「ドラゴンボール」という作品を初期から追いかけているファンなら、誰もが一度は抱いたことのある疑問。それが「初期の頃、あんなにたくさんいた動物の姿をした人たちはどこへ行ったのか?」という謎ではないでしょうか。
主人公の孫悟空が少年だった頃、世界には犬や豚、キツネといった姿をした「獣人(動物型地球人)」が当たり前のように暮らしていました。しかし、物語が『ドラゴンボールZ』へと進み、サイヤ人や宇宙の帝王フリーザが登場する頃には、いつの間にか地球の住人のほとんどが普通の「人間」ばかりになっています。
この劇的な変化には、単なる作画の都合だけではない、驚くべき「公式設定」や作者の意図が隠されていました。今回は、ドラゴンボールの世界における獣人の正体と、彼らが姿を消した真相について深く掘り下げていきます。
地球の3つの人種と「動物型地球人」の定義
まず整理しておきたいのが、ドラゴンボールにおける地球の住人のカテゴリーです。この世界の地球には、大きく分けて3つの人種が共存しているという設定があります。
1つ目は、クリリンやヤムチャ、ブルマのような「人間型地球人」。
2つ目は、ピラフ大王やアックマンのような、人間とも動物ともつかない「モンスター型地球人」。
そして3つ目が、今回注目する「動物型地球人(獣人)」です。
彼らは二足歩行をし、言葉を話し、服を着て仕事をし、人間と全く同じ権利を持って社会を構成しています。初期のドラゴンボールでは、村の警察官がイヌだったり、格闘大会の観客にクマがいたりと、人間と動物が混ざり合って暮らしている様子が非常にナチュラルに描かれていました。
特筆すべきは、この世界のトップである「国王(キング・ファリー)」までもがシバイヌの姿をした獣人であるという点です。世界最高の権力者が動物であることは、当時の地球において獣人が差別される対象ではなく、ごく一般的な存在であったことを象徴しています。
物語のシリアス化と「ファンタジー要素」の排除
では、なぜこれほどまでに一般的だった獣人たちが、物語の後半で見られなくなったのでしょうか。これにはまず、作品のトーンの変化というメタ的な理由が挙げられます。
ドラゴンボールの連載開始当初は、前作『Dr.スランプ』の流れを汲んだ「ギャグ・ファンタジー路線」が強かった時期です。鳥山明先生の描くコミカルな世界観において、喋る動物がいることは視覚的な楽しさを生む重要な要素でした。
しかし、ピッコロ大魔王の登場以降、物語は「手に汗握る本格バトル漫画」へと変貌を遂げます。さらにサイヤ人編に突入すると、敵は宇宙からやってくる超戦士たちになり、戦いの舞台は地球の存亡をかけたシリアスなものへとシフトしました。
命のやり取りをする極限の戦いの中に、背景として「ネクタイを締めたブタ」や「帽子をかぶったワニ」が映り込むと、どうしても画面の緊張感が削がれてしまいます。作者である鳥山先生も、後のインタビューで「物語が深刻になるにつれて、動物キャラを描きにくくなった」といった趣旨の発言を残しています。読者がバトルに没入できるよう、意図的に(あるいは無意識に)ファンタジー要素を削ぎ落としていった結果、獣人が背景から消えていったのです。
公式回答!流行薬「アニモルファリン」という衝撃の設定
長年、ファンの間では「作者が設定を忘れただけ」と言われてきたこの謎ですが、実は近年、公式から明確な答えが提示されました。それがアクションRPGドラゴンボールZ カカロットの中で明かされた「アニモルファリン」という薬の存在です。
このゲーム内の設定資料によると、かつてドラゴンボールの地球では「アニモルファリン」という薬が大流行していた時期がありました。この薬を摂取すると、人間は一定期間、自分の好きな動物の姿に変身することができたのです。
つまり、初期の背景にいた獣人たちの多くは、実は「動物になりたいという願望を持った元・人間」だったという驚きの事実が明かされました。当時、自分の個性を表現するファッションやアバターのような感覚で、動物の姿になることが世界的なブームになっていたわけです。
しかし、ブームというものはいつか終わるもの。時代が進むにつれてアニモルファリンを常用する人は減り、人々は元の「人間」の姿に戻っていきました。これが、物語の後半で獣人の姿を見かけなくなった決定的な理由だとされています。
ウーロンやプーアルはなぜ動物のままなのか?
