「このスタンド名、どこかで聞いたことがあるな?」
ジョジョの奇妙な冒険を読んでいると、そんな既視感に襲われることがありませんか?
それもそのはず。作者の荒木飛呂彦先生は、大の洋楽フリークとして知られています。登場人物の名前から、特殊能力である「スタンド」の名前に至るまで、その多くが実在するアーティストや楽曲、アルバムタイトルのオマージュなのです。
ジョジョという作品は、いわば荒木先生による壮大な「洋楽プレイリスト」とも言えます。元ネタを知れば、キャラクターの性格や能力の真意がより深く理解でき、物語の解像度が劇的に上がります。
今回は、第1部から最新の第9部まで、物語を彩る洋楽のルーツを徹底的に掘り下げていきましょう。
始まりはロックへのリスペクトから:第1部・第2部のキャラクター名
ジョジョの物語が始まった1980年代、まだ「スタンド」という概念がなかった頃から、洋楽の影は色濃く投影されていました。初期のキャラクター名は、荒木先生が多感な時期に聴き込んだであろう70年代ロックの巨星たちが中心です。
伝説的バンドが名を連ねる初期キャラクター
まず、ジョナサン・ジョースターの師匠であるウィル・A・ツェペリ。彼の名前の由来は、言わずと知れたイギリスのロックバンドLed Zeppelin(レッド・ツェッペリン)です。重厚でドラマチックな彼らの音楽性は、波紋という未知の力に立ち向かう勇壮な物語にぴったりです。
そして、ジョジョの最高の相棒といえばロバート・E・O・スピードワゴン。彼の名はアメリカのロックバンドREO Speedwagonから取られています。ちなみに、第1部の敵であるディオ・ブランドーの「ディオ」は、ヘヴィメタル界の教祖ロニー・ジェイムス・ディオ率いるバンド「DIO」が由来とされています。
第2部:柱の男たちと80年代ポップス
第2部「戦闘潮流」に入ると、敵である「柱の男たち」の名前が実にユニークです。
- ワムウ:イギリスのデュオ「Wham!」
- エシディシ:オーストラリアのモンスターバンド「AC/DC」
- カーズ:アメリカのニューウェイヴバンド「The Cars」
人類を超越した存在である彼らに、当時ヒットチャートを席巻していたアーティストの名を冠するセンスは、当時の読者に鮮烈な印象を与えました。
スタンド能力と音楽の融合:第3部から第6部の黄金時代
第3部で「スタンド」が登場し、第4部以降になると、スタンド名そのものが洋楽の楽曲名やアルバム名へとシフトしていきます。ここから、音楽の「歌詞」や「雰囲気」が能力の設定に深く関わるようになっていきます。
第4部:日常に潜む名盤の数々
第4部「ダイヤモンドは砕けない」の主人公、東方仗助のスタンド「クレイジー・ダイヤモンド」の元ネタは、Pink Floyd(ピンク・フロイド)の名曲「Shine On You Crazy Diamond」です。バラバラになったものを治す能力は、この曲のどこか幻想的で再生を感じさせる旋律と共鳴しているかのようです。
また、宿敵・吉良吉影の「キラークイーン」は、Queen(クイーン)の同名曲から。さらに彼の特殊能力「シアーハートアタック」や「アナザーワン・バイツァ・ダスト(地獄へ道づれ)」もすべてクイーンの楽曲名です。「静かに暮らしたい」と願う殺人鬼という歪んだキャラクターに、華やかでありながらどこか不穏なクイーンのメロディは、これ以上ないほどマッチしています。
第5部:イタリアの風とプリンスの魂
第5部「黄金の風」では、ジョルノ・ジョバァーナの「ゴールド・エクスペリエンス」が登場します。これは多才な天才アーティスト、Prince(プリンス)のアルバム『The Gold Experience』が由来です。
生命を生み出すという神秘的な能力は、常に音楽の境界線を塗り替えてきたプリンスの創造性と重なります。ブチャラティの「スティッキィ・フィンガーズ」も、The Rolling Stones(ザ・ローリング・ストーンズ)のアルバムタイトル。ジャケットに本物のジッパーが付いていたという逸話が、そのまま「ジッパーを作る」能力に直結している点は、荒木先生の遊び心が光るポイントです。
宇宙の終焉と新たな世界:第6部から第8部へ
物語が壮大なスケールへと進化するにつれ、選曲もよりコンセプト重視になっていきます。
第6部:自由を求めるストーン・フリー
空条徐倫の「ストーン・フリー」は、ジミ・ヘンドリックスの楽曲。刑務所という閉鎖空間から脱出しようとする彼女の意志を代弁するかのような選曲です。
