「最近、刺激が足りないなぁ」なんて感じているあなた。あるいは『ザ・ファブル』を読んで、あの独特の間や圧倒的な画力にシビれた一人かもしれません。
そんな方に、どうしても避けて通ってほしくない一冊があります。それが南勝久先生のデビュー作であり、伝説的傑作であるナニワトモアレです。
一言でいえば、この漫画は「1990年代の大阪」という時代の空気を、ガソリンの匂いとタイヤが焦げる煙ごと閉じ込めたタイムカプセル。今回は、なぜこの作品が連載終了から時間が経っても、なお多くの読者を熱狂させ続けるのか、その面白さを徹底的にレビューしていきます!
90年代大阪環状族の「本物」がここにある
まず、この作品の最大の特徴は、あまりにも生々しいリアリティです。舞台は1990年代初頭の大阪。深夜の阪神高速1号環状線を、猛スピードで駆け抜ける「環状族」たちの物語です。
当時の大阪を知る人が読めば「懐かしすぎて涙が出る」と言い、知らない人が読めば「こんな熱い世界があったのか」と驚愕する。それもそのはず、作者の南勝久先生自身が、かつてその渦中にいた「当事者」だからです。
- 実在のコースと地名:東船場、梅田、夕陽丘……。実在するコーナーや合流地点が、緻密な背景描写とともに描かれます。
- 伝説の名車たち:主人公のグッさんが駆るシビック EF9をはじめ、EG6、シルビア、ハチロク。最新のスーパーカーではなく、当時の若者がバイト代を注ぎ込んで改造した「等身大の戦闘機」が主役です。
- 「生活感」のある描写:車がピカピカなのは最初だけ。ガードレールに擦った跡、タイラップでの応急処置、タバコの吸い殻が散乱した車内。そういった細部にこそ、本物の走り屋の息遣いが宿っています。
単なる「暴走族漫画」と思って読み始めると、その解像度の高さに圧倒されるはずです。
主人公・グッさんの「アホさ」と「成長」が愛おしい
物語は、19歳の少年・グッさん(本名:岡田良一)が、新車のシビックをナンパ目的で購入するところから始まります。
そう、最初は「モテたいから」という不純な動機なんです。ここが最高に人間臭い。グッさんは特別に喧嘩が強いわけでも、最初から天才的なドライビングテクニックを持っているわけでもありません。
- ひたすらに「アホ」な掛け合い:仲間内での、どうしようもない下ネタや、しょうもない意地の張り合い。この「中身のない会話」のテンポが、後の『ザ・ファブル』にも通じる南勝久節の真骨頂です。
- 挫折と覚醒:自分が「速い」と思い込んでいた井の中の蛙が、本物の怪物たち(ゼンちゃんやトモら)に出会い、鼻をへし折られる。そこから這い上がり、環状という「戦場」にのめり込んでいく姿には、誰もが胸を熱くします。
グッさんが成長していくにつれ、読者もまた、シビックのエンジン音を背中で感じているような没入感を味わうことになります。
『ザ・ファブル』の原点がここにある!独特の空気感と間
現在、南先生といえば『ザ・ファブル』の印象が強いですよね。あの「プロの殺し屋」の静かな迫力、シュールな笑い。実はそのエッセンスは、すべてナニワトモアレに凝縮されています。
独特の「間」と「表情」
キャラクターが沈黙している時、あるいは何気ない一言を発した時の「目ヂカラ」。言葉以上に多くを語るあの表情の描き方は、このデビュー作ですでに完成されています。
暴力とユーモアの絶妙なバランス
緊迫した対立シーンで、突然放り込まれるシュールなギャグ。この緩急が、物語にえぐみと深みを与えています。単に怖いだけじゃない、単に面白いだけじゃない。人間という生き物の「滑稽さ」をまるごと描いているんです。
「プロ」へのこだわり
『ザ・ファブル』が殺しのプロなら、『ナニワトモアレ』は走りのプロ、あるいは「遊びのプロ」たちの物語。筋の通し方、仲間への義理、そして自分が選んだ道への覚悟。職人的とも言えるそのストイックさは、両作品に共通する大きな魅力です。
泥臭い人間関係!仲間との絆とチームの誇り
この漫画の本質は、実はカーレースではなく「群像劇」にあります。
チーム「トリーズン」を中心に、ライバルチームとの抗争や、チーム内部の不和、そして友情が描かれます。
- ゼンちゃんの圧倒的カリスマ:チームの頭であるゼンちゃんの怖さと格好良さは異常です。理不尽なんだけど、どこか筋が通っている。あんな先輩がいたら、人生狂わされるだろうなと思いつつも、ついていきたくなる魅力があります。
- 裏切りと信頼:若さゆえの過ちや、嫉妬。時には仲間を裏切るような展開もあります。しかし、それを乗り越えた先にある絆は、決して綺麗事ではありません。
- 女たちの存在:ユキちゃんをはじめとする女性陣も、単なる飾りではありません。男たちの無茶を時に冷めた目で、時に深い愛情で見守る彼女たちの強さも、物語にリアリティを添えています。
第二部「なにわ友あれ」へのバトンタッチ
『ナニワトモアレ』を読み終えた時、あなたは間違いなく「続き」が読みたくなるはずです。物語はそのまま第二部なにわ友あれへと続きます。
第一部が「環状族への入門と狂乱」を描いたものだとしたら、第二部はより「人間ドラマの深化と時代の終焉」を感じさせる内容になっています。
- 画力の進化:第二部に入ると、南先生の画力はさらに神がかった領域へ。車の金属光沢や、大阪の夜景の美しさは、もはや芸術の域です。
- 決着の時:グッさんたちの青春に、どのような終止符が打たれるのか。最後まで読み切った時、一つの巨大な映画を観終えたような充実感に包まれます。
ぜひ、第一部からノンストップで駆け抜けてください。
漫画「ナニワトモアレ」の面白さをレビュー!おすすめポイントを解説:まとめ
ここまで、ナニワトモアレという作品の底知れない魅力をお伝えしてきました。
「昔のヤンキー漫画でしょ?」という先入観で敬遠するのは、あまりにももったいない。これは、ある時代に確かに存在した若者たちの「生きた証」を記録した、極上のドキュメンタリーであり、最高に笑えるエンターテインメントなんです。
- 1990年代の空気感を味わいたい
- 本物の「走り」の描写に痺れたい
- 『ザ・ファブル』のルーツを知りたい
- 泥臭くも熱い青春群像劇に浸りたい
どれか一つでも当てはまるなら、今すぐナニワトモアレのページをめくってみてください。
そこには、排気音とともに駆け抜ける、二度と戻らない輝かしい夜が待っています。一度読み始めたら最後、あなたも環状の魔力に取り憑かれてしまうかもしれませんよ。

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