「いつかはあの頂に立ってみたい」「山の上で食べるごはんって、どうしてあんなに美味しそうなんだろう」
そんなふうに、ふとした瞬間に山への憧れを抱いたことはありませんか?実際に重いザックを背負って登るのはハードルが高くても、ページをめくるだけで標高3,000メートルの絶景や、極限状態の人間ドラマを体験できるのが登山漫画の素晴らしいところです。
最近では、本格的なアルパピニズムを描いた重厚な物語から、美味しい山ごはんに癒やされる日常系、さらには女子高生たちが一歩ずつ成長していく青春ものまで、ジャンルの幅がぐんと広がっています。
今回は、数ある作品の中から、読めば必ず山に行きたくなる、あるいは山の厳しさに背筋が伸びるような、登山漫画のおすすめ人気作品15選を厳選しました。山の魅力と感動を描いた名作の世界を、一緒に覗いてみましょう。
圧倒的な臨場感!命懸けの挑戦を描く本格派の名作
まずは、登山の「光と影」を真正面から描き、多くの読者の人生観を変えてきた本格派の作品からご紹介します。
1. 岳(石塚真一)
登山漫画を語る上で絶対に外せないのが、この岳です。北アルプスを舞台に、山岳救助ボランティアの島崎三歩が、遭難者や山を愛する人々と交流する姿を描いています。
この作品のすごさは、山の「美しさ」と「死」を隣り合わせで描いている点です。三歩は、どんなに無謀な登山で遭難した人に対しても、救助した第一声で「よく頑張った」と声をかけます。その一言に込められた深い慈しみと、圧倒的な山のスケール感。読後には、山への敬意と「生きること」への感謝が湧き上がってくるはずです。
2. 孤高の人(坂本眞一)
新田次郎の名作小説を原案にしつつ、大胆な解釈で再構築された孤高の人。伝説の登山家・加藤文太郎をモデルにした主人公が、孤独の中で垂直の壁に挑み続ける物語です。
特筆すべきは、ため息が出るほど緻密で芸術的な画力。氷壁の冷たさや、酸素が薄くなっていく感覚が、紙面からダイレクトに伝わってきます。他人との繋がりを断ち切り、ただ高みを目指す主人公の姿は、時に狂気すら感じさせますが、だからこそ到達した頂の景色は神々しいまでの輝きを放っています。
3. 神々の山嶺(夢枕獏・谷口ジロー)
「なぜ、山に登るのか」という究極の問いに、泥臭く、そして熱く答えてくれるのが神々の山嶺です。エヴェレスト初登頂を巡る謎と、それに魅了された男たちの執念が描かれます。
谷口ジロー氏による重厚な筆致は、ヒマラヤの巨壁を圧倒的なリアリティで再現しています。一歩間違えれば死ぬ、そんな極限状態で己の魂を削りながら登る男たちの咆哮が聞こえてくるような、まさに「漢(おとこ)の漫画」の最高峰です。
4. しずかの山(松本剛)
登山愛好家だけでなく、プロの視点を知りたい方におすすめなのがしずかの山。登山ガイドを仕事とする主人公を通じて、山との誠実な向き合い方を描いた作品です。
派手なアクションや劇的な遭難シーンに頼るのではなく、天候の読み方やパーティの管理、そして山で生きる人々の静かなプライドを丁寧に掬い上げています。「プロから見た山」というフィルターを通すことで、私たちが普段見落としがちな山の深淵が見えてきます。
山の楽しさが広がる!初心者・グルメ・癒やし系の人気作
続いては、「自分も山に登ってみたい!」という一歩を後押ししてくれる、親しみやすい作品たちです。
5. 山と食欲と私(信濃川日出雄)
「単独登山女子」という言葉を世に広めた、アウトドア漫画のメガヒット作山と食欲と私。会社員の主人公・日々野鮎美が、一人で山に登り、山頂で美味しいごはんを作る様子を描いています。
読んでいるとお腹が空いてくること間違いなし。メスティンやホットサンドメーカーを使った本格的なレシピから、コンビニ食材をアレンジしたズボラ飯まで、真似したくなるアイデアが満載です。ソロ登山の自由さと、外で食べる食事の特別さを教えてくれる一冊です。
6. ヤマノススメ(しろ)
インドア派で高所恐怖症だった少女が、幼馴染との再会をきっかけに登山の世界へ足を踏み入れるヤマノススメ。
最初は標高200メートルにも満たない地元の低山から始まり、徐々にステップアップして富士山やアルプスを目指す過程が非常に丁寧に描かれています。最新の登山ギア(装備)の解説も詳しく、これから登山を始めたい入門者にとって最高の教科書にもなる作品です。
7. 山登りはじめました(鈴木みき)
コミックエッセイの金字塔山登りはじめましたは、著者の実体験に基づいた「失敗談」や「あるある」が満載です。
「体力がないけど大丈夫?」「トイレはどうすればいいの?」といった、初心者が抱くリアルな不安に等身大の視点で答えてくれます。ゆるいタッチの絵柄ながら、山のルールやマナーもしっかり学べる、安心感のある名作です。
8. ゆるキャン△(あfろ)