そして、世界を一巡させるほどの大いなる力「メイド・イン・ヘブン」。これもクイーンの楽曲ですが、もともとは「ステアウェイ・トゥ・ヘブン(天国への階段)」という仮称があったとも言われており、ロック史に残る神々しいタイトルが選ばれています。
第7部・第8部:ルーツへの回帰と現代性
舞台がパラレルワールドへ移った「スティール・ボール・ラン」や「ジョジョリオン」でも、音楽愛は止まりません。
ジャイロ・ツェペリが愛用する鉄球の技術に関わる「スキャリー・モンスターズ」はデヴィッド・ボウイ。大統領の「D4C」はAC/DCの「Dirty Deeds Done Dirt Cheap」の略称です。
第8部の東方定助の「ソフト&ウェット」は、これまたプリンスのデビューアルバム収録曲から。時代を超えて、荒木先生の「好きなもの」が循環しているのがわかります。
最新作『The JOJOLands』に見る現代の洋楽選曲
現在連載中の第9部『The JOJOLands』でも、第一話から読者を驚かせる選曲が続いています。
主人公、ジョディオ・ジョースターのスタンド名は「ノーベンバー・レイン」。元ネタはGuns N' Roses(ガンズ・アンド・ローゼズ)の壮大なバラードです。ハワイを舞台にした物語の中で、雨を降らせる能力を持つスタンドにこの名を冠するセンスは、まさにジョジョの真骨頂。
他にも「スムース・オペレイター」(シャーデー)など、80年代の洗練されたポップスやR&Bからの引用が見られ、過去の部とはまた違った大人びた雰囲気を感じさせます。荒木先生のアンテナが、常に新しい(あるいは再評価されている)音楽に向いている証拠でしょう。
なぜ荒木飛呂彦は「洋楽」を名前に選ぶのか?
これほどまでに洋楽が作品に浸透しているのは、単なる趣味以上の理由があると考えられます。
荒木先生はインタビュー等で、「音楽を聴きながら絵を描くことで、そのリズムが線に乗る」といった趣旨の発言をされています。また、キャラクターの奇抜なポージング、いわゆる「ジョジョ立ち」も、デヴィッド・ボウイやプリンスといったアーティストのステージ上での立ち振る舞いや、ファッション誌のグラビアから影響を受けています。
洋楽のタイトルを冠することで、その曲が持つイメージや時代背景をキャラクターに「憑依」させているのです。読者は、元ネタの曲を聴くことで、漫画のコマの間から流れてくるはずの「音」を脳内で補完することができます。これは、漫画という静止画のメディアにおいて、非常に強力な演出効果を発揮しています。
ジョジョをきっかけに広がる音楽の輪
多くのジョジョファンが、作品をきっかけに洋楽の沼にハマっていきます。
「吉良吉影が好きだからクイーンを聴いてみた」「5部を読み返しながらプリンスのアルバムを流してみた」といった体験は、ジョジョ読者にとってのある種の「儀式」のようなものです。
今ではサブスクリプションサービスで、元ネタとなった楽曲のプレイリストを簡単に作ることができます。Echo Popのようなスマートスピーカーで「ジョジョの元ネタを流して」と頼めば、家の中が瞬時に黄金の精神が宿る空間へと変わるでしょう。
漫画を読むだけでなく、そのルーツにある音楽に触れる。それこそが、ジョジョという作品を100%楽しむための秘訣なのです。
まとめ:ジョジョの洋楽元ネタ全集!スタンド名やキャラの由来となった名曲・名盤を徹底解説
いかがでしたでしょうか。ジョジョの奇妙な冒険という作品の背景には、常に偉大なアーティストたちが奏でる音楽が鳴り響いています。
キャラクターの名前一つに込められた意味を知ることで、荒木先生がその人物に託した願いや、物語のテーマが見えてきます。第1部のロック黎明期から、最新第9部の洗練された楽曲まで、その系譜を辿る旅は、そのまま洋楽の歴史を辿る旅でもあります。
もし、まだ元ネタの曲を聴いたことがないという方がいれば、ぜひ一度耳を傾けてみてください。クレイジー・ダイヤモンドの輝きや、キラークイーンの爆発的なリズムが、より鮮明にあなたの心に響くはずです。
これからも続いていくジョジョの物語。次はどんな名曲が私たちの前に現れるのか、音楽ファンとしても目が離せません。
ジョジョの洋楽元ネタ全集!スタンド名やキャラの由来となった名曲・名盤を徹底解説を最後までお読みいただきありがとうございました。あなたのジョジョライフが、より音楽的で素晴らしいものになりますように!

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