ジョジョの絵はなぜ上手い?荒木飛呂彦の画力が「芸術」と称される理由と進化の軌跡

ジョジョ
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「ジョジョの奇妙な冒険」という作品を、あなたはどう感じていますか?

独特のポージング、鮮烈な色彩、そして一度見たら忘れられないキャラクターたち。初めて誌面や画面で触れたとき、「なんだこの濃い絵は!」と衝撃を受けた方も多いはずです。中には「クセが強すぎて、最初は少し苦手だった」という声も耳にします。

しかし、連載開始から35年以上が経過した今、ジョジョの絵は単なる漫画の枠を完全に飛び越えています。ルーヴル美術館に原画が展示され、ハイブランドのGUCCIとコラボレーションを果たすなど、世界が認める「芸術(アート)」としての地位を確立しているのです。

なぜ、ジョジョの絵はこれほどまでに「上手い」と絶賛されるのでしょうか。そこには、作者・荒木飛呂彦先生が積み上げてきた、漫画の常識を覆す圧倒的な技術と理論が隠されています。

今回は、ジョジョの画力が天才的と言われる理由、そしてその絵がどのように進化してきたのか、その軌跡を徹底的に紐解いていきましょう。

1. 漫画の域を超えた「人体解剖学」と「黄金比」の魔法

ジョジョの絵が「上手い」と言われる最大の根拠は、その根底にある圧倒的な基礎体力の高さにあります。荒木先生の描くキャラクターは、どれほど奇抜な格好をしていても、不思議なほどのリアリティを感じさせます。

筋肉と骨格への深い洞察

荒木先生は、イタリア・ルネサンス期の彫刻、特にミケランジェロなどの作品から多大な影響を受けています。キャラクターの腕一本、指先一つをとっても、そこには解剖学的に正しい筋肉の隆起や骨のラインが描かれています。

多くの漫画がデフォルメ(簡略化)を重視する中で、ジョジョはあえて「写実」の要素を強く取り入れています。重力のかかり方や、ねじれた時の皮膚の寄り方など、医学書を彷彿とさせる緻密な描写が、スタンドという非現実的な存在に圧倒的な説得力を与えているのです。

計算し尽くされた「ジョジョ立ち」の秘密

作品の代名詞とも言える「ジョジョ立ち」。一見すると不自然に見えるあのポーズは、実は美術界で古くから使われている「コントラポスト」という技法を応用したものです。

コントラポストとは、片足に体重をかけ、肩と腰のラインをあえて斜めにずらすことで、静止画の中に「動き」や「エレガンス」を生み出す手法です。さらに、画面全体に「黄金比」を意識した構図を配置することで、読者の視線を完璧にコントロールしています。

どのコマを切り取っても、そのまま額縁に入れて飾れるような完成度の高さは、こうした緻密な計算の上に成り立っているのです。

2. 「色彩の魔術師」が描く感情と空気感の世界

ジョジョのカラー原画を見たことがあるでしょうか。空がピンク、地面が青、髪の毛が紫……。現実の色とはかけ離れた、サイケデリックで鮮やかな配色に驚かされるはずです。

感情を色で表現する手法

荒木先生は「このキャラクターはこの色」という固定観念を持ちません。その時のシーンの緊張感、キャラクターの怒りや悲しみといった「感情」に合わせて、色を自在に変化させます。

これはポール・ゴーギャンなどのポスト印象派に近いアプローチです。現実をそのまま写すのではなく、心象風景を色として表現する。この大胆な色彩感覚が、ジョジョという作品に唯一無二の幻想的な雰囲気を与え、読者を物語の奥深くへと引き込む装置になっています。

コピックやインクが生み出すアナログの極致

近年のデジタル作画全盛の時代にあっても、荒木先生のカラー原画はアナログの質感を大切にされています。重ね塗りによって生まれる奥行きや、インクの滲みが作る独特のグラデーション。

一筆一筆に魂が宿っているようなその質感は、印刷物を通じても私たちの心に強く訴えかけてきます。特に画集JOJOVELLERなどで確認できる原画の迫力は、まさに圧巻の一言です。

3. 時代と共に激変するスタイル:1部から9部への進化

ジョジョの面白さは、物語だけでなく、その「画風の変化」にもあります。35年以上の連載の中で、荒木先生の絵は驚くほどドラスティックに変化し続けてきました。

マッチョイズムから中性的な美しさへ

初期(第1部・第2部)は、当時の流行でもあった『北斗の拳』などの影響を感じさせる、筋肉隆々の力強い劇画タッチでした。しかし、第3部から第4部にかけて、キャラクターの体つきは徐々にスリムでしなやかになっていきます。

第5部以降になると、イタリアのファッション誌から抜け出してきたような、中性的で妖艶な美しさを持つキャラクターが増加します。線の一本一本が細く繊細になり、表情の陰影もより複雑になっていきました。

青年誌への移籍と「劇画」の再定義

第7部『スティール・ボール・ラン』で青年誌に移籍してからは、その画力はさらに神がかった領域へと突入します。背景の描き込み、馬の筋肉の躍動感、そして衣服のシボ感に至るまで、トーンに頼らず「線」だけで質感を表現するその技術は、もはや職人芸です。

