『ジョジョの奇妙な冒険 第8部 ジョジョリオン』を読み進めていく中で、誰もが絶望を感じる瞬間があります。それが、謎に包まれたスタンド「ワンダー・オブ・ユー」の登場です。
「追ったら死ぬ」
このあまりにもシンプルで、かつ絶対的なルール。歴代のジョジョシリーズには、時間を止めたり、時間を巻き戻したり、あるいは運命を書き換えたりする強力なボスたちが登場してきましたが、ワンダー・オブ・ユーの異質さは群を抜いています。
今回は、この「ワンダー・オブ・ユー」の能力の仕組みから、なぜ最強と言われるのか、そして物語のクライマックスで明かされた唯一の倒し方まで、徹底的に解説していきます。これを読めば、ジョジョリオンという物語が描こうとした「世界の理」の正体が見えてくるはずです。
1. ワンダー・オブ・ユーの正体と異質な存在感
まず、このスタンドがこれまでのシリーズと決定的に違う点から見ていきましょう。通常、スタンドは本体の傍らに現れる「精神の具現」ですが、ワンダー・オブ・ユーはあまりにも自立しています。
「明負悟」という偽りの身分
このスタンドは、TG大学病院の院長「明負悟(あけふ さとる)」として社会の中に完全に溶け込んでいます。89歳という高齢の人間として振る舞い、講演会を行い、組織を動かしている。一般人にもその姿が見えており、誰もそれがスタンドだとは気づきません。
本体は岩人間の「透龍(とおる)」
その正体は、岩人間である透龍が操るスタンドです。しかし、透龍自身が細かく指示を出さずとも、スタンドは独自の意思を持っているかのように振る舞います。本体が遠く離れた場所にいても、あるいは別の場所で音楽を聴いてリラックスしていても、ワンダー・オブ・ユーは自動的に敵を排除し続けます。
この「社会的な地位を持っている」という点が、精神的な恐怖を加速させます。法的に守られた存在であり、追いかけようとすれば社会からも、そして「理」からも抹殺される。それがワンダー・オブ・ユーの恐ろしさの入り口です。
2. 厄災の能力:追いかける者への絶対的な罰
ワンダー・オブ・ユーの核心的な能力、それは「厄災(やくさい)」を操ることです。しかし、これは単に運が悪くなるというレベルの話ではありません。
発動条件は「追跡の意志」
この能力が発動するトリガーは、対象者がワンダー・オブ・ユー(または本体の透龍)を「追おう」とすることです。
「あいつの正体を暴きたい」
「後ろ姿を追いかけよう」
「攻撃を当てよう」
こうした能動的な意志を持った瞬間、その人物は「厄災の流れ」に組み込まれます。恐ろしいことに、直接的な攻撃だけでなく、「助けを呼びに行く」といった間接的な行動すらも追跡とみなされるケースがあります。
物質が「凶器」へと変貌する理
厄災の流れに入ると、周囲にあるありふれた物質が、物理法則を無視した破壊力を持つようになります。
例えば、降ってきた「雨粒」。通常なら肌を濡らすだけの水滴が、ワンダー・オブ・ユーの影響下では弾丸のような貫通力を持ち、人体を容易に貫きます。
例えば、舞い落ちた「木の葉」。それが肌に触れた瞬間、カミソリのように指を切り落とします。
あるいは、病院の待合室にある「椅子」。ちょっと足をぶつけただけで、まるで時速100キロの車に衝突したかのような衝撃を受け、骨が粉砕されます。
これらは偶然の事故ではありません。世界そのものが、追跡者を排除するために「牙を剥いている」状態なのです。
3. なぜ攻撃が当たらないのか?「条理」という壁
ジョジョのバトルにおいて、パワーやスピードで勝ることは勝利の絶対条件ではありませんが、ワンダー・オブ・ユーに関しては「物理的な接触」そのものが不可能です。
優先順位の書き換え
この能力の本質は、世界の「条理(ロジック)」を操作することにあります。
誰かがワンダー・オブ・ユーにパンチを繰り出そうとします。その拳が届くよりも先に、必ず「厄災」が割り込みます。
「拳が届く」という結果よりも、「追跡者がトラブルに遭う」という結果の方が、世界の優先順位として上位に設定されているからです。そのため、どんなに速いスタンドであっても、触れる前に必ず何らかの事故が起きて阻止されます。
敵意すらもエネルギーになる
興味深いのは、敵が強ければ強いほど、あるいは殺意が強ければ強いほど、降りかかる厄災も強大になるという点です。相手のエネルギーをそのまま「事故の規模」に変換して突き返す。この完璧なカウンター性能こそが、ワンダー・オブ・ユーを最強候補に押し上げている理由です。
4. 歴代スタンドと比較しても「最強」とされる理由
多くのファンが「歴代ボスの中でもトップクラスに攻略不能」と語るのには、明確な根拠があります。
射程距離の概念がない
