「ジョジョの奇妙な冒険」という作品が、世代を超えて愛され続ける理由はどこにあるのでしょうか。独特の絵画的なタッチ、予測不能なスタンドバトル、そして魂を揺さぶる名セリフの数々。その魅力を家庭用ゲーム機で再現しようと挑んだ歴史の中で、今なお語り継がれるのがPlayStation 2(PS2)で発売された2つのタイトルです。
今回は、カプコンが手掛けた第5部の名作と、バンダイが執念で形にした第1部の意欲作、この2本がなぜレトロゲームとなった今でもファンを惹きつけてやまないのか、その真髄に迫ります。
黄金の風をその手で操る「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の旋風」の衝撃
2002年にカプコンから発売されたジョジョの奇妙な冒険 黄金の旋風は、当時のジョジョファンに凄まじい衝撃を与えました。原作の第5部をベースにしたこの作品は、単なるキャラクターゲームの枠を超えた「芸術品」としての側面を持っていたからです。
まず目を引くのが、独自のグラフィックエンジン「アーティストゥーン」による映像表現です。漫画のハッチング(斜線)や影の付け方を3DCGで見事に再現しており、コントローラーを握っているはずなのに、まるでカラー原画がそのまま動いているかのような錯覚に陥ります。
画面上には「メメタァ」や「ゴゴゴ」といった擬音文字が立体的に浮き上がり、攻撃のヒットに合わせて弾ける演出。これは後の「オールスターバトル」などにも引き継がれる要素ですが、20年以上前にここまでの完成度で実現していた事実は驚愕に値します。
ゲーム性においても、格闘ゲームの老舗カプコンらしいこだわりが随所に見られます。プレイヤーはジョルノやブチャラティを操作し、ステージごとに用意されたミッションをクリアしていくのですが、ここで重要になるのが「シークレットファクター」というシステムです。
これは「原作で起きた出来事をゲーム中で再現する」とボーナスが入る仕組み。例えば、ブチャラティがズッケェロの首を吊るしたり、ジョルノがゴールド・エクスペリエンスで自身の肉体を修復したり。原作を読み込んでいるファンほどニヤリとする仕掛けが満載で、単に敵を倒すだけでなく「ジョジョの物語を正しくなぞる」楽しさが追求されています。
波紋の鼓動が蘇る「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」の執念
「黄金の旋風」から4年後の2006年、今度はバンダイから第1部を題材にしたジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッドが登場しました。スタンド能力が主流となったジョジョ界隈において、あえて原点である「波紋」と「吸血鬼」の戦いにスポットを当てた勇気ある一作です。
このゲームの最大の特徴は、あまりにも深い「原作愛」にあります。第1部の重厚なストーリーを、スピードワゴンの熱いナレーションと共に追体験できる構成になっており、カットシーンの演出や台詞回しは、当時のファンが「これこそがジョジョだ」と唸るほどの密度でした。
システム面では「波紋呼吸」が鍵を握ります。ボタン入力で呼吸を整え、ゲージを溜めることで強力な波紋技を繰り出すのですが、この「呼吸を整える」という行為自体が、ジョナサン・ジョースターになりきれる最高のロールプレイング要素となっていました。
さらに特筆すべきは「ポージングシステム」です。戦闘中に特定のコマンドを入力することで、あの「ジョジョ立ち」を決めることができます。ポーズが決まればステータスが強化されるなどの恩恵があり、無意味にポーズを決めたくなる衝動をゲーム性へと昇華させています。
正直なところ、ロード時間の長さやカメラワークの不自由さなど、ゲームとしての快適さには課題が多い作品でもあります。しかし、クリア後に解放される「ディオ編」や、膨大な資料が見られるギャラリーモードなど、ファンアイテムとしての価値は計り知れません。まさに「ジョジョ好きが、ジョジョ好きのために作った」という熱量が、欠点を補って余りある魅力となっているのです。
開発メーカーの違いがもたらした「動」と「静」の対比
PS2で展開されたこの2作を比較すると、開発メーカーのカラーが色濃く出ているのが分かります。カプコンによる「黄金の旋風」は、スタイリッシュでスピーディーな「アクションゲーム」としての完成度を追求していました。一方でバンダイの「ファントムブラッド」は、物語の重厚さとキャラクターへの没入感を重視した「ドラマチック体験」に重きを置いています。
「黄金の旋風」では、スタンドを出す・引っ込めるという切り替えを駆使したテクニカルなコンボが楽しめます。対照的に「ファントムブラッド」は、一撃の重さや波紋を練る間合いの取り方など、より泥臭く、それでいて気高い人間讃歌の戦いを描いています。
この2作が同じハードウェアで共存していたことは、ファンにとって非常に贅沢なことでした。近接格闘の緊張感を味わいたい時は第1部を、スタンド使い同士の知略とスピード感を味わいたい時は第5部を。どちらも当時のスタッフが、原作の魅力をどうすれば3D空間で表現できるかという難題に対し、異なるアプローチで答えを出した結果なのです。
現在ではPlayStation 2本体を所有している人も少なくなっていますが、これらのソフトが持つ独自の空気感は、最新のグラフィックで描かれた現代のゲームにも決して引けを取りません。
今からPS2版ジョジョを遊ぶための現実的なガイド
もしこの記事を読んで「当時を思い出して遊びたくなった」「未プレイだけど触れてみたい」と思ったなら、いくつか注意しておくべき点があります。
まず、どちらのタイトルも現行のハード(PS5やSwitchなど)への移植が行われていません。プレイするには、PS2の実機、あるいはPS2互換機能を持つ初期型のPlayStation 3が必要です。ディスク自体の入手は、中古ショップやネットオークションで比較的容易ですが、名作としての評価が定着しているため、極端に安値で叩き売られることは少なくなっています。
特に「黄金の旋風」は、カプコンと現在の版権元とのライセンス関係から、今後ダウンロード配信などが絶望的と言われている「幻の逸品」に片足を突っ込んでいます。物理メディアとして手元に置いておく価値は非常に高いと言えるでしょう。
また、プレイする際はぜひ「音」にも注目してください。アニメ版とはキャストが異なりますが、当時の実力派声優陣による演技は、今聞いても鳥肌が立つほどキャラクターにマッチしています。特に第5部のジョルノたちの声は、アニメから入った世代にとっても新鮮かつ「これも正解だ」と思わせる説得力に満ちています。
PS2版ジョジョは名作?黄金の旋風とファントムブラッドの違いや魅力を徹底解説!
結論として、PS2版のジョジョは、間違いなく「名作」の系譜に連なる作品です。それは単に人気漫画をゲーム化したからではなく、作り手が原作のフィロソフィーを深く理解し、それを当時の技術の限界まで突き詰めて表現しようとした「魂」が宿っているからです。
「黄金の旋風」が提示した、漫画の世界に入り込むようなヴィジュアル体験。
「ファントムブラッド」が示した、不器用なまでに真っ直ぐな原作への愛。
この2作品は、ジョジョという作品が持つ多面的な魅力を、ゲームという媒体を通して見事に切り取って見せました。たとえ最新ハードのような超高精細なポリゴンではなくとも、そこに流れる「黄金の精神」は、今もなお色褪せることなく輝き続けています。
もしあなたが、まだ見ぬジョジョの物語を求めているなら。あるいは、かつて胸を熱くした冒険をもう一度体験したいなら。押し入れの奥からPS2コントローラーを引っ張り出し、あの伝説のディスクを読み込ませてみる価値は十分にあります。そこには、時を経ても変わらない、奇妙で気高い冒険があなたを待っているはずです。

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