アニメ業界には時として、運命に導かれたかのような奇妙な一致が起こります。世界中に熱狂的なファンを持つ『ジョジョの奇妙な冒険』のアニメシリーズにおいて、ファンの間で語り草となっているのが「主演声優の苗字」にまつわるエピソードです。
第3部、第4部、そして第5部。物語のバトンが渡されるとともに、その中心にいたのは偶然にも全員「小野」という苗字を持つ実力派声優たちでした。彼らがどのようにしてジョースター家の血統を演じ、どのような情熱を注いできたのか。今回は、ジョジョという作品を語る上で欠かせない「小野」の系譜と、その裏側に隠された制作秘話を深掘りしていきます。
なぜ主人公が3作連続で「小野」だったのか?
ジョジョのアニメシリーズを振り返ると、第3部『スターダストクルセイダース』の空条承太郎役に小野大輔さん、第4部『ダイヤモンドは砕けない』の東方仗助役に小野友樹さん、そして第5部『黄金の風』のジョルノ・ジョバァーナ役に小野賢章さんが起用されています。
これほどまでに同じ苗字が続くのは、何か制作側の意図や演出上の狙いがあったのではないかと疑いたくなりますよね。しかし、驚くべきことにこれは「完全に偶然」の結果だったことが、歴代のプロデューサーやディレクターのインタビューで明かされています。
選考の基準はあくまで「そのキャラクターの声として最も相応しいかどうか」という一点のみ。厳しいオーディションを勝ち抜いた結果、たまたま3部続けて「小野」姓の方が選ばれたというのです。この奇跡的な一致には、現場のスタッフたちも驚きを隠せなかったといいます。
第4部のキャスト発表時には、周囲から「また小野さんだ!」という声が上がり、第5部で小野賢章さんに決まった際には、もはや「ジョジョの主役は小野という苗字でなければならないのか?」というジンクスめいた空気すら漂ったそうです。しかし、この偶然こそが、作品に宿る「運命」というテーマを象徴しているようにも感じられます。
小野大輔が築き上げた「空条承太郎」という圧倒的基準
「小野ジョジョ」の先陣を切ったのは、第3部の主人公・空条承太郎を演じた小野大輔さんです。彼は自他共に認める熱烈なジョジョファンであり、声優になる前から原作をバイブルとして愛読していました。
小野大輔さんにとって、承太郎役を演じることは単なる仕事以上の意味を持っていました。オーディションに合格した際、「もしこの役を演じきれたなら、声優を辞めてもいい」というほどの決死の覚悟でマイクの前に立ったというエピソードは有名です。
承太郎というキャラクターは、冷静沈着でありながら内に激しい怒りを秘めた「静と動」のバランスが極めて難しい役どころです。特にスタンドによる打撃ラッシュ「オラオラ」の掛け声は、視聴者の魂を揺さぶる重厚感が求められます。
小野大輔さんは、この「オラオラ」一つに対しても徹底的なこだわりを見せました。一発一発の拳に重みを乗せるような発声、そして敵を圧倒するカリスマ性。彼が作り上げた承太郎の完成度があまりに高かったため、後に続く小野友樹さんや小野賢章さんにとっては、これが一つの「越えるべき壁」として立ちはだかることになったのです。
ジョジョのフィギュアやグッズを集める際にも、承太郎の存在感は格別ですよね。デスクに超像可動 ジョジョ 承太郎を置いて、その熱量を手元で感じるファンが多いのも頷けます。
小野友樹が受け継いだ「東方仗助」の親しみと爆発力
第4部の主人公、東方仗助を演じたのが小野友樹さんです。第3部の承太郎が「完成されたヒーロー」だったのに対し、仗助はどこにでもいる高校生らしさと、リーゼントをけなされると見境をなくす危うさを併せ持っています。
小野友樹さんは、先行する小野大輔さんの背中を追いかけつつも、仗助独自の魅力を引き出すために苦心しました。特に第4部の放送開始前、イベントのステージで小野大輔さんから「次は、お前だ」とバトンを渡された瞬間、その責任の重さに身が引き締まる思いだったと語っています。
仗助の代名詞であるラッシュ時の掛け声「ドラララ」は、承太郎の「オラオラ」とは異なる、しなやかさと若さが同居した響きが必要です。小野友樹さんは持ち前の身体能力とパワフルな発声を活かし、仲間思いで心優しい仗助が、怒りによってリミッターを解除した時の爆発力を見事に表現しました。
また、第4部は日常の延長線上にある恐怖や楽しさが描かれるため、小野友樹さんの演技には「親しみやすさ」というエッセンスが強く込められています。歴代のジョジョの中でも、最も「友達になりたい」と思わせる仗助のキャラクター性は、彼の温かみのある声によって完成したと言えるでしょう。
ジョジョの世界観に浸りながら作業をしたい時には、ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない Blu-ray BOXを見返すと、当時の熱量が蘇ります。
小野賢章が切り拓いた「ジョルノ」の静かなる覚悟
