「お前、本当に宇宙人なのか?」
ジョジョの奇妙な冒険 第4部「ダイヤモンドは砕けない」を読んだ誰もが、仗助と同じツッコミを入れたくなったはずです。その中心にいるのが、自称マゼラン星雲出身の転校生、支倉未起隆(ヌ・ミキタカゾ・ンシ)です。
杜王町という町は、スタンド使いや幽霊、果ては殺人鬼まで潜んでいる「変な町」ですが、その中でも群を抜いて異質なのが彼でしょう。今回は、ジョジョファンの間で長年議論され続けている「未起隆は本当に宇宙人なのか、それともただのスタンド使いなのか」という永遠の謎について、作中の描写やメタ的な視点から徹底的に迫ります。
宇宙人?それとも変人?支倉未起隆の初登場シーンを振り返る
物語の中盤、仗助と億泰がミステリーサークルの中で倒れている奇妙な格好の男を発見するところから、彼の物語は始まります。
まず目を引くのが、その浮世離れしたビジュアルです。エルフのような尖った耳、銀髪、そして独特の装飾。何より、彼の言動は地球人の常識を遥かに超えていました。
- 自称216歳である
- マゼラン星雲からやってきた
- 地球の食べ物として「ティッシュ」を平然と口にする
- サイレンの音を聞くと、全身に蕁麻疹が出てパニックになる
普通の漫画であれば「ああ、ギャグキャラの宇宙人なんだな」で終わる話ですが、ここはジョジョの世界です。「精神エネルギーの具現化」であるスタンド能力が存在する以上、読者は「こいつもスタンド使いなのではないか?」という疑念を抱かずにはいられません。
仗助も最初は彼をただの変人、あるいはスタンド使いだと思って接していました。しかし、その後の展開で「どうも今までのスタンド使いとは毛色が違うぞ」と思わされる描写が次々と投下されることになります。
能力「アース・ウィンド・アンド・ファイヤー」の異質さ
彼の持つ能力、ジョジョの奇妙な冒険 第4部に登場する他のスタンドと比べても極めて特殊です。自らの肉体をあらゆる物体に変形させるその力は、作中で「アース・ウィンド・アンド・ファイヤー」と名付けられています。
この能力の最大の特徴は、以下の点に集約されます。
- 物質そのものに変身する: 通常、スタンドは持ち主の傍らに現れるビジョンですが、未起隆の場合は自分自身の肉体をボルトやサイコロ、スニーカー、はたまた望遠鏡へと変化させます。
- 一般人にも見える: スタンドはスタンド使いにしか見えないのがジョジョの鉄則ですが、彼の変身は肉体そのものの変質であるため、スタンド使いでない人間(例えば彼の母親)にもその姿が見えています。
- 複雑な機械にはなれない: 本人の弁によれば「構造が理解できない複雑なもの」にはなれないとのこと。カメラに変身しようとしても、中身が伴わない「ハリボテ」になってしまうという弱点があります。
この「肉体変異」という特性は、第2部の柱の男たちを彷彿とさせますが、スタンド使いという枠組みで考えると非常に珍しいタイプです。第5部のメローネや第6部のFF(フー・ファイターズ)に近い性質を感じさせますが、第4部の時点では極めて異質な存在でした。
宇宙人説を裏付ける「スタンドの矢」の拒絶
彼が「宇宙人」である最大の根拠とされるのが、虹村形兆が持っていた「弓と矢」にまつわる描写です。
ジョジョの世界において、才能ある者にスタンド能力を強制的に発現させる「矢」。劇中、未起隆はこの矢で射抜かれそうになりますが、なんと矢の先端が彼の皮膚を突き破ることができず、まるでゴムのように弾き返されてしまったのです。
これには、矢を放った側も、そして読者も驚愕しました。
通常、スタンド使いとしての素質があれば矢は深く突き刺さり、素質がなければ死に至ります。しかし、「刺さらない」というケースは前代未聞です。ここから導き出される推論は二つ。
- 彼は地球人ではないため、スタンドという概念そのものが適用されない。
- すでに完成された別の生命体としての能力を持っており、矢が干渉できなかった。
もし彼がただのスタンド使いであれば、矢に反応するはずです。この描写こそが、彼を「宇宙人」たらしめる最も強力な証拠として、ファンの間で語り継がれています。
スタンド使い説を補強する「母親」の登場
一方で、彼が単なる「重度の思い込みを持ったスタンド使い」であるという説も根強く存在します。その根拠となるのが、物語後半に登場する彼の「母親」です。
未起隆の奇行に頭を抱えるごく普通の地球人の母親が登場し、「この子は小さい頃から自分が宇宙人だと思い込んでいる困った子なのよ」と仗助たちに説明します。このシーンだけを見れば、未起隆は単に「宇宙人という設定に没入しすぎた、特殊な能力を持つ少年」ということになります。
しかし、ここでも未起隆は「あの女は私に洗脳されているだけだ」と言い張ります。
ジョジョという作品は、キャラクターの精神性が能力に直結します。もし彼が「自分は100%宇宙人である」と心の底から信じ込んでいるのなら、その精神が「地球の常識を超えた変身能力」を生み出した可能性も否定できません。
