「ジョジョの奇妙な冒険」を読んでいると、ふとした瞬間に「ん?これなんて読むんだ?」と手が止まることはありませんか?独特なポージングや擬音もさることながら、ファンの心を掴んで離さないのが、漢字に振られたあまりにもスタイリッシュな「ルビ(読み方)」の世界です。
その中でも、物語の重要な局面で何度も登場するキーワードが「十字架」です。普通に読めば「じゅうじか」ですが、荒木飛呂彦先生の筆致にかかれば、そこには特別な響きが宿ります。
今回は、ジョジョにおける「十字架」の読み方の正解から、その裏に隠された元ネタ、そして涙なしには語れない名シーンまでを徹底的に深掘りしていきます。
ジョジョにおける「十字架」の基本の読み方は「クロス」
結論から言うと、ジョジョの劇中で「十字架」と書いて最も多く読まれるのは**「クロス(Cross)」**です。
これは、作者である荒木飛呂彦先生の「言葉の響き」に対する並々ならぬこだわりが反映されています。ジョジョの世界では、単なる記号としての漢字ではなく、その言葉が持つエネルギーやリズムを重視してルビが振られます。
「十字架(じゅうじか)」と4音で呼ぶよりも、「クロス」と鋭く短く呼ぶ方が、バトル漫画としてのスピード感や、洋楽的なロックのニュアンスが強調されるからです。
なぜ「クロス」と読ませるのか?
ジョジョのルーツには、常に1970年代から80年代にかけての洋楽文化があります。
- 楽曲のタイトル
- 歌詞のフレーズ
- アルバムのジャケットデザイン
これらの中に登場する「Cross」という響きを、日本語の視覚情報である「十字架」に重ね合わせることで、読者の脳内に多層的なイメージを植え付けているのです。
第2部・シーザーの最期を彩る「十字架(クロス)」の衝撃
ジョジョファンにとって「十字架」という文字を見て真っ先に思い浮かぶのは、第2部『戦闘潮流』のシーザー・アントニオ・ツェペリの最期ではないでしょうか。
柱の男・ワムウとの死闘。シーザーはあと一歩のところまで追い詰めながらも、決定打を欠き、深手を負います。しかし、彼はただでは死にませんでした。親友であるジョセフ・ジョースターのために、最期の波紋を振り絞り、ワムウから奪い取った解毒剤入りのピアスを自身の鮮血で包み込みます。
この時、崩落したホテルの瓦礫が天井から降り注ぎ、シーザーの遺体を覆うように重なった形が、まさに巨大な「十字架(クロス)」でした。
演出としての十字架
このシーンで、ナレーションやジョセフの絶叫とともに描かれる「十字架」には、聖書的な「自己犠牲」の意味が込められています。
単に瓦礫が重なったのではなく、運命が彼を聖なる形へと導いたかのような演出。ここで「じゅうじか」ではなく「クロス」とルビが振られることで、シーザーというキャラクターのイタリア人らしい伊達男(ダテ男)の雰囲気と、現代的なスタイリッシュさが完璧に融合しました。
ジョジョの奇妙な冒険 第2部を読み返すと、この「クロス」という響きがいかに彼の最期を神聖なものに昇華させているかが分かります。
宗教的背景と「クルス」という別の読み方
物語が進み、第6部『ストーンオーシャン』になると、今度は宗教的なニュアンスがより色濃くなります。ここで登場するのが、物語の鍵を握るエンリコ・プッチ神父です。
神父である彼は、当然ながら常に信仰心とともにあります。この第6部の文脈や、あるいは特定の宗教的儀式を指す場面では、十字架を**「クルス」**と読ませるケースも存在します。
クルスとクロスの違い
- クロス(Cross): 英語圏の響き。ファッションやロック、あるいは物理的な形状としての意味合いが強い。
- クルス(Cruz): ポルトガル語やスペイン語圏の響き。よりカトリック的な、厳格で重厚な信仰の対象としてのニュアンスが強まる。
プッチ神父が語る「天国へ行く方法」や「素数」を数える精神状態において、十字架は単なる形ではなく、人生の重荷そのものです。このように、同じ漢字であっても、その時のキャラクターの立ち位置や物語のフェーズによって読み方を変えるのが、荒木流の「当て字」の真骨頂と言えます。
