ジョジョ 恥知らず の パープル ヘイズ:フーゴのその後と「一歩」を踏み出す物語

ジョジョ
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ジョジョの奇妙な冒険 第5部「黄金の風」。その物語の中で、もっとも孤独で、もっとも「人間臭い」決断を下したキャラクターといえば、パンナコッタ・フーゴではないでしょうか。

サン・ジョルジョ・マッジョーレ島。ブチャラティの裏切りに際し、ボートに乗ることを拒んだフーゴ。彼は薄情だったわけではありません。むしろ、人一倍理性的で、組織の恐ろしさを知っていたからこそ、動けなかった。

そんな「置き去りにされた」彼が、その後どうなったのか。それを描いた傑作ノベライズが、恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より-です。

今回は、ジョジョファンなら避けては通れない、フーゴの再生と魂の救済を描いた本作の魅力を徹底的に深掘りします。


5部完結から半年後。新ボス・ジョルノが下した「ある命令」

物語の舞台は、ディアボロとの死闘が終わり、ジョルノ・ジョバァーナがパッショーネの新ボスに君臨してから半年の月日が流れたイタリアです。

かつての仲間たちは、それぞれの道を歩んでいました。ナランチャやアバッキオ、そしてブチャラティはこの世になく、ミスタは組織のNo.2としてジョルノを支えています。そんな中、一人だけ「宙ぶらりん」の男がいました。それがフーゴです。

彼は裏切り者でもなければ、忠義の士でもない。ただ「行かなかった」という事実だけを抱え、泥水のような日々を過ごしていました。そんなフーゴの前に、かつての仲間であるミスタが現れます。

ミスタから告げられたのは、ジョルノからの「命令」でした。

それは、組織の負の遺産である「麻薬チーム」の抹殺任務。かつてブチャラティたちが命を懸けて潰そうとした麻薬を、今なお売り捌き続ける残党たちを消せというものです。

もし任務を完遂すれば、フーゴを再び仲間として受け入れる。しかし、失敗したり逃げ出したりすれば、裏切り者として処刑する。この過酷な条件こそが、ジョルノがフーゴに差し出した「最後の手」だったのです。


逃げ続けた男「パンナコッタ・フーゴ」が向き合うべき過去

本作のタイトルにある「恥知らず」という言葉。これはフーゴ自身が抱く、強烈な自己嫌悪を象徴しています。

フーゴはIQ152の天才児でありながら、激情を抑えられず、恩師を殴打した過去を持ちます。エリート街道から転落し、社会からドロップアウトした彼を拾ったのがブチャラティでした。

しかし、その恩人が「組織を裏切る」という非論理的な行動に出たとき、フーゴの知性は彼を立ち止まらせてしまいました。「死ぬのが分かっている場所へは行けない」という正論。その正論こそが、彼の心を「恥」で塗りつぶしたのです。

本作の面白さは、このフーゴの心理描写にあります。

  • なぜ自分はあの時、ボートに乗れなかったのか?
  • 生き残った自分には、生きる価値があるのか?

物語を通じて、フーゴは自分自身の弱さと、そして自分自身の化身であるスタンド「パープル・ヘイズ」の醜悪なまでの凶暴性と向き合うことになります。


「パープル・ヘイズ」から「パープル・ヘイズ・ディストーション」へ

ジョジョの醍醐味といえば、やはりスタンドバトルです。作者の上遠野浩平先生は、自他共に認めるジョジョマニア。原作のパワーバランスや能力の理屈を完璧に踏襲しつつ、小説ならではの知略戦を展開します。

特に注目すべきは、フーゴのスタンドの進化です。

原作でのパープル・ヘイズは、無差別な殺人ウイルスを撒き散らす「制御不能」な能力でした。フーゴ自身、その凶暴性を恐れ、忌み嫌っていました。

しかし、本作のクライマックスで、フーゴの精神的成長とともにスタンドはパープル・ヘイズ・ディストーションへと変貌を遂げます。

この進化が面白いのは、「強くなる」のではなく「鋭くなる」という点です。ウイルスの殺傷力はさらに増し、ウイルス同士が共食いを始めるほど過激になります。その結果、精密な操作が可能になるという、フーゴの「自分自身を律しようとする意志」が反映された能力になっています。