常に過去の自分を否定し、新しいスタイルに挑戦し続ける。この向上心こそが、ジョジョの絵が古びることなく、常に最先端であり続ける理由なのです。

4. ファッションとデザインが融合したキャラクター造形

ジョジョを語る上で欠かせないのが、キャラクターが身に纏う「衣装」のデザイン性です。

ヴェルサーチやクリスチャン・ディオールへのリスペクト

荒木先生は熱心なファッション愛好家としても知られています。キャラクターの服には、ヴェルサーチクリスチャン・ディオールといったハイブランドのデザインエッセンスが散りばめられています。

単なる「服」ではなく、そのキャラクターの生き様や性格を雄弁に物語る「戦闘服」としてのデザイン。穴が開いていたり、奇抜な装飾がついていたりしても、それが「ジョジョの世界」では完璧に調和して見える。このバランス感覚は、並大抵のデザインセンスでは到達できません。

唯一無二の装飾美

ベルトのバックル、帽子のバッジ、服の模様に至るまで、細部へのこだわりが凄まじいのも特徴です。これらのディテールが積み重なることで、キャラクターに実在感と深みが生まれます。

読者はその緻密なデザインを眺めるだけでも楽しむことができ、それが「絵が上手い」という評価をさらに盤石なものにしています。

5. ルーヴルが認めた!世界がジョジョをアートと呼ぶ理由

「漫画は子供の読み物」という既成概念を打ち破り、ジョジョは美術界の頂点にまで登り詰めました。

日本人初のルーヴル美術館展示

フランス・パリにある世界最大級の美術館、ルーヴル美術館。そこで開催された「漫画プロジェクト」に、荒木先生は日本人として初めて参加しました。描き下ろし作品『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は、漫画という表現が、油絵や彫刻と並ぶ「第九の芸術」であることを世界に知らしめました。

国立新美術館での個展という快挙

2018年、東京の国立新美術館で「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」が開催されました。存命の漫画家が、国立の美術館でこれほど大規模な個展を開くのは、手塚治虫先生以来の快挙でした。

会場に展示された、2メートルを超える巨大な描き下ろし原画。そこに宿る筆致や色彩のエネルギーに、多くの来場者が言葉を失いました。もはや、漫画というジャンルで括ること自体が不可能な、純粋なアートとしての力がそこにはありました。

6. なぜ「絵が苦手」と感じる人がいるのか?

これほどまでに評価されているジョジョの絵ですが、一方で「どうしても受け付けない」という人が一定数いるのも事実です。しかし、その理由は「画力の低さ」ではなく、むしろ「画力が高すぎるゆえの違和感」にあります。

「不気味の谷」とリアリティ

ジョジョの絵は、人間の解剖学的なリアリティを追求しつつ、そこに独特のデフォルメを加えています。中途半端にリアルなものは、人間にとって本能的な「不気味さ」を感じさせることがあります。

また、ホラー映画的な演出や、生理的な嫌悪感を誘う敵キャラクターの描写も、荒木先生はあえて「上手く」描いてしまいます。その「上手すぎる恐怖」が、一部の読者には抵抗感として現れるのです。

記号化されない個性

多くのアニメや漫画は、読者が親しみやすいように顔のパーツを記号化(パターン化)します。しかし、ジョジョは一人ひとりの顔の骨格や唇の厚み、鼻の形を書き分けます。

この「個性の強さ」が、見慣れない人には「クセが強い」と感じさせてしまうのですが、一度その美学にハマると、他の漫画の絵が物足りなく感じてしまう……。そんな強力な中毒性がジョジョの絵には備わっています。

7. 画力向上のためのバイブル:『荒木飛呂彦の漫画術』

もしあなたが絵を描く人なら、荒木先生がその手法を惜しみなく公開している荒木飛呂彦の漫画術を手に取ってみることをおすすめします。

この本の中では、「キャラクターには身上調査書を作る」「黄金比を意識する」「色にはルールがある」といった、具体的なテクニックが論理的に解説されています。

ジョジョの絵が「上手い」のは、決して天性の才能だけで描いているからではありません。膨大な資料を読み込み、古典美術を研究し、それを漫画というエンターテインメントに落とし込むための「理屈」がそこにはあるのです。そのストイックな姿勢を知れば、一枚の絵に対する見方が180度変わるはずです。

8. ジョジョの絵はなぜ上手い?荒木飛呂彦の画力が「芸術」と称される理由と進化の軌跡

ここまで、ジョジョの絵が持つ多角的な魅力についてお伝えしてきました。

結論として、ジョジョの絵がこれほどまでに支持される理由は、単なる技術的な「正確さ」だけではありません。それは、荒木先生が掲げる「人間讃歌」というテーマが、キャラクターの筋肉の躍動、瞳の輝き、そして複雑な色使いの中に、魂として宿っているからです。

「ジョジョの絵はなぜ上手い?」という問いに対する答えは、荒木先生が常に現状に満足せず、古典から現代ファッションまでを吸収し、それを「自分の言葉(絵)」として進化させ続けているからに他なりません。

1部のマッチョなヒーローから、9部の現代的な若者たちまで。その筆跡を辿ることは、一人の芸術家が「人間とは何か?」を問い続けた歴史を辿ることでもあります。

もし、今まで絵柄を理由にジョジョを敬遠していたなら、ぜひ最新の画集やジョジョリオン、そして現在連載中の『The JOJOLands』を手に取ってみてください。そこには、漫画という枠を超えた、魂を揺さぶる最高峰の芸術世界が広がっています。

一度その扉を開ければ、あなたもきっと「ジョジョの絵」という迷宮から抜け出せなくなるはずです。

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