国民的漫画として今なお世界中で愛され続けているドラゴンボール。その長い歴史の中でも、物語のフェーズが「冒険」から「宇宙規模のバトル」へと劇的な転換を遂げたのが、この第17巻です。
16巻までの天下一武道会でマジュニア(ピッコロ)との死闘を制し、ついに地球の王者となった孫悟空。誰もが「これで平和が訪れた」と信じて疑わなかった矢先、物語は読者の予想を遥かに超えるスケールへと突入します。
今回は、全ファンが衝撃を受けた17巻の見どころや、初登場した孫悟飯のポテンシャル、そして謎に包まれていた悟空の正体について、熱量を込めて振り返っていきます。
突如現れた謎の男ラディッツと「戦闘力」の概念
17巻の幕開けは、あまりにも静かで、そして不気味です。平和を享受していたカメハウスに、見たこともない奇妙な装置を顔につけた大男が降り立ちます。彼の名はラディッツ。
ここで初めて登場するのが、後の作品作りにおいて革命的な発明となった「スカウター」と「数値化された戦闘力」です。
ラディッツが農夫に対して放った「戦闘力たったの5か…ゴミめ…」という台詞は、今やネットミームとしても有名ですが、当時の読者にとっては「強さが数字で見える」というシステム自体が極めて新鮮でした。
これまで「なんとなく凄い気」として感じていた強さが可視化されたことで、悟空やピッコロの数値がラディッツに遠く及ばないという絶望感が、よりダイレクトに伝わってきたのです。
悟空の衝撃的な正体!サイヤ人という宇宙人設定
ラディッツの口から語られた事実は、それまでの『ドラゴンボール』の世界観を根本から覆すものでした。
- 悟空は地球人ではなく、戦闘民族「サイヤ人」であること。
- 本名は「カカロット」であること。
- 赤ん坊の頃、地球人を絶滅させるために送り込まれたこと。
それまで、悟空の尻尾や大猿化は「不思議な体質」として片付けられていましたが、ここで一気に「SF(サイエンス・フィクション)」の要素が組み込まれます。鳥山明先生の構成力の凄まじさは、これまでのファンタジー要素を一切矛盾なく、宇宙規模の設定に接続させてしまった点にあります。
悟空が自分のアイデンティティを否定し、「オレは地球育ちの孫悟空だ!」と言い放つシーンは、彼のヒーローとしての根幹を象徴する名場面と言えるでしょう。
泣き虫な少年・孫悟飯の初登場と秘められた力
17巻を語る上で絶対に欠かせないのが、悟空の息子、孫悟飯の登場です。初登場時の悟飯は、四星球のついた帽子を被り、チチの教育によって「学者さん」を目指す、戦いとは無縁の大人しい子供でした。
しかし、父である悟空がラディッツに一方的に痛めつけられる姿を見た瞬間、彼の眠っていた才能が爆発します。
スカウターが弾き出した数値は「1307」。これは、その場にいた誰よりも高い数値でした。泣き叫びながらラディッツの装甲を突き破るほどの頭突きを食らわせたこのシーンは、後にセル編や魔人ブウ編で最強の戦士へと成長していく悟飯の「怒りによる覚醒」の原点です。
この親子二代にわたる物語の萌芽が、17巻には凝縮されています。
宿敵ピッコロとの共闘と魔貫光殺砲の誕生
ラディッツという絶対的な強者を前に、かつて世界征服を企んだ大魔王ピッコロが悟空に共闘を持ちかける展開は、まさに王道少年漫画の真髄です。
「勘違いするな、あいつを倒した後に貴様を殺すのはこの俺だ」という、ツンデレの先駆けのようなピッコロのスタンス。しかし、二人がかりでも全く歯が立たないという演出が、ラディッツの圧倒的な壁を強調していました。
ここでピッコロが披露するのが、対悟空用に開発していた新必殺技「魔貫光殺砲(まかんこうさっぽう)」です。指先にエネルギーを集中させ、螺旋状の気を纏った光線で貫くこの技は、当時の子供たちの間で大流行しました。
しかし、この技を当てるためには、誰かがラディッツを拘束しなければならない。その役割を自ら買って出たのが、主人公である悟空でした。
主人公の死という衝撃のラストシーン
物語の中盤で、タイトルを背負う主人公が命を落とす。この展開に、当時のリアルタイム読者は言葉を失いました。
悟空は自らの命を犠牲にしてラディッツを羽交い締め撃ちにし、ピッコロの魔貫光殺砲は二人まとめてその胸を貫きます。薄れゆく意識の中で、悟空は仲間たちに後を託して息を引き取ります。
ジャンプ漫画の鉄則を打ち破るようなこの展開ですが、実は「死んでもドラゴンボールで生き返れる」というこれまでの設定が、読者にとって唯一の救いとなっていました。しかし、死に際のラディッツが放った「1年後に、さらに強力な二人のサイヤ人が地球へやってくる」という宣告が、安堵する暇さえ与えてくれません。
物語は悟空の死をもって終わるのではなく、あの世での修行と、地球に残された者たちの決死の準備という、さらなる高みへと加速していくのです。
ピッコロと悟飯、奇妙な師弟関係の始まり
17巻の終盤、力尽きたラディッツに止めを刺したピッコロは、潜在能力を見せた悟飯を連れ去る決意をします。
「俺が鍛えてやる」というピッコロの言葉には、まだ邪悪な野心が透けて見えますが、これが後に全ファンを涙させる「ピッコロと悟飯の絆」に繋がっていくと思うと、非常に感慨深いものがあります。
一方、死後の世界へ行った悟空は、神様の計らいにより「界王様」のもとへ向かうことになります。雲の上を走る「蛇の道」の果てしない長さが、これから始まる過酷な修行の幕開けを予感させます。
17巻が漫画史に残した功績
ドラゴンボール17巻が偉大なのは、単に面白いからだけではありません。その後のバトル漫画における「テンプレ」をいくつも生み出したからです。
- 強さのインフレを管理・可視化する「戦闘力」。
- 主人公の隠された出自(特殊な血筋)。
- 次世代(子供)への才能の継承。
- 絶望的な状況での主人公の自己犠牲。
これらの要素が、鳥山明先生の圧倒的な画力とテンポの良いコマ割りで描かれることで、読者はページをめくる手を止めることができません。特にサイヤ人の宇宙船のメカデザインや、スカウターの幾何学的な表示など、細部のデザインセンスも17巻から一気に洗練されていきます。
ドラゴンボール 17 巻を読み返してサイヤ人編の興奮を再び!
ここまで振り返ってきた通り、第17巻は物語の転換点として、あまりにも中身の濃い一冊です。悟空が死ぬという衝撃、悟飯のデビュー、そして宇宙から迫る新たな脅威。
読み返してみると、わずか数百ページの間に、後のアニメ『ドラゴンボールZ』の魅力がすべて詰め込まれていることに驚かされます。1巻から読み進めてきた読者にとって、この巻で味わう「世界が広がる感覚」は、まさに鳥肌ものです。
もし、最近のシリーズしか知らないという方がいれば、ぜひこの原点ともいえる一冊を手に取ってみてください。そこには、時代を超えて色褪せない、純粋なワクワクと手に汗握る興奮が待っています。
ドラゴンボールの物語は、ここからさらに加速し、伝説のベジータ戦、そしてフリーザ編へと繋がっていきます。すべての伝説の始まりは、このドラゴンボール 17 巻にあると言っても過言ではありません。

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