キャンプブームの火付け役ゆるキャン△。メインはキャンプですが、舞台となるのは常に山沿いや絶景ポイント。時には登山道を歩いて目的地を目指すシーンも登場します。
冬の静かな空気感や、焚き火の温もり、そして何よりも「自然の中でただ過ごす贅沢」を美しく切り取っています。登山を「ピークハント(頂上を目指すこと)」としてだけでなく、自然を楽しむライフスタイルとして捉え直させてくれる作品です。
知識と青春が詰まった、一味違う登山漫画
山岳部や専門的な技術など、少しマニアックな視点から山を楽しめる作品も揃っています。
9. 山を渡る —三多摩大岳部録—(空木哲生)
大学の登山部を舞台にした山を渡る —三多摩大岳部録—は、知識欲を刺激される知的な名作です。
廃部寸前の伝統ある部活に入った新入部員たちが、最新の登山理論と、先輩たちが培ってきた古い技術を融合させながら成長していきます。なぜザックのパッキングが重要なのか、なぜウールが登山に適しているのか。そんな「山の科学」を論理的に学べるのが最大の魅力です。
10. ハイジと山男(安藤ゆき)
山に登る人ではなく、山の上で生活する「山小屋の人々」にスポットを当てたのがハイジと山男。
私たちが快適に登山を楽しめる裏側で、山小屋のスタッフがどのような苦労をし、どんな思いで登山者を迎えているのか。その舞台裏を知ることで、次回の山行がより深いものになるはずです。山を愛する人々の温かい交流に心が洗われます。
11. つばめアルペン(南マキ)
爽やかな読後感を求めるならつばめアルペンがおすすめ。高校の山岳部を舞台に、仲間と共に困難を乗り越えていく王道の青春ストーリーです。
友情、挫折、そして頂上に立った時の感動。青春漫画らしい熱量と、山の美しさが絶妙にブレンドされています。部活動としての登山という、集団行動ならではの難しさと喜びが瑞々しく描かれています。
12. ほったらかしキャンプ飯(水沢悦子)
登山後の楽しみといえば「キャンプ」や「食事」。ほったらかしキャンプ飯は、その名の通り手間をかけずに最高に美味しいものを作ることに特化した作品です。
山の上で凝った料理を作る余裕がない時でも、この漫画のアイデアがあれば、贅沢な気分を味わえます。「手抜き」ではなく「工夫」で自然を満喫する姿勢は、多くの登山者の共感を呼んでいます。
知る人ぞ知る!短編や歴史を感じる名作たち
最後に、短いながらも強烈なインパクトを残す作品や、登山史を感じさせる作品を紹介します。
13. K(遠崎史朗・谷口ジロー)
世界第2位の高峰・K2を舞台にした短編集K。1話完結の形式ながら、1つ1つのエピソードが濃密で、まるで映画を一本見たような満足感があります。
神の領域とも言えるK2の過酷な環境下で、極限の選択を迫られる人間たちのドラマ。谷口ジロー氏の職人芸とも言える背景描写が、読者を標高8,000メートルの世界へ引きずり込みます。
14. 氷壁の達人(神田たけ志)
実在の登山家、小西政継氏をモデルにした氷壁の達人。日本の登山家たちが、いかにして世界の巨壁に挑んできたのかという「登山史」の熱さを体験できます。
現代の軽量な装備とは異なり、重い道具を使い、未知のルートを切り拓いていった時代の熱狂。先人たちの不屈の精神を知ることで、私たちが歩く登山道一歩一歩に刻まれた歴史の重みを感じることができるでしょう。
15. でこぼこフレンズ
最後は、もっと気軽に山を楽しめる日常系の短編作品。都会での忙しい生活に疲れた時、週末にふらっと近所の山へ出かける。そんな「身近な自然」との付き合い方を提案してくれます。
険しい岩壁を登ることだけが登山ではない。足元の草花を愛で、冷たい沢の水に触れ、ゆっくりと深呼吸する。そんな「癒やしの登山」の原点を思い出させてくれます。
登山漫画で広がる、新しい世界の見え方
登山漫画の魅力は、ただ「山を紹介する」だけにとどまりません。
それは、自分自身の限界に挑む精神的な成長であったり、仲間と一つの目標に向かう連帯感であったり、あるいは自然という大きな存在の前で己の小ささを知る謙虚さであったりします。
今回ご紹介した15作品は、どれも独自の視点で「山」という存在を切り取っています。
- 知識を身につけたいなら: 『ヤマノススメ』や『山を渡る』
- 感動に震えたいなら: 『岳』や『神々の山嶺』
- リラックスしたいなら: 『山と食欲と私』や『ゆるキャン△』
その日の気分に合わせて、ぜひ一冊手に取ってみてください。きっと、次に外を歩くとき、遠くに見える山の稜線が、今までとは違った輝きを持って見えるはずです。
漫画を通して、あなただけの「山の魅力」を見つけに行きましょう。
登山漫画のおすすめ人気作品15選!山の魅力と感動を描いた名作をご紹介しました。

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