ここで一つの疑問が浮かびます。「薬のブームが終わったのなら、なぜウーロンやプーアル、あるいは国王は動物の姿のままなのか?」という点です。
これについても補足的な説明がなされており、彼らはアニモルファリンによって変身した人々ではなく、生まれつきその姿である「天然の動物型地球人(アニマルタイプ)」であるとされています。
元々、地球には少数ながら天然の獣人が存在しており、そこにアニモルファリンによる「自称・獣人」の人々が加わったことで、初期の地球はあそこまで動物だらけに見えていたのです。ブームが去った後も、ウーロンたちのように元からその姿である種族だけは、変わらずそのままの姿で暮らし続けています。
実際、セル編でセルがテレビ局を襲撃した際や、魔人ブウ編で元気玉に協力するシーンなど、よく見ると背景にわずかながら獣人の姿を確認することができます。彼らは絶滅したわけではなく、単に「ブームが終わって数が落ち着いた」というのが正解のようです。
ドラゴンボール超で再び注目される「動物キャラクター」の魅力
シリーズの正統続編である『ドラゴンボール超』では、再び動物をモチーフにしたキャラクターたちが脚光を浴びています。ただし、今度は「地球人」としてではなく、他の宇宙の代表選手としてです。
例えば、第9宇宙の「トリオ・デ・デンジャーズ」は、狼の姿をした三兄弟の戦士でした。彼らは獣人特有の野性味あふれる戦い方で悟空たちを苦しめ、初期のドラゴンボールを彷彿とさせるワクワク感をファンに与えてくれました。
また、第11宇宙の破壊神ベルモッドの付き人や、各宇宙を司る神々の中にも、動物を擬人化したようなデザインが多く採用されています。これは、鳥山明先生が本来持っている「多種多様な生き物が入り混じる世界観」の楽しさが、宇宙規模にスケールアップして復活したと言えるかもしれません。
最新のゲーム作品やフィギュアなどの関連グッズでも、初期の動物キャラクターたちは根強い人気を誇っています。懐かしのキャラを集めたいなら、ドラゴンボール フィギュアなどで検索してみると、意外な獣人キャラクターが立体化されているのを見つけることができるでしょう。
まとめ:ドラゴンボールの獣人は消えたのではなく「日常」に戻った
あらためて振り返ってみると、ドラゴンボールという作品は「多様性」の物語でもありました。地球の中に人間も獣人もモンスターもいた初期から始まり、やがてサイヤ人、ナメック星人、人造人間、魔人、そして神々や他宇宙の生命体へと、その多様性は無限に広がっていきました。
獣人が画面から減っていったのは、物語のフォーカスが「地球の日常」から「宇宙の命運」へと移り変わっていった証でもあります。アニモルファリンのブームが去り、多くの地球人が普通の姿に戻った後も、世界の片隅では今もウーロンやプーアル、そして心優しい国王たちが、僕たちの知らないところで平穏な日々を送っているはずです。
もし次に漫画やアニメを見返す機会があれば、群衆の中に紛れている数少ない「動物型地球人」を探してみてください。それは、作者が遊び心で残した、初期のワクワクするようなファンタジー世界への入り口かもしれません。
「ドラゴンボールの獣人はなぜ消えた?動物型地球人の設定と減少した理由を徹底考察!」というテーマで進めてきましたが、この謎を知ることで、作品が持つ独特の世界観がより一層愛おしく感じられるのではないでしょうか。
次は、物語の裏側で暗躍し続けた「ピラフ一味」の意外な功績や、彼らがなぜ老いることなく現代まで生き残っているのかといった、別の謎について探ってみるのも面白いかもしれませんね。

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