「このマンガがすごい!」で1位を獲得し、多くの読者の心を温めた名作『メタモルフォーゼの縁側』。全5巻で幕を閉じた本作ですが、ネット上では「もしかして打ち切りだったの?」と心配する声が一部で見受けられます。
結論からお伝えすると、本作は打ち切りではなく、物語として最も美しい形での「円満完結」です。
なぜこれほどまでに愛された作品が、5巻という比較的短い巻数で終わったのか。その理由や、作品が残した感動の軌跡、そして実写映画化の舞台裏まで、ファンならずとも知っておきたい情報を深く掘り下げてお届けします。
『メタモルフォーゼの縁側』に打ち切りの事実は一切なし!
まず最初にハッキリさせておきたいのが、この作品は決して人気がなくて途中で終わらされたわけではない、ということです。
漫画業界では、アンケート至上主義によって物語が中途半端に終わってしまう「打ち切り」が珍しくありません。しかし、『メタモルフォーゼの縁側』については、連載当初から完結まで一貫して高い評価を受け続け、作者である鶴谷香央理先生の構想通りにラストまで描き切られています。
では、なぜ「打ち切り」というワードが検索されるようになったのでしょうか。
その大きな理由は、読者の「もっとこの二人の日常を見ていたかった」という強い愛着にあります。雪さんとうららちゃんの穏やかな交流があまりに心地よく、終わってほしくないというファンの切実な願いが、逆説的に「こんなに早く終わるなんて、何か事情があったのでは?」という憶測を呼んだのかもしれません。
また、最終巻である5巻の展開が、それまでのゆったりしたテンポに比べると、登場人物たちの「一歩踏み出す勇気」を鮮明に描き出していたため、その変化を「急ぎ足」と感じてしまった読者がいたことも要因の一つでしょう。
5巻で完結した納得の理由と物語の着地点
物語が5巻というボリュームで完結したのには、作品のテーマに基づいた明確な理由があります。
本作の核となるのは、75歳の雪さん、17歳のうららという、年齢も立場も全く異なる二人が「BL(ボーイズラブ)」という共通の趣味を通じて、自分の殻を破っていくプロセスです。
物語のクライマックスは、二人が協力して同人誌を作り、即売会に参加するという大きな挑戦でした。自分たちの好きなものを形にし、それを誰かに届ける。この経験を通じて、引っ込み思案だったうららは自分の将来(進路)と向き合う勇気を得て、雪さんは老いの中で感じていた孤独から解放され、新しい世界への扉を開けました。
鶴谷先生は、この「二人の精神的な自立と変化(メタモルフォーゼ)」が完了した瞬間こそが、物語の終わるべき場所だと判断されたのでしょう。
これ以上連載を長く引き延ばせば、せっかくの繊細な空気感が損なわれていたかもしれません。あえて「その後」をすべて描かずに、読者の想像に委ねる形でペンを置いたことこそが、この作品を傑作たらしめている理由なのです。
受賞ラッシュが証明する作品の圧倒的なクオリティ
打ち切り説を完全に否定するもう一つの材料が、本作が積み上げてきた輝かしい受賞歴です。もし打ち切りになるような作品であれば、これほどまでに業界内外で評価されることはありません。
- 「このマンガがすごい!2019」オンナ編 第1位
- 第22回文化庁メディア芸術祭 マンガ部門 新人賞
- 第12回マンガ大賞 第8位
これらの賞は、単に「面白い」だけでなく、芸術性やメッセージ性が高く評価された証です。
特に文化庁メディア芸術祭での新人賞受賞は、漫画を一つの文化・芸術として捉えた際の価値を保証するものです。70代の女性がBL漫画を手に取るという、一見突飛に見える設定を、極めて現実的かつ優しく描き切った筆致は、多くの審査員を唸らせました。
こうした実績があるからこそ、版元であるKADOKAWAも、作者の意向を尊重した理想的な形での完結を後押ししたのだと考えられます。
読者の心を掴んだ「縁側」のような安心感と評判
本作の評判を語る上で欠かせないのが、読者が感じた「救い」です。
ネット上のレビューやSNSでの感想をチェックしてみると、多くの読者が「自分を肯定してもらえた気がする」と語っています。
- 「好きなものを『好き』と言っていいんだと勇気をもらった」
- 「おばあちゃんになっても、新しい友達ができるし、情熱を持てることがあるんだと希望が持てた」
- 「うららちゃんの、自信がなくてオドオドしてしまう姿が自分に重なって、最後の一歩に涙が止まらなかった」
このように、幅広い世代から共感の声が寄せられています。特に、うららが漫画を描くために使っていた画材や、二人がお茶を飲みながら漫画を語り合う縁側の描写には、生活の匂いが感じられ、読者を作品の世界へ引き込む魔法のような力がありました。
