「ジョジョの奇妙な冒険」という長い歴史を持つシリーズの中で、ファンの間でたびたび議論されるのが「どの部が一番面白いのか?」という問題です。
もちろん好みは人それぞれですが、多くのファンが「最高傑作」として名前を挙げるのが、第7部である『スティール・ボール・ラン(SBR)』ではないでしょうか。
かつての週刊少年ジャンプ連載からウルトラジャンプへと舞台を移し、青年誌的な深みと緻密な描き込みを手に入れた本作。なぜ、これほどまでに多くの読者の心を掴んで離さないのか。今回は、完結から時間が経った今だからこそ再確認したい、第7部の圧倒的な魅力と面白さの正体に迫ります。
もし、まだ未読の方がいれば、この記事を読み終える頃にはきっとジョジョの奇妙な冒険 第7部を手に取りたくなるはずです。
舞台を一新した「パラレルワールド」という英断
ジョジョ第7部を語る上で避けて通れないのが、第6部までの世界から地続きではない「パラレルワールド」での物語であるという点です。
19世紀末のアメリカを舞台に、北米大陸を横断する総距離6,000kmの乗馬レース「スティール・ボール・ラン」が開催される。この設定を聞いた当初、古くからのファンは驚きました。「これまでのジョースター家の血統はどうなるの?」と。
しかし、このリセットこそが本作を「最高傑作」へと導く鍵となりました。
過去の因縁に縛られることなく、まっさらな状態でキャラクターの成長を描けるようになったことで、物語の純度は飛躍的に高まりました。それでいて、ジョニィ・ジョースターという名前にニヤリとしたり、かつての登場人物を彷彿とさせるキャラクターが登場したりと、ファンサービスも忘れません。
初めてジョジョに触れる人にとっても、過去作の知識が不要な「入門書」としての役割を果たしつつ、古参ファンをも唸らせる。この絶妙なバランスが、第7部の独創的な世界観を作り上げています。
ジョニィとジャイロ、二人の男の「再生」の物語
本作の核となるのは、主人公ジョニィ・ジョースターと、その相棒ジャイロ・ツェペリの二人旅です。
これまでのジョジョの主人公たちは、どこか完成されたヒーロー像を持っていました。しかし、ジョニィは違います。かつて天才騎手としてもてはやされながら、自分の慢心によって下半身不随となり、地位も名声も失った「敗者」から物語が始まります。
彼がレースに参加した動機は、世界を救うためでも、正義のためでもありません。「ジャイロが持つ鉄球の回転が、自分の足を動かしたかもしれない」という、一縷の希望にすがりたいという極めて個人的で、切実な欲望からです。
そんな彼を導くジャイロ・ツェペリもまた、国家の伝統と自分の良心の間で揺れる、深みのある人間として描かれます。
この二人が、過酷なレースを通じて、時にはくだらない冗談を言い合い、時には互いの命を預け合う。その絆が深まっていくプロセスは、これまでのシリーズにあった「チーム戦」とはまた違う、より親密で濃密なバディものとしての面白さを提示してくれました。
「スタンド」と「回転」の融合が生む知略戦
ジョジョの代名詞といえば「スタンド能力」ですが、第7部ではそこに「回転」という概念が加わります。
ツェペリ一族に伝わる「鉄球の回転」という技術。これは第1部の「波紋」をアップデートしたような物理的な力ですが、物語が進むにつれてこれがスタンド能力と密接にリンクしていきます。
序盤は比較的シンプルだった能力バトルも、後半に進むにつれて複雑さを増していきます。「黄金長方形」という自然界に存在する究極の比率を視認し、それを回転のエネルギーに変換する。このロジックが、単なるパワー勝負ではない、知的なカタルシスを与えてくれるのです。
特に、ジョニィのスタンドである「タスク」が進化していく過程は、彼自身の精神的な成長と見事に重なっています。爪を飛ばすだけの小さな能力が、やがて宇宙的な理屈にまで到達する展開には、読んでいて鳥肌が立つこと間違いありません。
