「頭の中に最高の物語があるのに、いざ書き始めると手が止まってしまう」「キャラが勝手に動いてくれなくて、展開がガタガタになる」……そんな悩みを抱えていませんか?
漫画を描く上で、絵の練習と同じくらい、あるいはそれ以上に大切なのが「シナリオ」です。シナリオは漫画の設計図。ここがしっかりしていないと、どんなに美しい絵を描いても、読者の心に響く作品にはなりません。
今回は、初心者の方から「もっと面白い話を作りたい」という中級者の方まで活用できる、漫画シナリオの書き方を10のステップに凝縮して解説します。この記事を読み終える頃には、あなたの物語を形にするための道筋がハッキリ見えているはずです。
1. 読者を惹きつける「コンセプト(ログライン)」を固める
まずは、あなたの物語を「一行」で説明してみましょう。これをログラインと呼びます。
「誰が」「何を求めて」「何と戦うのか」
この要素を短くまとめることで、物語の軸がブレなくなります。たとえば「臆病な少年が、伝説の剣を手に入れて魔王を倒しに行く話」といった具合です。
コンセプトが明確になれば、執筆中に迷ったとき「このシーンは本来の目的に沿っているか?」と立ち返ることができます。まずはこの一文を、お気に入りのノートやiPadのメモ帳に書き記すことから始めましょう。
2. 物語を動かす「キャラクター」の履歴書を作る
物語を動かすのはプロットではなく、キャラクターの「意志」です。キャラが立っていれば、自然と物語は転がり始めます。
名前や外見、年齢といった基本情報はもちろんですが、以下の3点を深掘りしてみてください。
- 欠落(コンプレックス):そのキャラに足りないものは何か?
- 動機(モチベーション):何のために行動しているのか?
- 二面性:普段は冷酷だけど、実は猫に優しい……といったギャップ。
特に「欠落」は重要です。足りないものを埋めようとする必死な姿に、読者は共感し、応援したくなるのです。
3. 「世界観とルール」を整理する
SFやファンタジーに限らず、学園モノでも「その世界特有のルール」が必要です。「この学校では成績がすべて」「この町では魔法が1日1回しか使えない」といった制約が、物語に緊張感を生みます。
ここで注意したいのは、設定を詰め込みすぎないこと。設定資料を作るのは楽しい作業ですが、すべてを漫画に出す必要はありません。作者だけが知っている「裏設定」として持っておき、物語に必要な分だけを小出しにするのがコツです。
4. プロット(あらすじ)で全体の流れをつかむ
いよいよ、物語の「骨組み」を作ります。最初から細かく書こうとせず、まずは「起承転結」を意識して、A4用紙1枚程度にまとめてみましょう。
- 起:日常の提示と、事件の発生
- 承:問題の深刻化と、キャラクターの奮闘
- 転:最大のピンチ、または衝撃の事実発覚
- 結:決着と、その後の変化
プロットの段階で「面白くないな」と感じたら、何度でも書き直してください。ここで修正するほうが、後にネームを描いてから直すよりも100倍楽です。
5. 「三幕構成」でドラマチックな起伏を作る
ハリウッド映画などでも多用される「三幕構成」を取り入れると、物語のテンポが劇的に良くなります。
- 第1幕:セットアップ(25%)登場人物の紹介と、物語の目的が提示される段階。
- 第2幕:対立(50%)主人公が困難に立ち向かい、葛藤するメインパート。中盤で大きな転換点(ミッドポイント)を作ると飽きさせません。
- 第3幕:解決(25%)クライマックスからエンディングまで。
全体のボリュームを把握し、どこに山場を持ってくるかをこの段階で確定させましょう。
6. 「箱書き」でページ配分をシミュレーションする
漫画にはページ数という物理的な制限があります。箱書きとは、各シーンを「何ページ使うか」割り振っていく作業です。
- 1ページ目:衝撃的なシーンで引きつける
- 2〜5ページ目:状況説明
- ……
- 16ページ目:次の回が気になる「引き」を作る
特に「めくり(奇数ページから偶数ページへ行くとき)」を意識して、読者がページをめくった瞬間に驚くような配置を考えると、漫画としての完成度がグッと上がります。
7. 「柱」と「ト書き」で場面を具体化する
ここからが本格的なシナリオ形式の執筆です。まずは「場所」と「時間」を示す「柱」を書きます。
(例)
【柱】学校・屋上(夕方)
その下に、キャラクターの動作や周囲の状況を説明する「ト書き」を書き込みます。
(例)
ト書き:夕日に照らされた屋上。フェンスに寄りかかる佐藤。手にはくしゃくしゃになった手紙。
ト書きは小説ではないので、美麗な文章は必要ありません。作画をするときに「何を描けばいいか」が伝わることが最優先です。
8. 「セリフ」に命を吹き込む
いよいよキャラクターの対話(ダイアローグ)を書き込みます。セリフ作成で最も大切なのは「説明ゼリフを避ける」ことです。
「俺は今、怒っているんだ!」と言わせるのではなく、机を叩く描写を入れたり、あえて沈黙させたりすることで感情を表現しましょう。
また、キャラクターごとに語尾や一人称を固定するのは基本ですが、そのキャラが「絶対に言わない言葉」を意識すると、個性がより際立ちます。執筆には集中力を高めるためにAirPodsなどで音楽を流すのも良いですね。
9. 執筆したシナリオを「音読」してリズムを確認する
シナリオが書き上がったら、必ず一度声に出して読んでみてください。
- セリフが長すぎて息が切れないか?
- 言葉の響きが不自然ではないか?
- 誰が喋っているか分からなくならないか?
耳で聞いて違和感がある部分は、読者が読んだときにも引っかかる部分です。特に漫画は視覚情報がメインなので、セリフは極限まで削ぎ落とし、リズムを重視しましょう。
10. ネーム(下描き)へ変換し、視覚的な調整を行う
最後のステップは、文字で書いたシナリオを「絵の構成案」であるネームに落とし込む作業です。
文字では完璧だと思っても、絵にしてみると「コマが足りない」「説明が多すぎて画面が文字だらけ」ということがよくあります。その場合は、潔くシナリオを修正しましょう。漫画は「絵と文字のコンビネーション」であることを忘れずに。
漫画シナリオの書き方完全ガイド:プロットからセリフ作成までの10ステップを終えて
漫画のシナリオ作りは、自分の中にある「面白い」という形のないエネルギーを、誰にでも伝わる「設計図」に変換するクリエイティブな作業です。
最初は10のステップすべてを完璧にこなそうとしなくても大丈夫。まずは短いページ数の作品から、この手順を試してみてください。何度も繰り返すうちに、あなた独自の「物語を生み出すリズム」が身についてくるはずです。
もし、アイデアが煮詰まってしまったら、外に出て新しい景色を見たり、Kindleで名作漫画を分析したりするのも一つの手です。
あなたの素晴らしい物語が、最高の漫画として形になることを楽しみにしています。まずは一歩、最初の「ログライン」を書き出すところから始めてみましょう!

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