漫画を読む際に、Kindle Paperwhiteのような電子書籍リーダーを活用して、じっくりと静かな環境で読み返したくなる。そんな「静謐な熱量」を持った作品として、今もなお新規の読者を増やし続けています。
芦田愛菜&宮本信子の名演!実写映画化が果たした役割
2022年には、芦田愛菜さんとうらら役、宮本信子さんを雪役として実写映画化されました。この映画化もまた、原作の完結を語る上で重要なエピソードです。
実写映画化される際、原作がすでに完結していることは、制作陣にとって「物語のゴール」が明確であるというメリットがあります。映画版では、原作の持つ透明感や優しさを一切損なうことなく、二人の距離感が縮まっていく様子が丁寧に実写に落とし込まれました。
芦田愛菜さんが演じる、少し猫背で自信なげな女子高生のリアルさと、宮本信子さんが演じる、背筋が伸びていながらも内面に可愛らしさを秘めた老婦人。この二人のキャスティングは「神キャスト」と称賛され、原作ファンからも高い支持を得ました。
映画化によって、普段漫画を読まない層にも作品の存在が知れ渡り、原作の完結がいかに美しいものであったかが再認識される結果となったのです。映画を観てから原作メタモルフォーゼの縁側 全巻セットを手に取ったという人も多く、メディアミックスの理想的な成功例と言えるでしょう。
鶴谷香央理先生の描く「優しい世界」の魅力
作者の鶴谷香央理先生の卓越した描写力についても触れておかねばなりません。
先生の描く線は非常に柔らかく、背景の一つひとつまで丁寧に描き込まれています。特に、劇中に登場する架空のBL漫画『君のことだけ見ていたい』の描き込みや、その内容に一喜一憂する二人の表情は、まさに「推し活」をする私たちの姿そのものです。
鶴谷先生は、大きな悪人が出てこない、けれど誰しもが抱えている「ちょっとした生きづらさ」や「孤独」を、否定せずにそっと寄り添うように描きます。
この優しさは、完結後に発表された短編集や他のイラスト仕事にも一貫して流れている精神です。打ち切りというノイズに惑わされることなく、先生がこの5巻という物語に込めたメッセージを、私たちは大切に受け取るべきなのです。
物語は終わっても、二人の日常は続いていく
物語のラスト、うららは大学進学を選び、雪さんは自身の生活に新しい変化を受け入れます。
別れではないけれど、密に過ごした「縁側での時間」が形を変えていく様子は、少し寂しくもあります。しかし、それは二人がお互いに影響し合い、成長した証拠でもあります。
読者は最終巻を閉じた後、きっと想像するはずです。大学生になったうららが、ふとした瞬間に雪さんの家のチャイムを鳴らす姿や、雪さんが新刊のBL漫画をワクワクしながら書店で探す姿を。
物語が完結しているからこそ、その後の想像が無限に広がる。それこそが、優れたフィクションが持つ最大の魅力ではないでしょうか。
もし、この記事を読んでいて、まだ最終巻を読んでいない、あるいは「打ち切りだと思って敬遠していた」という方がいれば、ぜひメタモルフォーゼの縁側 5を手に取ってみてください。そこには、期待を裏切らない、最高の「終わりの始まり」が待っています。
メタモルフォーゼの縁側は打ち切り?完結の理由や読者の評判、映画化の背景を徹底解説!:まとめ
ここまで見てきた通り、『メタモルフォーゼの縁側』は打ち切りではなく、作品の質とテーマを最優先にした「完璧な完結」を迎えた作品です。
- 全5巻という巻数は、二人の成長を描き切るのに最適なボリュームだった。
- 数々の権威ある漫画賞を受賞しており、業界内での評価も極めて高い。
- 実写映画化も大成功を収め、原作の魅力を再確認させるきっかけとなった。
- 読者の評判は「救われた」「感動した」というポジティブな声が大多数。
「打ち切り」という噂は、作品が終わってほしくないというファンの愛情が生んだ誤解に過ぎません。
SNSやネットの断片的な情報だけで判断せず、ぜひ作品の1ページ目から最終ページの「あとがき」までを自分の目で確かめてみてください。きっと、読み終わった後のあなたの心には、あの縁側で吹いていたような、心地よい風が通り抜けているはずです。
メタモルフォーゼの縁側 1から始まる、たった二人の、けれど世界を変えるほど大きな友情の物語。あなたもそのページをめくって、彼女たちと一緒に「メタモルフォーゼ(変身)」してみませんか?

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