そして第5部『黄金の風』。イタリアを舞台にしたギャングスターの物語で主人公ジョルノ・ジョバァーナを演じたのが、小野賢章さんです。これで3作連続の「小野」となりました。
ジョルノは、歴代のジョジョの中でも非常に特異な存在です。悪の帝王DIOの息子でありながら、ジョースター家の高潔な精神を継承しているという、光と影を併せ持つ少年。小野賢章さんは、この複雑な背景を持つ15歳の少年の「静かなる覚悟」を演じきりました。
ジョルノのラッシュは「無駄無駄」です。これは父であるDIOから受け継がれた言葉ですが、小野賢章さんはあえてDIOの演じ方に寄せるのではなく、ジョルノとしての正義に基づいた「無駄無駄」を追求しました。それはまるで鋭い刃物で空気を切り裂くような、スピード感と気品に満ちたものでした。
収録現場では、すでに「小野の系譜」が定着していたこともあり、小野賢章さんへの期待値は最高潮に達していました。しかし、彼はそのプレッシャーを撥ね除け、誰にも似ていない新しいジョジョ像を確立。第5部のテーマである「運命に抗う黄金の精神」を、声の演技を通して視聴者の心に深く刻み込んだのです。
作品を象徴する音楽と共に楽しみたいなら、ジョジョの奇妙な冒険 第5部 黄金の風 オリジナルサウンドトラックは欠かせないアイテムです。
三者三様の「ラッシュ」に込められた技術と魂
ジョジョといえば、スタンドによる高速の打撃ラッシュとその掛け声が最大の見せ場です。この「ラッシュの演技」において、3人の小野さんはそれぞれ異なる技術的なアプローチを取っています。
- 小野大輔(オラオラ): 腹の底から響くような重低音。一撃必殺の重みを重視。
- 小野友樹(ドラララ): 軽快なリズムと、徐々に加速していくような疾走感。
- 小野賢章(無駄無駄): 短く鋭い発声を連続させる、マシンガンのような精密さ。
これらの演じ分けは、単に声質の違いだけではありません。彼らがいかに台本を読み込み、それぞれのキャラクターが持つ「闘争の理由」を理解していたかの表れでもあります。
アニメの収録では、このラッシュのシーンは非常に体力を消耗します。酸欠でふらつきながらもマイクの前に立ち続ける彼らの姿は、まさにスタンド使いそのもの。こうした現場での「黄金の精神」の継承があったからこそ、私たちは映像を通してあれほどの熱量を感じることができるのです。
小野大輔からファイルーズあいへ繋がった親子愛
「小野の系譜」は第5部で一区切りとなりますが、その影響は第6部『ストーンオーシャン』にも色濃く受け継がれています。第6部の主人公・空条徐倫を演じたのはファイルーズあいさんです。
ここで再び、小野大輔さんが父親である空条承太郎役として帰ってきます。ファイルーズあいさんもまた、小野大輔さんと同じく、ジョジョに憧れて声優を志したという筋金入りのファンでした。
劇中での父娘の絆は、現実の先輩・後輩としての絆と重なり合いました。小野大輔さんは、かつて自分が先輩たちから受け取った「ジョジョを演じる覚悟」を、今度は父親のような眼差しでファイルーズあいさんへと託したのです。
第3部から始まった「小野」の物語は、単なる苗字の一致という現象を超えて、次の世代へと繋がる強固な架け橋となりました。キャストが変わっても、根底に流れる情熱が変わらないこと。それこそがアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』が長く愛され続ける理由の一つです。
ジョジョを繋ぐ「小野」の系譜!小野大輔・友樹・賢章の共通点と制作秘話
ここまで見てきたように、小野大輔さん、小野友樹さん、そして小野賢章さんの3人がジョジョの主人公を演じたのは、偶然が生んだ最高にクールな奇跡でした。
3人に共通しているのは、作品に対する並外れた敬意と、前任者のバトンを大切に受け取ろうとする真摯な姿勢です。苗字が同じ「小野」であったことは、ファンにとって覚えやすいエピソードである以上に、彼ら自身の連帯感を強める魔法の言葉になったのかもしれません。
承太郎の「信念」、仗助の「友情」、そしてジョルノの「覚悟」。それぞれが異なる色を持つ「黄金の精神」を見事に演じきった3人の小野さんたち。彼らの名演は、これからも色あせることなく、ジョジョの歴史に刻まれ続けていくことでしょう。
もし、まだ彼らの熱演をフルで体感していない部があるなら、ぜひこの機会に一気見してみてください。声の演技に注目して聴き比べることで、これまで気づかなかった新しいジョジョの魅力が見つかるはずです。
ジョジョの奇妙な冒険 第1部〜第6部 全巻セットを読み返しながら、アニメ版の彼らの声を脳内で再生するのも、ファンならではの贅沢な楽しみ方かもしれませんね。
ジョジョという壮大な物語の中で輝きを放った「小野」の系譜。その奇妙な運命の繋がりは、これからも私たちの心の中で熱く燃え続けていくのです。

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