『ジョジョの奇妙な冒険』第1部「ファントムブラッド」。すべての伝説が始まったこの物語において、ひときわ異彩を放つ脇役がいます。その名も、ワンチェン(王陳)。
「あぁ、あの毒薬を売ってた東洋人の老人ね」と思い出す方も多いでしょう。しかし、彼をただの「小悪党」や「使い走り」だと思ったら大間違いです。実はワンチェンこそが、ジョースター家の運命を狂わせ、そして物語を衝撃の結末へと導いた、超重要キャラクターなのです。
今回は、謎多き怪人ワンチェンの正体から、ディオとの奇妙な信頼関係、そして彼が物語で果たした決定的な役割まで、その魅力を徹底的に深掘りしていきます。ジョジョ好きなら知っておきたい、彼の「執念」の物語を紐解いていきましょう。
1. 始まりは毒薬から。ワンチェンの正体と初登場の衝撃
ワンチェンが初めて読者の前に姿を現したのは、ロンドンの暗部、悪名高き貧民街「食屍鬼街(オウガーストリート)」でした。彼はここで、まともな人間なら足を踏み入れないような場所で店を構える、謎の東洋人として登場します。
彼の表の顔は、まやかしの薬や怪しげな骨董を扱う商人。しかしその実態は、足のつかない「毒薬」を扱う闇の売人でした。
ディオとの運命的な出会い
ジョースター家の養子となり、爵位と財産を乗っ取ろうと企んでいたディオ・ブランドー。彼は養父であるジョースター卿を病死に見せかけて暗殺するため、ワンチェンのもとを訪れます。
ワンチェンが売った毒薬は、少しずつ体内に蓄積され、医師にも見抜けないという恐ろしい代物でした。この毒薬こそが、物語を動かす最初の引き金となります。ジョナサンが父の異変に気づき、解毒剤を求めてオウガーストリートへ向かったことで、スピードワゴンとの出会い、そしてディオとの決裂が確定したのです。
特徴的なビジュアルと不気味な存在感
ガリガリに痩せ細った体、長く伸びた爪、そして何より一度見たら忘れられないあの独特の風貌。当時のロンドンにおける「未知の東洋から来た怪人」というイメージを体現したようなキャラクターでした。
彼はただの商人ではありませんでした。相手の「運」や「本性」を見抜く、鋭い観察眼を持っていたのです。ディオの耳にある「3つの痣(強運の相)」にいち早く気づいたのも彼でした。
2. なぜディオに従ったのか?主従を超えた「心酔」の理由
物語の中盤、ディオが石仮面を被り吸血鬼化すると、ワンチェンもまた再登場を果たします。しかし、かつての「毒薬売り」の姿ではありません。ディオによって屍生人(ゾンビ)へと変えられ、忠実な下僕となっていたのです。
ここで興味深いのは、他のゾンビたちが知性を失った怪物として描かれる中で、ワンチェンだけが極めて高い知性と、ディオへの深い忠誠心を持ち続けていた点です。
悪のカリスマへの共鳴
ワンチェンがディオに従ったのは、単に吸血鬼の力に恐怖したからではありません。彼はディオの中に「悪の救世主」としての素質を見出していました。
「このお方は世界を支配するお方だ」
ワンチェンは心からそう信じ、ディオの野望を叶えることを自らの至上の喜びとしていました。ディオもまた、狡猾で口のうまいワンチェンを重用します。人間を辞めたディオにとって、自分の考えを理解し、かつ「毒」という共通のキーワードで繋がっていたワンチェンは、ある意味で最も話し相手に近い存在だったのかもしれません。
側近としての特殊な立ち位置
ディオの軍団には、切り裂きジャックやブラフォード、タルカスといった強力な戦士が揃っていました。しかし、常にディオの傍らに侍り、身の回りの世話から作戦の実行までをこなしたのはワンチェンです。
彼は戦士ではありませんが、ディオの「影」として、主人が望む準備をすべて整える完璧な秘書のような役割を担っていました。この主従関係は、どこか歪でありながらも、第1部における「悪の陣営」の結束を象徴するものでした。
3. 吸血鬼化したワンチェンの能力と戦闘スタイル
ゾンビとなったワンチェンは、人間の頃とは比較にならない身体能力を手に入れます。彼はジョナサン一行を追い詰めるため、その異形の力を存分に振るいました。
壁を這い、天井から襲う「蜘蛛」のような動き
ワンチェンの戦闘スタイルは、正々堂々とした武人とは真逆です。吸血鬼特有の吸盤のような手足の力を使い、壁や天井を縦横無尽に駆け巡ります。
暗闇から音もなく近づき、獲物の隙を突いて指先を突き立てる。その動きはまさに毒蜘蛛そのもの。パワー自慢の戦士とは違う、搦め手(からめて)を駆使する不気味な強さがありました。
相手を翻弄する狡猾な知略
