「一瞬で土を掘る」という発想と、それを可能にするスタープラチナの超人的なスピード。パワーだけでなく、冷静な状況判断こそが承太郎の真骨頂です。
決着と「俺たちは先に行くぜ」
地面から飛び出したスタープラチナの一撃が、ホイール・オブ・フォーチュンの車体を下から突き上げ、本体のズィー・ズィーを車外へ放り出しました。
本体が気を失うと、スタンド能力が解け、あれほど凶悪だった車はただのボロボロの中古車へと戻ります。ジョースター一行は、気絶したズィー・ズィーを鎖で岩に縛り付け、お仕置きとして「俺たちは先に行くぜ」という書き置きを残して去っていきました。
この、敵を殺すのではなく「再起不能(リタイア)」に追い込み、少し皮肉を込めて立ち去るスタイルは、3部における旅の醍醐味でもあります。
記事のまとめ:ジョジョ3部「ホイール・オブ・フォーチュン」徹底解説!車種の元ネタや倒し方は?
「運命の車輪」という名前を持ちながら、その実態はガソリンと執念にまみれた泥臭い戦いを見せてくれたホイール・オブ・フォーチュン。
このエピソードを改めて振り返ると、以下のポイントが際立ちます。
- 一体化型の恐怖: 物理的な質量とスタンドパワーが融合した際の絶望感。
- 映画へのオマージュ: スピルバーグの『激突!』をベースにした、緊迫感あふれる演出。
- 本体の小物感: 強大な能力と裏腹なズィー・ズィーのキャラクター性が生むギャップ。
- 承太郎の冷静さ: 燃えながらも「地下に逃げる」という奇策を講じる知略。
ジョジョ3部は、タロットの暗示に従って次々と刺客が現れますが、これほど「乗り物」の恐怖をダイレクトに描いた回は他にありません。もし、あなたがドライブ中にバックミラーに不気味な車を見つけたら……それは運命の車輪かもしれません。
ジョジョ3部を読み返す際は、ぜひジョジョの奇妙な冒険 第3部 カラー版などで、その迫力あるカーチェイスをチェックしてみてください。
今回紹介した**ジョジョ3部「ホイール・オブ・フォーチュン」徹底解説!車種の元ネタや倒し方は?**という視点で物語を見直すと、荒木先生が仕掛けた細かな演出や、承太郎の無敵っぷりがより一層楽しめるはずです。次はどのスタンド使いが、あなたの行く手を阻むのでしょうか。

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