第7部「スティール・ボール・ラン」での十字架の役割
ジョジョの物語がパラレルワールドへと移行した第7部『スティール・ボール・ラン』では、十字架は「文字」としてだけでなく、「物語の骨組み」そのものとして機能します。
この部で探求されるのは「聖人の遺体」です。この遺体こそが、まさに十字架にかけられたある人物を彷彿とさせます。
地図としての十字架
劇中では、北米大陸を横断するレースの道中に、遺体が安置された場所を繋ぐと特定の図形が浮かび上がります。ここでも「十字架(クロス)」というキーワードは、単なるシンボルを超え、世界の理(ことわり)を示す指針として描かれました。
読者は「十字架」という文字を見るたびに、そこに込められた数千年の歴史や、人々の欲望、そして「漆黒の殺意」を感じ取ることになります。
ジョジョ特有の「当て字ルール」を知ればもっと楽しくなる
「十字架」を「クロス」と読むように、ジョジョには独自の変換ルールが存在します。これらを知ることで、作品の解像度は一気に上がります。
感情を乗せる当て字の例
- 黄金体験(ゴールド・エクスペリエンス): 単なる体験ではなく、輝かしく価値のあるもの。
- 法皇の緑(ハイエロファントグリーン): 精神のビジョンを色の名前に変換。
- 波紋疾走(オーバードライブ): エネルギーの暴走と加速を表現。
- 空間(スペース): 単なる場所ではなく、削り取られるべき概念。
これらの表現は、文字で状況を説明し、ルビでその「ニュアンス(魂)」を伝えるという、漫画という媒体をフル活用した表現手法です。
「十字架」は宿命と継承のシンボル
なぜ荒木先生は、これほどまでに「十字架」というモチーフにこだわるのでしょうか。それは、ジョジョのメインテーマである「人間讃歌」と「血の宿命」に深く関わっているからです。
十字架を背負うということは、逃れられない運命を受け入れるということです。
ジョナサンから始まり、空条承太郎、そしてジョリンへと続く黄金の精神。彼らは皆、自らの意志で困難という名の十字架を背負い、前へと進みます。
自己犠牲の美学
特にジョジョにおいては、「誰かのために命を捨てる」シーンで十字架が象徴的に使われます。
- 自分の血を灯火とする者。
- 仲間のために魂を差し出す者。
- 散りゆく瞬間に希望を託す者。
その重厚な生き様を表現するのに、漢字の「十字架」はあまりにも相応しい。そして、その生き様の輝き(カッコよさ)を表現するのに、「クロス」という響きが必要不可欠だったのです。
現代のファンに受け継がれる「十字架(クロス)」の概念
今の10代、20代の読者にとっても、ジョジョの「十字架」は特別な意味を持ち続けています。SNSやネットコミュニティでは、何か大きな責任を負ったり、覚悟を決めたりする際に「十字架(クロス)を背負う」といった表現が使われることもあります。
ジョジョの奇妙な冒険 全巻セットを手に取れば、30年以上の年月を経ても色褪せない、文字と絵のパワーに圧倒されるはずです。
まとめ:ジョジョの奇妙な冒険の「十字架」の読み方は?意味や元ネタ、名シーンを徹底解説!
改めて整理すると、ジョジョにおける「十字架」の読み方は以下の通りです。
- 基本的には「クロス」と読む。
- 文脈によっては「クルス」や、そのまま「じゅうじか」と読むこともある。
- 元ネタは洋楽文化や聖書的な自己犠牲の精神。
- 名シーンは第2部のシーザー・ツェペリの最期。
もしあなたがこれからジョジョを読み返す、あるいは初めて手に取るのであれば、ぜひ「ルビ」に注目してみてください。そこには、作者が文字に込めた熱い鼓動が隠されています。
「十字架」という文字が、単なる図形ではなく、一人の男の生き様や、一族の長い歴史を感じさせる「クロス」として響いてきたとき、あなたは本当の意味でジョジョの世界に入り込んだと言えるのかもしれません。
次はどの「奇妙な読み方」に遭遇するのか。ページをめくる指が、少しだけ熱くなるのを感じませんか?

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