彼は自分の力がジョナサンの波紋に正面から勝てないことを理解していました。そのため、常に地形を利用したり、相手の心理的な隙を突いたりする戦い方を好みます。
風騎士の街(ウィンドナイツ・ロット)での戦いでも、彼はディオの命を受け、ジョナサンたちを確実に仕留めるための罠を張り続けました。直接的な破壊力よりも「確実に任務を遂行する」という点において、ワンチェンは作中屈指の有能な部下だったと言えるでしょう。
4. クライマックスでの暗躍:ディオの首を運んだ男
ジョナサンの波紋によって肉体を焼かれ、首だけとなったディオ。絶体絶命のピンチを救ったのは、やはりワンチェンでした。
絶望の淵からの救出
ディオの首を抱え、燃え盛るジョースター邸から(あるいはウィンドナイツ・ロットの決戦場から)、彼は主人の命を繋ぎ止めました。首だけになっても傲慢さを失わないディオに対し、ワンチェンは恭しく、かつ献身的に尽くします。
このシーンこそが、ジョジョ第1部の結末を決定づける重要なポイントです。ワンチェンがいなければ、ディオはあの場で滅びていたでしょう。後の第3部における復活も、すべてはこの時のワンチェンの行動があったからこそなのです。
豪華客船での惨劇
新婚旅行中のジョナサンとエリナが乗り込んだ大西洋を渡る豪華客船。そこには、棺桶に潜んだディオの首と、彼を抱えたワンチェンがいました。
ワンチェンは船内の人々を次々と襲い、ゾンビの軍勢を作り出します。平和な旅の舞台を一瞬にして地獄へと変えたのは、彼の毒牙でした。ここで彼は、単なる下僕としての枠を超え、ジョナサンの幸福を根底から破壊する「死神」のような存在として立ちはだかったのです。
5. 衝撃の結末。ジョナサンの波紋に敗れたワンチェンの最期
しかし、悪の暗躍もそこまででした。瀕死のジョナサンが最後に振り絞った、生命のエネルギー「波紋」がワンチェンを捉えます。
「道具」として利用された最期
ジョナサンが放った最後の波紋は、ワンチェンの肉体を破壊するのではなく、その「動き」を制御するものでした。ジョナサンの意図通り、ワンチェンは自分の意志とは無関係に、船の動力部へと指を突き立てます。
「な、何をするんだ私の体! 止まれッ! 止まるんだッ!」
絶叫も虚しく、彼の吸血鬼としての強靭な指は、蒸気機関の重要な機構を破壊。船は爆発し、炎に包まれます。ディオのために尽くし続けた男が、最後はディオを死(眠り)へと追いやる爆発の引き金にされてしまったのです。
皮肉な因果応報
かつてジョースター家に「毒」を持ち込み、平和を壊したワンチェン。彼は最後、ジョナサンの「黄金の精神」によって、自分自身が平和を守る(悪を封じ込める)ためのパーツとして利用されました。
この皮肉な結末は、ジョジョにおける「正義」と「悪」の対比を見事に描き出しています。悪知恵と狡猾さで生き延びてきた男が、最も計算外の「自己犠牲」の力に屈した瞬間でした。
6. まとめ:ジョジョのワンチェンを徹底解説!ディオとの関係や正体、物語での役割を完全網羅
ワンチェンというキャラクターを振り返ってみると、彼がいかに物語のハブ(中継点)となっていたかがわかります。
- 毒薬の提供者:ジョナサンをオウガーストリートへ導き、物語を開始させた。
- ディオの理解者:ディオの悪の本質を愛し、その野望を物理的に支えた。
- 運命の伝達者:ディオの首を運び、ジョースター家との因縁を100年後へと繋いでしまった。
彼は決して主役ではありません。しかし、彼がいなければ『ジョジョの奇妙な冒険』は第1部で完結していたかもしれません。ディオという絶対的な悪のカリスマを、最も身近で支え続けた「最凶の側近」。その不気味で献身的な生き様は、今なおファンの心に強く残っています。
もし、あなたがこれから第1部を読み返すなら、ぜひワンチェンの動きに注目してみてください。彼がどれほど細かく、そして執拗にディオのために動いていたかを知ると、物語の深みがさらに増すはずです。
あの豪華客船の爆発の中で、彼は何を思ったのか。ディオへの忠誠か、それともジョナサンへの恐怖か。想像を膨らませながら、ジョジョの世界に浸ってみてはいかがでしょうか。
ジョジョの奇妙な冒険の深い世界をもっと楽しむために、原作コミックスジョジョの奇妙な冒険 第1部や、迫力ある演出が楽しめるアニメ版ジョジョの奇妙な冒険 Blu-rayをチェックするのもおすすめです。ワンチェンの不気味な活躍を、ぜひその目で確かめてください!


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