また、彼の弱点である「サイレン」についても、宇宙人ゆえの生理的拒絶反応なのか、あるいは幼少期のトラウマによるパニック障害のようなものなのか、どちらとも解釈できる絶妙なラインで描かれています。
露伴とのチンチロリン戦で見せた意外な「友情」
未起隆を語る上で外せないのが、岸辺露伴との命がけのギャンブル、通称「チンチロリン」のエピソードです。
仗助は小遣い稼ぎのために、未起隆を「サイコロ」に変身させてイカサマを企てます。ここで描かれる未起隆の姿は、冷徹な宇宙人というよりは、どこか抜けていて、友人のために一生懸命(だが空回る)な少年の姿でした。
仗助のために有利な出目を出そうと必死になるあまり、空気を読まずに「ありえない出目」を出し続け、結果として露伴の不信感を買い、露伴の家が火事になるという大惨事を引き起こします。
このエピソードでの彼は、地球のルールを学ぼうとする健気さと、圧倒的なマイペースさが同居しており、読者からの人気を一気に高めました。彼が宇宙人であろうとなかろうと、仗助という「相棒」を見つけ、杜王町というコミュニティに居場所を見つけた瞬間でもあったのです。
結局どっち?荒木飛呂彦先生の「意図」を探る
さて、結論として彼は宇宙人なのか、スタンド使いなのか。
実はこれについて、原作者である荒木飛呂彦先生は複数のインタビューで意図を明かしています。その答えは、**「どっちか分からないように描いているし、自分でも決めていない」**というものです。
ジョジョの第4部は、日常の中に潜む非日常や恐怖を描く物語です。近所に殺人鬼がいるかもしれない、隣の家がスタンド使いかもしれない。そんな「奇妙さ」を象徴するキャラクターとして、未起隆は「本物の宇宙人なのか、ヤバい思い込みの少年なのか、判別不能な存在」として配置されました。
「わからないこと」そのものが、彼のキャラクターとしての完成形なのです。
もし彼が100%の宇宙人だと確定してしまえば、それはSFの領域になります。逆に、100%スタンド使いだと分かってしまえば、それはただの特殊な能力者です。そのどちらにも属さないグレーゾーンに彼が居続けることで、第4部の舞台である杜王町の「奇妙さ」がより深みを増すわけです。
宇宙人の視点から見た「杜王町」という町
未起隆の存在は、物語に「外部からの視点」をもたらしました。
承太郎や仗助、露伴といった強力なスタンド使いたちが、死闘を繰り広げている杜王町。しかし、未起隆の目を通して見ると、それらの争いすらも「地球人の奇妙な習慣」の一部に見えてくるから不思議です。
スーパーフライ(鉄塔)の男との戦いでも、彼は自分の身を挺して仗助を助けようとしました。彼が宇宙人だとしたら、なぜ縁もゆかりもない地球人を助けるのか。彼がただの人間だとしたら、なぜあそこまで命を懸けて設定を守り抜くのか。
そこにあるのは、理屈を超えた「善意」や「好奇心」です。未起隆は、異質な存在でありながら、第4部のテーマである「黄金の精神」を独自の形で体現していたキャラクターだと言えるでしょう。
支倉未起隆のファッションとジョジョ グッズ
彼の独特なファッションについても触れておきましょう。
胸元に複数の安全ピンをあしらった制服、そして腕に巻かれたいくつもの時計。これらは「地球の時間を計測しようとしている」あるいは「地球の文化を彼なりに解釈して取り入れた」結果だとも読み取れます。
ジョジョのキャラクターは皆ファッショナブルですが、未起隆のデザインは特に「違和感」を重視して作られています。この違和感こそが、彼の魅力の源泉です。もし彼のフィギュアやジョジョ 4部 フィギュアを手に取る機会があれば、その細かい装飾の一つ一つに込められた「宇宙人的(?)こだわり」に注目してみてください。
ジョジョ4部の宇宙人は何者?支倉未起隆の正体や能力、謎に包まれた真相を徹底考察!のまとめ
結局のところ、支倉未起隆の正体は「読者の心の中にだけある」というのが、最もジョジョらしい答えなのかもしれません。
- 矢を弾くほどの異質な肉体を持つ「本物の宇宙人」
- あまりの思い込みの強さに、物理法則すら書き換えた「最強のスタンド使い」
どちらの説を支持するかで、物語の風景はガラリと変わります。
しかし、確かなことが一つだけあります。それは、彼がサイレンの音に震えながらも、仗助たちと一緒に笑い、戦い、杜王町という「奇妙な町」の住人として確かに存在していたということです。
もし、あなたが夜道でアイスクリームを食べている奇妙な少年を見かけたり、空からティッシュが降ってきたりしたら……それは、彼がまだどこかで地球の調査を続けている証拠かもしれません。
支倉未起隆というキャラクターが残した最大の功績は、私たち読者に「もしかしたら、本当に宇宙人は隣にいるのかもしれない」と思わせた、そのワクワク感にあるのではないでしょうか。
あなたは、彼は宇宙人だと思いますか?それとも……?

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