ジョジョの奇妙な冒険 第7部 文庫版 コミックセットなどで一気に読み返すと、その能力の進化の美しさがより際立ちます。
「漆黒の意志」と「正しい道」の葛藤
第7部を象徴する言葉に「漆黒の意志」があります。
これは主人公ジョニィが時折見せる、目的のためなら殺人も厭わない、ある種の危うい覚悟のことです。歴代のジョジョ主人公が「黄金の精神」という高潔な心を持っていたのに対し、ジョニィの目は時に冷酷で、暗い。
しかし、それこそが「人間」ではないでしょうか。必死に生きようとする者が、何かを掴み取ろうとする時に見せる本性。この泥臭い人間像が、大人になった読者の心に強く突き刺さります。
対するライバルや敵たちもまた、それぞれの「正義」を持っています。特にラスボスであるファニー・ヴァレンタイン大統領の掲げる理想は、一概に悪とは言い切れないほどの国家愛に満ちています。
「誰が本当に正しいのか?」
「自分がその立場だったらどうするのか?」
物語の随所で問いかけられるこの哲学的なテーマが、単なるアクション漫画の枠を超えた「人間ドラマ」としての重厚さを生み出しているのです。
圧倒的な画力で描かれる「男の世界」
月刊誌連載になったことで、荒木飛呂彦先生の画力は一つの到達点に達しました。
北米大陸の広大な自然、馬の躍動感、そしてキャラクターたちの繊細な表情。一コマ一コマが絵画のような美しさを持っており、特に「リンゴォ・ロードアゲイン」との戦いに代表される「男の世界」を描いたエピソードは、セリフ、構図、演出のすべてが完璧と言っても過言ではありません。
また、本作は「馬」の描写が非常にリアルです。馬の種類や走り方の違い、騎手としての戦術などが細かく描かれており、競馬や乗馬に詳しくない人でも、そのスピード感と迫力に圧倒されるはずです。
もしデジタルで読んでいる方がいれば、ぜひipadのような大きな画面で、その緻密な線を確認してみてください。紙のコミックスとはまた違った発見があるはずです。
納得から始まる物語の終わり
第7部の物語を通じて語られるのは「納得」という言葉の重要性です。
「納得」は全てに優先する。ジャイロがジョニィに伝えたこの言葉は、読者の人生にも重なる深い教訓を含んでいます。結果がどうあれ、自分自身の行動に納得できるかどうか。
完結した物語を読み終えたとき、読者の心に残るのは爽快感だけではありません。何とも言えない切なさと、それでも前を向いて歩き出そうとするジョニィの姿に、静かな感動が押し寄せます。
第6部までの「運命」という大きなテーマを、一人の人間の「歩み」という形に落とし込んだ結末。これこそが、本作がシリーズの中で最高傑作と称される所以ではないでしょうか。
ジョジョ7部が最高傑作なのはなぜ?完結したからこそ語れる魅力と面白さを徹底解説!のまとめ
いかがでしたでしょうか。
ジョジョ第7部『スティール・ボール・ラン』は、過去の伝統を継承しつつも、それを大胆に破壊し再構築した意欲作です。
- パラレルワールドという自由な設定
- ジョニィとジャイロの深い友情と人間的成長
- 「回転」と「スタンド」が織りなす極限の知略戦
- 善悪を超越した重厚なテーマ性
- 芸術の域に達した圧倒的なグラフィック
これらすべての要素が完璧に噛み合った結果、ジョジョ史上、いえ、漫画史に残る「最高傑作」が誕生したのです。
もしあなたが、まだこの大陸横断レースに参加していないのであれば、それはとても幸運なことです。これからあの感動を、驚きを、初見で味わえるのですから。
一度読み始めれば、あなたもきっと「納得」という名の黄金の回転に巻き込まれるはずです。ぜひジョジョの奇妙な冒険 第7部 全巻セットをチェックして、その壮大な旅の一歩を踏み出してみてください。
ジョニィが最後に見つけた答えを、ぜひあなた自身の目で確かめてください。

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