通常のスタンドには「射程距離」があり、本体から離れるとパワーが落ちるのがルールです。しかし、ワンダー・オブ・ユーは「追跡」という概念をトリガーにするため、相手がどこにいても関係ありません。たとえ地球の裏側に逃げようとしても、正体を探ろうとする意志がある限り、厄災は追いかけてきます。
負のエネルギーの結晶
ワンダー・オブ・ユーは、透龍個人の力というよりも、この世に古来から存在する「不吉な流れ」そのものを形にしたような存在です。作中では、本体である透龍が力尽きた後も、スタンドの姿が消えずに残り続ける描写がありました。
これは「厄災」という現象がこの世から消えない限り、ワンダー・オブ・ユーという理も消えないことを示唆しています。個人のスタンドを超えた、一種の「世界のシステム」になってしまっているのです。
5. 唯一の希望:ソフト&ウェット「ゴー・ビヨンド」
これほどまでに完璧な防御と攻撃を兼ね備えた能力を、どうやって打ち破るのか。その答えは、ジョジョリオンの主人公、東方定助が至った「存在しないもの」にありました。
「この世に存在しない」から理に触れない
定助のスタンド「ソフト&ウェット」から放たれるしゃぼん玉。その正体は、実は極限まで細い「線」が高速回転しているものでした。
そして、その回転は「無限にゼロに近い」ため、この世の物理法則や、因果のルールに縛られません。
簡単に言えば、「この世に存在しない(実在しない)」攻撃なのです。
ロジックの外側からの狙撃
ワンダー・オブ・ユーの能力は、あくまで「この世の理(ルール)」の中でのみ機能します。「雨が降れば濡れる」「ぶつかれば壊れる」といった因果関係の中にいる存在には、厄災は絶対です。
しかし、定助の放った「ゴー・ビヨンド(越えて行く)」という一撃は、その因果の網の目にそもそも引っかかりません。
「存在しないから、厄災も認識できない」
認識できないものは防ぎようがありません。この「非論理」の攻撃こそが、鉄壁の「論理(条理)」を貫く唯一の矢となったのです。
6. ワンダー・オブ・ユーが物語に投げかけた問い
ジョジョリオンという物語を通じて、ワンダー・オブ・ユーは単なる「悪い敵」以上の役割を果たしていました。
私たちの日常にも、避けようのない不幸や不条理な事故は存在します。努力ではどうにもならない「厄災の流れ」に飲み込まれることもあります。作者の荒木飛呂彦先生は、そうした「世の中の理不尽」をワンダー・オブ・ユーという形にして描いたのではないでしょうか。
それに対して、主人公たちが「見えないもの」や「血のつながりを超えた意志」で立ち向かっていく姿は、理不尽な世界でどう生きるべきかというメッセージのようにも感じられます。
7. ワンダー・オブ・ユーの能力をより深く楽しむために
もし、この記事を読んで「もう一度ジョジョリオンを読み返したい」「まだ読んでいないけれど興味が湧いた」と思った方は、ぜひ単行本を手に取ってみてください。
特に、TG大学病院での攻防戦は、サスペンス映画のような緊張感が連続します。
ジョジョリオンまた、ワンダー・オブ・ユーの造形や、透龍のファッションなども非常に洗練されています。荒木先生の画力の真骨頂とも言えるデザインを、ぜひ大画面のタブレットや高精細な印刷でチェックしてほしいと思います。
iPadジョジョのスタンド戦は、知略と哲学のぶつかり合いです。ワンダー・オブ・ユーという巨大な壁を前に、定助たちがどのようにして「存在しない一撃」にたどり着いたのか。その過程を追うことで、作品への理解がより一層深まるはずです。
まとめ:ワンダー・オブ・ユーの能力とは?厄災の理と倒し方を徹底解説!
ここまで、ワンダー・オブ・ユーの驚異的な能力とその攻略法について解説してきました。
- 能力の本質: 追跡者に「厄災(因果的な事故)」を必中でぶつける世界の理。
- 強さの理由: 攻撃しようとする意志そのものが自滅の引き金になる絶望的なカウンター性能。
- 倒し方の鍵: 物理法則(理)に縛られない、この世に存在しない回転「ゴー・ビヨンド」。
ワンダー・オブ・ユーは、まさにジョジョ史上最も「触れてはいけない」スタンドでした。しかし、どれほど絶望的な「理」が支配する世界であっても、それを突破するわずかな「奇跡」を信じる心。それがジョジョの奇妙な冒険という作品が一貫して描いてきた「人間讃歌」なのかもしれません。
あなたなら、この「追ったら死ぬ」という呪いのような能力にどう立ち向かいますか?そんな想像をしながら読み返してみると、また新しい発見があるはずです。

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