「自分の欠点や恥を消し去るのではなく、それさえも武器にして前に進む」。このスタンド進化のプロセスは、全ジョジョファンに読んでほしい屈指の名シーンです。


敵対する「麻薬チーム」のスタンド能力も一筋縄ではいかない

フーゴの前に立ちはだかる「麻薬チーム」の面々も、非常に魅力的な悪役として描かれています。彼らもまた、ディアボロという絶対的な恐怖が消えた後の世界で、自分たちの居場所を守ろうともがく「はみ出し者」たちです。

特に印象的なのが、チームのリーダー格であるヴラド・ファルコーネのスタンド「レイニーデイ・ドリーム・アウェイ」です。

この能力は、相手の「感覚」を固定するというもの。例えば「雨が降っている」という感覚や、「絶望している」という感情を定着させ、そこから抜け出せなくさせます。物理的な破壊力ではなく、精神的な搦め手で追い詰めてくる描写は、まさにジョジョそのもの。

他にも、受けたダメージを鏡の中に反射する能力や、麻薬による精神操作など、一癖も二癖もあるスタンド使いが登場します。これらの強敵に対し、フーゴがどのように「知性」と「覚悟」で立ち向かうのか。ページをめくる手が止まらなくなるはずです。


トニオさんの過去も?ファンをニヤリとさせる設定の数々

本作はジョジョの奇妙な冒険の第4部や第2部など、他のエピソードとの繋がりを感じさせる小ネタが豊富に散りばめられています。

例えば、第4部の杜王町でイタリア料理店を営んでいたトニオ・トラサルディー。彼の本名や、彼がなぜ「料理で人を癒やす」という能力に至ったのか。その背景には、今作に登場するある人物との深い血縁関係が関わっています。

また、石仮面にまつわる研究の残滓や、かつてのスピードワゴン財団の動向など、シリーズを通した世界観の広がりを感じさせてくれます。単なるスピンオフの枠を超え、ジョジョという大きなサーガの一部として完成されているのが、本作が「神ノベライズ」と呼ばれる理由です。


結末:フーゴが手に入れた「黄金の精神」

物語の終盤、フーゴはついにジョルノ・ジョバァーナと再会します。

ジョルノは言います。あの時、ボートに乗らなかったことを責めるためにこの任務を与えたのではない、と。

ジョルノが求めていたのは、フーゴが「自分の足で歩き出すこと」でした。誰かに付いていくのではなく、自分の意志で、自分の恥を背負ったまま、新しい組織の一員として、そして友人として戻ってくること。

ラストシーンで見せるフーゴの態度は、かつての卑屈な天才の姿ではありません。そこには、ブチャラティから受け継いだ「黄金の精神」が、確かに芽生えていました。


ジョジョ 恥知らず の パープル ヘイズ:読後感に震える最高傑作

恥知らずのパープルヘイズを読み終えたとき、読者はきっとこう思うはずです。「これでようやく、第5部が完結した」と。

原作では描ききれなかったフーゴの心の欠落。それが、この物語によって見事に埋め合わされました。たとえ一度立ち止まってしまったとしても、そこから再び歩き出すことはできる。そんな希望を感じさせてくれる一冊です。

もしあなたが、アニメや漫画で第5部を観て、「フーゴはどうなっちゃったんだろう……」とモヤモヤした気持ちを抱えているなら、今すぐ本書を手に取ってみてください。

そこには、私たちが愛したパッショーネの仲間たちの精神が、今もなお熱く息づいています。

ジョジョ 恥知らず の パープル ヘイズ。それは、一人の青年が「恥」を抱えたまま、それでも光の方へと歩き出すための、最高に「グレート」な再起の物語です。

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